貸与術師と仕組まれたハーレムギルド ~モンスター娘たちのギルドマスターになりました~

音喜多子平

文字の大きさ
3 / 86
エピソード1

貸与術師と進路

しおりを挟む
 お隣同士なので玄関を開けるその瞬間まで他愛もない話で盛り上がっていた。すると帰り際にヤーリンが言った。

「それじゃあ、また後でね」
「え? 何かあったっけ?」

 俺は頭の中で予定帳を捲ってみた。けれどヤーリンと何かを約束していた記憶などはまるで残っていない。

「…今日はヲルカの家で誕生会でしょ?」
「…誰の?」
「ヲルカのに決まってるじゃん!」
「あ…」

 言われてみれば今日が誕生日だし、親もそんなことを言っていた気がする。俺の家族とヤーリンの家族は頗る仲がいいのでこうしてどちらかの家族の誕生日には二世帯が集まってパーティをやるのが通例だ。自分の事なのにすっかりと忘れていた。

 ヤーリンは頬を膨らませ、ジトッと湿った視線をこちらに飛ばしてくる。

「もう…先月に私の誕生日会してくれたばっかりなのに」
「いやあ、ヤーリンは覚えていたんだけど自分のは忘れちゃうね」
「どっちも覚えててよ! とにかくパパが帰ってきたら行くからどっかに遊びに行っちゃダメだよ」

 俺に釘を刺したヤーリンはスルスルと蛇の体を使って家の中に入っていった。

 自室に入った俺は通学鞄を適当に置くとささっと部屋着に着替えた。もうちょっとピシッとした格好の方がいいかな? まあ先月のヤーリンの誕生日と違って今日の主役は俺だ。多少ラフでも問題ないでしょう。

 まだまだ時間はあるので俺は机に座ると引き出しの中から例のじっちゃんの画集を取り出した。何か中毒性があるんだよな、この絵は。一年365日見てても飽きが来ない。見るたびに発見があったり、横に記されている事細かな背景世界にどっぷりと引き込まれてしまうのだ。

 改めて考えなくてもこんな数多くのバックストーリーと容姿をじっちゃん一人で考えたとは思えない。誰か他にアイデアを提供する人がいたか、もしくは本当にこの怪物達が存在している別世界に行っていたとか…なんて流石に発想が突飛すぎるか。

そんな事を自室の机に向かいながら考えていると、驚くほど時間が進んでいたようで母から食卓にくるように呼ばれた。俺は返事と共に画集を引き出しにしまうと足早に階段を降りて下へと向かった。

 いざダイニングに行ってみると、テーブルの上には見た事もないようなご馳走が並んでいる。そして両親と一緒に俺の誕生日を祝うために、ヤーリンと彼女の両親がいつの間にかやってきていた。

 俺の姿を見つけるとヤーリンが改まってこちらに寄ってきた。あの後に着替えたのであろう、こじゃれたレストランにでも行くような余所行きの服を来てお祝いの言葉を伝えてくる。

「お誕生日おめでとう、ヲルカ」

 先程別れ際に見せた不機嫌顔はどこ吹く風。眩しいくらいの笑顔で可愛らしく梱包したプレゼントを渡してきた。

 …あれ? 何だかヤーリン、滅茶苦茶大人になってない?

「あ、ありがとう。ヤーリン」

 お礼を告げると、ヤーリンは「へへへ」と更に初々しく笑う…あ、やっぱり子供っぽい。良かった、何だか俺だけ置いていかれたのかと思った。

 そんな様子をお互いの親は、実に微笑ましく見ていた。

「さ、ヤーリンちゃん。ヤングウェイさんたちも席についてください。今年もウチの子のためにありがとうございます」

 母の一言で俺たちはそれぞれ席につく。その時、食事の時にはほぼ必ずと言って差し支えない頻度で俺の椅子に座って寝ている飼い猫のテイサをどける。テイサは「ニャー」と声を出したが、きっと「誕生日おめでとう」と祝ってくれているのだろうと勝手に解釈し、頭を撫でた。

 オレ達家族は普通に椅子に座ったが、ヤーリン達ご一家は器用にとぐろを巻いて、その上に上半身を座らせるようにしている。流石は蛇の特徴を持つラミア族といったところか。テーブルが高いので、ヤーリンだけは一つ台を噛ませてはいるが。

 始めのうちは素直に誕生日を祝われ、料理の味を聞かれたりといった会話が流れたが、次第に俺とヤーリンの学校生活の話題へと変わっていった。

「いよいよ二人も中等部卒業…か、早いねえ」
「全くだな」
「ところでヲルカ君は進路は決めたのかい? できれば僕やヲーナッツやヤーリンと同じように『ヤウェンチカ大学校』を志望してくれれば、こんなに嬉しいことはないのだけれど。こればかりは君自身の選択だからね」
「そうだよ。ヲルカも『ヤウェンチカ大学校』に決めちゃえばいいのに」
「たはは…」

 ヤーリンの父親であるユアンさんの言葉を愛想笑いでかわす。実を言うと俺はこの段階をもってして、未だに進路を決めかねているのが現状だった。

 何となく踏ん切りが付かず、その上どこのギルドに対しても大きな興味や関心が持てないでいる。差し当たってやりたい事も特技もあるわけでないし、成績だって特筆すべきところはない。あるいはこの感覚は遂に亡くなるまで無所属のイレブンを貫いたじっちゃんの影響を受けているのかもしれない。

 ヱデンキアに存在する十個のギルド、そのいずれにも所属しない者は通称で「イレブン」と呼ばれる。社会不適合者というと過言だが、ヱデンキアで生活する上で不利になる場面は多いと聞く。

「特に最近は物騒な…というか何とも奇妙な事件の話を聞くしね。騎士はお姫様の傍にいてほしいじゃないか」

 俺は奇妙な事件と言う単語に反応したのだが、ヤーリンは騎士と姫という言葉に反応していた。

「パパ。もうお姫様って言われて喜ぶ歳じゃないよ…」
「何を言っているヤーリン。ヤーリンは何歳になろうとも可愛い可愛いお姫様なんだよ。そうか…屈強な騎士と言うのなら『ナゴルデム団』に入ると言う手も、」
「ダメ! ヲルカは喧嘩弱いもん!!」

 ヤーリンが高らかに言い放つと食卓は途端に笑いに包まれる。俺は実に面白くない顔をしながらサラダをムシャムシャと頬張っていた。

 ◇

 さて俺の誕生日から約三ヶ月後。

 光陰矢の如し、とはよく言ったもので俺達の中等部学校生活もまもなく卒業が見えるところにまでやってきてしまった。ヱデンキアの義務教育制度は初等部は六年、中等部が三年と定められている。

 高等部や大学にあたる機関は、『ヤウェンチカ大学校』を除く各ギルドにも存在しており、一般的には中等部を出ると、自分の価値観や得意な魔法に見合ったギルドの学校に進み、そこでギルド活動にも参加しながら研鑽を積む。

 なのでヱデンキアの子供たちは割かし早い段階で、将来の職業や自分の夢を見据えているのだ。

 初等部の六年と中等部の三年の日々の授業の中でヱデンキアの基礎的な知識や常識を習得できたし、得意な魔法系統というのも掴めてきた。どうやら俺という人間は緑と青の魔法が得意らしかった。その色の特に実践的な魔術の習得は教師陣が目を見張るほどの上達っぷりだったと自負している。

 が、それも俺のいた環境を考えてみれば当然だろう。

 俺がここまで魔法の技術が上達したのには二つの意味でヤーリンが絡んでいる。

 一つ目にヤーリンが百年に一人の天才と称される程、緑と青の魔法に対する類稀なる才能の持ち主だったことが挙げられる。幸いにもこの九年の間、ヤーリンとの仲はすこぶる好調で学校の外でも中でも常に一緒にいるような間柄だった。当然、ヤーリンの魔法を間近で見る機会が一番多く、直々に魔法を教えてくれたこともあって、俺も飛躍的に青と緑の魔法が上達していったのだ。

 そして二つ目の理由にヤーリンが年を追うごとに麗しく成長していったという事がある。

 端的に言うと、アレだ。

 ヤーリンに岡惚れをして、常に一緒にいる俺に嫉妬心を燃やし、ちょっかいを掛けてくるタックスのような連中が中学三年生になったあたりから爆発的に増えたのだ。

 緑の魔法は生命や肉体に根強い関係性を持っている。体力を回復させたり、身体能力を向上させたりというタイプの魔法がカテゴライズされている。一方で青の魔法は風や水、精神力といった流動性が高かったり無形の物質を司る。無形という点では魔法を使うために必要な『魔力』そのものも含まれている。その為、青の魔法を突き詰めていくと相手の使ってくる魔法に対しての妨害が可能になるのだ。

 俺に絡んでくる連中は人外がほとんどで、しかも大なり小なり魔法を使う。自己防衛の為に否が応にも魔法が上達するのは、正しく当然の事だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...