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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第469話 のっぺりの日常

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暑い~、外出たくない~、クーラー最高。
リビングのクーラーに当たり、床でゴロゴロする私。隣では黒丸(仔犬バージョン)がヘソ天でグデッと伸びている。
そうだよね~、毎日暑いもんね~、こんなのバテるよね~。
でも宿題も残ってるんだよな~。結構頑張ったけど私立桜泉学園高等部の宿題多過ぎだっての。いくらGクラス固定とは言えやらないって訳にも行かないしな~。
グダグダしながら何か上手い手はないかと考える。

「ご主人、みんな忙しそうに働いてるってのに優雅なもんですね。旅行から帰ってきた直後のやる気に満ちた御主人は何処へ行ってしまったんで?」

そんな俺の様子を窺い呆れ顔になるブリジット。
やあ、ブリはのんびりしていていいの?葛の葉はコンサートの警備に行ったみたいだけど。
俺は床から見上げる形でブリジットに聞いてみた。

「私ですか?私は当面自宅待機ですね。こないだハニ子さんがやらかしたせいで大和政府がビビってる様で、お願いだからしばらく大人しくしていてくださいってお達しがあったそうですよ。ですんで溜まってたVツーバーのアーカイブを消化中です。
資金の方はマネーゲームでウハウハですんでご心配なくですよ。
それよりご主人ですよ、旅行から帰って来た直後は”あなた誰?”ってくらいやる気に満ち溢れていたのに今じゃしぼんだ風船みたいじゃないですか。」

いや~、旅行から帰って来た時はね~。
うん、あれは最高の旅だった、俺史上第一位の三日間でございましたとも。それで妙にテンションが上がってたって言いますか、変なスイッチが入っていたって言いますか。
でも仕事の予定も入ってなかったんで取り敢えず宿題を頑張ってたんですけどね、そのうちだんだん勢いがですね~。お陰で課題の半分ほどは終わりましたけど今じゃすっかり元通り、いつもののっぺり佐々木でございます。
俺って基本怠け者なんだわ、今回それがよく分かった。

「アハハハ、確かにご主人ってテンション上がると目茶苦茶仕事しますけど、ハニ子の時も常に怠い休みたいってボヤいてましたからね。」

あれね~、ハニ子ッて基礎ポテンシャルが高いから冷静な様でテンション上がってたのかもしれない。どう考えてもハニ子やり過ぎでしょう。
基礎ポテンシャルが高い・・・、そうだ、ハニ子になって宿題やればいいんじゃん、俺も加わればさらに進む?ほいじゃ、ちょっくら終わらせて来るわ。

”凄い良い事思い付いた、俺って天才”とばかりにうきうきした顔で自室に戻るのっぺり。世界を揺るがす大戦力の使い道が宿題の消化と聞き呆れ顔になるブリジット。
彼女はそんなご主人を見ながら”私達の事で頭を悩ます大和政府っていったい”っと政府担当者を憐れみつつ、Vツーバーアーカイブ消化の為部屋に引き籠りに帰るのでした。

(side:大和政府)

『ハハハ、お互い良い会談となりました。我々としても今後とも貴国とは親密な関係を築けて行けたらと考えております。つきましては我が国公爵閣下の正式な訪問とミッシェル第三公女殿下の留学の件、なにとぞよろしくお願いいたします。』

『はい、こちらこそ貴国の誠実な対応に深く感謝いたします。公爵様ご訪問とミッシェル第三公女殿下の留学の件、しっかりと対応させて頂きます。』

固い握手を交わす両者、タスマニア公国と大和政府との事務次官級会談は密かにそして有意義に行われたのでした。


「総理、ご報告いたします。今しがたタスマニア公国使節団との会談が終了したとの事でございます。会談ではタスマニア公国より深い謝罪と今回の一連の事態における高宮ひろし及び大和政府に対する賠償、今後の両国間における友好交流についての話し合いが行われたとの事であります。
また友好の証としてタスマニア公国公爵閣下の訪問、ミッシェル第三公女の留学が予定されております。詳しい内容についてはこちらの報告書をご覧ください。」

「分かりました。公爵訪問及び公女留学の件は速やかに調整に当たってください。また問題が起きた際はすぐに報告を上げる様に。」

「畏まりました。失礼いたします。」

一礼をし退出して行く外務官僚、総理はそんな彼女を見送り深いため息を漏らす。

「それで、交渉に向かった情報室の人間は何と言っていたと。」

「はい、部下の話しによりますとマザー佐々木の元には例の二体の他に古都の特級怪異の姿が確認できたとの事であります。また例の二体の話しによれば彼女らはマザー佐々木との間に契約による使役を受けてはいないとの事でした。」

「それはいったいどう言う事になるのですか?私は専門的な事は分からないのですが、危険な事ではないのですか?」

「はい、大変危険です。使役ではなく自らの意思でそこにいると言う事は、何者の命令も受けないと言う事です。怪異とは人ならざる者、その思考や心情も常世の者とは異なります。いま、マザー佐々木は彼らと自然な信頼関係を築いていますが、それが崩れたとき何が起きるのか想像もつきません。
それとこれは部下の橘家の者からの報告ですが、マザー佐々木の邸宅はそれほどの怪異が集合しながら一切の変異を見せていなかったとか。訪れた際も佐々木ハニ子により超常の力の行使が行われたにもかかわらず、その痕跡すら残らなかったとの事でございます。
それと・・・。」

「ま、まだ何かあると言うのですか。」

「これはユーロッパ王国からの情報ですが、第四王女襲撃事件、大使館壊滅事件、ベッキンガム宮殿崩壊事件の一連の事件にとある超常の者が関わっており、その者とマザー佐々木とに関りがあるとの事でございます。そしてその超常の特徴は圧倒的恐怖の体現者。佐々木ハニ子とは似ても似つかぬとの事でありました。」

「と言う事は、マザー佐々木の元にはもう一体国落としがいると言う事ですか!?」

「少なくとも何らかの関係はあるかと。」

頭を抱え胃を抑える総理。しかし彼女は為政者である、その判断は早かった。

「マザー佐々木及びその関係者に対する一切の接触を禁止、この件は第一級秘匿事項とします。また、高宮ひろしの海外活動に関しては国家要人警護対象とします。彼の所属する芸能事務所及び本人にはその旨よくよく伝える様に。」

「は、直ちに通達いたします。」

今この国に新たな禁忌が生まれた。
決して触れてはいけない絶対なる人物、その者の名は大霊能者マザー佐々木。
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