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五章 国王降臨

29 与えられた仕事

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 向けた視線の先のグレゴリーは僕の視線に気づくと、

「なにかね、ノリン」

と尋ねてきた。

「どうして陛下がなさる業務を成人済みとはいえシャルス様が執り行っているのですか?それに護衛とは」

「あれに任せられないからだ。それに殿下もそれでよいと仰っている。国が回らなくなってはならんからな。本当のところシャルス様の婚約者候補のお相手は全てにおいて断られている。王家に入るくらいなら離国するという貴族もいるくらいだ」

 は……?なんだそれ?シャルスと結婚するくらいなら国を出る、だと?うちの可愛いシャルスに何を言ってくれてるんだよ。

 するとシャルスが長いため息をついてから、

「私に魅力がないのは確かだから。剣も持てないし覇気もない。マナもオドもか弱いし、華奢で男としては魅力がない」

と苦笑いをした。

「そんなことはないです!シャルス様は素直で可愛くて、頑張り屋さんのしっかり者です!」

「会ったのは前回が初めてだと思ってたが、よく見ているな。お付き侍従にも取り立てたいところだが、あれが執着しているようだし、なによりあれの剣を受け止めて無傷でいるならば、出来るだけ殿下のお側に侍り殿下を支えてくれ」

 グレゴリーが僕に頭を下げた。シャルスを思ってだろうが、シャルスの侍従のリンクがいないのと、よく見たら第一近衛隊のメンバーはシャルスの周りにいた奴らで、そもそも殆どが第二近衛隊だった。

 王宮で僕の知らないことがあるんだが、それを誰も教えたがらない。多分父様や母様も知らないんだろう。なんだか触れては駄目なような気がする、けど、気になる。

「ノリン、気楽に考えてくれていいんです。私の話し相手ですよ。魔の森のベリータルトではないのですが、ベリージャムクッキーが美味しいのですよ。お茶にしましょう、グレゴリー」

 グレゴリーが出て行って日替わりメイドが入ってくる扉の隙間から、レーンの姿が見えた。魔剣ロータスは悪さしていないみたいだ。

 シャルスとは本当に他愛もない話をしながら、シャルスの顔に影がなくなるように僕は魔の森のホーンラビットの話や、僕が使いっ走りをしていた話をしていた。特に魔の森の話は面白いのか、詳しく聞きたがっていたが、時間制限の休憩のためグレゴリーが入ってきて終わってしまった。

「ノリンは計算に聡いのですね。私は昔から数字が苦手でして、出来たら金曜日の政務の時は書類に目を通してもらえると助かります」

 金曜日かあ……アーネストも数字が苦手で、オーガスタ時代も一緒に書類を見ていたなあ。

「確かノリンと一緒に来る御用伺い見習いの一人が抜群の計算力でした。一度に財務省に行かせて改めて計算をさせましょう。確認をノリンと殿下ではどうですか?実はわしも計算は苦手な分野でして」

 グレゴリーは脳筋かよ。リュトには申し訳ないが、まあ役に立ってくれ。シャルスの侍従のリンクは頭良かったのに、どこへ……ああ、領地に帰ったのかもしれないな。

「分かりました。では、シャルス様、来週はベリータルトをお持ちしますね」

 僕は退出して、扉の前で待っていたレーンから魔剣ロータスを受けると、王宮内を歩き始める。

「あれ、アズールは?」

「リュトさんに泣きつかれて舞踏場に。先週の魔法調理具の実演です」

 ああ、リュトは補助具があっても火力調整とか出来ない微力マナだっけ。まだ、たまにいるんだよな、そんな奴も。ガルド神は平等を謳いながらも、マナによる力の不均衡には頓着していない。だから平民と貴族が生まれている。

 それを払拭しようとしているのが、ラメタル国だ。マナはほんの僅かでいい。なければオドからマナへ変換する装置を機動力として、充填式魔法具を使用することができる。オーガスタ時代にはまだ外へ小出しにしていたが、今はマギー商会でも扱うことが出来るんだから、時代に取り残されているレガリア連邦王国ではアリシア王国は最先端かもしれないな。その分、敵が多いのか、アーネストも大変だ。

「ノリン!」

 王族の居住スペースに入る前にシャルスに呼び止められる。廊下で息を切らしているシャルスの後ろから慌てて衛兵がやってきていた。

「呼び止めてごめんなさい。また、来週!」

 シャルスがおずおずと手を振るのを見て、僕は大きく手を振った。

「シャルス様、また、来週金曜日に!」

 可愛いなあ、もう。さてと、魔剣ロータスを渡して帰るとするか。アーネストの部屋は一番奥の部屋で、時間的に開くんじゃないのか?そもそも開閉の条件が分からないぞ。誰もいない廊下を歩きレーンは扉の前で待たせることにする。

「国王陛下のご命令により、魔剣ロータスをお持ちしました。入室を許可してください」

「ーー入れ」

 入れるの?

 僕が軽く手を触れた扉は魔法陣が輝き、扉内部でかんぬき式になっていたのか簡単に解除された。

「マスターのマナに反応しての解錠です。一定のマナで開く仕組みですね」

 レーンが小さな声で呟き、

「行ってらっしゃいまし」

と頭を下げる。僕は頷いて中に入ると酒の臭いがする室内に入って、アーネストを探した。

「俺は国王陛下呼ばわりか。息子は名前で呼んでおいて」

 扉が閉錠される音に惑わされてアーネストが背後にいるのに気づかなかった僕は、魔剣ロータスごと寝台に放り投げられる。

「ま、待って、待て!今日は準備してないからっ」

 アーネストはガウン一枚で酒瓶を煽ると、

「はあ?だから、なんだ。ーー脱げ、ノリン」

と命令する。僕に拒否権なんてない。僕は服のボタンに手をかけた。





 アズールとレーンが入室を許可された頃、僕は気を失っていたのだと思う。アーネストが勢いよく引き出し空洞になった穴に、酒瓶のコルクを押し込んだ。

「ケツの穴がゆるゆるだな。イキゲロにイキションベン、顔は涙と鼻水と涎塗れだ。ノリン、俺は誰だ?」

 僕はうつ伏せのまま枯れた声で

「ア、アーネスト、さ、ま」

と答えた。アーネストはニヤリと笑うとまだ濡れてでかい股間を晒したままレーンを手招きした。

「さま、か。それは仕方ねーか、それで許してやる、まあ、合格点だ。メイド、部屋を片付けろ。寝台はマットごと交換だ」

「はい」

 レーンがまずは床の酒瓶から片付け始める。アズールが僕を抱き上げる前に、アーネストが僕の身体を抱き寄せた。

「やっ……」

 イキすぎて力が入らない僕の耳に

「孕め、ノリン。そうして俺を解放しろ」

と囁いてくる。臍の上を撫でまわし、先程まで僕をおかしくした感覚を呼び起こす。

「尻の栓を帰るまで抜くな。バトラー、命令だーーいいな」

「かしこまりました」

 僕はアズールに温かい湯を浸したタオルで拭かれて鼻を啜る。お風呂に浸かりたいのに、どうやらこの部屋にはトイレしかないようで、アーネストもついでって感じで身体を自分で拭いている。

 僕の身支度が出来るとアズールに抱き上げられて、やっと退出をする僕の背後でアーネストが声を上げた。

「ノリン、お前が孕むまで俺はお前に子種を注ぐ。シャルスのお手つきになったとしても、お前は俺のものだ。忘れるな」

 
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