国民が熱狂する英雄譚は、全て虚構。最高視聴率番組の裏側でゴブリンADが王国の闇を記録し始めた。王国広報局番組『ブレイブ・ハート』ON AIR

チャビューヘ

文字の大きさ
20 / 40

テイク9「発掘された記憶」中編

しおりを挟む
【個別インタビュー】
聖女マリア/告白部屋(遺跡の石室)

(薬草巻きに火をつける)

(深く吸い込む)

マリア:
「……」

トビー(画面外):
「今日の発見について」

マリア:
「何が聞きたい」

トビー:
「石板のことです」

マリア:
「……」

(煙を吐く)

マリア:
「お前、何か知ってんだろ」

トビー:
「……」

マリア:
「さっき、カメラぶれてた。動揺してた」

トビー:
「……」

マリア:
「黙ってんなよ。俺には話せって言っただろ」

トビー:
「……少しだけ」

マリア:
「少しって何だ」

トビー:
「テスト地点のことです」

マリア:
「テスト?」

トビー:
「この番組の撮影で訪れた場所。山岳地帯、廃墟の塔、暗黒迷宮。全て、過去に何かの『テスト』が行われた場所でした」

マリア:
「……」

トビー:
「石板に書かれていた『試練の場所』と一致します」

マリア:
「……つまり、俺たちは誰かの計画通りに動かされてるってことか」

トビー:
「その可能性があります」

マリア:
「……」

(薬草巻きを深く吸う)

マリア:
「ノアは」

トビー:
「分かりません。ただ、被験者は『辺境の村出身者』ばかりだという情報があります」

マリア:
「ノアも辺境出身だ」

トビー:
「はい」

マリア:
「……」

(長い沈黙)

マリア:
「俺もだ」

トビー:
「……え?」

マリア:
「俺も、辺境の村出身だ。王都で聖女に選ばれる前は、名もない村にいた」

トビー:
「……」

マリア:
「偶然か?」

トビー:
「……分かりません」

マリア:
「……」

(薬草巻きを見つめる)

マリア:
「調べろ。俺のことも」

トビー:
「……分かりました」

マリア:
「オフレコな」

トビー:
「心得ています」

-----

【映像ログ:未公開(午後の撮影・テイク23)】

(古代遺跡・奥の間。壁一面に壁画が描かれている)

監督:
「この壁画の前で、勇者一行が秘宝の手がかりを見つけるシーンを撮ります」

レオ:
「壁画? なんか気持ち悪いな」

マリア:
「絵だろ。何がだよ」

レオ:
「いや、目が多くね?」

(壁画を見る全員)

(壁画には、無数の目を持つ存在と、その前にひれ伏す人々が描かれている)

ノア:
「……」

(ノアが壁画に近づく)

ノア:
「これ……」

マリア:
「どうした」

ノア:
「見覚えが……あります」

レオ:
「は? こんな気持ち悪い絵、見たことあんの?」

ノア:
「いえ……でも……」

(ノアが壁画に触れる)

ノア:
「夢で……見たことがある……気がする」

マリア:
「夢?」

ノア:
「はい……。小さい頃から、たまに見る夢があって……」

マリア:
「……」

ノア:
「暗い場所で、誰かが何かを唱えていて……。目が開いて……」

(ノアの声が震える)

ノア:
「そして、僕は……選ばれた」

マリア:
「……」

レオ:
「……なんか怖い話になってきたんだけど」

監督:
「あの……撮影を続けても……」

マリア:
「続けろ。カメラは回しとけ」

トビー:
「……」

(カメラがノアの表情を捉える)

(ノアの目が、一瞬だけ光ったように見える)

-----

【トビーの制作日誌】
補足メモ・その4

ノアの目が光った。

見間違いかもしれない。
だが、俺の目はゴブリンの目だ。
暗所での視力は人間の3倍ある。

光った。
一瞬だけ、金色に。

ノアは気づいていないようだった。
マリアも気づいていない。

俺だけが見た。

「選ばれし器」。
「目覚めの時は近い」。

ノアは何者だ。

-----

【映像ログ:未公開(壁画調査・午後3時)】

(古代遺跡・奥の間。ノアが壁画の前に座り込んでいる)

マリア:
「少し休め」

ノア:
「でも……」

マリア:
「お前、顔色悪いぞ」

ノア:
「……すみません」

(マリアが水筒を差し出す)

マリア:
「飲め」

ノア:
「ありがとうございます……」

(ノアが水を飲む)

レオ:
(少し離れた場所から)
「なあ、あれ何」

マリア:
「何がだ」

レオ:
「壁画の下。文字みたいなの書いてある」

(マリアがレオの指差す方向を見る)

マリア:
「……本当だ」

(壁画の下部に、小さな文字が刻まれている)

マリア:
「ノア、読めるか」

ノア:
「……」

(ノアが近づく)

ノア:
「『被験者番号003、007、012。最終選定:012』……」

マリア:
「……被験者?」

トビー(カメラ越し):
「……」

(トビーの息が止まる)

ノア:
「『012は器として適合。第二フェーズへ移行』……」

マリア:
「待て。被験者って何だ。012って誰だ」

ノア:
「分かりません……でも……」

(ノアが自分の首筋に触れる)

ノア:
「僕……小さい頃から、ここに痣があるんです」

マリア:
「痣?」

(ノアが首筋を見せる)

(小さな、数字のような形をした痣)

マリア:
「……それ」

ノア:
「お母さんは、生まれつきだって言ってました」

マリア:
「……」

ノア:
「でも……形が……数字みたいで……」

レオ:
「……おい、それ」

ノア:
「え」

レオ:
「012って読めなくね?」

ノア:
「……え」

(全員がノアの首筋を見る)

(痣は確かに「012」と読める)

マリア:
「……」

ノア:
「嘘……」

(ノアの手が震え始める)

ノア:
「嘘です……。これは、生まれつきの……」

マリア:
「ノア」

ノア:
「僕は……僕は……」

マリア:
「落ち着け」

ノア:
「僕は、何なんですか……」

(ノアの目から涙がこぼれる)

マリア:
「……」

(マリアがノアを抱きしめる)

マリア:
「分からねえ。でも、お前はお前だ」

ノア:
「マリア……さん……」

マリア:
「誰かに番号つけられたからって、お前の価値が変わるわけじゃねえ」

ノア:
「……」

マリア:
「俺たちは仲間だろ。一緒に調べる。一緒に答えを見つける」

ノア:
「……はい……」

レオ:
「……」

(レオが気まずそうに視線を逸らす)

レオ:
「……俺も、なんかあったら言えよ。さっきも言ったけど」

ノア:
「……ありがとう、ございます……」

-----

【個別インタビュー】
魔法使いノア/告白部屋(遺跡の石室)

(目が赤い。泣いた跡がある)

ノア:
「僕……何も知らなかったんです」

トビー(画面外):
「……」

ノア:
「辺境の村で生まれて、魔法が使えるようになって、スカウトされて……」

トビー:
「スカウト?」

ノア:
「はい……。ある日、王都から人が来て。『才能がある。王都で学ばないか』って」

トビー:
「……」

ノア:
「嬉しかったんです。村では変わり者扱いされてたから」

トビー:
「……」

ノア:
「でも……もしかしたら、それも……」

(言葉に詰まる)

ノア:
「全部、誰かの計画だったのかもしれない」

トビー:
「……」

ノア:
「僕は……選ばれたんじゃなくて……選ばれるように、作られたのかもしれない」

トビー:
「……」

(長い沈黙)

ノア:
「トビーさん」

トビー:
「はい」

ノア:
「あなたは……僕のこと、どう思いますか」

トビー:
「……」

ノア:
「怖いですか? 気持ち悪いですか?」

トビー:
「いいえ」

ノア:
「……」

トビー:
「あなたは、干し芋を美味しいと言ってくれました」

ノア:
「え……」

トビー:
「それだけで、俺にとっては良いやつです」

ノア:
「……ふふ」

(少し笑う)

ノア:
「トビーさんらしいですね」

トビー:
「ゴブリンですので」

ノア:
「……ありがとうございます」

-----

【映像ログ:未公開(夕方・遺跡外・ザックとの接触)】

(古代遺跡・入口前。日が傾き始めている)

(遠くから人影が近づいてくる)

マリア:
「……誰か来るぞ」

レオ:
「敵?」

マリア:
「分からん。構えろ」

(レオが剣に手をかける)

(人影が近づく)

(魔王軍の制服を着たゴブリン)

ザック:
「よう、トビー」

トビー:
「……来たか」

マリア:
「……知り合いか」

トビー:
「仕事上の連絡を取り合っている相手です」

ザック:
「俺は魔王軍宣伝部のAD。名前はザック」

レオ:
「魔王軍!?」

(レオが剣を抜こうとする)

マリア:
「待て」

レオ:
「なんでだよ。敵だろ」

マリア:
「こいつ、武器持ってねえだろ」

ザック:
「その通り。今日は情報交換に来ただけだ」

レオ:
「情報交換?」

ザック:
「お前らの番組と、俺たちの番組。両方に関わる情報がある」

マリア:
「……」

ザック:
「トビーには伝えてあったはずだ」

トビー:
「はい。彼の情報は信頼できます」

マリア:
「……分かった。話を聞く」

レオ:
「おい、マリア」

マリア:
「黙ってろ。お前は見張りだ」

レオ:
「は? 俺、勇者だぞ」

マリア:
「だからだろ。敵が来た時に戦うのはお前の仕事だ」

レオ:
「……まあ、そうだけど」

マリア:
「見張ってろ」

レオ:
「……わーったよ」

(レオが渋々離れる)

-----

【映像ログ:未公開(ザックとの情報交換)】

(古代遺跡・石柱の影。トビー、マリア、ノア、ザックが話している)

ザック:
「まず、『ALTITUDE_TEST』のファイルについてだ」

トビー:
「内容は解読できたか」

ザック:
「一部だけな。パスワードがかかってて、全部は見れなかった」

マリア:
「で、何が分かった」

ザック:
「高度適応能力の測定記録だ。15年前のものだった」

トビー:
「被験者は」

ザック:
「3名。コードネームで記録されてた。003、007、012」

ノア:
「……」

ザック:
「で、気になることがある。魔王軍側でも、同じテストが行われてた」

マリア:
「魔王軍でも?」

ザック:
「ああ。被験者のリストを見つけた。全員、辺境の村出身者だった」

トビー:
「やはりか」

ザック:
「お前んとこの魔法使い……ノア、だっけ?」

ノア:
「は、はい」

ザック:
「お前、首に痣があるって聞いたんだが」

ノア:
「……どこで」

ザック:
「俺たちの番組の魔法使い。カイルって奴がいる」

ノア:
「カイルくん……」

ザック:
「あいつも首に痣がある。数字みたいな形の」

ノア:
「……え」

ザック:
「あいつの番号は、015だ」

(沈黙)

マリア:
「……つまり、お前らの番組にも『被験者』がいるってことか」

ザック:
「そういうことだ。俺たちの番組は『ダーク・ハート』。お前らの『ブレイブ・ハート』と対になってる」

トビー:
「両方の番組に、辺境出身の魔法使いが配置されている」

ザック:
「ああ。偶然じゃねえだろ」

マリア:
「……」

ザック:
「もう一つ。エリクシール社が両方の番組のスポンサーになってる」

トビー:
「それは知ってる」

ザック:
「だが、資金提供の開始時期を調べたら面白いことが分かった。王国側には1530年から。魔王軍側には1544年から」

マリア:
「時期がずれてる」

ザック:
「ああ。でも、1532年に『被験者リスト』が作られてる。つまり、資金提供より前から計画があったってことだ」

トビー:
「エリクシール社は、最初から両方を支援するつもりだった」

ザック:
「そう考えるのが自然だろ」

マリア:
「……エリクシール社の会長は、何が目的なんだ」

ザック:
「分からねえ。だが、山岳地帯と鉱山に興味があるらしい」

トビー:
「それは聞いた」

ザック:
「あと、この遺跡も調べてた形跡がある」

マリア:
「は?」

ザック:
「遺跡の入口にある金属板。見たか」

トビー:
「見た。王国広報局の紋章だった」

ザック:
「あれ、15年前のものだ。つまり、この遺跡も『テスト地点』だったってことだ」

マリア:
「……」

ノア:
「僕たちは……最初から、ここに導かれていたんですか」

ザック:
「可能性は高いな」

ノア:
「……」

ザック:
「カイルに伝言を預かってきた」

ノア:
「え」

ザック:
「『怖がらなくていい。俺たちは同じだから』ってよ」

ノア:
「……カイルくん」

ザック:
「あいつも自分の正体に気づき始めてる。お前と同じようにな」

ノア:
「……」

ザック:
「あいつの魔獣伝書鳩の宛先だ」

(ザックがメモを渡す)

ザック:
「直接連絡取れ。情報共有した方がいい」

ノア:
「……ありがとうございます」

マリア:
「……お前は信用していいのか」

ザック:
「俺もトビーと同じ立場だ。上に使われてる下っ端。でも、真実は知りたい」

マリア:
「……」

ザック:
「それに、俺の胃薬代を稼いでくれてるのはお前らの番組だからな。視聴率下がると困るんだ」

マリア:
「……ふん」

ザック:
「じゃ、俺は戻る。また連絡する」

トビー:
「ああ。気をつけろ」

ザック:
「お前もな。あと、干し芋の塩気、報告しろよ」

トビー:
「適正だ」

ザック:
「よし。じゃあ、お前の判断は信用できる」

(ザックが去る)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

処理中です...