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第2話
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「ジョスリーヌ?」
「ハイ、私です」
彼女は、ニコッと笑って返事をした。それから、クリストフ様の横に慣れた様子で腰を下ろす。
「わざわざ、来てもらってすまないな」
「いいえ、大丈夫ですよ」
2人は私の目の前で、とても親密そうなやり取りをする。以前から、こうだったのかしら。あまり覚えていなかった。
「クリストフ様に婚約を破棄されて、残念ですわね。お姉さま」
私の妹であるジョスリーヌは、当てつけるように言った。彼女の表情は、とっても嬉しそう。奪い取ったと勝ち誇っているのだろう。昔から、事あるごとに対抗意識を向けられることが多々あった。
ジョスリーヌの勝ちに貪欲な性格は、意外と嫌いじゃない。勝てた時に慢心したり優越感に浸りすぎるのは、ちょっと心配だが。
そんな彼女は、続けて話す。
「ですが、安心して下さい。お姉さまの代わりに私が、クリストフ様と結婚します。家族での話し合いも既に済ませてありますから、家同士の関係は悪化しません」
「そうだったの」
本当に、私が知らない間に全て終わっていたらしい。家同士の関係が悪くならないように、話し合いも済んでいると聞いて驚いた。そして安堵する。既に話が終わっているというのなら、面倒がなくて良いから。
「お姉さまってば、剣の練習ばかりで家のことは何にも興味ないですものね!」
「それは、すまない」
確かに最近、家のことを疎かにしていたかもしれない。大会に集中していたから。皮肉だと理解しているが、それは素直に反省するべき点だと思ったから謝る。
私はクリストフ様の方を向いて、婚約破棄について話を戻す。
「婚約破棄の件、了承しました」
「あっさりと受け入れるのだな」
「? もう、決定事項なのでしょう?」
「それは、そうだが……」
婚約破棄を了承すると答えると、なぜかクリストフ様は不満そうな顔をしていた。彼は、もっと違う反応を期待していたらしい。
「女らしく、考え直してくれと泣いて縋ってみたらどうなんだ?」
「そういうのは、私の性に合っていませんから」
これ以上の会話は無駄だと感じた私は、席を立つ。
「話は終わったようなので、帰ります」
さっさと部屋から出よう。扉に向かって一直線で歩いていると、背中から呼びかけられた。
「お姉さま」
「なに?」
ジョスリーヌの声に、私は立ち止まって振り返る。
「お姉さまも女なのですから、剣術なんて習わずにダンスやお茶の勉強をしたほうが良いですよ」
「社交界で必要な技術とマナーは必要最低限だが、ちゃんと身に付けているよ」
「ダメダメ! クリストフ様の言うように、もっと女らしくしないと。じゃないと、好きな人を取られちゃいますよ」
「私は、そうは思わないが。忠告は感謝する」
適当に返事をして話を切り上げると、私は1人で部屋から出た。
「ハイ、私です」
彼女は、ニコッと笑って返事をした。それから、クリストフ様の横に慣れた様子で腰を下ろす。
「わざわざ、来てもらってすまないな」
「いいえ、大丈夫ですよ」
2人は私の目の前で、とても親密そうなやり取りをする。以前から、こうだったのかしら。あまり覚えていなかった。
「クリストフ様に婚約を破棄されて、残念ですわね。お姉さま」
私の妹であるジョスリーヌは、当てつけるように言った。彼女の表情は、とっても嬉しそう。奪い取ったと勝ち誇っているのだろう。昔から、事あるごとに対抗意識を向けられることが多々あった。
ジョスリーヌの勝ちに貪欲な性格は、意外と嫌いじゃない。勝てた時に慢心したり優越感に浸りすぎるのは、ちょっと心配だが。
そんな彼女は、続けて話す。
「ですが、安心して下さい。お姉さまの代わりに私が、クリストフ様と結婚します。家族での話し合いも既に済ませてありますから、家同士の関係は悪化しません」
「そうだったの」
本当に、私が知らない間に全て終わっていたらしい。家同士の関係が悪くならないように、話し合いも済んでいると聞いて驚いた。そして安堵する。既に話が終わっているというのなら、面倒がなくて良いから。
「お姉さまってば、剣の練習ばかりで家のことは何にも興味ないですものね!」
「それは、すまない」
確かに最近、家のことを疎かにしていたかもしれない。大会に集中していたから。皮肉だと理解しているが、それは素直に反省するべき点だと思ったから謝る。
私はクリストフ様の方を向いて、婚約破棄について話を戻す。
「婚約破棄の件、了承しました」
「あっさりと受け入れるのだな」
「? もう、決定事項なのでしょう?」
「それは、そうだが……」
婚約破棄を了承すると答えると、なぜかクリストフ様は不満そうな顔をしていた。彼は、もっと違う反応を期待していたらしい。
「女らしく、考え直してくれと泣いて縋ってみたらどうなんだ?」
「そういうのは、私の性に合っていませんから」
これ以上の会話は無駄だと感じた私は、席を立つ。
「話は終わったようなので、帰ります」
さっさと部屋から出よう。扉に向かって一直線で歩いていると、背中から呼びかけられた。
「お姉さま」
「なに?」
ジョスリーヌの声に、私は立ち止まって振り返る。
「お姉さまも女なのですから、剣術なんて習わずにダンスやお茶の勉強をしたほうが良いですよ」
「社交界で必要な技術とマナーは必要最低限だが、ちゃんと身に付けているよ」
「ダメダメ! クリストフ様の言うように、もっと女らしくしないと。じゃないと、好きな人を取られちゃいますよ」
「私は、そうは思わないが。忠告は感謝する」
適当に返事をして話を切り上げると、私は1人で部屋から出た。
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