勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、砂漠に立つ

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「これが聖域都市を【聖域】たらしめる結界、か……」

 長距離転移独特の軽い酩酊感覚を強引に振り切った俺は、周囲の警戒を怠らずに遥か前方を見つめる。
 目前にどこまでも広がっているのは草木一つない荒れ果てた砂漠。
 ここは先日俺が召喚され戦った、無の砂漠に隣接する地域である。
 精霊力をまったく感じさせないこの場所は生命体にとって酷悪な環境だ。
 ここでは自然の風はおろか雨さえ降らない。
 遮る事のない、照り付ける灼熱の太陽だけが唯一の恵み。
 しかし問題はそこではない。
 環境よりも目の前にそびえる光景に俺は戦慄すら覚え立ち尽くす。
 先程から俺が異様な威容に呑まれているのはそこにある結界によってだった。
 聖域結界、通称【選別の竜巻】。
 それは天空まで立ち昇り都市全体を覆い尽くす砂塵を纏う竜巻である。
 この砂漠における唯一のオアシスであり聖人の生誕地であるこの地は、国家間の思惑を超えて常に闘争の舞台と成り得てきた。
 血で血を争い合う歴史に彩られた終末の地。
 だからこそ、そこに住まう人々は願った……ここを安息の地とすべく。
 そうして数多くの高司祭らを犠牲に生み出されたのがこの竜巻だ。
 これは都市を統べる教皇の意向によって自在に生み出されてるだけでなく、通過する人々を自在に選別するという、海底ダンジョンの属性判別を超える機能を兼ね備えている。
 更に神の御業故か、ありとあらゆる魔術的干渉を受け付けない。
 観測魔術等は無効化され、魔導具や魔獣(ドラゴンを含む)による強襲は竜巻によって阻止される。無論、転移術なども同様だ。
 つまりこの内部にいる限り完全に外界と隔たれた環境を保つことが可能。
 さすがは大陸一の宗教国家、その総本山といったところか。
 ここ数百年、聖域都市に侵攻して成功を遂げた軍はいない程だ。
 また信仰に支えられた都市の戦力は秀逸で、教団を護る聖職者らによってかなりの自衛力を誇る。
 法術の腕や鉄壁の意志を含め対魔族戦線では非常に頼りにされていたのだ。
 だが……聖域都市は急な中立宣言を告げた一カ月前から沈黙を保ったままだ。
 各都市や王国によるありとあらゆる交渉にも応じず依然沈黙を保持。
 何せ交渉以前にアプローチする手段すら叶わないのだから途方に暮れる。
 フィーやヴァレンシュアの婆さんら外部にいた聖職者達は、困惑を抱えながらも連合軍に協力してくれているといえは……これからの戦いを鑑みれば是非とも戦線へ復帰してほしい。
 その為、いったい聖域都市で何が起きているのか把握するのに俺が連合軍へ進言したのが、この少数精鋭による潜入作戦である。
 勇者、アレクシア・ライオット。
 賢者、ミザリア・レインフィールド。
 聖女、フィーナ・ヴァレンシュア。
 忍者、犬神カエデ。
 魔狼、ルゥ・ライオット。
 そして……俺こと英傑ガリウス・ノーザンである。
 ショーちゃんは昨夜の罰ゲームの為に置いて来た……というのは嘘で、あいつにして貰う事が多過ぎるので連れて来なかった、が正しい。
 鏡像魔神の判別方法は周知されたとはいえ、脅威自体は消え去ってはいない。
 要人の警護や毒物判別・無効化など、自由に姿形を変えられるショゴスの特性はこれからの戦いになくてはならないものだ。
 こんなイチかバチかの不確定な作戦に同行させるのは忍びないので説き伏せた。
 その分泣きつかれはしたが……今度可愛がってくれるならば、と渋々納得した。
 一番の難点を切り抜け安堵したものの……あいつが喜ぶ可愛がりとは何だ?
 今から悍ましさを感じるのは、はたして気のせいなのかだろうか?
 うん、あまり深く考えるのはやめよう。
 あと……ミズキもこの場にはいない。
 彼女には彼女の仲間がいるし戦いがある。
 一緒に来たいという思いは薄々感じていたが……
 昨晩の事もあり、深く踏み込めなかったというのが正解だろう。
 イゾウ先生の仰る様に割り切れないのが俺の未熟さと自覚しても、だ。
 さあ、今は何より目の前の問題に集中しなくては。
 今回の潜入には俺が考えられる限りのベストメンバーを揃えた。
 とはいえ――相手が悪い。
 各国お抱え術者の秘術や戦略級術式すら無効化してしまう結界に護られた都市。
 そんな秘匿された場所へどのように侵入すればいいか?
 通常なら龍神の使徒というべき存在になった俺でも、為す術は無かっただろう。
 ただここに――例外があった。
 俺は同様に転移してきた、隣で難しい顔をしている美青年に問い掛ける。

「どうだ……いけそうか、ノスティマ?」
「ええ、何とか。
 視界に捉えた全ての術式を解析し分解・再構成を可能とする、私の【識析眼】を以てしても、完全には解明し切れないハイレベルの複合型神造術式。
 人々の祈りと信仰が結晶化したとでもいうべきこの結界は脅威ですね。
 この領域に達すると、もはや次元の断層といっても差し支えありません」
「ならば――突破は難しいか?」
「フフ……早急な判断は時と場合によりますよ。
 奇しくも貴方が指摘した通りです、ガリウスさん。
 すなわち、人の域を超えた御業たる神秘は――」
「同一、もしくはそれに並ぶ神秘を以てなら打ち破れる」
「はい。貴方の推測通りです。
 私の【神魔眼】と貴方の【神龍眼】。
 本来、有り得ない神秘の重複……これならば一時的に結界を無力化できますね。
 これから仕掛けるので合わせて頂けますか?」
「了解、【嘲笑(マルク)う因果(パーシュ)】を併用させる」

 片目を伏せゆっくりと瞳を開くノスティマ。
 その右眼が神々に連なる証――虹色の煌めきをあげているのを横目で見ながら、俺は頼りになる仲間となったこいつと合流した早朝の出来事を思い返していた。
 

 



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