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なんで君は惹かれないのか
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◆ ◆ ◆
あれから数日が経った。ラファエルとはアパートの踊り場ですれ違うとか、外で見掛けるとか、その程度になった。
相変わらず、男女関係なく部屋に連れ込んでるみてぇだが、俺に配慮してか、少しだけ時間が早くなったと思う。
で、今夜の話なんだが、ダニエルが少し早く寝たいだとか言って、店を早く閉めるように言ってきたから、俺も時間より先に帰ることになった。
いつも俺に任せて先に寝ればいいのに、ダニエルは店が終わるまで店の奥に座って居眠りをしている。別に店主がしたいようにすればいいが、限界まで店番をしたいって気持ちの現れなんだろうな、とは思う。
「じゃあ、気を付けて帰ってね」
女に頼まれたのか、それとも最近事件が多いから早めに帰してるのか、俺がアパート前まで帰ってくると、ラファエルがこの前見たブロンド美女とは別の女をタクシーに乗せて送り出していた。
――今夜はあの女の血を吸って、あの女と寝たのか。
気が付いたら、俺はラファエルにジトッとした目を向けていた。
「まだ早い時間だからいいだろう? 君に迷惑はかけてないはずだけど?」
俺はなにも言ってないが、俺の視線を受けて、奴が少し不機嫌そうな表情で言った。こんな顔もするんだな、こいつ。
「別に俺はなんも言ってねぇっての」
本当に何も言ってねぇし、何も思ってねぇし、間違ったことは言ってない。それなのに
「生き血を飲まないと私も飢えてしまうし」
悩ましげな表情と声でラファエルは言った。
「だから、なんも」
「じゃあ、その瞳はなに?」
俺の目をジッと見つめながら、奴が尋ねてくる。まるで俺のことを疑ってるみてぇな目だ。
だが、たしかになんか分かんねぇが見たくねぇもんを見て俺はムッとしてる。
「血くれるなら、誰でもいいのかよ?」
餓鬼が揶揄うときみてぇな言い方で俺が質問を返すと、ラファエルは俺との距離を少し詰めて「だって君はくれないだろう?」とまた質問を返してきた。
その質問に答える気はない。
「金髪なら誰でもいいのかよ?」
変わらぬ口調で俺はまた尋ねた。
見ればいつもいつも金髪ばっかで、なんかイラッとすんだよな。
「たしかに金髪美人は大好物だけど」
複雑な表情は見せず、ラファエルは俺の髪に触れようとした。
「さ、触んなっ」
慌てて俺は奴の手を叩き落とし、よろけるように一歩後ろに下がった。
「威嚇しちゃって……」
叩き落とされた手を見つめながらラファエルがぼそりと呟いた。それから顔を上げた奴と目が合う。
「なにを怒ってるの? 大丈夫だよ、そんなに警戒しないで」
儚げな笑みが再びこちらに手を伸ばしてくる。その表情が俺を動けなくする。
「なんで君は私に惹かれないんだろうか」
気付けば、ゆっくりと手の指と指を絡められていて、へんにゾクゾクした。首がうずくような、そんな感覚だ。
「うぬぼれんのも大概にしろよ……。俺は男は認めねぇって言ってんだろうが……」
誰でもあんたの虜になるわけじゃねぇんだからな、って視線を向けたはずだったんだが、思ったよりも自分の声が小さくて弱々しくてビックリする。
「そんな小さなこと言ってるからいつまで経っても童貞なんじゃないの?」
「うぐっ」
まるで俺の声のトーンに合わせるような静かな声で言われ、俺は息を詰めた。痛ぇ。
「君は純粋だからね」
そう耳元で囁いた声は
「そうだ、良いところに連れていってあげよう。なに、心配はいらないよ」
と俺の手を引いた。
あれから数日が経った。ラファエルとはアパートの踊り場ですれ違うとか、外で見掛けるとか、その程度になった。
相変わらず、男女関係なく部屋に連れ込んでるみてぇだが、俺に配慮してか、少しだけ時間が早くなったと思う。
で、今夜の話なんだが、ダニエルが少し早く寝たいだとか言って、店を早く閉めるように言ってきたから、俺も時間より先に帰ることになった。
いつも俺に任せて先に寝ればいいのに、ダニエルは店が終わるまで店の奥に座って居眠りをしている。別に店主がしたいようにすればいいが、限界まで店番をしたいって気持ちの現れなんだろうな、とは思う。
「じゃあ、気を付けて帰ってね」
女に頼まれたのか、それとも最近事件が多いから早めに帰してるのか、俺がアパート前まで帰ってくると、ラファエルがこの前見たブロンド美女とは別の女をタクシーに乗せて送り出していた。
――今夜はあの女の血を吸って、あの女と寝たのか。
気が付いたら、俺はラファエルにジトッとした目を向けていた。
「まだ早い時間だからいいだろう? 君に迷惑はかけてないはずだけど?」
俺はなにも言ってないが、俺の視線を受けて、奴が少し不機嫌そうな表情で言った。こんな顔もするんだな、こいつ。
「別に俺はなんも言ってねぇっての」
本当に何も言ってねぇし、何も思ってねぇし、間違ったことは言ってない。それなのに
「生き血を飲まないと私も飢えてしまうし」
悩ましげな表情と声でラファエルは言った。
「だから、なんも」
「じゃあ、その瞳はなに?」
俺の目をジッと見つめながら、奴が尋ねてくる。まるで俺のことを疑ってるみてぇな目だ。
だが、たしかになんか分かんねぇが見たくねぇもんを見て俺はムッとしてる。
「血くれるなら、誰でもいいのかよ?」
餓鬼が揶揄うときみてぇな言い方で俺が質問を返すと、ラファエルは俺との距離を少し詰めて「だって君はくれないだろう?」とまた質問を返してきた。
その質問に答える気はない。
「金髪なら誰でもいいのかよ?」
変わらぬ口調で俺はまた尋ねた。
見ればいつもいつも金髪ばっかで、なんかイラッとすんだよな。
「たしかに金髪美人は大好物だけど」
複雑な表情は見せず、ラファエルは俺の髪に触れようとした。
「さ、触んなっ」
慌てて俺は奴の手を叩き落とし、よろけるように一歩後ろに下がった。
「威嚇しちゃって……」
叩き落とされた手を見つめながらラファエルがぼそりと呟いた。それから顔を上げた奴と目が合う。
「なにを怒ってるの? 大丈夫だよ、そんなに警戒しないで」
儚げな笑みが再びこちらに手を伸ばしてくる。その表情が俺を動けなくする。
「なんで君は私に惹かれないんだろうか」
気付けば、ゆっくりと手の指と指を絡められていて、へんにゾクゾクした。首がうずくような、そんな感覚だ。
「うぬぼれんのも大概にしろよ……。俺は男は認めねぇって言ってんだろうが……」
誰でもあんたの虜になるわけじゃねぇんだからな、って視線を向けたはずだったんだが、思ったよりも自分の声が小さくて弱々しくてビックリする。
「そんな小さなこと言ってるからいつまで経っても童貞なんじゃないの?」
「うぐっ」
まるで俺の声のトーンに合わせるような静かな声で言われ、俺は息を詰めた。痛ぇ。
「君は純粋だからね」
そう耳元で囁いた声は
「そうだ、良いところに連れていってあげよう。なに、心配はいらないよ」
と俺の手を引いた。
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