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全裸トリップ★五里霧中
2:図書館から行ってらっしゃい
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端から見ればただのバカップルにしか見えないであろう彼等は、図書館に辿り着いても離れようとしなかった。
真っ直ぐ目当ての本棚に向かっていく瑠璃川と成海の姿をちらりと見やった男性職員は、「今日もお熱いことで」と内心で独りごちた。
放課後の図書館は閑散としており、もうすぐ閉館時間ということもあって、今図書館内にいる人間は多くない。瑠璃川達のことをよく見かけることが多い彼は、まあのんびり待つかとパソコンのキーボードをゆっくり打ち始めた。
職員からもお熱いカップルだと認識されてしまっている瑠璃川達は、入口から一番遠い本棚の前へと辿り着いていた。
自分の背丈よりも高いそれが立ち並び、通路も狭いため視界は悪い。カウンターにいた職員の姿もここからだと全く見えなくなっていた。
「で、瑠璃川ちゃん、こんな奥まで何借りに来たの?」
「ああ。最近映画化された作品の原作でな。原作自体は数十年前に書かれた物だからこの一角に陳列されているんだ。シリーズものでなかなか面白いぞ!」
「へぇ……、瑠璃川ちゃんがそう言うなら俺も読んでみよっかな」
「ほう、そうかそうか! 僕の好きな物を共有出来るのは嬉しいぞ」
「……ん、俺も好き」
耳元で擽るように囁かれた響きに、ぼわりと脳内がオーバーヒートする。
「(違う違う違う成海はそういう意味で言ったんじゃない勘違いするな僕……!!)」
……などと、思考がぐるぐる渦巻いてしまう。ほわほわと火照ってくる身体を誤魔化すように、瑠璃川は本棚へと手を伸ばした。
目当ての本を取ろうとして、……ふと、その隣にある一冊の本に目が吸い寄せられた。
何のことはない分厚い背表紙のハードカバー本だが、タイトルが何も書かれていなかったのだ。この前図書館に訪れた時はこんな本を見た記憶がない。新刊ならば新刊コーナーに並べられるはずだから、もしかすると別の本棚から紛れ込んできた可能性もある。
なんとなく、好奇心を刺激されて。瑠璃川は望んでいた本の隣にあったそれを手に取った。
表紙買いという言葉があるように、背表紙にも惹かれるモノはあるようだ。
「……なに、その本。表紙何も書いてないじゃん」
「む、……本当だな。落丁……にしても表紙が落丁するパターンはなかなかないと思うが……」
背表紙同様まっさらだった表紙に首を傾げつつ、瑠璃川はぺらりとページを捲る。
パラパラとページがはためいた、刹那。
カッ、と眩い光が本から溢れ出し、二人の視界を白く染め上げた。
「っわ……!?」
「なっ……!? っ、瑠璃川ちゃん!」
「な、なるみ……っ!」
咄嗟にお互いを求めて伸ばした手は、あと僅かのところで届かず。
しゅうぅ、と光が収束した後に残ったのは、床に落ちて音もなく佇む白紙の本のみであった。
真っ直ぐ目当ての本棚に向かっていく瑠璃川と成海の姿をちらりと見やった男性職員は、「今日もお熱いことで」と内心で独りごちた。
放課後の図書館は閑散としており、もうすぐ閉館時間ということもあって、今図書館内にいる人間は多くない。瑠璃川達のことをよく見かけることが多い彼は、まあのんびり待つかとパソコンのキーボードをゆっくり打ち始めた。
職員からもお熱いカップルだと認識されてしまっている瑠璃川達は、入口から一番遠い本棚の前へと辿り着いていた。
自分の背丈よりも高いそれが立ち並び、通路も狭いため視界は悪い。カウンターにいた職員の姿もここからだと全く見えなくなっていた。
「で、瑠璃川ちゃん、こんな奥まで何借りに来たの?」
「ああ。最近映画化された作品の原作でな。原作自体は数十年前に書かれた物だからこの一角に陳列されているんだ。シリーズものでなかなか面白いぞ!」
「へぇ……、瑠璃川ちゃんがそう言うなら俺も読んでみよっかな」
「ほう、そうかそうか! 僕の好きな物を共有出来るのは嬉しいぞ」
「……ん、俺も好き」
耳元で擽るように囁かれた響きに、ぼわりと脳内がオーバーヒートする。
「(違う違う違う成海はそういう意味で言ったんじゃない勘違いするな僕……!!)」
……などと、思考がぐるぐる渦巻いてしまう。ほわほわと火照ってくる身体を誤魔化すように、瑠璃川は本棚へと手を伸ばした。
目当ての本を取ろうとして、……ふと、その隣にある一冊の本に目が吸い寄せられた。
何のことはない分厚い背表紙のハードカバー本だが、タイトルが何も書かれていなかったのだ。この前図書館に訪れた時はこんな本を見た記憶がない。新刊ならば新刊コーナーに並べられるはずだから、もしかすると別の本棚から紛れ込んできた可能性もある。
なんとなく、好奇心を刺激されて。瑠璃川は望んでいた本の隣にあったそれを手に取った。
表紙買いという言葉があるように、背表紙にも惹かれるモノはあるようだ。
「……なに、その本。表紙何も書いてないじゃん」
「む、……本当だな。落丁……にしても表紙が落丁するパターンはなかなかないと思うが……」
背表紙同様まっさらだった表紙に首を傾げつつ、瑠璃川はぺらりとページを捲る。
パラパラとページがはためいた、刹那。
カッ、と眩い光が本から溢れ出し、二人の視界を白く染め上げた。
「っわ……!?」
「なっ……!? っ、瑠璃川ちゃん!」
「な、なるみ……っ!」
咄嗟にお互いを求めて伸ばした手は、あと僅かのところで届かず。
しゅうぅ、と光が収束した後に残ったのは、床に落ちて音もなく佇む白紙の本のみであった。
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