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二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

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「ありがとうございます、ところで領主に会う方法とか知ってたりは?」
「ちょっと色々な手続きがありまして…流石にすぐに!とかはダメですね…後は信用があれば話も変わってきます!」
「信用か…。」
 この領地での信用とかもはや皆無だし、そもそも人間領土からもしかしたら追手が来てるかもしれない。もはや罪人に仕立て上げられている可能性すらある。困ったな…何か…名声地を稼ぐ方法はないだろうか。
「あ…困りごとでしたらあるんですけど…?」
「え?そうですか?どんな困りごとですか?」
「例えばなんですけど。」
 ギルドに来る者の中に言葉を喋れない種族が居る、という話を聞いた。できれば、コミュニケーションを取る方法を考えてほしい、との事だ。難しすぎるだろ、意志疎通か…どういう形をしているのかにもよるし、手が使えるかどうか、にもよってくるだろう。いや、逆にいえば手さえあれば何とかなるのか?
「その種族には手はありますか?」
「手が無い者もいますよ!」
 いやぁ…元気よく答えないで?!そんな俺にとってそれって絶望に追い込む言葉だから!手がないって事は…手話なんかはだめか。そもそも、手話を教えるって言ったって難しすぎるよな。俺が手話を良く知らないし。どうしようかな。
「耳は聞こえているんですか?」
「そうですね!なのでコミュニケーションを取る事自体は可能なのですが、相手から意志をくみ取ることが出来なくて…」
「あ!手が無いって、もしかして触手みたいなものは生やせたりできますか?」
「ええ、出来たはずです!」
 うん、なんか獣ではない感じの匂いがプンプンする。獣の定義は四足歩行をしている全身毛で覆われた哺乳類だったはず。この世界では、そういう事は気にしていないんだろうな。あ、でも人間に対しても”けだもの”って言葉は使われたりするし、別に定義なんてどうでもいいか!
「指さし出来るなら、一応いい考えがありますけど」
「本当ですか?!どんな方法でしょうか!」
 ウサギさん…目が輝いていますね。点字が一番いいんじゃないだろうか。五十音すべてを教えれば問題は解決すると思う。これを伝えた所で本人たちがどの程度やろうと思うかにかかってくるから…この先はなんとも言えないけど。
「点字という方法を使いましょう」
「点字…?」
「文字を板に浮き出させて、触ったら分かるようにします。」
「おぉ…すごいです!感動しました!」
 元居た世界では当たり前にあったけど、この世界ではそうでもないみたいだ。ただ、領地を見ている限りだと、かなり文明的にも発達しているように見えるのだけど。いや、開発者がすごいのであって、俺がすごいわけじゃない。知識としてあっただけか。
「文字を書ける人ってどれぐらい居るんですか?」
「少ないと思います…話せればいい、ぐらいにしか思っていないと思いますので」
「そうですか」
 そうか、やり方によっては別になんでも出来るんじゃないか?いや、文字を書けないなら、話は別か。一旦、ここは問題解決済みとして、他の所を散策しに行ってみるかな。
「出来ました!」
「?!な、何がです?」
「点字です!」
「嘘…だろ?!」
 早すぎないか?えぇ…どうなってるの?文字が簡単とか?いや、これどう見ても別の世界の文字だし、結構複雑そう。読めてるのは、今の体が高度な教育を受けてくれていたおかげだから。
「じゃあ、呼んでみましょう」
「俺も居た方がいいです?」
「はい!是非、お願いします!」
 良い笑顔だ…先に行こうと思ったのに、全然引き付けられちゃう。にっこにこの動物相手に抗う事は出来ない。何故なら…可愛いから!獣人の後に着いていくと、カウンター裏に案内される。裏側には、書類の山がずらりと並んでいて、みんなが作業をしている。本棚の中には、閉じられた冊子がたくさんある。本棚の裏手が会議室のような場所になっていた。
「ここに今から呼びますよ?」
「はい?良いと思いますよ?」
 数十分たったぐらいで、無口な人間がたくさん入ってくる。あれ、人間じゃない…よな?いや、人間でもいいけど獣人って言ったはず。なんのモチーフなんだろう?あ、ウロコが見える、これは魚だろうな。魚って事は…貝とかか?!魚ですら、獣じゃないのに?貝を入れるの?毛はどこだよ?!
「では、実験を開始します!」
「えぇ…どうぞ。」
 ずらっと並べられた板を見た数人は顔を見合わせると、頷いて覚える作業に入ったようだ。やる気に満ち溢れているな。一応、見えてはいるんだ。てことは、覚えるのも早いのかな。音声も一致しているだろうし。すると、連れられたうちの一人が手を挙げた。なんだ何か問題でもあったかな?
「覚えたそうです!」
「だから早すぎるだろ?!」
 数十分で覚えたらしい。いくら音声が一致しているからってこんなに早いものか?本当に、獣人には驚かされるな。
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