勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、虚栄を自覚

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「ふう……何だか寝付けなかったな」

 払暁。
 快適過ぎる感触を伝えるベッドから身を起こし、微かに周囲の闇を払う明かりを視界に捉えながら俺は一人呟く。
 枕が変わったぐらいで眠れなくなるほど繊細な神経はしていない。
 馬小屋や納屋なら上等、何ならばダンジョンの冷たい床の上でも熟睡できるのが冒険者という稼業であり求められる資質である。
 自慢じゃないが眼を閉ざして眠ると決めれば、数秒で眠りに落ちる事が可能なのが俺の数少ない特技の一つだ。
 かの伝説の射手【早撃ち】ノビータに匹敵する速さだと自負している程である。
 しかし――昨夜は駄目だった。
 何度眼を閉ざしても、思い浮かんでしまうのだ。
 別れ際に見たミズキの顔……
 悲痛な叫びを堪えた様なあの顔が、瞼に焼き付いて離れない。
 イゾウ先生の話を全て真に受けるじゃないが――
 もっと何か出来たんじゃないか、と思ってしまう
 言葉や態度で彼女を慰撫できたのではないか、と。
 それが浅はかで傲慢な俺の虚栄心によるものだと自覚しながらも。

「人が人を救うなんて――おこがましいんだよ。
 いい加減現実を見ろ、馬鹿が」

 情けは人の為ならず。
 磨き上げた力をどう扱うかを常に考えろ。
 ファノメネル師匠の教えもあり、俺は多くの人に手を差し伸べてきた。
 間に合った事も――間に合わなかった事もある。
 その度に思うのは、俺が誰かを救ったわけではないという自戒。
 何故ならば所詮他人にできるのはそこまでで、その手を掴み立ち上がるか否かを決めるのは結局本人に委ねるしかないからだ。
 他者を理解したつもりになって得意気になるのは愚の骨頂だろう。
 自分をぶん殴りたくなる様な衝動と漫然とした眠気を振り払う為、火傷するほど熱い湯と氷の様に冷たい水のシャワーを交互に浴びる。
 そしていつの間にか準備されているコーヒーを飲む。
 もはや日常と化してきている朝のルーティン。
 昨日は戦い(一部駆け引きはあったが)もなかったので、翌日まで残る様な疲弊はない。浅眠による疲労も龍の使徒としての体質故、既に回復していた。
 動けるという事は戦えるという事。
 戦えるという事は前に進めるという事。
 ぐじぐじ、うだうだと思い悩むのはもう止めだ。
 俺は俺の責務を全うするとしよう。
 ミコンの本体ともいえる宝珠を手にした俺は嬰児に囁くように呟く。

「武装(アムド)」

 次の瞬間、俺の全身は瞬時に【黒帝の竜骸】に覆われていた。

「ふああ……おはよう、ガリウス」
「ああ。おはよう、ミコン」

 着装を切っ掛けとして眠そうなミコンの姿が俺の前に投影される。
 既視感すら覚えるやり取りだが悪い気はしない。
 いつも気を張っているミコンの寝ぼけ顔……もとい素を晒している姿が見れるのは役得ですらある。

「今日は何が起きるか分からないからな。
 提案したのは俺だが、ある意味無謀な潜入作戦でもある。
 すまないがよろしく頼む――至らぬ俺を支えてくれ」
「任せて(むん)。
 ガリウスをサポートするのは私の本分だもん」

 心強いミコンの返答に思わず顔をほころばせる。
 生死を共にする昨夜の誓いからミコンとの結び付きはより強くなった気がする。
 身を包む【黒帝の竜骸】から伝わる力の波動が段違いだ。
 これならどんな困難も乗り越えられるだろう。
 集合時間まではまだ時間がある。
 だが何事も余裕を以って当たるのが俺の流儀だ。急ぐとしよう。
 俺は収納スキルで取り出した樫名刀【静鋼】【紅姫】の二刀を装備。
 そして【黒帝の竜骸】の要所要所に暗器や小道具を仕込んでいく。
 ん。こんなものか。
 全身を見回し不備や可動域に問題がない事を確かめた俺は部屋を出る。
 そして……居室前廊下で土下座する変態(ショーちゃん)と遭遇するのだった。



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