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6:侮辱発言の噂

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 仕切り直すため、一度ゴホンと咳払いすると私はにっこり微笑みながら訂正した。

「白髪ではなく銀髪ですよ? そうは見えないかもしれませんけれど私、貴方と同じ十代です」

 貴方と同じ、というところを強調して言うと、オリオンにぶはっと吹き出される。

「うっそだー、葬式の匂いするしうんこみたいな髪型だし、そこらの婆さんと一緒だろ」

 ――ビキッ

「どうせなら神殿にいたローズって子がよかったなー。称号獲得の行事を手伝ってたんだけどさ、笑顔がカワイイんだ。学園の男どもが水晶運ぶの助けようとするの、争奪戦になってたんだぜ」
「……ローズマリーの事ですか? 彼女はまだ十三歳になったばかりでは」
「ババアよりマシじゃん」

 ――ビキビキッ

「そもそも【勇者の父】って称号も気に入らないんだよな。師匠は宿命だって言ってるけど、俺は勇者になりたかった。勇者の子孫である、大賢者ピエールに認められたかったのに!」
「称号はあくまで一番適性のある未来という目安です。ただ今回に限っては世界に危機が迫っている状況で、個人的感情を慮れないのはお気の毒ですが……」
「あー、うるせぇ!! 師匠も王様も先公も、みんなお前みたいに型に嵌めようとしやがって! 俺は勇者を産む機械じゃねえんだぞ!!」

 宥めようとする私に被せるように、叫びながら頭をぐしゃぐしゃかき回すオリオン。
 私は……『勇者を産む機械』という言葉が心に突き刺さっていた。

「宿命なんて知った事か、魔王は俺がぶっ倒すんだよ!!」

 その野望は実に少年らしく、勇者の子孫の養子という立場を考えても抱いて当然の夢だろう。普段の私であれば、むしろ微笑ましく感じて受け流していた、けれど――

(もういいや。こいつ種馬決定)

 先程から繰り出される容赦のない暴言に、こちらも子供だからと遠慮するのがバカバカしくなっていた。速攻でごめんなさいして関わりを断ち切りたいが、放っておけば世界が滅亡するのにそんな呑気な事も言ってられない。
 だったら一刻も早く、『計画』を達成してさようならすればいいじゃないか。ここに来るまでの間、オリオンの将来のために決めていた事からそう変わらない。

「貴方の言い分は分かりました」

 私の笑みが引きつったものから、吹っ切れた清々しいものに変わると、オリオンはビクッと口を閉じた。ようやく私を怒らせたのに気付いたのだろう。

「ですが『計画』は国家によるものであり、貴方のお父様――イーダ男爵にもご承諾いただいております。勇者になって直接魔王討伐へ赴くのも大いに結構。ただしあと二年、いえわたくしが貴方の子を無事出産するまでの猶予をいただけませんか?
この結婚は契約です。義務さえ果たせば魔王を倒そうがローズマリーと付き合おうが、貴方の自由をお約束しましょう」

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