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168.編集長誘拐事件(後編)

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 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
 江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
 渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当の事務官。
 草薙あきら・・・警視庁からのEITO出向。特別事務官。
 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。
 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
 中津警部・・・警視庁テロ対策室警部。
 中津健二・・・中津興信所所長。
 中津(西園寺)公子・・・中津興信所所員の1人だが、中津健二と結婚している。
 中津敬一警部・・・中津健二の兄。捜査一課、捜査二課、公安課、EITOとの協同捜査等を経て、副総監付きの特命刑事となる。警視庁テロ対策室所属。村越警視正の部下。
 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
 那智めぐみ・・・みゆき出版社編集員。
 みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
 みゆき出版社副編集長西村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の副編集長。
 椎橋・・・目黒署警部補。実は通称シーモンス・リーという那珂国人だった。
 田中・・・リーの相棒。
 本郷隼人二尉・・・海自からEITOに出向。普段はEITO秘密基地に勤務するエンジニア。
 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITO総合エンジニア。コンピュータシステムを含む、システムエンジニア。
 須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
 芦屋三美・・・芦屋財閥の総帥。EITO大阪支部は、芦屋財閥の全額出資。
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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 午後2時。EITO本部。会議室。
「草薙。編集長、DDバッジ持っているんだったな。」理事官は草薙に尋ねたが、渡が、「奥多摩エリアということしか分かりません。何かのタイミングで編集長がDDバッジを押してくれると探せるのですが・・・。」と言った。
「例えば、ロープで拘束されていると、押しにくい、か。」と、理事官は苦々しく言った。
「そろそろ、バージョンアップしないといけませんね。」と本郷が大蔵に言った。
「それって、嫌味?お願い?」と大蔵は本郷に言った。「勿論、『お願い』です。ですよね、一佐。」
「お願い。」本郷の言葉を受けて、なぎさは、なまめかしい色気で言った。
「連れの女性、那智編集員は持っていないんですか?DDバッジ。」と、枝山事務官は言った。
「持っていない、と言うより渡していない、ですね。」と渡が言い、「アンバサダーとの関係者に配るようにはしていますが、彼女はまだ『関係者』ではない。アンバサダーも会ったことのない相手ですから。」と草薙は言った。
「恐らく監禁場所でしょうが、山村編集長に土地勘がある所とは考えにくい。でも、出版社に奥多摩エリアに縁があるかどうかは確認してみましょう。」と言って、夏目は出て行った。
 マルチディスプレイに、久保田管理官が映った。
「出版社には、定番通りの『逆探知班』を配備した。もう嗅ぎつけたマスコミがいたので、箝口令を敷いた。まだダークレインボーやサンドシンドロームの名前は出していない。犯人を刺激して殺害されてはいけないから、事件解決後に速やかに記者会見することを条件に黙らせた。」
「おじさま。いえ、管理官。やはり48時間がタイムリミットですか。」と、あつこが尋ねた。
「うむ。誘拐する限り、何らかの要求をしてくるだろう。殊に、ダークレインボーなら、な。そこからしか対策を建てようがない。万一、大金を要求してきた場合、金額や取引時間によっては、間に合わないかも知れないが。」
「そっちは、引き受けたわ。」と、芦屋三美が入って来て、言った。
「芦屋グループは、大株主だということを忘れないでね、理事官。」
「それは・・・初耳ですが、理事官。」と、なぎさが言った。
「ホワイトナイトだ。いずれ発表する積もりだったが、今がいい機会だ。諸君は、EITOが警察官OBや自衛官OBの出資でEITOが始まったことは承知していると思う。人事面では、警察や自衛隊から出向をして頂いている。だが、経済面では、なかなかやりくりが難しくなって来た。そこで、EITO大阪支部発足を機に芦屋財閥に株主になって頂いた。大阪支部は全額出資だ。そして、ここ数ヶ月、株の割合が変わってきた。早い話、『会社乗っ取り』が進められてきた。そこで、芦屋財閥に大株主になって貰った。」
「ホワイトナイト(白馬の騎士)は買収防衛策のひとつです。 敵対的買収を仕掛けられた企業が、新たな友好的な買収者(ホワイトナイト)を見つけて対抗し、買収もしくは合併してもらうことを指します。」と、枝山事務官が、皆に補足説明をした。
「裏で、那珂国マフィアが暗躍しているのかも知れないわね。とにかく、必要なら誘拐犯に渡す見せ金は、用意するわ。隊長代理。覚悟して。必ず誘拐犯から編集長達を救出して、『見せ金』も回収するのよ。」と、芦屋三美はきつい口調で言った。
「御意!!」と、」なぎさは腰を折って言った。
 なぎさは、きっと、伝子が三美に依頼したのだろうと思った。EITOが買収されかかったことも知っていたに違いない。伝子は「全責任」を背負って来たのだ。妊娠中もかなりの我慢をし、今は我が子を抱くことも許されない。自分は、そんな伝子の代理なのだ、と気を引き締めた。
「みんな、今の内に、休息、仮眠を取っておいて。片づけられる用事は済ませておいて。トレーニングしたい者は、そこそこにして。解散!」
 皆が出て行き、三美が駐車場に向かうのを見た金森は追いかけた。
 気づいて、馬場もやって来た。
「あの。おかわりばかりして・・・。」と涙ぐんで言う金森を抱きしめ、三美は言った。
「幾らでも、お代わりしていいのよ。日本の為になる仕事をしているのだから。あなたの能力は、伝子さんから聞いている。ああ、結婚おめでとう。まだ言って無かったわ。」
 フェラーリに乗った三美は、颯爽と去って行った。
 駐車場に来た青山と高木は、「いいスポンサーがついているんだな。」「仕事のやりがいがあるな。」と言った。
「馬場。稽古、付き合ってくれよ。」「練習台ですか?喜んで。」
 金森は男3人を見送った。
 あつこがやって来た。「金森。新人にブーメランの使い方、教えてやって!」
「はい!!喜んで!!」「居酒屋かよ。」笑いながら2人は出て行った。
 駐車場には誰もいなくなった・・・須藤と高坂が微笑んで見ていた。
 午後4時。
 進展があった。出版社に、『椎橋と田中を開放しろ。目黒区連続女子大生レイプ殺人事件の2人だ。山村と女との交換だ。金は要らん。場所は、奥多摩の山ふる。時間は午後7時だ。警察に連絡しても構わない。逆探知は多分無意味だ。山ふる付近の人払いをしておけ。無駄な死者を出したくなければな。サンドシンドローム。』という機械音のメッセージが届いたのだ。
 逆探知班の側にいた、久保田管理官は尋ねた。「どうだ?」「逆探知は出来ましたが、那珂国製の使い捨てスマホのようです。コンピュータの合成音なので、変声器を使った時のような分析は出来ません。」
 管理官は、スマホで、村越警視正に連絡した。「了解しました。」と、村越は返事をした。
 副編集長の西村が、ガイドブックを持って来た。「ここが、通称山ふる。正式名称を『東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村』と言います。奥多摩エリアと言われてたから、奥多摩湖かな?と漠然と考えていましたが。このルポを書いたのは、実は山村編集長なんです。」
「じゃ、犯人は、それを知ってて山村さんを誘拐したのかな?でも、何でレイプ犯人と交換なんだ?」久保田管理官が自問自答していると、村越警視正から折り返し連絡があった。
「既に現場付近に避難指示を出しました。しかし、キャンプを予約している人にはキャンセル出来ますが、既にキャンプしている人には、連絡が届かない可能性もあります。」
「了解しました。EITOも出動させましょう。」
 EITO本部。司令室。
 久保田管理官から連絡を受けた、なぎさは、「サンドシンドロームが、EITOと編集長の関係を知っているかどうかは、微妙ですね。交換を要求する誘拐犯なら、兵隊を連れてくるかどうかも、微妙です。」と理事官とマルチディスプレイの伝子に言った。
「なぎさ。直感を信じろ。そして、メンバーを信じろ。頑張れ、私の妹。」伝子の通信は切れた。一任されたのだ。
 なぎさは、あつこのガラケーに電話した。このガラケーステムは、スマホのように傍受されにくい大文字システムが組み込まれている。
「あつこ。既に連絡が行っていると思うけど、編集長誘拐犯人は、目黒区連続レイプ殺人事件の犯人の開放を交換条件に持ってきた。護送して、警察組で交換取引をして頂戴。私たちは、上空のオスプレイで待機している。万一徒党が現れたら、降下して闘う。付近にはキャンプ場がある。MAITOにも出動要請して、上空のオスプレイで待機して貰う。」
「分かった。地上は任せて。」と、警視庁にいる、あつこは返事をした。
「理事官。」「MAITOには緊急システムで要請したよ。よろしくな。」
 午後7時。奥多摩。山ふる。ビジターセンター前。
 少し離れた場所に駐車した護送車から、あつこと結城は、椎橋こと通称シーモンス・リーと田中を降ろした。
 ビジターセンターの中から、犯人と思しき男女が出てきた。編集長山村と編集員那智を連れて来ている。編集長達は、後ろ手にロープで拘束されている。
 男は言った。「まずは、椎橋と編集長の交換だ。同時に出発して、お互いの位置に移動だ。
 椎橋がビジターセンターに到着した時、山村編集長が護送車に到着した。
 すかさず、結城と久保田警部補が山村を護送車に隠した。
 次に、田中がビジターセンターに向かい、那智が護送車に向かった。すれ違いざま、那智はロープを解き、田中をナイフで刺した。
 あまりの光景に、皆は何が起こったか理解出来なかった。
 そして、ビジターセンターに辿り着いた椎橋は、さっき声をかけた男にナイフで刺された。
 更に、女の方は手榴弾を取り出し、自爆した。爆風と共に火がビジターセンターに移った。
 MAITOのオスプレイが飛来して、消火した。
 消火後、椎橋も那智も、誘拐犯の2人も死んでいた。
 EITOのオスプレイから降りて来た、なぎさに、あつこは言った。
「見ての通りよ。大失敗だわ。編集長は助かったけど、編集員も死なせてしまった。」
 慟哭する、あつこに、久保田警部補がスマホを差し出した。画面に中津警部が映っている。
「警視。連絡が遅れて申し訳ない。今、弟から連絡が入った。中津興信所の調査員の調査で、山村編集長に随行していた編集員那智めぐみは偽物だと判明した。既に、殺されている。」
「中津君。本当?」「ああ。噂から裏を取るのに苦労したよ。」
「でも、何故、那智を調べたの?」「誘拐するだけなら、編集長だけでいい筈だ。新人と別れたチャンスに誘拐しても良かった筈だ、と考えた人がいた。簡単なクイズでしょ、警視。」と、中津はあつこに応えた。
 あつことなぎさは悟った。裏を疑い、読んだのは、誰か。
「おねえさま。ありがとうございます。」「おねえさま。ありがとうございます。」
 2人は、虚空に向かって礼を言った。
 午後8時。池上病院。伝子の病室。
 伝子は、Linenで高遠からの報告を受けた。
 電話を切った後、「ケン。いるのね。」と、病室の陰に言った。
 ケンが出てきた。「サンドシンドロームは、やはり恐ろしい奴だな。」
「部下が失敗したら、皆殺しにされるの?」「みたいだな。知っての通り、ダークレインボーの他の『幹』は、そこまで徹底してはいない。恐ろしい敵だ。それと、俺のカンだが、今回は山村から警察を巻き込んだだけだ。EITOは正面切って出ていかなくて正解だった。じゃ、行くよ。」
 ケンは速やかに姿を消した。
 看護師が入って来て言った。「誰と話していたの?大文字さん。」「ああ。夫よ、学。寂しがり屋だから、お休み言わないと寝られないのよ。もう、消灯していいわよ。」
 看護師は消灯して出て行った。
 病室は、シンと静まった。
 ―完―

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