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【終】

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ぬぷぷと生々しい音を立てながら、恐ろしいほど容易くクリスの中にカミルのものが入り込んでいく。
どれほどに具合が良いのか、ミラークはまだ体感出来ていないがカミルの感じ入るような表情から察する事は容易い。
まだ誰の形も覚えていない中はさぞや狭く、燃えるように熱く、蕩けてしまいそうなほどに気持ちがいいのだろう。
カミルはゆるゆると腰を振りながらも、クリスの痴態を一瞬でも見逃すまいと食い入るように凝視していた。
「んんっ…ふ、…ッ、あ…っ、ぁっ」
「はあ…先生の中、すご…っ」
「ひぁ、あッ、…か、みる…ッぅ、ああッん」
熱い息を吐くと共にカミルがぐりっと腰を押しつければ、クリスの口から甘く高い嬌声が上がった。
イッたばかりの身体はもはや何一つ言うことを聞いてくれないらしい。
クリスはふうふうと小さく呼吸しながら、押し寄せる快感にひたすら耐えるしかないようだった。

「二人で盛り上がっちゃって。ねえ先生?カミルばかりに構っていないで、僕のもこっちのお口で咥えてください」
「あ、…っ」
まるで紅でも引くようにクリスの唇に屹立を擦り付ける。
恐らく間近でミラークの雄の匂いを思い切り嗅いでしまったからだろう、クリスは狼狽えたように小さく声を漏らした。
大の男の逸物を眼前で見せつけられる事などそうはない。
まして咥えろなどと、クリスからしてみれば信じられない要求に違いなかった。
だがミラークは気付いている。
彼の見開かれた瞳が期待と欲望に潤んでいる事も、半開きになった唇から無意識にたらりと涎が垂れている事も。

「ほら、先生」
「ッ、…っ、ふ…」
ミラークの呼び掛けが駄目押しだったかのように、クリスの唇が熱棒に吸い寄せられる。
そうして横から口付けるように、恐る恐るといった風に唇で挟んだ。
ちゅ、ちゅと愛らしい音を立てては吸い付き、震える舌で控えめにぺろりと舐める。
初めてしゃぶる男の味に動揺したのか一瞬唇を離してしまったようだが、ミラークのものを蕩けた瞳で上から下まで眺めると今度は亀頭に吸い付いた。

──ああ、彼はどうしてこうもミラークを悦ばせる選択ばかりしてしまうのか。

「先生、その温かそうなお口にお邪魔させては貰えないんですか?」
「ン…ッ、え…?ぁ、ッう、うん…っ」

後ろから突いてくるカミルの腰に気が気でないのか、子供のような返事をしてしまっている事にも気付いていないらしい。
少しばかり癖のある柔らかな髪に指を差し込んで後ろに撫でつければ、クリスは硬度を持ったその根本におずおずと手を添えた。
困った顔で何度か口を開けたり閉じたりしてから、様子を窺うようにくぷりと鬼頭部分を口に含む。
先端を優しくちゅうと吸い上げ、溢れた汁の味を確かめるように舌で舐めとるその動きはいずれも拙い。口淫というには子供騙しだ。
だがそんな技巧もクソもない生娘かのような接触にミラークは猛烈な興奮を覚えた。
射精するまでに朝日が昇ってしまいそうなそれも、『そんな口淫しかクリスにはできない』のだと思えば途端に刺激的なものになる。
少年にいやらしい事をする時も、きっと彼は生優しい愛撫しかしなかったのだろう。
ただ優しく緩く微睡むような心地よさを与えるばかりで、口でした事があったとしても痛みを与えぬよう含んで舐めてあげただけなのではないだろうか。
本当の意味で手篭めにした事もされた事もない。何ならそのような乱暴な感情を持ち合わせていないまである。
喉奥にまで滾りを飲み込んで絞り取られるよりよっぽど興奮する事実に、ミラークは息を荒くした。

「は…ッ気持ち良いですよ、先生ッ…!」
「う、んッ、…ふぅ、んっ、ん、ッ」

ミラークを奉仕する一方でカミルのものをぎゅっと締め付けてしまったのだろう。
カミルがぐう、と歯を食いしばる。
「…ッ先生…!締め付けすご…ッ…そんなにそれ、いいんです、か!」
恥ずかしい水音とたんたんたんと容赦なく腰を打ちつける音が混ざり合い、射精感が一気に込み上がる。
そのあまりの激しさに、クリスはとうとう四つん這いの格好を崩してぺしゃんと腹をシーツに付けた。

「ん、ぅ…っ、!ふ、う…ンン…ッ、ぁッあ、あ───ッ!」

クリスの二度目の絶頂に合わせカミルが「…っう、」と小さく呻いて欲望を爆ぜさせる。
それとほぼ同時、ミラークもだらしなく開いたクリスの口の中へどぷりと欲を吐いた。
「あ、ぁッ…あー…っ、は、あッ……ンンッ」
カミルがぬぽっと音を立てて自身を引き抜けば、うつ伏せで寝そべった状態のクリスの後孔から白いものが止めどなく溢れ出る。
それが伝って股を濡らしているのが気になったのか、クリスは緩慢な動きで手を下の方へ持っていくと、震える指で後ろの窄まりにくちゅりと触れた。
確かめるようにカミルの白濁に触れるその様のいやらしさといったらない。
町の立派なお医者様の仮面はどこへやら、クリスは自身をこんな有様にした元凶の親子を見上げながら、ゆらゆらと腰を揺らしている。
「っ、あ…あぅ、ッん、はっ…なん、で…っ、?とま、止まんな、ぃ…ッ」
「気持ちいいの、止まらないですか先生…?」
「ひぅっ、ぁ、カミ、ル…っ!ぁ、なんで、俺…ッおれ…、っ」
体内に注がれた精液が、快感の波となってクリスに襲いかかっているのだろう。
顔を真っ赤にしながら困惑した表情ではらはらと涙を流すクリスは大変唆るものがある。
カミルもミラークも達したところではあるが、肉棒はあっという間に硬さを取り戻していた。
「おれ…っ、!た、足りない……っ、気持ちぃの、…足りない ぃ…っ」
「先生は僕達にどうして欲しいですか?」
「俺たち、先生の望みはなんでも叶えてあげますよ」
「…っ、ぁ…、ッ」
鮮血の瞳で見下ろしながら、親子は優しくクリスを追い詰める。
弱った獲物の血を吸う事は簡単だ。
だが一時的な『食事』をしたいわけではない。
親子はクリスというご馳走を今後も手放すつもりがないのだ。
だからこそクリスが自ら喰われる事を望んでやまない。

「…、ぃっ れて…もっかい、挿れて…欲し…、っ」

クリスは甘える子供のように指を唇に挟みながら、物欲しそうに懇願した。


****

「ひっ、ぁ…ッ、あっ、あ、んッあん…ッ」
上体を起こされ膝立ちの体勢にさせられたと思えば、後ろからミラークにゆさゆさと揺さぶられた。
先ほどから頭も身体も熱く、まともに考える事ができない。
特にカミルに精を吐き出されてから、クリスは自分で自分を見失いつつあった。
どれもこれもが気持ちよく、腰を支えるミラークの手に汗の滲んだ掌を重ねると、殆ど無意識に指の爪で彼の手の甲をかりかりと引っ掻く。
クリスが啜り泣いても、泣き言を漏らしても、ミラークは容赦なく突き上げてきた。
口から出る形ばかりの否定の言葉とは裏腹にクリスの中がどれほど彼を歓迎しているか、奥へ奥へ招き入れる中の動きですべて伝わってしまっているのだろう。
クリスの善い所をミラークの熱棒がぐりりと虐めてくる。
その度にクリスは背をしならせて善がり狂った。
犬のようにかぱりと口を開けて、だらしなく舌を突き出してしまいそうになる。

「んぁ、ああッ、はッぁ、あっ、ぁ、あ…ッ!」
「どうですか先生、気持ちいいですか?」
「んッ…!ぅ、ん…ン…!」
後ろにいるミラークの首に後頭部を擦り寄せ、クリスはこくこくと必死で頷く。
普段のクリスであればこんな雌のように媚びる仕草など恥ずかしくて死んでもできないが、今はそれを平然と、むしろ率先してやりたくなってしまう。
そうしていればふいに胸元に甘い痺れが走り、クリスは「あ、ぅン…ッ!」と情けなく鳴きながら天を仰ぐようにして頭を上に逸らした。
背を逸らした事で突き出されたクリスの胸にカミルが顔を埋めていたのだ。
芯を持った胸の先端を唇で挟み、引っ張るように吸い上げてくる。

「…ッぃ、ンああ──ッ!」
「ぢゅ、ちゅッ…ん…」
「あっぁ、あ、カ、ミル…ぅッ、!ぁンッ、や、吸っちゃ…っ、んんッ!」
「はッ…すご、甘くて酔いそう…」
クリスの痴態に中てられたのか、カミルはぜいぜいと息を荒くさせ夢中で胸をしゃぶっている。
そんな二人を見ていたミラークは、ふと良からぬ感情が湧き上がったのか牙を剥き出しにして性悪と言われそうな笑顔を作った。無論、ミラークに背を向けているクリスにはそれを察知する事などできないのだが。
「ね、先生。僕のこともミラーク、って呼んで下さい。カミルばっかり狡いです」
「ぁ…ッ、な…に、言 って、…ひ、んぅッ」
空いている方のクリスの胸の先をピンッと指で弾かれる。
嫌というほど虐められ敏感になったそこは痛みよりも大きな快感を優先して拾ってしまうらしい。クリスは意図せずミラークのものを締め付けた。

「…っは、ほら先生。ミラーク、って。ちゃんと言ってくれないとコレ、もう抜いちゃいますよ?」
「ぃ、あッ、あ、ンッ、あう…っ、ゃ、だ…あ、あ」

肉棒をギリギリまで引き抜かれ、入り口を小刻みに刺激される。
それまでずっぽりと収まっていた熱が急になくなり中が寂しい。
入り口を擦るだけの動きも物足りなくて焦れてしまうほどだ。
クリスが思わず恨めしげにミラークの方へ振り返れば、彼は悪びれもなく「ああ、可愛いひと」と耳元で囁いた。

「じゃあ、言えますよね先生?ミラークに突かれるの好きですって、気持ちいいですって」
「ぁ、なッ、…ゃ、そん な」
「ほら、先生?」
早くしないと本当に抜いてしまいますよ、と脅すように腰を引かれクリスは心の底から嫌だと思ってしまった。
自分をこんな状態にしておいてさっさと出ていこうとするなんて酷い。
まだ身体の奥が疼いて仕方がないのに。
何でも望みを叶えてくれると言ったのに。
ミラークが去っていくのを嫌がるかのように、クリスは中で必死に彼を繋ぎ止めた。
「…ッ、う…、ゃ…っあ、ぁッ、み、みらーく…!っ、ぁ…ッ」
「はい何ですか?」
「う…っあ、ぁッ、あっや、ぁッ、あ、抜いちゃ…っだめ、ぁッ」
「じゃあどうしたらいいんです?」
「ぁッ、あっ…ッ、す、好き…ッ、ミラークに、突かれる、の!す、きぃ…ッ」
「ええ、それから?」
「あっ、ぁうッ、き、きも…ち、ぃ…!っみらー、く…!きもち…ぃッ、ぅ…あ、んッ!」
「よくできました。じゃあご褒美にキスしてあげましょうね」
「ん、うん…っぁふ、ん、ンン……ッちゅ、ん…ッ」

ああ、駄目だ。気持ちい。
まるで言霊のようにクリスの身体に快感が巡っていく。
にゅるにゅると口内を犯す舌にも、それまでの受け身が嘘かのように積極的に絡ませていった。
胸を弄っていた筈のカミルの舌もいつの間にか腹、腰と下りていき、しとどに濡れたクリスの股間に辿り着く。
カミルはもはや誰のものかも分からぬ汁で塗れた内腿にじゅっと吸い付くと、クリスと同じように膝立ちになり腹と腹を密着させた。

「ッぷは、はあっ、あ、ぁ、あーあっぁ、あッか、かみるッおなか、擦れ…ッ」
「先生、俺も気持ちよくさせてください」

カミルがそう言うや否や、言葉を交わしてもいないのにミラークは全て理解したようにクリスの足を閉じさせる。
繋がったまま足を動かされた事にクリスが困惑していれば、ぴたりとくっついた太腿の間にカミルの熱い塊が捩じ込まれた。
「えっ…あ……ッ」
理解した途端、クリスの胸がどくんと音を立てる。
クリスの勃ち上がったもののすぐ下で、カミルの熱い塊がにゅちにゅちと音を立てて動いている。
「本当は挿れたいんですけど、この人が入ってるんで」
「いつかはここで、僕たちを一緒に受け止めてくださいね先生」
さり気なく恐ろしい事を言われた気がしたが、カミルがクリスの太腿を左右からグッと抑えつけたことで考える余裕は一切無くなった。
「あ、ぁッ、あっ、ぁ、あッん、あッ、ぁ、あ」
「うあ゛ー…気持ちぃ…ッ」
「おーいカミルぅ、おじさんみたいな声になってる、ぞ、!」
「あ、あっ、ぁ、みらー、ぁッく、あっ!あ、あっ…ゃ、ぁ…あッ、あんっ」
「ジジイに言われたくねぇよ…あー…ッ、出そ」
「あうッ、あっ…ゃ、か、みる…ッ、あつ、あつい…ッひ、ああッ─!」

たんたんたんと打ち付けてくる腰の動きに合わせてクリスも夢中で尻を押し付けた。
太腿を出入りするカミルのために必死で足を閉じることも忘れずに。
ぶちゅ、ばちゅ、にゅち、にゅちゅっと下品な音がそれぞれ前後から聞こえてくる。
耳を塞ぎたくなるようなそれも今のクリスには心地よく思えて仕方ない。

「あっぁッあ、うんッかみ、ゅ…ッみら…ぁく…ぅ、ッんっ」
「何ですか先生」
「何でしょう先生」
呂律の回らないクリスの言葉を、それでも親子が聞き取ってくれた事に嬉しさが込み上げた。
まるで愛おしいと訴えているかのような、二人の鮮血の瞳がじっとクリスを見つめている。
クリスもまた蕩けきった理性の奥に眠る本能が疼いた。
鋭い牙で喰らって、夜が明けるまでこの身を暴いて、誰の目にも触れぬよう攫って欲しいと期待している。

ああ、少年たちがクリスに懐き、信用し、縋ったのもこんな気持ちだったんだろうか。

「俺のこと……、二人のものにして…?」


クリスがそう言うと同時、親子は揃って極上の首元に唇を寄せクリスは三度目の吐精をした。




****

「帰ります」
「先生」
「待ってください俺たち陽の光には弱いんです」
「カミルくん、それならベッドで寝てなさい。ね?」
「あ、その言い方可愛いです先生……じゃなくて」
「ミラークさん、しばらく往診には来ませんので」
「先生、お慈悲を」

あの後カミルとミラークは吸血鬼ではなく狼男なのではと言わんばかりの獰猛さで夜通しクリスを喰べ尽くした。
朝日が昇りすっかり昼になった頃、漸くクリスはよろよろと身体を起こした。
そうして親子は吸血鬼だの食事だのについて洗いざらいクリスに聞かせたのである。
本来吸血鬼は人間の血を吸い尽くし一度殺す事で、相手を自身の眷属にさせる事ができる。
だが吸血鬼として出来の悪い親子にはそもそも吸い尽くすほど血を体内に得ることができなかった。その前に血液酔いしてしまうのだ。
カミルとミラークにとってクリスは希少な『ご馳走』と思える人間であり、どうにかこうにか彼を自分たちの手元に置けないかと画策した結果が『身体から堕としてしまえ』だった。
幸いにもクリスはカミルの事を気に入っていたようだし、付け入る隙は十分にあった。

ところが現在、町に帰ろうとするクリスを玄関口で必死に引き留めているところである。

「先生、騙すような形になってすみません」
「でも本当に俺たち先生が欲しくて」
「それはご飯として?」
「う…。それも…そうですけど、その…」
「正直ここまで先生の具合が良いとは思わず、今後とも僕たちをいろんな意味で癒やして頂ければと」
「帰ります」
「嘘です冗談です世迷ごとです」
床に膝を付きクリスの背中に必死に呼びかける親子は、その容貌に似合わず何とも情けなくて哀れであろう。
確かにクリスは騙され、散々泣かされ、とんでもない目に遭ってしまった。
だがそれ以上にどうしてクリスが素っ気ない態度を取るのか、カミルとミラークはまだわかっていない。
クリスはむすりとした顔で親子に言い放つ。

「俺のこと好きなわけじゃないんだ」
「せ、先生…!?」
「ちょっと待っ…!」

クリスは二人の静止を待たずにバタンと扉を閉めて出て行ってしまった。
昨晩あれほど貪り尽くし体内に熱を注ぎ込んだというのに、こんなにもあっさりと逃げられてしまうとは親子としては想定外だった。
そして、投げかけられた言葉にも。

思えばあれだけの事をしておいて、カミルもミラークも彼に明確な好意を伝えていない。
ミラークに至ってはクリスに「好き」と言わせたくせに、だ。
今すぐ追いかければ捕まえられるが、森の中とはいえフードでも被らねば二人は日差しにやられてしまう。
カミルとミラークは慌てて着替えを済ますべく館の中へどたばたと引き返した。

クリスは知らない。親子がここまで必死に何かを得ようとするなど、今まで一度もなかったという事を。

親子は知らない。クリスが不貞腐れたように、眉根を寄せて一人赤くなっている事を。
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