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雪国の海賊

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「僕……」

「なんだ?」

 涙を拭って、僕はアキークに話をする決心をした。

「僕は予知能力を持っているんです」

「予知って、これから起こることが分かるってやつか?」

「はい」

「それで、さっきこの船が攻撃されることが分かったのか」

 アキークの言葉に頷き、僕は続けた。

「僕は、この能力を欲したアルシャムスの王に番にされ監禁されていました。ずっと隙を伺っていて、アルカマルからの攻撃による混乱に乗じて城から逃げ出したんです。でも……っ」

 駄目だ……、この先のことを考えるとどうしても弱気になってしまう。涙が止まらない。どうして僕はこんな能力を持って産まれてきてしまったんだろう……。

「いつ番を解消されるか不安なんだな?」

 この人にも特殊な能力があるのだろうか、と思ってしまった。僕の言いたいことを直ぐに理解してくれたから。それだけで少しだけ救われた気がした。だから、もう「さよなら」を言わなければと思った。僕が居たら迷惑だ。

「……助けてくれて、ありがとうございました」

 呼吸を整えて、僕はアキークに頭を下げた。

「次の港かどこかで降ろし────」

「誘拐したことにしよう」

「え?」

「俺たちが、お前を誘拐したことにするんだよ。そうすれば、アルシャムスの王は意地でもお前との番を解消しないだろう」

 奪われて意地になる、と言いたいのだろうか?

「でも、そうしたら、きっと王は僕を取り返しに来ますよ?」

「俺たちに追いつけるはずがない。それに元々、俺たち豹とライオンは獲物を取り合って殺し合う生き物だ。:性(さが)なんだよ」

「いつまで、それが通用するか……」

「噂を流す」

「噂?」

「“ナキとの番を解消した途端に国が滅ぶ、番である限りアルシャムスの優勢は続く”という予知をお前がしたってな」

「優勢が続くなんて、そんなこと……」

「大丈夫だ、どうにかなる。噂を広めるのに良い方法も知ってるしな」

 そう言って、アキークは外に出て足に手紙を付けたカモメとハトの合いの子のような白い鳥を二羽飛ばした。布団に包まれた僕はその二羽が雪雲の近くを飛んでいくのをアキークの隣で見ていた。ふわふわとした羽根を持つあの子たちは寒さに強いらしい。

「大丈夫だ」

 空が作り出した無数の結晶が舞う中、アキークは僕の頭をそっと撫でた。

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