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3.お前は誰だ? ~カイル視点~
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会場が急に騒がしくなった。
誰かがホールに入って来たのが見えたけど…
誰だあの美女は?
会場中の人間が息を飲むのがわかった。
皆、呼吸すら忘れて彼女に見入っているようだった。
目立つピンクブロンドに透けるような白い肌。
何となくリナリーの顔が思い浮かんで、そんなはずはないとすぐに首を振った。
だって、あの令嬢にはボンっと前に飛び出した柔らかそうな胸がある。
だから彼女がリナリーであるはずは・・・
嘘だろ?
その彼女は、
なんと会場中の視線を独り占めしながら、騎士科のメンツのところへ向かっていったーー
ヤバいと思った。
マークもクリストファーもトビアスも、俺にならって表面上はリナリーを野郎扱いしてたけど、胸の内でどんな想い抱えてんのかは容易に想像つく。
あいつらは絶対にリナリーを狙ってる。
俺は今日、家の立場や今後のこともあって誰のエスコートもせずに挨拶周りをしていた。
だからもう少し話をしてからアイツらのとこに戻るつもりだった。
けど、リナリーがマークへと手を伸ばす瞬間、俺は『光速』で移動し、彼女の腰を抱き寄せていた。
■□
誰だこいつは…??
たしかに、色彩はピンクブロンドに若葉色の瞳という珍しい特徴からしてリナリーに間違いない。
俺はこれまで、リナリーの女装したところを見たことない。いや、ほんとは女子なんだから女装って言い方は間違ってるんだろうけど、入学当初は別のクラスだったし、騎士科へ進む前のリナリーとは全く接点がなかった。
だから騎士服や訓練着のリナリーしか知らない。
おまけにリナリーは女だってのにかわいそうなくらい胸がなくて…
見事なまでのぺちゃんこだ。
何度か訓練中に二人して吹っ飛ばされてリナリーの胸に手をついたこともあったけど、ふにゃりともしなかった。
あったのは熱い胸板のような…そう、まさに板。
そのリナリーが・・・なぜ?
腰を抱き寄せている姿勢でリナリーを見下ろすと、自然と目に飛び込んでくるのは白い胸の谷間。俺はさっきからそれが気になって仕方ない。
寄せたらこうなる・・・?
いやいや、そういう問題じゃないだろ?
じゃあどうやって隠してた?? これだけの質量を、3年間ずっと押さえつけてたとか!?
リナリーは決して男に見えてたわけじゃない。
身体は華奢だし、顔も声もほんとはめちゃくちゃかわいいレベル。
なのに、女であることに甘えずそれを武器にもせず、体力や腕力の無さを克服しようとただひたすら鍛錬に励んでた。
周りは最初、たった1人の女子生徒であるリナリーを特別視してたけど、俺はリナリーの心意気を汲んで、あえて野郎扱いしてやることにした。
俺がやればみんな従うだろうし、それがリナリーの為にもなると思った。
だからこの3年、遠慮なくふっ飛ばしてやったことも数えきれない。
まぁその度に、マークが風でバリア作って守ってたし、ケガしたらトビアスがソッコーで治しに駆けつけてたし・・・
おまけに、励ます役はいつもクリストファーがやってて、俺はただリナリーを虐めてるだけみたいな?
なんか、ちょっと損な役回りじゃね?
そんなリナリーが昨日、急にこの卒業パーティーにエスコートして欲しいとか言ってきたもんだからめちゃくちゃ焦ったっつーの。
突然どうした?
女の格好とかして、俺と踊りたいの?
おまえが?
なんか考えたら無性に恥ずかしくなって、リナリーが女だってことを素直に認めたくなくて、マークたちと一緒にずいぶん笑い飛ばしてしまったような・・・
それがまさかこんなことになるなんて。
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