【完結】前世の推しのために悪女を演じます、聖女として転生しましたが

「このままじゃ、推しが死んでしまう——!」

 目覚めたのは、王都の大聖堂。聖女認定の儀式の最中だった。
 辺境貴族の娘として生まれたノエリア・リュミナリアは、強烈な光とともに前世の記憶を取り戻す。日本で深夜まで乙女ゲーム「聖女の試練」をプレイしていた大学生——それが彼女の前世だった。

 そして気づく。ここは、あのゲームの世界。
 周囲にいるのは、ゲームキャラクターたち。王子、聖女、貴族。そして——「冷酷な軍師」アルセイン・セイヴラン公爵。黒髪、銀色の瞳、完璧な容姿。彼女の推しキャラだった男性が、目の前にいる。

 だが、喜びは一瞬で恐怖に変わった。
 原作では、アルセインは物語の終盤で処刑される運命。聖女が第一王子派閥に協力したことで、第二王子派閥が粛清され、軍師アルセインも断頭台の露と消えるのだ。

「絶対に、そんな未来は来させない」

 ノエリアは決意する。原作を変えるただ一つの方法——自分が悪女になること。
 原作の聖女は謙虚で従順だったから第一王子派閥に取り込まれた。ならば、正反対に振る舞えばいい。高圧的で、傲慢で、誰の命令も聞かない聖女に。

 王子のダンスを断り、第二王子派閥の軍師と踊る。
 貴族たちの命令を拒絶し、公然と反抗する。
 昼は冷酷な悪女を演じ、貴族社会から嫌われていく。

 だが夜になると、変装して貧民街へ向かい、人々を癒やす。誰にも知られぬよう、優しさを隠して。

 そんな二面性を持つノエリアを、アルセインは冷たく観察する。
「あなたは何者なのか」「何を企んでいる?」
 疑念と警戒。家族に裏切られ、信じることを忘れた氷の軍師は、謎の聖女を探ろうとする。

 ある夜、密かに尾行したアルセインは、ノエリアが孤児院で子供たちを治癒している姿を目撃する。そして暗殺者に襲われた彼女を、剣を抜いて救う。

「なぜ孤児院に?なぜ変装を?」
「…理由があります。でも、今は言えません」
「あなたの本当の姿は、どちらなのですか?冷酷な聖女か、優しい救済者か」
「…両方です。そして、どちらでもありません」

 謎は深まる。だが、距離は少しずつ縮まっていく。

 禁書庫への侵入。陰謀の証拠を探す深夜の冒険。身を寄せ合いながら警備兵から隠れる密着の瞬間。共に戦ううちに、アルセインの氷の心は溶け始める。

 だが、王宮には陰謀が渦巻いている。
 第一王子派閥のマーカス伯爵が、ノエリアを陥れようと罠を仕掛ける。平民出身の優しい少女リリアナには、不穏な影が見え隠れする。次々と襲いかかる危機。

 悪女を演じながら、推しを救おうとするノエリア。
 心を閉ざしながらも、聖女に惹かれていくアルセイン。

 二人は、運命を変えることができるのか——?
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