静かなる鼓動

傾く鏡

よく行くお店でのお話です。
　私はその店のトイレを一切使わなかったのですが、ある日どうしてもトイレに行きたくなってしまいその店のトイレを借りました。そして、手を洗おうとしたら目の前の鏡が下に傾いていたのです。背の高い私は見辛いな. . .と思い傾いた鏡を直そうとしました。ですが、何故か鏡は傾いたまま動かないのです。仕方なくしゃがみこみ鏡を見たのです。すると、ちょうど私の真後ろに人の足が見え、「すいません、どうぞ」と立ち上がり後ろを振り向くとそこには誰も居ませんでした。気味が悪くなり、トイレから出て店長にその事を話すと
「見えちゃったんだ、鏡を傾けいるのはその幽霊のせいなんだ。」と言うので私は「傾けないとどうなるんです？」と問うと店長は少し口ごもり
「常連さんだから話しておくけど、傾けておかないとその幽霊の顔が見えちまうだろ？その幽霊の顔を見ちゃった人が次々に病気になったり盗難にあったり不幸な目に遭っちゃったんだ。もちろん俺もその被害者さ。」と言うので興味本意で「店長さんはどんな被害に？」と聞いてしまった。店長はにっこりしながら「昔の話だから笑って話せるけど実は俺片足無いんだ。」
　今までカウンター越しに会話して気づかなかったのですごい驚いたし同時に恐怖が私を襲った。
　人の足を奪うほどの霊を私は見てしまったんだと。