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2話

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 照りつける日光によって、私は目を覚ました。


 いつも起きているのは午前5時。太陽が顔を出していないはずの時間帯だ。まずい、寝坊した、という焦りが頭をよぎった。アラームが鳴らなかったのだろうか?故障?だったらとてもマズイ状況だ。学校に遅刻をしてしまうと思いベッドから飛び起きた。



 次の瞬間、目に入るのは青く澄んだ大空だった。天井はどこにいったのだろうか。それにメガネをまだ付けていないのに、はっきり景色が見えている。


 何かおかしいと思い当たりを見回すと、そこは自宅ではなくどこかの森の中のようだ。寝る前まであったはずの部屋はまったく見当たらない。跡形すらもない。


 それどころか、どうやら私が飛び起きたのはベッドですらなくただの草むらであった。さすがに寝ている間に私の周りの物や人がいなくなって森になったなどとは考えられない。おそらく私が別の場所に移動した可能性のほうが高かった。


 状況が飲み込めない。何が起こっているのだろうか。夢でも見ているのだろうか。私は自宅で寝ていたはずなのに。それが目覚めたら森の中だというのは夢でしかありえない。うん、きっとそうだ。まだ本当の自分は夢の中で、自室のベットの上で寝ている。そう考えるとすべての辻褄があうのだ。だから、きっと、そう。


 一応、夢である事を確認するためにほっぺをつねってみようとしたが、途中、鋭い痛みが頬を襲ったので、ビックリしてやめた。頬から何かが伝う感覚がするので拭うと、手が少し血でよごれた。


 普通に痛いのだが。それに血も出てるし。・・・最近の夢は痛みや血まで高クオリティで再現されているようだ。うん、そうだ。そういうことになってはくれないだろうか。


 よく見るとさっき頬をつねろうとした指の爪の先に血がこびりついている。どうやらこの爪が頬にささり、痛みを感じたみたいだ。ちゃんと痛いということは、これは夢ではないらしい。現実、リアルというわけだ。信じたくはない。ただ、ジンジンとする頬の痛みは疑いようもない本物だった。


 また自分の手を見た際、気づいたことは、血だけではなかった。手の肌の色を見てみると、なんと緑色なのだ。それは手のひらだけではおさまらず、腕全体、いや、体全体が同じく緑色だ。きっとこういう肌の色の生き物なのだろう。


 なにこれ?ほんとうになにこれ?


 たくさんの意味不明な情報を詰め込まれた脳みそがフリーズを起こし、理解を拒絶する。しばらくの間、私はただ呆然とすることしかできなかった。
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