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コンパニオン 水谷美紗
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美樹子が去ってから2ヶ月ばかりが過ぎた頃。
平成は、あるパーティーに出席していた。
いわゆる「成功者」を集めたパーティーで、業界問わず起業して成功した連中だけが集まる。
ITに多いが、外食チェーンや運送業者、はたまたコンサルティングなどの様々な業界から集まり、テレビでコメンテーターをしている者もいた。派手な会で、付き合いで仕方なく出た平成は、会場入り早々に納谷に捕まった。
「またお会いしましたね、この間の話は検討頂けましたか?」
「どうも、検討させてもらいましたが、社長の所を通すまでもないかな、という結論になりまして…」
「ほう、それはどうしてですか?」
「既存品のカスタム機種なので。新分野の開発時にはお声掛けさせてもらいますよ」
納谷の顔が一瞬歪んだ。
まだ、知的財産権を奪う目論見を諦めてないようだ。実にしつこい。
「そうですか。では、また」
いつも去る時のセリフを残して消えた。
こういうパーティーは、若手社長連中の趣向なのか、コンパニオンがアチコチにいるのが目立つ。大抵は、美人でスタイルのいい子を狙う為に呼ぶことが大半だ。
一方でコンパニオンも、何とか社長の目に留まり、結婚してセレブ生活をゲットする目的がある。いわば合致しているから誰も文句は言わない。ドレスコードを身にまとい、決めこんだ化粧という武器を晒して、男が食い付くのを待っている。来ない時は自ら仕掛けるのだ。
見たところ三十人は居るだろうか。
ほとんどが若手社長のところに群がる。
1人の長身で、白髪混じりの男が平成に向かってきた。
世界最大手医療機器メーカーのスミスインターナショナル日本支社長でもあり、日本医療機器連盟の会長も務める佐田 雄三だ。
「ご無沙汰です、黒田さん」
相変わらずスマートでダンディな男だ。
確か独身を貫いていたとか。
「こちらこそご無沙汰です。佐田社長」
平成は元々、ワールドワイドで競合と言われるオートメディックの社員だった。約二十年間を現場営業で勤め、何度かトップテン入もしていた。平成の担当エリアではスミスのシェアも低くて有名だった。
「ご活躍ですね」
佐田の軽いジャブがくる。
「社長こそ、随分とシェアを上げられてるとか。聞き及んでますよ」
「いやぁ、目黒さんの開発されたJプローブには勝てませんよ。我が社のシェアもガタ落ちです」
「それは光栄ですね。でも、たかが1製品ですから。御社のように沢山の製品群があれば影響は少ないものですよ」
佐田は軽く眉を寄せた。
「たとえ1品目でもトップを譲るのは、問題なんですよ」
珍しく絡んでくる。
裏ルートからの情報として、Jプローブの躍進がアメリカ本社で問題になったらしい。市場におけるシェアを取り返せと厳命が来たとか。
国内でトップシェアを取ったときに、佐田から呼ばれて、出向くと副社長として迎え入れるから、平成の持つ知的財産権を売って欲しいと言われたことがある。提示された金額は二十億。
しかし、平成はそれを蹴った。
その事が相当頭にきてるらしい。
「そんな気にすることありませんよ、では…」
早々に場を去った方が絡まれなくて住むだろう、と平成は勝手に会話を締めた。
どこか座れる場所を探してると、1人のコンパニオンと肩が触れた。
「失礼」
「いえ、あっ…」
「はい?」
「失礼ですが、目黒さんですか?」
知らない子だ。
見たことがない。
「失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」
コンパニオンは軽く会釈しながら答えた。
「いえ、目黒さんの講演を拝聴しました。若者の起業セミナーで…」
「あー、そうでしたか。いや、すいません、分からなくて」
「無理もありません、受講生だけでも百人はいましたから」
おそらく2ヶ月ほど前の講演だろう。
「アナタも独立を?」
「まぁ、ハイ…でも分からないことだらけで」
「最初はそんなものですよ」
「どちらかに行かれるのですか?」
「いや、座る場所が無いので上のラウンジでゆっくりしようかな、と」
そのコンパニオンは同調するように頷いた。
「私もご一緒して構いませんか?」
「いいんですか?こんなオジサンに付いてきて…他の方は色々と頑張ってるみたいですが」
「いいんです。私の居る場所でも無いので…」
気になる言い方だったが。
ラウンジは一転して静かな空気だ。
軽い談笑は聞こえるが、席が離れてるから気にならない。これも配慮なのだろう。
レインボーブリッジが正面に見える席に案内された。
「ジントニックを、えーと何にしますか?」
「私はピンクレディーを…」
「懐かしいな」
「えっ?」
「ピンクレディーですよ。久しぶりに聞いた」
「ご存知ですか?」
「卵白を使ったカクテルで、その昔にアイドルユニットとして売れたピンクレディーの名前を使ったカクテルですよね」
「そうなんですか?私は知らなくて…」
「知ってたら年齢詐称ですよ、ハハッ」
「フフッ…そうですね。だから口当たりが円やかなんですね」
「そうです、卵白が円やかにしてます」
二人のカクテルが運ばれて乾杯をした。
「何に乾杯しますか?」
「そ~ですね、目黒さんにお会い出来たことに…ダメですか?」
「了解です、ならば二人の出会いに!」
「自己紹介まだでした、私は水谷美紗と言います。コンパニオンはアルバイトですけど、本業はMICというコピー機メーカーの事務です」
「あら、ウチでも使ってますよ。1番安いやつですけどね」
「それは、ありがとうございます」
「水谷さんはどうしてこの会に?」
「ホントは、小さくても会社を持つのが夢なんです。でも、お金も無いしバックアップしてくれる方もいないので、何か縁があれば、と思いまして…」
「でも、パトロン探しにも見えなかったけど」
「そんな、見返り愛人とかじゃないです」
「見返り美人なら聞いたことあるけど…」
「やっぱり見返り必要なんですね。愛人になれとか言われて、もう参加するの止めようかな、と思ってたんですけど…たまたま目黒さんのお名前見てお会いできれば、と」
「あなたのような美人さんに言われるのは光栄ですけど…なんで私を?」
「講演を聞いて、起業したければ多少の困難は当たり前、幾つも壁を乗り越えてこそ希望が出てくる、その言葉に惹かれました」
「あ~言いましたね」
「自分の甘さを痛感しました。製品を世の中に出すまでのご苦労とかトラブル、落とし穴なんか聞いて、ホントに甘く考えてたと思ってます」
「何をしようと?」
「はい、実はネットで女性向けの恋愛カウンセリングしてまして…それを軌道に乗せたくて…」
「恋愛カウンセリング…失礼ですけどそういうの沢山あるんじゃないですか?」
「はい、私のは他と違って不倫がテーマなんです」
「えっ?それはまた飛んでますね」
「はい、サイトの無料相談とかもありますけど、情報が少なすぎて本人が求める答えが少ないんです。簡単に別れろ、とか言われても、出来たら相談なんてしてないんです」
「水谷さんからの結末としては?」
「もちろん別れです。ただステップが必要なんです。男性と違って女性は簡単に割り切れないものですから」
「なるほど…確かに」
その時、平成の背後に気配がした。
美紗も視線をそっちに向けた。
また佐田が現れた。
偶然だろうが、あまり見たくない顔だ。
「また、お会いしましたね、目黒さん」
「そうですねぇ」
「綺麗な女性連れとは羨ましい、お知り合いですか?」
佐田は、少し戸惑う美紗に微笑んだ。
「あっ…いえ…」
「私はスミスインターナショナル日本支社長の佐田と言います」
「あっ、ハイ…水谷美紗です…えっ?スミスインターナショナルって世界最大手の?」
「ご存知ですか?光栄ですね」
「目黒さんお知り合いなんですか?」
答えに困る平成を他所に、佐田は続けた。
「知り合いどころか、ライバルですよ、ねぇ目黒さん…」
「えっ!ライバル?」
「彼の開発した器械が、日本でシェア1位なんですよ。おかげでウチの製品が2位に落ちてしまいました…」
「…ホントですか?」
平成は歯がゆくて黙っていた。
「それどころか世界で使われて、ワールドワイドでウチが脅かされています」
「すご…」
「我が社に迎え入れようともしたのですけど、断られたんですよ。水谷さんからも説得しておいてくださいませんか?」
「佐田社長…馬に蹴られますよ」
平成は釘を打った。
「これはお邪魔しましたね、では…」
佐田は取り巻きを連れて、向こうの席に付いた。
「佐田さんともお知り合いですか…」
「向こうは外資系企業のエリート社長で、私は日本の叩き上げ田舎社長です。身分は向こうが上ですよ」
「でも、スミスインターナショナルがライバルと認めたんですよね?凄いじゃないですか?」
「従業員が五万人、こっちは1人ですよ、比較にならない」
「あの…迎え入れるって…」
「以前にスミスインターナショナルの副社長で来ないか?と言われましてね。条件は私の開発機器の譲渡。だから、断りました」
美紗は思わず笑った。
「断ったんですか?」
「しつこいんですよ、ウザくて帰ったら恨まれたみたいでね、エリートのプライドに傷つけたようです」
「ちなみに譲渡ってお幾らだったんですか?」
「二十億…」
「!!!に…」
美紗はとてつもない話に言葉が出なかった。
だが、平成は何ともない顔をしている。
「あの…どうして…?」
「あの器械は血と汗の結晶で、我が子のようなモノです。メイドインジャパンとして、日本のドクターに合わせてます。そこにプライドがあるんですよ」
「なるほど…」
「売るのは簡単です。しかし、外資系に売ったら、そこで終わります。製品は潰され、良い機能だけ吸収される。しかも海外の工場に移ってしまう。それでは意味がない」
「確かにそうですね…」
「これも教訓ですけど、信念は売ってはイケない。売る時は辞めるときです」
「はい、私もそう思います」
「水谷さんのプランは、根本から見直す必要があるかも知れません」
「えっ?」
「やっぱり訴求が足りない気がします。ネットとはいえ、心に響くものにしないと…」
「それは感じてました…でも、何が良いか分からなくて…」
「失礼ですけど、不倫の経験が?」
美紗は不意を突かれ無言になった。
「あるんですね、だからサイトを立ち上げた?」
静かに頷いた。
「ならば、その経験を活かせば?」
「…それがよく分からなくて…その時は頭がおかしくなって、全てがバレたときにも、よく理由も分からなくなりました…慰謝料とかは無かったんですけど…」
「うーん…」
「少し突っ込んだ事聞いていいですか?」
「…ハイ」
「不倫で1番辛かったのことは?」
「…彼が離婚して一緒になるって話を信じてました…でも、いざ奥様にバレると逃げた事ですね…何もかも信じられなくなって…」
「それだ!」
「へっ?」
「不倫はほとんどがウソなんですよ」
「まぁ…そうですね…」
「そこを一発で納得させるフレーズがいるんだ!」
「フレーズ?どういう事ですか?」
「広告と同じです、実はとても大事なことなんですよ、私も開発品を出すときに悩んだのがフレーズなんですよね。ユーザーの興味を惹かなきゃならない」
「なるほど…ちなみにどういうフレーズだったんですか?」
「ジャパンプライド…です」
「なんか来ますね」
「何が?と思うけど、製品の品質とか日本人の性質を盛り込む意味なんですよ」
「それがプライド…なんですね。なんとなく分かります」
「水谷さんのユーザーは、不倫女性です。でも、男性側も居ますよね。ならば、どちらにも訴える共通のワードがいるんだ…」
「何がいいのでしょう…浮かびません」
「だから、視点をズラすんです。アナタも分からなくなった…信じてたものが違ったとか無くなった…そんな意味をこめたフレーズです」
「ウソ?」
「その線ですが、少し足りないな…少し時間貰えます?」
「えっ?でも、関係ない話ですよ?」
「まぁ、乗りかかった船ですよ」
三日経って、美紗の携帯に着信が来た。
「もしもし、目黒です」
「美紗です、ホントにすいません…」
「浮かびましたよ、事務所に来れますか?」
「ハイ!伺います」
予定の十六時に美紗は、平成のオフィスのある品川駅に着いた。
「どうぞ」
中はシンプルだが、ダンボールが積み上げられ、大きなテーブルには図面らしきものが幾つか広がっていた。
「なんだか、すいません。関係ない事に付き合って頂いて…」
「いえいえ、中々楽しかったですよ。早速フレーズなんですが…」
平成はメモを渡した。
【虚構の世界】
「これは…」
「どうですか?」
「なるほど…確かに訴えるフレーズですね」
「これには二つの意味があるんです」
「二つ?」
「一つはウソ、もう一つは不倫中の心は現実の世界にはいないと言うことです」
「…そう…確かにそうですね」
「不倫の中に真実はあまり無いモノですよね。仮に真実があったとしても信用は出来ない」
「例えば?」
「水谷さんの不倫相手が、もし家庭不和だった…どこかで愛を求めていた…としたら?」
「じゃあ、なんで離婚しなかったんですか?」
「そこです、愛はあったけど現実には無理だった。仕事、世間体、カネ、地位がネックで離婚は現実的ではなかった…だから逃げた」
「そんなの話、信じられません」
「だから、真実があっても信じられない。それは虚構の世界であり、現実の世界ではないからですよ」
「だから、虚構の世界…ハッとさせられます」
「世界とは、今の自分の世界とは違うんだよ、と警鐘を鳴らす意味です」
「すごいです!ぜひ使わせてくださいませんか?」
「もちろん!」
「何かお礼を…」
「そんなの要りませんよ」
「そんな、申し訳ないです」
「ふむ、ならばメシ奢ってくださいませんか」
「もちろんです」
平成は、馴染みの定食屋に美紗を連れていった。
「ここは?」
「私の馴染みですよ、鯖定食が美味いんです」
なんかスカされた気分で、美紗は微笑んだ。
「驚きました、まさか目黒さんがこういうお店をご愛用とは…」
「変ですか?」
「イメージと違います。とてもワールドワイド企業の社長と渡り合うやり手の方、と思ってましたので…」
「毎日、フランス料理食ってるイメージ?」
「ハイ、そっちに近いです」
「あんな高級メシは、お呼ばれした時ぐらいですよ。こういうメシが飽きずに食べられます」
二人は定食を始末して店を出た。
「いやぁ、ご馳走さまでした」
「あの…ホントにコレで?」
「構いませんよ、投資もゼロですからね」
「ありがとうございます…」
平成は思いついたように、美紗を呑みに誘ってみた。
そこから、歩いて五分ぐらいのバーカウンターに座った。
「あの、失礼ですけど奥様は?」
「先立ちました。もう五年近くになります」
「スイマセン…」
「気にしないでください」
「再婚とか?」
「いえ、今のところありませんね。と言うより恋愛そのものに気が向かない」
「まだ奥様を…?」
「う~ん、それもあるけど、先の人生をゆっくり考えるのも悪くないかな、て思って…」
「先の人生を?」
「私はもう五十半ばですからね。何歳であの世に行くか分かりませんが、こうして自分に関わる方との出会いとか縁とか…そういうものがあって、誰かの役に立つ人生を楽しもうかな、ってね…」
「いいですね、そう思えて…」
「生きるだけの金は何とかなったので、これからは欲とは離れて過ごす。意外と楽しいものです。そういう水谷さんは?」
美紗は少し俯いた。
テーブルのジントニックとピンクレディーが、淡い光に照らされている。
「私は…男性不信なので…色恋はもういいかな」
「まぁ、無理はしなくていいですよ、したい時にすればいい」
「でも、年も年ですから婚期を逃して、独りで生きてく勇気も、まだ無くて…こんな時、どう考えたらいいのか分かりません」
「時が緩やかに解決してくれます」
「時が…?」
「今はカウンセリング業を成り立たせることですよ。色んな人と出会っていくうちに行きたい方向が決まる…それでいい…」
「…そうですね」
「私はね、アナタが羨ましいと思ってます」
「えっ?どうしてですか?」
「特に女性でプロポーションが綺麗な人は、天性のものですよね。人に無いものを持っている。身体目当てとか愛人て意味ではないですよ。自信になるものをお持ちだ」
「そんなふうに考えたこと無いですね。男性の殆どが身体目当てのように声かけて来ます」
「ハハッ、それは男の本能です。だけど、水谷さんのように綺麗な人でも不倫で苦しんだ、私達と変わらないんだ、とユーザーに思わせたら勝ちです」
「それ、ホントですか?」
「私だって、見た目が良かったらどんなにいいかと思いますよ。背の高いヤツにくるぶしのトコ十センチ切ってオレにくれって言ったことあります」
美紗は爆笑した。
「くるぶしですか?」
「背がもう少し欲しかったなぁ…」
「佐田社長みたいに…?」
「そう、そうか!あの身長が気に入らなかったのか!アイツのくるぶし切ってやろうかな」
「フフフッ…それ良いかも」
美紗の微笑む顔は、クールっぽさを消した。
「やっぱり笑った顔が素敵ですよ」
「それ、あんまり言われた事無いです」
「それは美人の悩みでクールと言われません?」
「そうなんです!」
「でも、笑った顔はいいですね。美人にしては珍しく安心できる笑顔です」
「そんなこと初めて言われました」
「もっと自信を持ちなさい。アナタはどんなに金を積んでも得られないものがある。それを活かしたら、もっと人生が楽しくなる」
美紗は、初めて聞く平成の言葉に心を打たれた。
「不思議な方ですね、モテるんじゃないですか?ホントは何人も泣かしてきたとか?」
「残念ながら、泣かすほどのモテ期も人気も無いです。一度でイイからモテて見たかったなぁ…。私と水谷さんの心を入れ替えませんか?」
「ええっ!!何する気ですか?」
「モテる女性の気分を味わってみたい」
真剣な顔の平成に、美紗は笑いが漏れた。
「発想が凄くてついていけません!」
「生まれ変わったら美人でナイスバディーになりたいですね」
美紗は笑いながら聞いた。
「それで?」
「世の中の男を手玉に取るんです。五股ぐらいかけて、三食のメシを男の金で食う!」
「アハハハッ!それ悪女じゃないですか?」
「それで金のなくなった男から切って、新しい金持ちを補充する!どうですかね?」
美紗は更に笑った。
何年ぶりだろう…心から笑ったのは…
「それ最低ですよぉ!アハハハッ…」
「じゃあタッグ組みませんか?美人にナイスバディーが二人で組んだら無敵ですよぉ」
「フフフッ…でも、面白そう…考えておきます」
美紗は平成の頭の良さに惹かれていた。
下心が見えないし、仮にあったとしても不愉快に感じなかった。
「さて、そろそろ帰りますか。電車もあるうちに…ね」
「はい、今日はありがとうございました」
「成功を祈ってますよ」
「また、連絡してもいいですか?」
「いつでもどうぞ」
二週間後。
美紗から連絡が来た。
メーカーとの打ち合わせが終わり、新幹線で新潟県の燕三条に向かっていた時。
「もしもし、水谷です」
「あ~どうも、その後どうですか?」
「目黒さんのアイディアを参考にサイトを作り直したら、アクセスが五倍に増えて問い合わせも増えました」
「そりゃ何よりで」
「それで、また相談に乗って頂きたいことがあって…お時間ありますか?」
「今は新潟に向かってるところなんです」
「あっ、そうなんですか?」
「燕三条に用事があって、明日には戻ります」
「あの…私も仕事で新潟市に居るんです」
「えっ?そりゃ偶然ですね」
「商談で契約取り付けたばかりです」
「それはおめでとうございます」
「私も泊まって明日帰るんですけど、良かったら晩御飯どうですか?」
仕事終わりに平成は、再び新幹線で新潟市に向かった。
駅前のホテルにチェックインしてから、予約した店に向かった。
有名酒造メーカー直営の居酒屋だが、料理が豊富にある。
どれも酒の肴としては一級品だ。オマケに安いから、食も進む。
美紗はすでに待っていた。
黒のスーツにロングヘアを束ねている。
パーティーの時とは別人のようだ。
「こんばんは」
笑顔で会釈した。
「しかし偶然ですよね」
「ハイ、まさか目黒さんが新潟県に来られてるなんて…」
「開発品の金属パーツは、燕三条の業者に製造してもらってて、改良品の試作を見てきたんですよ」
「なるほど、東京で作ってるのかと思いました」
「それもありなんですけどね、燕三条には秀逸な職人さんが多くいますから品質が高いんです」
日本酒を頼んで、何品かの肴をつまむ。
「美味しい!」
「新潟は初めて?」
「ハイ、来たことなくて…目黒さんは?」
「昔はここに住んでいたんです」
「えっ!そうなんですか?」
「ええっ…それよりサイト直して良かったですね」
「ハイ!」
美紗はタブレットを出して、サイトのホームページを見せた。
タイトルに「不倫は虚構の世界」とある。
背景には、ビルの廃墟のイラストが描かれていた。
確かにこれを見たら心に響くだろう。
「こりゃスゴイな…不安感を煽るな」
「そこの問い合わせをタップしてください」
画面が一気に変わり、天使が上から泥にハマった人間に手を差し伸べているイラストが出てきた。そこには「勇気を出して」と書かれている。説明文はシンプルに書いてある。
【不倫は虚構の世界。だから現実ではないのです。抜け出して現実の世界に戻りましょう。その為の手助けに全力を出します】
「どうでしょうか?」
「うん、シンプルに訴える文言ですね。特に手助けをサポートと書いてないのが良い」
「やっぱり…悩んだんですよ。なんかサポートだと足りなくて…」
「そうですね、サポートだと軽い…それに本人主体のイメージがある。それが出来ないから導いて欲しいんですよね。手助けはその印象が強くていい!」
美紗は万遍の笑みで喜んだ。
「今後はどうするんですか?片手間では無理でしょう?」
「会社は再来月に退職します。仰る通り片手間では出来ません。そこで、ご相談なんですけど」
「なんですか?」
「オフィスを借りようかと思ってるんですが、どこも高くて…プライバシーポリシーもあるので、どうしたらいいかな、と…」
「ふむ…確かにプライバシーに関わることだから古いオフィスだと見劣りするか…」
「そうなんです。ユーザーには安心感が必要なので…」
「相談は全部顔合わせで?」
「いえ、メールも活用します。訪問する場合は、良いのですが来られる時が…もし、ご紹介してくれる方がいれば…と思ってまして…」
「ならばレンタルオフィスは?」
「レンタル?あっ、そうか!その手がありましたね」
「私も会社立ち上げた頃は世話になりました」
「そうなんですね」
「手狭になって結局、賃貸に切り替えましたけどね。でも、その間に資金の余裕が出来たので良かったですよ」
美紗は、安堵の顔を見せた。
「目黒さんてホントにスゴイですね」
「そうですか?」
「だって、相談すると必ずヒントか答えを返してくれますから」
ジッと見つめられながら言われると、照れるものがある。
「たまたまですよ」
それから二時間ほど話して、帰ることにした。
「では、ここで」
平成は、会計を済ませて美紗と別れた。
美紗も「ご馳走様です」と笑顔で見送った。
コンビニでタバコ、缶コーヒーを買って部屋に戻った。
少しするとノックする音が聞こえた。
誰も来る予定は無い。
(誰だ?)
覗き穴から見ると美紗がそこに居た。
ドアを開ける。
「どうしましたか?てか、何で部屋分かったんですか?」
美紗は頭を下げて「ゴメンナサイ」と言った。
他の客が来たので、慌てて中に入れた。
「ホントにゴメンナサイ…後をつけて来ちゃいました…怒ってますか?
「いや…美人につけられるのは初めてですよ。驚きです…」
美紗が突然抱きついてきた。
リンスの香りだろうか…
女性の香りが鼻に広がる。
「惹かれてしまいました…」
「いや、こんなオジサンは良くないでしょ?」
「関係ありません…私がキライですか?」
「むしろ光栄です、でも…」
平成は美紗を離した。
「亡くなられた奥様が?」
「正直、自分でも分からないんです。確かに妻は心にいます。でも目の前にはいない。次の相手を探す気も起きない。再婚も考えられない…そんな宙ぶらりんなんですよね」
「私は役不足ですか?」
「いや、水谷さんがどうとかじゃないんです。男性なら、アナタに抱きつかれたら最高だと思います。けど、私はその先が考えられない…」
「その先?」
「付き合うとか結婚とか…だから、その場だけでは抱けないんですよ。それに、アナタにはまだまだ先がある。自分にも未来のイイ人にも、いくらでも選択肢がある。私は、この先どう生きて終わりをどう迎えるか?を考えなきゃならない…」
「そんな事…まだまだじゃないですか!」
「人間五十歳も過ぎると、老い先のこと考えるものです。そこにアナタを付き合わせるわけにはいきません」
平成は、ホットコーヒーを二つ淹れた。
今度はコーヒーの香りが部屋に漂う。
美紗はショックを受けながらも、平成の心を覗けて嬉しい部分もあった。
「不思議ですね」
「何が?」
「女が迫って断られるなんて、傷つくんですよ…でも、それより目黒さんの気持ちが知れて嬉しくも感じてます」
「そうですよね、女性に恥をかかせるのも良くないことか…」
少しの静寂が流れた。
平成は立ち上がって美紗の腕を掴んだ。
顔が目の前に迫る。
「断ってもいいです。一度だけ。アナタからのお礼として…それでもいいなら目を閉じてください。断るならそのままで…」
美紗はジッと見つめた。
平成はフッと笑って離れた。
そのまま背を向けた時に、美紗が抱きついてきた。
「コレでおあいこです私が断られて、目黒さんが断られて…」
平成は大笑いした。
「ハハハハッ!これは一本取られました!参りました」
美紗も微笑んだ。
「やっぱり女性には敵わないなぁ…まさかの逆転です、でもその発想はこれから役に立ちますよ」
振り向きざまにキスをした。
美紗はそこで目を瞑って応えた。
コンパニオンをするだけあって、美紗の身体は素晴らしかった。
平成の上に乗り、髪をかき上げた仕草は正に神が作った美と言えた。
これに勝てる男はいない。
正常位になると、美紗は大人とも子供とも言えない顔つきで微笑んだ。
広がるロングヘアーが妖艶さを醸し出す。
「あっ!あぁっ!目黒さん!す!スゴイ!」
美紗は腕を平成の頭に巻き付け、濃厚なキスを求めた。
張りのある胸が、平成の身体に密着する。
二人とも絶頂に達した。
そのままベッドで寄り添うと、美紗は一人で笑った。
「ん?」
「目黒さんてエッチも上手なんですね」
「そうかな、自覚ないけど」
「久しぶりにめちゃくちゃ感じちゃいました」
「お世辞でも嬉しいですね」
「シャワー浴びません?」
平成はいつもダブルの部屋を予約してるが、タオルや部屋着も二人分用意されてるのが助かった。
身体を拭くと美紗は服を着始めた。
平成は察して背を向けた。
「じゃあ部屋に戻ります」
「送りましょうか?」
「いえ、大丈夫です…実は私もここのホテルなんです」
「あら…それも?」
「ハイ、偶然です」
「後つけるわけだ」
「それはホントです、まさかホテルまで同じとは思いませんでした」
「じゃあなんで後をつけて…なんて?」
「その方が喜んでくれるかな…って」
平成はまた笑った。
「また一本取られた!」
「フフッ」
「じゃあ事業の成功祈ってますよ」
「また相談に乗ってくれますか?」
「もちろん!何時でもどうぞ」
翌日。
チェックアウトの手続きをしてると、美紗が同僚らしき女性と玄関を出るのが見えた。
平成を見て小さく手を振った。
美紗は悟っていた。
どんなに想いをぶつけても、平成は振り向いてはくれない事を。
どこか透けた心が見え隠れしていた。
それでも良かった。
人の出会いが自分を変える。その言葉が胸にあった。これでいい、そう思えた。
軽く頭を下げて見送った。
旅先での出来事に、一つの思い出が出来た事を噛み締めて駅に向かった。
平成は、あるパーティーに出席していた。
いわゆる「成功者」を集めたパーティーで、業界問わず起業して成功した連中だけが集まる。
ITに多いが、外食チェーンや運送業者、はたまたコンサルティングなどの様々な業界から集まり、テレビでコメンテーターをしている者もいた。派手な会で、付き合いで仕方なく出た平成は、会場入り早々に納谷に捕まった。
「またお会いしましたね、この間の話は検討頂けましたか?」
「どうも、検討させてもらいましたが、社長の所を通すまでもないかな、という結論になりまして…」
「ほう、それはどうしてですか?」
「既存品のカスタム機種なので。新分野の開発時にはお声掛けさせてもらいますよ」
納谷の顔が一瞬歪んだ。
まだ、知的財産権を奪う目論見を諦めてないようだ。実にしつこい。
「そうですか。では、また」
いつも去る時のセリフを残して消えた。
こういうパーティーは、若手社長連中の趣向なのか、コンパニオンがアチコチにいるのが目立つ。大抵は、美人でスタイルのいい子を狙う為に呼ぶことが大半だ。
一方でコンパニオンも、何とか社長の目に留まり、結婚してセレブ生活をゲットする目的がある。いわば合致しているから誰も文句は言わない。ドレスコードを身にまとい、決めこんだ化粧という武器を晒して、男が食い付くのを待っている。来ない時は自ら仕掛けるのだ。
見たところ三十人は居るだろうか。
ほとんどが若手社長のところに群がる。
1人の長身で、白髪混じりの男が平成に向かってきた。
世界最大手医療機器メーカーのスミスインターナショナル日本支社長でもあり、日本医療機器連盟の会長も務める佐田 雄三だ。
「ご無沙汰です、黒田さん」
相変わらずスマートでダンディな男だ。
確か独身を貫いていたとか。
「こちらこそご無沙汰です。佐田社長」
平成は元々、ワールドワイドで競合と言われるオートメディックの社員だった。約二十年間を現場営業で勤め、何度かトップテン入もしていた。平成の担当エリアではスミスのシェアも低くて有名だった。
「ご活躍ですね」
佐田の軽いジャブがくる。
「社長こそ、随分とシェアを上げられてるとか。聞き及んでますよ」
「いやぁ、目黒さんの開発されたJプローブには勝てませんよ。我が社のシェアもガタ落ちです」
「それは光栄ですね。でも、たかが1製品ですから。御社のように沢山の製品群があれば影響は少ないものですよ」
佐田は軽く眉を寄せた。
「たとえ1品目でもトップを譲るのは、問題なんですよ」
珍しく絡んでくる。
裏ルートからの情報として、Jプローブの躍進がアメリカ本社で問題になったらしい。市場におけるシェアを取り返せと厳命が来たとか。
国内でトップシェアを取ったときに、佐田から呼ばれて、出向くと副社長として迎え入れるから、平成の持つ知的財産権を売って欲しいと言われたことがある。提示された金額は二十億。
しかし、平成はそれを蹴った。
その事が相当頭にきてるらしい。
「そんな気にすることありませんよ、では…」
早々に場を去った方が絡まれなくて住むだろう、と平成は勝手に会話を締めた。
どこか座れる場所を探してると、1人のコンパニオンと肩が触れた。
「失礼」
「いえ、あっ…」
「はい?」
「失礼ですが、目黒さんですか?」
知らない子だ。
見たことがない。
「失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」
コンパニオンは軽く会釈しながら答えた。
「いえ、目黒さんの講演を拝聴しました。若者の起業セミナーで…」
「あー、そうでしたか。いや、すいません、分からなくて」
「無理もありません、受講生だけでも百人はいましたから」
おそらく2ヶ月ほど前の講演だろう。
「アナタも独立を?」
「まぁ、ハイ…でも分からないことだらけで」
「最初はそんなものですよ」
「どちらかに行かれるのですか?」
「いや、座る場所が無いので上のラウンジでゆっくりしようかな、と」
そのコンパニオンは同調するように頷いた。
「私もご一緒して構いませんか?」
「いいんですか?こんなオジサンに付いてきて…他の方は色々と頑張ってるみたいですが」
「いいんです。私の居る場所でも無いので…」
気になる言い方だったが。
ラウンジは一転して静かな空気だ。
軽い談笑は聞こえるが、席が離れてるから気にならない。これも配慮なのだろう。
レインボーブリッジが正面に見える席に案内された。
「ジントニックを、えーと何にしますか?」
「私はピンクレディーを…」
「懐かしいな」
「えっ?」
「ピンクレディーですよ。久しぶりに聞いた」
「ご存知ですか?」
「卵白を使ったカクテルで、その昔にアイドルユニットとして売れたピンクレディーの名前を使ったカクテルですよね」
「そうなんですか?私は知らなくて…」
「知ってたら年齢詐称ですよ、ハハッ」
「フフッ…そうですね。だから口当たりが円やかなんですね」
「そうです、卵白が円やかにしてます」
二人のカクテルが運ばれて乾杯をした。
「何に乾杯しますか?」
「そ~ですね、目黒さんにお会い出来たことに…ダメですか?」
「了解です、ならば二人の出会いに!」
「自己紹介まだでした、私は水谷美紗と言います。コンパニオンはアルバイトですけど、本業はMICというコピー機メーカーの事務です」
「あら、ウチでも使ってますよ。1番安いやつですけどね」
「それは、ありがとうございます」
「水谷さんはどうしてこの会に?」
「ホントは、小さくても会社を持つのが夢なんです。でも、お金も無いしバックアップしてくれる方もいないので、何か縁があれば、と思いまして…」
「でも、パトロン探しにも見えなかったけど」
「そんな、見返り愛人とかじゃないです」
「見返り美人なら聞いたことあるけど…」
「やっぱり見返り必要なんですね。愛人になれとか言われて、もう参加するの止めようかな、と思ってたんですけど…たまたま目黒さんのお名前見てお会いできれば、と」
「あなたのような美人さんに言われるのは光栄ですけど…なんで私を?」
「講演を聞いて、起業したければ多少の困難は当たり前、幾つも壁を乗り越えてこそ希望が出てくる、その言葉に惹かれました」
「あ~言いましたね」
「自分の甘さを痛感しました。製品を世の中に出すまでのご苦労とかトラブル、落とし穴なんか聞いて、ホントに甘く考えてたと思ってます」
「何をしようと?」
「はい、実はネットで女性向けの恋愛カウンセリングしてまして…それを軌道に乗せたくて…」
「恋愛カウンセリング…失礼ですけどそういうの沢山あるんじゃないですか?」
「はい、私のは他と違って不倫がテーマなんです」
「えっ?それはまた飛んでますね」
「はい、サイトの無料相談とかもありますけど、情報が少なすぎて本人が求める答えが少ないんです。簡単に別れろ、とか言われても、出来たら相談なんてしてないんです」
「水谷さんからの結末としては?」
「もちろん別れです。ただステップが必要なんです。男性と違って女性は簡単に割り切れないものですから」
「なるほど…確かに」
その時、平成の背後に気配がした。
美紗も視線をそっちに向けた。
また佐田が現れた。
偶然だろうが、あまり見たくない顔だ。
「また、お会いしましたね、目黒さん」
「そうですねぇ」
「綺麗な女性連れとは羨ましい、お知り合いですか?」
佐田は、少し戸惑う美紗に微笑んだ。
「あっ…いえ…」
「私はスミスインターナショナル日本支社長の佐田と言います」
「あっ、ハイ…水谷美紗です…えっ?スミスインターナショナルって世界最大手の?」
「ご存知ですか?光栄ですね」
「目黒さんお知り合いなんですか?」
答えに困る平成を他所に、佐田は続けた。
「知り合いどころか、ライバルですよ、ねぇ目黒さん…」
「えっ!ライバル?」
「彼の開発した器械が、日本でシェア1位なんですよ。おかげでウチの製品が2位に落ちてしまいました…」
「…ホントですか?」
平成は歯がゆくて黙っていた。
「それどころか世界で使われて、ワールドワイドでウチが脅かされています」
「すご…」
「我が社に迎え入れようともしたのですけど、断られたんですよ。水谷さんからも説得しておいてくださいませんか?」
「佐田社長…馬に蹴られますよ」
平成は釘を打った。
「これはお邪魔しましたね、では…」
佐田は取り巻きを連れて、向こうの席に付いた。
「佐田さんともお知り合いですか…」
「向こうは外資系企業のエリート社長で、私は日本の叩き上げ田舎社長です。身分は向こうが上ですよ」
「でも、スミスインターナショナルがライバルと認めたんですよね?凄いじゃないですか?」
「従業員が五万人、こっちは1人ですよ、比較にならない」
「あの…迎え入れるって…」
「以前にスミスインターナショナルの副社長で来ないか?と言われましてね。条件は私の開発機器の譲渡。だから、断りました」
美紗は思わず笑った。
「断ったんですか?」
「しつこいんですよ、ウザくて帰ったら恨まれたみたいでね、エリートのプライドに傷つけたようです」
「ちなみに譲渡ってお幾らだったんですか?」
「二十億…」
「!!!に…」
美紗はとてつもない話に言葉が出なかった。
だが、平成は何ともない顔をしている。
「あの…どうして…?」
「あの器械は血と汗の結晶で、我が子のようなモノです。メイドインジャパンとして、日本のドクターに合わせてます。そこにプライドがあるんですよ」
「なるほど…」
「売るのは簡単です。しかし、外資系に売ったら、そこで終わります。製品は潰され、良い機能だけ吸収される。しかも海外の工場に移ってしまう。それでは意味がない」
「確かにそうですね…」
「これも教訓ですけど、信念は売ってはイケない。売る時は辞めるときです」
「はい、私もそう思います」
「水谷さんのプランは、根本から見直す必要があるかも知れません」
「えっ?」
「やっぱり訴求が足りない気がします。ネットとはいえ、心に響くものにしないと…」
「それは感じてました…でも、何が良いか分からなくて…」
「失礼ですけど、不倫の経験が?」
美紗は不意を突かれ無言になった。
「あるんですね、だからサイトを立ち上げた?」
静かに頷いた。
「ならば、その経験を活かせば?」
「…それがよく分からなくて…その時は頭がおかしくなって、全てがバレたときにも、よく理由も分からなくなりました…慰謝料とかは無かったんですけど…」
「うーん…」
「少し突っ込んだ事聞いていいですか?」
「…ハイ」
「不倫で1番辛かったのことは?」
「…彼が離婚して一緒になるって話を信じてました…でも、いざ奥様にバレると逃げた事ですね…何もかも信じられなくなって…」
「それだ!」
「へっ?」
「不倫はほとんどがウソなんですよ」
「まぁ…そうですね…」
「そこを一発で納得させるフレーズがいるんだ!」
「フレーズ?どういう事ですか?」
「広告と同じです、実はとても大事なことなんですよ、私も開発品を出すときに悩んだのがフレーズなんですよね。ユーザーの興味を惹かなきゃならない」
「なるほど…ちなみにどういうフレーズだったんですか?」
「ジャパンプライド…です」
「なんか来ますね」
「何が?と思うけど、製品の品質とか日本人の性質を盛り込む意味なんですよ」
「それがプライド…なんですね。なんとなく分かります」
「水谷さんのユーザーは、不倫女性です。でも、男性側も居ますよね。ならば、どちらにも訴える共通のワードがいるんだ…」
「何がいいのでしょう…浮かびません」
「だから、視点をズラすんです。アナタも分からなくなった…信じてたものが違ったとか無くなった…そんな意味をこめたフレーズです」
「ウソ?」
「その線ですが、少し足りないな…少し時間貰えます?」
「えっ?でも、関係ない話ですよ?」
「まぁ、乗りかかった船ですよ」
三日経って、美紗の携帯に着信が来た。
「もしもし、目黒です」
「美紗です、ホントにすいません…」
「浮かびましたよ、事務所に来れますか?」
「ハイ!伺います」
予定の十六時に美紗は、平成のオフィスのある品川駅に着いた。
「どうぞ」
中はシンプルだが、ダンボールが積み上げられ、大きなテーブルには図面らしきものが幾つか広がっていた。
「なんだか、すいません。関係ない事に付き合って頂いて…」
「いえいえ、中々楽しかったですよ。早速フレーズなんですが…」
平成はメモを渡した。
【虚構の世界】
「これは…」
「どうですか?」
「なるほど…確かに訴えるフレーズですね」
「これには二つの意味があるんです」
「二つ?」
「一つはウソ、もう一つは不倫中の心は現実の世界にはいないと言うことです」
「…そう…確かにそうですね」
「不倫の中に真実はあまり無いモノですよね。仮に真実があったとしても信用は出来ない」
「例えば?」
「水谷さんの不倫相手が、もし家庭不和だった…どこかで愛を求めていた…としたら?」
「じゃあ、なんで離婚しなかったんですか?」
「そこです、愛はあったけど現実には無理だった。仕事、世間体、カネ、地位がネックで離婚は現実的ではなかった…だから逃げた」
「そんなの話、信じられません」
「だから、真実があっても信じられない。それは虚構の世界であり、現実の世界ではないからですよ」
「だから、虚構の世界…ハッとさせられます」
「世界とは、今の自分の世界とは違うんだよ、と警鐘を鳴らす意味です」
「すごいです!ぜひ使わせてくださいませんか?」
「もちろん!」
「何かお礼を…」
「そんなの要りませんよ」
「そんな、申し訳ないです」
「ふむ、ならばメシ奢ってくださいませんか」
「もちろんです」
平成は、馴染みの定食屋に美紗を連れていった。
「ここは?」
「私の馴染みですよ、鯖定食が美味いんです」
なんかスカされた気分で、美紗は微笑んだ。
「驚きました、まさか目黒さんがこういうお店をご愛用とは…」
「変ですか?」
「イメージと違います。とてもワールドワイド企業の社長と渡り合うやり手の方、と思ってましたので…」
「毎日、フランス料理食ってるイメージ?」
「ハイ、そっちに近いです」
「あんな高級メシは、お呼ばれした時ぐらいですよ。こういうメシが飽きずに食べられます」
二人は定食を始末して店を出た。
「いやぁ、ご馳走さまでした」
「あの…ホントにコレで?」
「構いませんよ、投資もゼロですからね」
「ありがとうございます…」
平成は思いついたように、美紗を呑みに誘ってみた。
そこから、歩いて五分ぐらいのバーカウンターに座った。
「あの、失礼ですけど奥様は?」
「先立ちました。もう五年近くになります」
「スイマセン…」
「気にしないでください」
「再婚とか?」
「いえ、今のところありませんね。と言うより恋愛そのものに気が向かない」
「まだ奥様を…?」
「う~ん、それもあるけど、先の人生をゆっくり考えるのも悪くないかな、て思って…」
「先の人生を?」
「私はもう五十半ばですからね。何歳であの世に行くか分かりませんが、こうして自分に関わる方との出会いとか縁とか…そういうものがあって、誰かの役に立つ人生を楽しもうかな、ってね…」
「いいですね、そう思えて…」
「生きるだけの金は何とかなったので、これからは欲とは離れて過ごす。意外と楽しいものです。そういう水谷さんは?」
美紗は少し俯いた。
テーブルのジントニックとピンクレディーが、淡い光に照らされている。
「私は…男性不信なので…色恋はもういいかな」
「まぁ、無理はしなくていいですよ、したい時にすればいい」
「でも、年も年ですから婚期を逃して、独りで生きてく勇気も、まだ無くて…こんな時、どう考えたらいいのか分かりません」
「時が緩やかに解決してくれます」
「時が…?」
「今はカウンセリング業を成り立たせることですよ。色んな人と出会っていくうちに行きたい方向が決まる…それでいい…」
「…そうですね」
「私はね、アナタが羨ましいと思ってます」
「えっ?どうしてですか?」
「特に女性でプロポーションが綺麗な人は、天性のものですよね。人に無いものを持っている。身体目当てとか愛人て意味ではないですよ。自信になるものをお持ちだ」
「そんなふうに考えたこと無いですね。男性の殆どが身体目当てのように声かけて来ます」
「ハハッ、それは男の本能です。だけど、水谷さんのように綺麗な人でも不倫で苦しんだ、私達と変わらないんだ、とユーザーに思わせたら勝ちです」
「それ、ホントですか?」
「私だって、見た目が良かったらどんなにいいかと思いますよ。背の高いヤツにくるぶしのトコ十センチ切ってオレにくれって言ったことあります」
美紗は爆笑した。
「くるぶしですか?」
「背がもう少し欲しかったなぁ…」
「佐田社長みたいに…?」
「そう、そうか!あの身長が気に入らなかったのか!アイツのくるぶし切ってやろうかな」
「フフフッ…それ良いかも」
美紗の微笑む顔は、クールっぽさを消した。
「やっぱり笑った顔が素敵ですよ」
「それ、あんまり言われた事無いです」
「それは美人の悩みでクールと言われません?」
「そうなんです!」
「でも、笑った顔はいいですね。美人にしては珍しく安心できる笑顔です」
「そんなこと初めて言われました」
「もっと自信を持ちなさい。アナタはどんなに金を積んでも得られないものがある。それを活かしたら、もっと人生が楽しくなる」
美紗は、初めて聞く平成の言葉に心を打たれた。
「不思議な方ですね、モテるんじゃないですか?ホントは何人も泣かしてきたとか?」
「残念ながら、泣かすほどのモテ期も人気も無いです。一度でイイからモテて見たかったなぁ…。私と水谷さんの心を入れ替えませんか?」
「ええっ!!何する気ですか?」
「モテる女性の気分を味わってみたい」
真剣な顔の平成に、美紗は笑いが漏れた。
「発想が凄くてついていけません!」
「生まれ変わったら美人でナイスバディーになりたいですね」
美紗は笑いながら聞いた。
「それで?」
「世の中の男を手玉に取るんです。五股ぐらいかけて、三食のメシを男の金で食う!」
「アハハハッ!それ悪女じゃないですか?」
「それで金のなくなった男から切って、新しい金持ちを補充する!どうですかね?」
美紗は更に笑った。
何年ぶりだろう…心から笑ったのは…
「それ最低ですよぉ!アハハハッ…」
「じゃあタッグ組みませんか?美人にナイスバディーが二人で組んだら無敵ですよぉ」
「フフフッ…でも、面白そう…考えておきます」
美紗は平成の頭の良さに惹かれていた。
下心が見えないし、仮にあったとしても不愉快に感じなかった。
「さて、そろそろ帰りますか。電車もあるうちに…ね」
「はい、今日はありがとうございました」
「成功を祈ってますよ」
「また、連絡してもいいですか?」
「いつでもどうぞ」
二週間後。
美紗から連絡が来た。
メーカーとの打ち合わせが終わり、新幹線で新潟県の燕三条に向かっていた時。
「もしもし、水谷です」
「あ~どうも、その後どうですか?」
「目黒さんのアイディアを参考にサイトを作り直したら、アクセスが五倍に増えて問い合わせも増えました」
「そりゃ何よりで」
「それで、また相談に乗って頂きたいことがあって…お時間ありますか?」
「今は新潟に向かってるところなんです」
「あっ、そうなんですか?」
「燕三条に用事があって、明日には戻ります」
「あの…私も仕事で新潟市に居るんです」
「えっ?そりゃ偶然ですね」
「商談で契約取り付けたばかりです」
「それはおめでとうございます」
「私も泊まって明日帰るんですけど、良かったら晩御飯どうですか?」
仕事終わりに平成は、再び新幹線で新潟市に向かった。
駅前のホテルにチェックインしてから、予約した店に向かった。
有名酒造メーカー直営の居酒屋だが、料理が豊富にある。
どれも酒の肴としては一級品だ。オマケに安いから、食も進む。
美紗はすでに待っていた。
黒のスーツにロングヘアを束ねている。
パーティーの時とは別人のようだ。
「こんばんは」
笑顔で会釈した。
「しかし偶然ですよね」
「ハイ、まさか目黒さんが新潟県に来られてるなんて…」
「開発品の金属パーツは、燕三条の業者に製造してもらってて、改良品の試作を見てきたんですよ」
「なるほど、東京で作ってるのかと思いました」
「それもありなんですけどね、燕三条には秀逸な職人さんが多くいますから品質が高いんです」
日本酒を頼んで、何品かの肴をつまむ。
「美味しい!」
「新潟は初めて?」
「ハイ、来たことなくて…目黒さんは?」
「昔はここに住んでいたんです」
「えっ!そうなんですか?」
「ええっ…それよりサイト直して良かったですね」
「ハイ!」
美紗はタブレットを出して、サイトのホームページを見せた。
タイトルに「不倫は虚構の世界」とある。
背景には、ビルの廃墟のイラストが描かれていた。
確かにこれを見たら心に響くだろう。
「こりゃスゴイな…不安感を煽るな」
「そこの問い合わせをタップしてください」
画面が一気に変わり、天使が上から泥にハマった人間に手を差し伸べているイラストが出てきた。そこには「勇気を出して」と書かれている。説明文はシンプルに書いてある。
【不倫は虚構の世界。だから現実ではないのです。抜け出して現実の世界に戻りましょう。その為の手助けに全力を出します】
「どうでしょうか?」
「うん、シンプルに訴える文言ですね。特に手助けをサポートと書いてないのが良い」
「やっぱり…悩んだんですよ。なんかサポートだと足りなくて…」
「そうですね、サポートだと軽い…それに本人主体のイメージがある。それが出来ないから導いて欲しいんですよね。手助けはその印象が強くていい!」
美紗は万遍の笑みで喜んだ。
「今後はどうするんですか?片手間では無理でしょう?」
「会社は再来月に退職します。仰る通り片手間では出来ません。そこで、ご相談なんですけど」
「なんですか?」
「オフィスを借りようかと思ってるんですが、どこも高くて…プライバシーポリシーもあるので、どうしたらいいかな、と…」
「ふむ…確かにプライバシーに関わることだから古いオフィスだと見劣りするか…」
「そうなんです。ユーザーには安心感が必要なので…」
「相談は全部顔合わせで?」
「いえ、メールも活用します。訪問する場合は、良いのですが来られる時が…もし、ご紹介してくれる方がいれば…と思ってまして…」
「ならばレンタルオフィスは?」
「レンタル?あっ、そうか!その手がありましたね」
「私も会社立ち上げた頃は世話になりました」
「そうなんですね」
「手狭になって結局、賃貸に切り替えましたけどね。でも、その間に資金の余裕が出来たので良かったですよ」
美紗は、安堵の顔を見せた。
「目黒さんてホントにスゴイですね」
「そうですか?」
「だって、相談すると必ずヒントか答えを返してくれますから」
ジッと見つめられながら言われると、照れるものがある。
「たまたまですよ」
それから二時間ほど話して、帰ることにした。
「では、ここで」
平成は、会計を済ませて美紗と別れた。
美紗も「ご馳走様です」と笑顔で見送った。
コンビニでタバコ、缶コーヒーを買って部屋に戻った。
少しするとノックする音が聞こえた。
誰も来る予定は無い。
(誰だ?)
覗き穴から見ると美紗がそこに居た。
ドアを開ける。
「どうしましたか?てか、何で部屋分かったんですか?」
美紗は頭を下げて「ゴメンナサイ」と言った。
他の客が来たので、慌てて中に入れた。
「ホントにゴメンナサイ…後をつけて来ちゃいました…怒ってますか?
「いや…美人につけられるのは初めてですよ。驚きです…」
美紗が突然抱きついてきた。
リンスの香りだろうか…
女性の香りが鼻に広がる。
「惹かれてしまいました…」
「いや、こんなオジサンは良くないでしょ?」
「関係ありません…私がキライですか?」
「むしろ光栄です、でも…」
平成は美紗を離した。
「亡くなられた奥様が?」
「正直、自分でも分からないんです。確かに妻は心にいます。でも目の前にはいない。次の相手を探す気も起きない。再婚も考えられない…そんな宙ぶらりんなんですよね」
「私は役不足ですか?」
「いや、水谷さんがどうとかじゃないんです。男性なら、アナタに抱きつかれたら最高だと思います。けど、私はその先が考えられない…」
「その先?」
「付き合うとか結婚とか…だから、その場だけでは抱けないんですよ。それに、アナタにはまだまだ先がある。自分にも未来のイイ人にも、いくらでも選択肢がある。私は、この先どう生きて終わりをどう迎えるか?を考えなきゃならない…」
「そんな事…まだまだじゃないですか!」
「人間五十歳も過ぎると、老い先のこと考えるものです。そこにアナタを付き合わせるわけにはいきません」
平成は、ホットコーヒーを二つ淹れた。
今度はコーヒーの香りが部屋に漂う。
美紗はショックを受けながらも、平成の心を覗けて嬉しい部分もあった。
「不思議ですね」
「何が?」
「女が迫って断られるなんて、傷つくんですよ…でも、それより目黒さんの気持ちが知れて嬉しくも感じてます」
「そうですよね、女性に恥をかかせるのも良くないことか…」
少しの静寂が流れた。
平成は立ち上がって美紗の腕を掴んだ。
顔が目の前に迫る。
「断ってもいいです。一度だけ。アナタからのお礼として…それでもいいなら目を閉じてください。断るならそのままで…」
美紗はジッと見つめた。
平成はフッと笑って離れた。
そのまま背を向けた時に、美紗が抱きついてきた。
「コレでおあいこです私が断られて、目黒さんが断られて…」
平成は大笑いした。
「ハハハハッ!これは一本取られました!参りました」
美紗も微笑んだ。
「やっぱり女性には敵わないなぁ…まさかの逆転です、でもその発想はこれから役に立ちますよ」
振り向きざまにキスをした。
美紗はそこで目を瞑って応えた。
コンパニオンをするだけあって、美紗の身体は素晴らしかった。
平成の上に乗り、髪をかき上げた仕草は正に神が作った美と言えた。
これに勝てる男はいない。
正常位になると、美紗は大人とも子供とも言えない顔つきで微笑んだ。
広がるロングヘアーが妖艶さを醸し出す。
「あっ!あぁっ!目黒さん!す!スゴイ!」
美紗は腕を平成の頭に巻き付け、濃厚なキスを求めた。
張りのある胸が、平成の身体に密着する。
二人とも絶頂に達した。
そのままベッドで寄り添うと、美紗は一人で笑った。
「ん?」
「目黒さんてエッチも上手なんですね」
「そうかな、自覚ないけど」
「久しぶりにめちゃくちゃ感じちゃいました」
「お世辞でも嬉しいですね」
「シャワー浴びません?」
平成はいつもダブルの部屋を予約してるが、タオルや部屋着も二人分用意されてるのが助かった。
身体を拭くと美紗は服を着始めた。
平成は察して背を向けた。
「じゃあ部屋に戻ります」
「送りましょうか?」
「いえ、大丈夫です…実は私もここのホテルなんです」
「あら…それも?」
「ハイ、偶然です」
「後つけるわけだ」
「それはホントです、まさかホテルまで同じとは思いませんでした」
「じゃあなんで後をつけて…なんて?」
「その方が喜んでくれるかな…って」
平成はまた笑った。
「また一本取られた!」
「フフッ」
「じゃあ事業の成功祈ってますよ」
「また相談に乗ってくれますか?」
「もちろん!何時でもどうぞ」
翌日。
チェックアウトの手続きをしてると、美紗が同僚らしき女性と玄関を出るのが見えた。
平成を見て小さく手を振った。
美紗は悟っていた。
どんなに想いをぶつけても、平成は振り向いてはくれない事を。
どこか透けた心が見え隠れしていた。
それでも良かった。
人の出会いが自分を変える。その言葉が胸にあった。これでいい、そう思えた。
軽く頭を下げて見送った。
旅先での出来事に、一つの思い出が出来た事を噛み締めて駅に向かった。
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