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おっさん、過去を追想
しおりを挟む泡沫(うたかた)の夢とも玉響(たまゆら)の現実とも判別がつかない、浅い微睡みに似た意識の中――
俺は自分が過去の出来事を追想しているという事に気付いた。
今、俺が触れていたのはシア達と出会い――パーティを結成した時の過去か。
初めての依頼に初討伐……立ち塞がる苦難を乗り越え、あいつらが成長していく様をもう一度追認出来たのは、一際感慨深いものがある。
しかし――これは自身の記憶を回想している訳ではない。
如何なる因果か、当時の皆の状況を疑似体験していると言っていいだろう。
何故ならこれが俺個人の妄想でない事を確証できる理由として、当時の俺が知り得ないシア達の想いすら把握してしまっているのだから。
あいつらが何を想い、そして何を抱えていたのか。
単純明快そうなシアすらあれほどまで俺に関して悩み、苦しんでいたのか――
師の様に父の様にも慕ってくれていた俺をパーティから追放するという、自身が愚行と認めつつも動かざるを得なかったバックボーンを推し量れたのは大きい。
勿論、推測は出来ていたが――赤裸々に垣間見た内容に後悔が過ぎる。
世間体など気にせず、もっとあいつらを慮ってやれれば良かった。
当たり障りのない表層のみで他者を分かった気になって、内なる本質というものを俺は捉えきれていなかったのだろう。
誰かを受け入れるには、それこそが肝心だというのに。
ならば――この追想にも意味はある。
時は進み(戻り?)、メイアとの出会いと別れを過ぎ――更に飛躍していく。
ああ、このままなら……もうすぐ対面してしまう。
どれだけ眼を逸らそうとも隠し切れない、俺の最大の痛み。
自身を支える原動力にして骨子――彼女との出会いに。
思い返す度に身を焦がす灼熱の日々。
僅か17年という人生において、最も輝いていた時間。
それはまるで宝石のように煌めいて。
さながら硝子のように脆く儚い。
彼女と共に過ごした栄光と破滅の刻。
冒険者として――
一人の男として満ち足りた毎日。
そして何より、どれだけ願おうとも戻すことの出来ない過ち。
いっそ共に死んでしまっていれば、といつも思っていた。
しかし――それは彼女に対する裏切りだ。
命を賭してまで俺を救ってくれたその想いを冒涜する事になる。
ただ頭で理解はしていても……
心は深く沈み、醒めた現実を拒絶した。
喪われた過去に引き摺られ――
今でも時折叶わぬ願いに想いを馳せる。
それは何と蕩ける甘美な誘惑で……
それは何と切なく辛辣な背徳か……
色褪せない渇望と報われない失意を胸に――
俺の時間軸は、遂に彼女との出会いまで遡っていく。
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