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12.捕まって *
しおりを挟むピチャピチャーー
部屋に卑猥な水音が響いている。
「何で黙っていなくなろうとした?」
「ちがっ・・・手紙、残したからぁ・・」
「それでも、俺に会わずに出て行こうとしただろ? 何で?」
ピチャピチャピチャーー
「あぁ・・・あぁん・・・カイルっ・・」
あの後、カイルの部屋まで一瞬で連れ戻された。
それから無言で服を剥ぎ取られたかと思うと、こうしてベッドの上で脚を開げられて・・・
「ほら見て、リナのここ、俺のことが好きだって」
また、ピチャピチャって私の敏感なところを舌でつついたり、吸いついたり・・・
手でカイルの頭を押しても全然退いてくれない。
「いやあっ・・・」
中に指を入れられて、背中から快感が這い上がってくる。
「いや、じゃないよな。リナ、こんなに濡らしてるくせに」
そう言って、指を出したり入れたりしながらその入り口の花芽にキスをしたり、舌先でつついたり・・・
それから急に吸い上げてきてーー
「んっあっカイルっ・・・あっあっ、ぁぁぁあああああ!!」
強い刺激に、身体が勝手にのけぞってしまう。
お腹の奥がピクンピクンと収縮して、頭の中が一瞬真っ白になった。
はぁっ・・・はぁっ・・・
快感の過ぎた後にはひどい怠さと強い眠気が襲ってくる。
考えてみれば昨日は明け方までカイルに抱かれていた気がするわ・・・
息をととのえつつ、重い瞼をなんとか開けてカイルの青紫の瞳を見つめた。
私の横に寝転んだカイルは、昨日と同じ優しい目で愛しそうに私の髪を撫でている。
「好きだよ、リナ。もうお前を手離す気はないから。何があっても・・・」
そんなことを言って、カイルが私の額に口付ける。
『私、第7に入るからーー
再来週には隣国に行くの・・・』
結局、疲れ果てた身体はあっさり眠気に負けてしまって、それを伝えることはできなかった。
◇
「こちらが僕の『唯一』、リナリー嬢です」
私は今、プレスティッジ侯爵家のダイニングルームに通されたところなのだけれど、なぜかいきなりカイルのご家族に紹介されているというこの状況・・・
「は、初めてまして。リナリー・クロッカと申します。本日はお会いできて大変光栄にございます」
緊張するわよ!
だって目の前には、これから上司となる王国騎士団長、ヴィクター・フォア・プレスティッジ侯爵がカイルによく似た青紫の瞳をして私を見ていらっしゃるし・・・
その隣にはカイルと同じ色、アッシュブロンドの長い髪をゆるく纏め上げた、神がかった美貌の奥様、エレーナ様が柔らかく微笑んでいらっしゃる。
ここまでエスコートしてくれたカイルも、まずは私の椅子を引いて席に座らせてくれたあとすぐ隣の席についた。
カイルの正面に騎士団長、私の正面には奥様。
奥様の隣にはカイルの弟さんたちが3人、ニコニコしながらこちらを見ていた。
実は、この晩餐についてはさっき聞いたばかり。
目覚めたらもう日が暮れかけていて、私は本日2度目の入浴と身支度をあの侍女3人組にお世話してもらったのち、こうしてここに来ている。
つまり、どうしてこんな席が設けられたのかよくわかってないってことよ。
緊張のあまり、せっかくのお料理もあまり味がしなかったわ。
さらにサロンへ移動して、今度は食後のコーヒーを頂きながら、これまた何故だかわからないままにご両親とカイルと私、4人でおしゃべりしている。
「話には聞いていたけれど、実物は想像を遥かに凌ぐわね。リナちゃんってほんと美人だわ・・・」
奥様のエレーナ様が私を見つめて、そんなことをおっしゃる。
しかもリナちゃん呼び⁈
「お褒め頂きありがとうございます。ですが、美人とはエレーナ様のような方をこそ表す言葉だと・・・あっ!」
私が喋っている途中で声を上げたので、ご両親ともこちらを心配そうに見ていて・・・
「リナ?」
カイルが目線を合わせてくる。
それで落ち着きを取り戻した私は、
「しっ、失礼いたしました。プレスティッジ侯爵夫人と言えば社交界でも一、二を争う美しい方だと有名ですもの」
と言った流れで、
「でも、大抵ベールを着けていらっしゃるから滅多にそのお顔を拝見できないことも有名で・・・」
と緊張から、ここまでかなり早口で捲し立ててしまった。
ハッと気付いてお二人を見ると、少し笑いを堪えたような微妙な表情を浮かべていらっしゃる。
「ふふっ」
と、可愛らしいお声を出して奥様が笑いながら仰った。
「そうなの。旦那様がね、すーーっごくヤキモチ焼きなの。ベールを着けてないと外出を許してくださらないのよ?」
「えっ、団長が?」
あ、つい動揺して呼称を間違えてしまったわ。
だって、天下の王国騎士団長がヤキモチ焼きって、ねぇ。
「そうよ。プレスティッジ家の男は怖いのよ? リナちゃんも覚悟しておきなさい」
「へっ?」
私は思わず固まって、カイルを見るんだけど、カイルは「あー」なんて言いながらポリポリ頬をかいている。
「どうしたの?」
奥様が、固まる私とカイルを交互に見て首を傾げている。
しぃん・・・と、なんとも言えない気まずい空気が漂っていた。
「カイル、まさかまだ何も伝えてないとか言うなよ?」
「いやだわ、ヴィクター。いくらなんでもそんなはずないわよ。あんなに時間もあったのに・・・ねぇ、カイル?」
なんだか、私の知らないところで話が進んでいるような・・・⁈
しかもご両親の誤解のような気がする。
カイルにも伝えなきゃいけないわ、あのことを・・・
逡巡して、やっと気持ちがまとまって口を開く。
「あ、あの、きっと何か誤解されていると思います。私とカイルとは別にそのような関係では「リナ、結婚しよう!」
はい?
再び固まる私。
何かとても衝撃的な言葉が聞こえたような気がする。
「カイル、待て!」
「カイル、待ちなさい」
ご両親がユニゾン、ほんとに仲がよろしいのね・・・と、やや現実逃避気味に感心してしまう。
そんな仲良しの団長と奥様は一度顔を見合わせた後、申し合わせたように出入り口の扉へと向かわれた。
そしてお二人ともこちらを振り返ると、
「邪魔者は失礼するよ」
団長は父親らしい優しい顔を見せて仰った。
奥様はカイルによく似た神がかったお顔に、なぜか悪戯な笑みを浮かべてこう仰った。
「あとは若いお2人で・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーー
読んでくださってありがとうございました。
最終話が長くなってしまい、分けてます。もう一話お付き合いください(^^)
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