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第5話 新たな目標
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私の母親は、私が6歳の頃に亡くなった。
とても優秀な魔法使いで、回復魔法が得意だった。亡くなるまで沢山の怪我人達を治癒してきたそうだ。亡くなってから10年経った今でも、母の名前や功績を覚えている人が居るぐらい有名だった。
彼女が亡くなったのは、蓄積した疲労により病気になってしまったことが主な原因だと言われている。とても優しい人で、誰彼構わず怪我人が居ると知ったら飛んでいって治療をしないと気が済まない、という性格だった。お母様は、人を助けるために頑張りすぎた。
そんな過去があったので、私は回復の魔法について熱心に勉強するようになった。そして、王子の婚約者としても役に立てると思っていた。立派な王妃になるために、努力してきた。激務として知られる王族の公務を、回復魔法で私が支えてあげる。そして、自分は疲労で倒れたりしないように気をつける。
そんな思いを持って、今まで魔法を練習して、腕を磨いてきた。
残念ながら私は、婚約を破棄された。なので、そんな未来は消えて無くなってしまったけれど。
だから私は、今の家に未練はない。この家を出ていっても、困ることは何もない。むしろ、良い機会だと思った。私は、さらに回復魔法の腕を磨く。そして、お母様のような魔法使いを目指してみよう。怪我人を治療して、感謝されるような立派な魔法使いになる。
それが、これから私の人生の目標。
父への報告を終えた後、私は自室にこもって夜になるのを待った。そして。
「旅の荷物は、このぐらいで大丈夫ね」
魔法を使うために必要な杖。それから、食料と着替えに地図と旅費など。他にも色々とかばんに詰め込んで、背負う。家を出る準備は完璧だった。
実は以前から家を出ようと思って、旅の準備をしてみたことがあった。その時は、母と一緒に過ごした思い出のある屋敷を出ていくのが心苦しかった。マクシミリアン王子との婚約もあった。それで、今まで家を出ることは断念してきた。
だが、今度こそ家を出ていく。過去の思い出に別れを告げて、レイモルド公爵家の令嬢という立場を捨てて、ただの小娘のマリアンヌとして生きていく。
夜になって静まり返った屋敷から、私は旅の荷物を持って出てきた。置き手紙だけ部屋に残して。
朝になったら誰かが置き手紙を発見して、私が自分の意志で家を出たということを知るだろう。
私に対して関心の薄い父なら、追手を掛けるということは無いはず。妹のルイーゼだったら、必死に探すでしょうけど。だから、連れ戻されることは無いはず。
マクシミリアン王子の婚約相手も、妹に代わったから私は不要になった。私の新たな婚約相手を探す手間も省けるので、放って置かれるだろう。それで良かった。
隣の国まで行ってみよう。令嬢としての私を知らない遠く離れた国に行き、そこで自由に行動する。得意の回復魔法を駆使する冒険者を目指してみるつもりだった。
モンスターと戦ったり、ダンジョンを攻略したりする冒険者。魔法使いとしての経験を積める仕事をして、腕を磨く。そんな予定。
冒険者以外にも、怪我人を癒やす治療師という仕事もある。どうやら、お母様が昔そんな事をやっていたらしい。そういう生き方に専念するのも良いかもしれない。
とにかく他国に行ってみて、それから何の仕事をするのか考えよう。
まずは、先を急ぐ一人旅で国境へ向かう。女一人だけだと危ないかもしれないが、それなりに鍛えている。回復魔法だけでなく、攻撃魔法も練習していた。だから警戒しておけば、なんとか大丈夫なはずだ。
「よし、行こう」
私は小声でつぶやくと、新たな一歩を踏み出した。
とても優秀な魔法使いで、回復魔法が得意だった。亡くなるまで沢山の怪我人達を治癒してきたそうだ。亡くなってから10年経った今でも、母の名前や功績を覚えている人が居るぐらい有名だった。
彼女が亡くなったのは、蓄積した疲労により病気になってしまったことが主な原因だと言われている。とても優しい人で、誰彼構わず怪我人が居ると知ったら飛んでいって治療をしないと気が済まない、という性格だった。お母様は、人を助けるために頑張りすぎた。
そんな過去があったので、私は回復の魔法について熱心に勉強するようになった。そして、王子の婚約者としても役に立てると思っていた。立派な王妃になるために、努力してきた。激務として知られる王族の公務を、回復魔法で私が支えてあげる。そして、自分は疲労で倒れたりしないように気をつける。
そんな思いを持って、今まで魔法を練習して、腕を磨いてきた。
残念ながら私は、婚約を破棄された。なので、そんな未来は消えて無くなってしまったけれど。
だから私は、今の家に未練はない。この家を出ていっても、困ることは何もない。むしろ、良い機会だと思った。私は、さらに回復魔法の腕を磨く。そして、お母様のような魔法使いを目指してみよう。怪我人を治療して、感謝されるような立派な魔法使いになる。
それが、これから私の人生の目標。
父への報告を終えた後、私は自室にこもって夜になるのを待った。そして。
「旅の荷物は、このぐらいで大丈夫ね」
魔法を使うために必要な杖。それから、食料と着替えに地図と旅費など。他にも色々とかばんに詰め込んで、背負う。家を出る準備は完璧だった。
実は以前から家を出ようと思って、旅の準備をしてみたことがあった。その時は、母と一緒に過ごした思い出のある屋敷を出ていくのが心苦しかった。マクシミリアン王子との婚約もあった。それで、今まで家を出ることは断念してきた。
だが、今度こそ家を出ていく。過去の思い出に別れを告げて、レイモルド公爵家の令嬢という立場を捨てて、ただの小娘のマリアンヌとして生きていく。
夜になって静まり返った屋敷から、私は旅の荷物を持って出てきた。置き手紙だけ部屋に残して。
朝になったら誰かが置き手紙を発見して、私が自分の意志で家を出たということを知るだろう。
私に対して関心の薄い父なら、追手を掛けるということは無いはず。妹のルイーゼだったら、必死に探すでしょうけど。だから、連れ戻されることは無いはず。
マクシミリアン王子の婚約相手も、妹に代わったから私は不要になった。私の新たな婚約相手を探す手間も省けるので、放って置かれるだろう。それで良かった。
隣の国まで行ってみよう。令嬢としての私を知らない遠く離れた国に行き、そこで自由に行動する。得意の回復魔法を駆使する冒険者を目指してみるつもりだった。
モンスターと戦ったり、ダンジョンを攻略したりする冒険者。魔法使いとしての経験を積める仕事をして、腕を磨く。そんな予定。
冒険者以外にも、怪我人を癒やす治療師という仕事もある。どうやら、お母様が昔そんな事をやっていたらしい。そういう生き方に専念するのも良いかもしれない。
とにかく他国に行ってみて、それから何の仕事をするのか考えよう。
まずは、先を急ぐ一人旅で国境へ向かう。女一人だけだと危ないかもしれないが、それなりに鍛えている。回復魔法だけでなく、攻撃魔法も練習していた。だから警戒しておけば、なんとか大丈夫なはずだ。
「よし、行こう」
私は小声でつぶやくと、新たな一歩を踏み出した。
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