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第37話 後処理 ※エライユ侯爵家当主視点

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 エライユ侯爵家の当主は、反乱を起こすつもりなど一切なかった。

 国王が働かなくなったと聞いた時にも、別に良いと思っていた。自分が治めている領地が平和であれば、それでいい。

 だが、パトリック王子がやらかしてしまったことは問題だった。彼のせいで聖域が失われてしまった。流石に放置することは出来ない。誰かが立ち上がって、正すべきだろうと思った。上級貴族の誰かがやってくれるのではないかと、期待していた。

 ところが、誰も立ち上がろうとしない。それどころか他の貴族達が、エライユ侯爵家の当主を担ぎ上げた。

 国王が働かなくなった時、どうでもいいと思っていた彼だけど、念のために備えていた。密かに帝国と関係を築き上げて、内政に励んでいた。だから、余裕があった。その事を他の貴族達も把握していた。

 そのせいで、彼に任さたら大丈夫だろうと信頼されていた。面倒だと思いながら、彼は立ち上がった。こうなってしまう事まで予測して、準備はしていた。仕方ない。

 そして彼は、上手くやった。備えていたからこそ、大変な状況にも対応することが出来た。

 重要人物達を確保して王都を制圧した後、色々と処理するべき課題が多数あった。

 エルメノン王国の現状について、どうしてこうなったのか王国民に公表した。教会の不祥事と、王子のやらかしたことも隠さずに。彼らに敵意を集めて、処刑する。

 現国王と王妃も処刑した。喚き散らして抵抗を続けたパトリック王子と比べると、覚悟を持って受け入れた2人の最期は、それなりに立派であった。息子を放任して、部下を放任して、国王なのに国まで放任して色々と問題はあったけれど。

 王族は処刑されて、エルメノン王国は滅んだ。

 教会については残すかどうか、議論が行われた。王子の婚約者だったサブリナ嬢が使い物にならないことが判明して、他にも色々と問題があるので教会は取り潰されることに。

 エルメノン王国と一緒に、象徴だった聖域についても一緒に消し去ってしまおう。これで、教会も必要なくなってしまった。

 そうなると、新たな国防戦略を考えないといけない。今まで王国には、聖域という強固な盾があり、それに守られてきた。その盾が失われてしまったから、防衛に力を入れる必要がある。どうやって魔物の被害に恐れることなく平和を保つのか。必死に考えないといけなかった。

 とても大変な仕事だろう。これからどんどん忙しくなることを予想して、エライユ侯爵家の当主は溜息を吐いた。

 今まで本当に、我々は聖域に頼り切って生きていたと実感する。それを失うなんてパトリック王子は、なんてことをしてくれたんだと怒りを覚える。

 早々に処刑してしまったのは、失敗だったかもしれないな。もう少し痛めつけて、反省させておくべきだったかもしれない。いやでも、あんな愚か者には何を言っても無駄だったろうな。

 エライユ侯爵家の当主は気持ちを切り替え、これからどうするべきか考え始めた。
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