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第1章 姉妹編
第06話 夕食
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1階に降りて、ダイニングルームに入る。そこで、テーブルを挟んで二人の女性が言い争っていた。
「だから、朝頼んだのにやらなかったあんたが悪い!」
「私は、分かったとは言ってないわ。あなたが勝手に頼んだだけ。私がやる義務は、ないわ」
一人は、茶色っぽいショートヘアで日に焼けた勝気そうな女性。もう一人は、真っ黒なロングヘアに真っ白な肌の女性。
「たまに手伝ってやってるんだから、俺のいうことも聞けよ!」
「勝手に手伝ってるだけでしょ。私は頼んでないわ」
夢中で言い合っているので、僕には気づいていないようだ。ポンポンと優しく肩を叩かれたので、振り返る。そこに立っていたのは、春お姉ちゃんだった。
「どうした?」
「あの、ケンカしてるよ」
二人が誰かわからなかったので、状況だけ伝える。
「いつものことだ。ケンカばかりで本当に仲が悪い。それよりも二人のことはわかるか?」
彼女たちの顔をもう一度見て確認してみたが、やっぱり覚えていなかった。なので僕は首を横に振って、分からないと正直に答える。
「わかんない。春お姉ちゃん以外に、あとお姉ちゃんが二人いるって聞いたけど、二人がそう?」
見た印象で、高校生ぐらいだろうと見当をつける。僕が今高校1年生らしいから、僕よりも上だろう。
「そうだ。ショートヘアの方が沙希。で、ロングヘアのほうが紗綾。双子で、沙希がお姉さんだ」
「双子なんだ。でも、そっか……」
あまり似ていないな。そんな僕のつぶやきが春お姉ちゃんに伝わって、その理由を教えてくれた。
「ある2人は、二卵性双生児らしくてな。見た目も性格も、正反対になっているよ」
なるほど、と納得する。
「あっ、優!」
ショートヘアの女性が、言い争いをやめ僕に向かってニカッと大きな笑顔で言う。
「帰ってきたんだ、心配したんだぞ! 記憶喪失だって母さんから聞いたけど大丈夫か? 俺のことはわかるか?」
「えっと、沙希さんの事は春お姉ちゃんに聞きました」
自分の顔を指差して、明るい笑顔で問いかけられる。まだ距離感が分からなくて、沙希さんに対して敬語で話す。
「そっか、俺のことも忘れてたか」
がっくりと肩を落として、しょんぼり声で言う。すぐに、ズバッと春お姉ちゃんに指をさす。
「それよりも! ねえちゃん、優に近い!」
「貴女だって、近寄ってるじゃない」
「俺よりも、ねえちゃんの方が近いって!」
沙希さんに指差された、春お姉ちゃんは僕の両肩に手を置いて、僕の耳にグイッと顔を近づけて、ささやき声で聞いてきた。
「優は、嫌かい?」
「い、いや別に。嫌じゃ、ない……ですよ」
姉とは言え、今日あったばかりの女性なのでドキドキした。
「だ、そうだ。優が良いって言っているから良いんだ」
「ぐっ」
沙希さんが呻く。すると急に、今まで黙っていた紗綾さんが急に近付いてきて、僕の手を掴んだ。
「こっちに来て」
「ちょ、ま、待てって!」
沙希さんの言葉を完全に無視し、手を引っ張って僕をテーブルの席に座らされる。横の席に紗綾さんが座る。手は繋いだまま。
「私のことは、春お姉様に聞いた?」
「えっと、さっき聞きました。名前は紗綾さんだって」
「そう、それじゃあ私のことは、沙綾お姉様と呼びなさい」
なんとなく意地悪そうな雰囲気を感じる。整った顔がそうさせるのか。
「沙綾お姉ちゃん、じゃダメですか?」
お姉様なんて気恥ずかしくて呼べない僕は、代案を提案。
「それでもいいわ、敬語はなしで」
「うん、わかった」
繋いでいた手を離される。
「じゃ、俺の事は姉貴って呼んでくれ」
今度は沙希さんが言う。
「あ、あねき……」
姉貴は勘弁してほしい、と言おうとした時、香織さんの声が聞こえた。
「はい、お待たせ」
フライパンを手に台所から出てくる。夕飯を作っていたようで、お肉の焼けた匂いがする。匂いを嗅いで、お腹が減っていることを思い出す。
今すぐ、腹の音がなりそうだった。香織さんは、そのままフライパンをテーブルの上に置くと僕に向かって言う。
「本当は、店屋物を頼むつもりだったんだけれど、いつものお店がお休みだったの。ごめんなさい、ゆうくん」
「大丈夫だよ、お店のだとお金がかかるよ」
「そう?ありがとう」
台所に戻る香織さん。すぐに出てきた。右手には炊飯器を持っている。そのまま、テーブルの上に炊飯器を置く。ドンッと音が鳴った。
「じゃあ、ご飯はそれぞれよそってね」
“腹減ったー”と沙希さんが言うのを聞きながら、嫌な予感がしていた。香織さんに聞く。
「おかずは?」
「ん? ここに、お肉があるわよ」
フライパンに6枚の牛肉ステーキが載っている。
「野菜は?」
「今日は、お肉の日よ」
“にくーにくー”と言いながら箸を右手に、大盛りの茶碗を左手に持って準備万端の沙希さんを横目で眺めて思う。
(お肉だけ? これだけだと、栄養バランスに偏りが……。それにお皿に盛り付けもしないで、フライパンの上に置いているだけなのも、ちょっと……)
「ちょ、ちょっと待ってて」
食事を始めるのを止めてもらう。
(やっぱり、夕飯にステーキ一枚とご飯だけってダメすぎるだろ)
台所に入り、冷蔵庫を調べる。卵6個、ニラ、長ネギが無いけど代わりに玉ねぎがある。
焼いてあるステーキを細かく切って入れれば無駄にならずに、チャーハンぐらいは作れるだろうか。
(卵は賞味期限ギリギリで、野菜はいつ買ったものかわからない。でも、口に含んでみた感じと見た目では腐ってないから大丈夫……だと思う)
「これは、いつ買った物?」
「え? それは確か、三日ぐらい前かな」
「わかった、ありがとう」
食材を自分なりの方法で調べてみて、食べれそうなものをピックアップしていく。香織さんに購入日も確認して、まあ食べても大丈夫そうだろうと判断した物を使う。ちょっと危ないかな。でも、買いに行く時間もなしい。
「チャーハンに作り直すから、10分だけ待ってて」
フライパンを台所に戻す。流し台からまな板と包丁を洗って取り出す。
「葵を呼んでくるから、その子の分も頼む」
「うん、わかった」
調理を始めようとした時に、春お姉ちゃんが声を掛けてきた。僕の返事を聞くと、部屋から出て行った。さっきダイニングには居なかったようだけれど、葵という子を呼んでくるらしい。
香織さん、春お姉ちゃん、沙希さんに沙綾お姉ちゃん、葵ちゃんという女の子に、僕を加えて6人分。
牛肉をフライパンから出して、細かく切り刻む。フライパンには油を引き直して、強火で温める。卵を割りほぐし、ご飯とかき混ぜる。
(時間がないから、先にかき混ぜちゃおう)
ニラと玉ねぎをみじん切りにしている間に、フライパンが十分温まったので、卵と混ぜ合わせたご飯を投入していく。ご飯がパラパラになってきたところに、玉ねぎ、ニラ、お肉を加えて更に炒める。
最後に醤油で薄めに味付けして、完成した。見た目にも気を遣って6人分のお皿に盛り付けて、ダイニングテーブルに運ぶ。
「はい、どうぞ召し上がれ」
「だから、朝頼んだのにやらなかったあんたが悪い!」
「私は、分かったとは言ってないわ。あなたが勝手に頼んだだけ。私がやる義務は、ないわ」
一人は、茶色っぽいショートヘアで日に焼けた勝気そうな女性。もう一人は、真っ黒なロングヘアに真っ白な肌の女性。
「たまに手伝ってやってるんだから、俺のいうことも聞けよ!」
「勝手に手伝ってるだけでしょ。私は頼んでないわ」
夢中で言い合っているので、僕には気づいていないようだ。ポンポンと優しく肩を叩かれたので、振り返る。そこに立っていたのは、春お姉ちゃんだった。
「どうした?」
「あの、ケンカしてるよ」
二人が誰かわからなかったので、状況だけ伝える。
「いつものことだ。ケンカばかりで本当に仲が悪い。それよりも二人のことはわかるか?」
彼女たちの顔をもう一度見て確認してみたが、やっぱり覚えていなかった。なので僕は首を横に振って、分からないと正直に答える。
「わかんない。春お姉ちゃん以外に、あとお姉ちゃんが二人いるって聞いたけど、二人がそう?」
見た印象で、高校生ぐらいだろうと見当をつける。僕が今高校1年生らしいから、僕よりも上だろう。
「そうだ。ショートヘアの方が沙希。で、ロングヘアのほうが紗綾。双子で、沙希がお姉さんだ」
「双子なんだ。でも、そっか……」
あまり似ていないな。そんな僕のつぶやきが春お姉ちゃんに伝わって、その理由を教えてくれた。
「ある2人は、二卵性双生児らしくてな。見た目も性格も、正反対になっているよ」
なるほど、と納得する。
「あっ、優!」
ショートヘアの女性が、言い争いをやめ僕に向かってニカッと大きな笑顔で言う。
「帰ってきたんだ、心配したんだぞ! 記憶喪失だって母さんから聞いたけど大丈夫か? 俺のことはわかるか?」
「えっと、沙希さんの事は春お姉ちゃんに聞きました」
自分の顔を指差して、明るい笑顔で問いかけられる。まだ距離感が分からなくて、沙希さんに対して敬語で話す。
「そっか、俺のことも忘れてたか」
がっくりと肩を落として、しょんぼり声で言う。すぐに、ズバッと春お姉ちゃんに指をさす。
「それよりも! ねえちゃん、優に近い!」
「貴女だって、近寄ってるじゃない」
「俺よりも、ねえちゃんの方が近いって!」
沙希さんに指差された、春お姉ちゃんは僕の両肩に手を置いて、僕の耳にグイッと顔を近づけて、ささやき声で聞いてきた。
「優は、嫌かい?」
「い、いや別に。嫌じゃ、ない……ですよ」
姉とは言え、今日あったばかりの女性なのでドキドキした。
「だ、そうだ。優が良いって言っているから良いんだ」
「ぐっ」
沙希さんが呻く。すると急に、今まで黙っていた紗綾さんが急に近付いてきて、僕の手を掴んだ。
「こっちに来て」
「ちょ、ま、待てって!」
沙希さんの言葉を完全に無視し、手を引っ張って僕をテーブルの席に座らされる。横の席に紗綾さんが座る。手は繋いだまま。
「私のことは、春お姉様に聞いた?」
「えっと、さっき聞きました。名前は紗綾さんだって」
「そう、それじゃあ私のことは、沙綾お姉様と呼びなさい」
なんとなく意地悪そうな雰囲気を感じる。整った顔がそうさせるのか。
「沙綾お姉ちゃん、じゃダメですか?」
お姉様なんて気恥ずかしくて呼べない僕は、代案を提案。
「それでもいいわ、敬語はなしで」
「うん、わかった」
繋いでいた手を離される。
「じゃ、俺の事は姉貴って呼んでくれ」
今度は沙希さんが言う。
「あ、あねき……」
姉貴は勘弁してほしい、と言おうとした時、香織さんの声が聞こえた。
「はい、お待たせ」
フライパンを手に台所から出てくる。夕飯を作っていたようで、お肉の焼けた匂いがする。匂いを嗅いで、お腹が減っていることを思い出す。
今すぐ、腹の音がなりそうだった。香織さんは、そのままフライパンをテーブルの上に置くと僕に向かって言う。
「本当は、店屋物を頼むつもりだったんだけれど、いつものお店がお休みだったの。ごめんなさい、ゆうくん」
「大丈夫だよ、お店のだとお金がかかるよ」
「そう?ありがとう」
台所に戻る香織さん。すぐに出てきた。右手には炊飯器を持っている。そのまま、テーブルの上に炊飯器を置く。ドンッと音が鳴った。
「じゃあ、ご飯はそれぞれよそってね」
“腹減ったー”と沙希さんが言うのを聞きながら、嫌な予感がしていた。香織さんに聞く。
「おかずは?」
「ん? ここに、お肉があるわよ」
フライパンに6枚の牛肉ステーキが載っている。
「野菜は?」
「今日は、お肉の日よ」
“にくーにくー”と言いながら箸を右手に、大盛りの茶碗を左手に持って準備万端の沙希さんを横目で眺めて思う。
(お肉だけ? これだけだと、栄養バランスに偏りが……。それにお皿に盛り付けもしないで、フライパンの上に置いているだけなのも、ちょっと……)
「ちょ、ちょっと待ってて」
食事を始めるのを止めてもらう。
(やっぱり、夕飯にステーキ一枚とご飯だけってダメすぎるだろ)
台所に入り、冷蔵庫を調べる。卵6個、ニラ、長ネギが無いけど代わりに玉ねぎがある。
焼いてあるステーキを細かく切って入れれば無駄にならずに、チャーハンぐらいは作れるだろうか。
(卵は賞味期限ギリギリで、野菜はいつ買ったものかわからない。でも、口に含んでみた感じと見た目では腐ってないから大丈夫……だと思う)
「これは、いつ買った物?」
「え? それは確か、三日ぐらい前かな」
「わかった、ありがとう」
食材を自分なりの方法で調べてみて、食べれそうなものをピックアップしていく。香織さんに購入日も確認して、まあ食べても大丈夫そうだろうと判断した物を使う。ちょっと危ないかな。でも、買いに行く時間もなしい。
「チャーハンに作り直すから、10分だけ待ってて」
フライパンを台所に戻す。流し台からまな板と包丁を洗って取り出す。
「葵を呼んでくるから、その子の分も頼む」
「うん、わかった」
調理を始めようとした時に、春お姉ちゃんが声を掛けてきた。僕の返事を聞くと、部屋から出て行った。さっきダイニングには居なかったようだけれど、葵という子を呼んでくるらしい。
香織さん、春お姉ちゃん、沙希さんに沙綾お姉ちゃん、葵ちゃんという女の子に、僕を加えて6人分。
牛肉をフライパンから出して、細かく切り刻む。フライパンには油を引き直して、強火で温める。卵を割りほぐし、ご飯とかき混ぜる。
(時間がないから、先にかき混ぜちゃおう)
ニラと玉ねぎをみじん切りにしている間に、フライパンが十分温まったので、卵と混ぜ合わせたご飯を投入していく。ご飯がパラパラになってきたところに、玉ねぎ、ニラ、お肉を加えて更に炒める。
最後に醤油で薄めに味付けして、完成した。見た目にも気を遣って6人分のお皿に盛り付けて、ダイニングテーブルに運ぶ。
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