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五章

19、誕生日の贈り物

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 ああ、絲さんはほんまに可愛い。
 俺は、腕の中で達する彼女を抱きしめた。

 俺がこれまで何度も彼女を抱いたから。見た目は清楚なお嬢さんやし、体も華奢で豊満な所なんかどこにもないのに。
 胸を弄っただけで達するほどに、絲さんは男を……俺を知っている。

 俺が育てて俺が躾けた絲さんの体。
 どこもかしこも愛おしくて。自分の知らん部分があるんが、逆に許せへんほどに俺の独占欲は強い。

 俺は隠し持っておいた糸に通してある珠を、懐から出した。
 遊郭によう遊びに行っとう、組員の森内がくれたもんや。
 
 うちの組は、シマの中の店を守る名目の用心棒代の他に、健康的に牛乳の販売もしている。阿片や賭博はせぇへん代わりに、森内のように性具を商いにする奴もおる。

 江戸の頃から使われとう、鼈甲や革で作られた姫泣き輪。(これは男性に被せ、行為を長引かせて、女性を絶頂に導くのだとか)
 他には似た用法の鎧形よろいがたとかか。

 俺はそういうのは使わんが。森内に勧められた中で、一つ試してみたいのがあった。
 それは紐に珠を連ねたもんやった。もし輪になっとったら、首飾りのようにも見えるやろ。

――これは何や?
――ああ。菊座に使うんですよ。衆道でも用いますよね。お嬢さんにどうですか? ひぃひぃ言わせられますよ。
――お前、ほんまに品ないな。

 菊座。衆道。
 あいつ、俺よりも若いのに古くさい言葉を使うよな。

 けど、前々から俺は、絲さんのまだ知らんところが欲しかった。
 もちろん無理はさせられへん。せやから、徐々に馴らすために後ろを触っとったんやけど。

 絲さんは強固に「お尻に触らないでください」と拒否する。
 まぁ、分からんでもないかな。俺も、尻は触られたない。
 だが、俺は諦めへん男や。
 結局、その珠を森内から買い取った。

 悪いな、絲さん。酒には肴とかつまみとかが必要やろ?
 絲さんが俺にくれた贈り物は嬉しいし、あなたの気持ちはほんまに有り難いと思う。
 ただ、俺は欲張りやから。許したってな。

 胸だけで達した絲さんだったが、次第に落ち着いてきたようだ。
 俺は首にリボンを巻いただけの、裸身の彼女を膝立ちにさせた。

 向かい合わせの姿勢で、絲さんの胸にくちづけの痕を残していく。右手で彼女の背を支え、左手は秘された部分へと伸ばす。

「ん……っ、んんっ」
「ああ、ほら。恥ずかしい音が聞こえるなぁ。絲さんにも聞こえるやろ」
「お願い、仰らないで」

 絲さんに良く聞こえるように、淫らな水音を大きく立ててやる。
 どこをどう触れれば絲さんが感じ、濡れるのかは俺は知りつくしとう。

 ぴちゃ……という絲さんの音と、外から聞こえる雨の音。俺に翻弄され、感じている絲さんには区別がつかないのかもしれない。

 頬を朱に染め、恥ずかしそうに俯いている。

 絲さんの呼吸が短くなる。そろそろ指で触れているだけで、達しそうや。
 俺は、すっと絲さんの中から抜いた。

 透明な糸を引いた指を、絲さんに見せてやる。それは明るい部屋で、光を受けててらりと煌めいた。

「足りへんやろ?」
「お願い、もう……絲に言わせないで」
「困ったなぁ。何が欲しいか言わへんのに、あげられへんなぁ」

 絲さんの耳元で意地悪く囁くと、絲さんは顔だけではなく首や鎖骨の辺りまで赤くした。

「絲さん、何が欲しいん?」
「……蒼一郎さんが、欲しいです」
「うん。あげるで。でも、俺の願いも聞いてな」
「え?」
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