今日もお嬢様はままならない

minmi

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第2章

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 あれから2年。
 私は名ばかりの婚約者を演じながら王子を調きょ……鼓舞し何とか一般人ぐらいまでには補正出来たとは思う。
 ………いや、思っていた。

 「では今日は授業が終わり次第お城でーー」

 「アーキルさまぁ~」

 「サマンサっ」

 はぁ。
 
 「ずっとお会いできなくて私寂しかったですぅ~」

 頭の悪さが窺える話し方である。

 「私もだよ。ずっとサマンサに会いたいと思っていた」

 ずっとって……お前ら昨日も会ってたよな?
 類は友を呼ぶとはよく言うもので、馬鹿には馬鹿が寄ってくるらしい。
 そう、ここ数ヶ月。
 突如として学園に入学してきたこのアホ(赤毛頭の非常識女)は、王子と毎日うふふあははと楽しくお過ごしになっているようである。
 はっきり言って王子のことはどうでもいいので、彼女と仲良くなろうが恋仲になろうが本当に、心の底からどうでもいいのだがその影響で昔のバカに戻りつつあることが問題なのだ。
 頭が悪いので仲良く底辺クラスで、授業も聞かずお喋りし、おかげでついていけなくなり成績はガタ落ち。
 なのにそんなことお構いなしに毎日何が楽しいのかイチャイチャと……
 私だって彼とそんなことしたいのに!!

 「今日は~、放課後一緒に街までお買い物に行きませんかぁ?」

 「いいとも!サマンサが欲しいものを何でも買っーー」

 「それは結構ですが殿下は本日ご予定がありますのでそれはまた後日に。付け加えさせていただければそのお買い物の費用は殿下ご自身からになりますのでお気をつけ下さい」

 まさか国費から出ると思うなよと睨みつければ黙り込む王子に、これまた空気を読まないアホがアホなお願いをしていた。

 「それなら何も問題ありませんよね?だってアーキル様は王子様ですもの。以前見ていた首飾りが私欲しいんです」

 アホはアホから成長しないからアホらしい。
 王子だから?だから何だと言うのだ。
 王子だからこそ国のため、民のため働かなければいけないのだ。
 民が納めるお金で生活出来ているのだから。
 それを王子だから?好きに使ってもいいと?
 
 「分かっていただけたなら結構です。では殿下、下さい」

 「う、うむ」

 これ以上バカの相手はしていられないと教室に向かえば、笑顔でクラスメイトに挨拶し席に腰を下ろす。
 朝からどっと疲れた。

 「おはよう、アメリア嬢」

 「おはようございます、サハル王太子殿下」

 爽やかな笑顔と共に隣の席から挨拶され笑顔を返す。
 彼は隣国であるアシリア王国の第2王子で、勉強のためこの国に留学してきているのだ。

 「お疲れだね。またバカが元気にバカやってたの?それともアホの方かな?」

 「そうですね。今日も朝から元気でした」

 お疲れ様と頭を撫でられ、この人本当にアイツと同じ王子かな?って思ってしまった。
 この王子、何故こうもアメリアの気持ちが分かるかと言えば、以前庭園で誰もいないと思ってぶちまけていたあのバカへの鬱憤を彼に聞かれていたからである。
 お昼寝中だったらしい彼がのそりと起き上がるのを見て頭が真っ白になり、聞かれていたと知り顔を青くし、令嬢にあるまじき行動だと赤くなり、はっきり言って心臓が止まった。
 だがそんなアメリアを見て彼は何を思ったのか大笑いした後、優しく話しを聞いてくれ、今では友人として仲良くしてくれている。
 彼曰く、「気が合いそうだったから」と言ってはいたが、アメリアとしてもこの苦労を分かってくれる相手がいることはとても嬉しかった。
 言うならば優しい隣のお兄さん的存在。

 「今日は授業も午前中までだからね。早く帰ってゆっくり休むといいよ」

 「そうですね。今日ぐらいゆっくりしたいと思います」

 彼の淹れてくれたお茶を飲んで、仕事する彼の後ろ姿を眺める。いい。
 気疲れで最近食欲が落ち痩せてはしまったが、おかげで少しはボンキュッボンに近づけているかもしれない。
 と本人は思っているのだが、元々白く細かった体が更に細くなり周りはかなり心配していた。
 疲れ憂いのある表情は儚げで、悪い虫がついてしまわないかと日々セバスが心配しているのにも本人だけが気がついていないのだった。

 「ねぇ、やっぱり俺のとここない?」

 サハル殿下は度々こうして隣国に来ないかとアメリアを誘ってくる。
 もちろん色恋話しではなく、友人として、もしくはアメリアという面白い存在を近くに置いておきたいからだろう。……とアメリアは思っている。

 「セバスさんもさ、一緒に連れてくればいいしさ。アメリア嬢がいてくれればうちの国ももっと発展すると思うんだよね」

 「とても嬉しいお誘いですが、お断りさせていただきますわ。あと少しの辛抱ですから。ただ……もしダメだと思ったその時は手をお借りるかもしれません」

 この2年間を無駄には出来ない。
 あと少しなのだ。
 それでももしかしたらという時のためにお願いすればサハル殿下は笑って頷いてくれるのだった。
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