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全裸トリップ★五里霧中
5:一夜明けて
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「……なるほど。つまり、この世界とは別の世界に、私とそっくりな『ルリカワシオン』という人間がいるのだな」
「うん、ざっくり言うとそんな感じ」
「それに加えて、お前の好きな相手ということか」
「……それ、瑠璃川ちゃんの前では言わないでね」
「ふふ、分かっているよ。……信じがたいことではあるが、実際に私と似通った名前な上に、お前も私の知るナルーミとそっくりだからな」
所謂、パラレルワールドというものか。
……事もなげにそう呟いたルゥリカワは、手に持っていたトーストにぱくりとかぶりついた。
宿の一角、瑠璃川が暮らしている部屋の中で、彼等は朝食を取っていた。昨日はなんだかんだでそのまま寝てしまったから、仕切り直しとしてご飯を共にしながら情報を交換していたのだ。
「そうだね。さっき会った郷秋先輩……ゴーシュさんと似た人も俺んとこにいるけど、あんな筋肉隆々じゃないしね。こっちの郷秋先輩は格闘王か何か目指してんの?」
「はは、おかしなことを言うな。ゴーシュはこの宿の主だぞ。戦うところなど一度も見たことがない」
「……ま、戦う前に相手が気力なくしちゃうからだろーけど」
それより、と成海は固い口調で本題を切り出した。
「俺がルゥリカワの所に来てるってことは、瑠璃川ちゃん……紫苑ちゃんはこっちの世界の俺の所に行ってる可能性が高いってことだよね」
「ああ、そうだな。……だが、リクと同じように全裸で落ちてしまったのなら……シオンが危ないかもしれないな」
「……危ないって?」
「ナルーミは巷では狂犬と呼ばれる程気性が荒くて、獲物と決めたモノはどんな手を使ってでも盗む盗賊なんだ。まあ、義賊とも呼ばれてはいるが……、行為自体は犯罪そのものだ。私も天女の羽衣を狙われて不定期に襲われている。だからナルーミが紫苑を僕だと勘違いして襲う可能性も高いんだよ」
今は踊り子の衣装ではなくラフな格好をしているが、天女の羽衣と称される青色の薄いショールは、腰に巻いてしっかりと身につけているようだ。
だが、それよりも聞き捨てならないことがあり、成海はフォークを持つ手をピタリと止めて前に座るルゥリカワを見やった。
「だいぶさらっと言ったけど、襲われるってまさか……」
「無論、性的にだ。最初はそれこそ強姦紛いだったがな。……何度も逢瀬を重ねる内にあいつのことを知っていって、気がついた時には沼に嵌っていた。あいつは私のことを体のいい性欲処理としか思っていないだろうがな。…………だから、」
すうっと真剣な色を瞳に宿してかたりと立ち上がったルゥリカワは、強い口調で言い放つ。
「一刻も早くシオンを保護するぞ、リク」
「……言われなくても、そのつもりだし。つーか、こっちの俺がいる場所って分かるの?」
「いや、分からんな」
「早速計画が破綻してるじゃん……」
「話は最後まで聞け。分からないが、おびき出すことは可能だ。あいつの嗅覚は獣並だからな。町の中ではあまり効果がないが、砂漠に出向けば効果は抜群だろう。お前にも少し手伝ってもらうぞ」
「紫苑ちゃんを見つけるためなら何だってしてやるし」
「そうか。それは心強いな。……さて、そうと決まれば着替えなくては」
「……? そのカッコのままじゃ駄目なの?」
「なに、私は踊り子の衣装を身につけている時が一番美しいからな」
「それって『ナルーミ』の前では美しいカッコでいたいってこと?」
間違ってはない、と小さく微笑んだルゥリカワは、非常時なのにすまないなと詫びながら朝食を食べ終えた空のトレーを成海の物に重ね始める。
「これを下の階の厨房まで持って行ってくれ。お前が戻ってくるまでには着替えておこう」
「……分かった」
大人びたルゥリカワが子供のように微笑んだ時に感じたのは、ふわりとした恋の匂い。
強姦するような酷い奴をよく好きになったもんだな、と驚きと感嘆が混じった息を吐いた成海は、軽くなったトレーをかちゃかちゃと鳴らしながら部屋を後にした。
「うん、ざっくり言うとそんな感じ」
「それに加えて、お前の好きな相手ということか」
「……それ、瑠璃川ちゃんの前では言わないでね」
「ふふ、分かっているよ。……信じがたいことではあるが、実際に私と似通った名前な上に、お前も私の知るナルーミとそっくりだからな」
所謂、パラレルワールドというものか。
……事もなげにそう呟いたルゥリカワは、手に持っていたトーストにぱくりとかぶりついた。
宿の一角、瑠璃川が暮らしている部屋の中で、彼等は朝食を取っていた。昨日はなんだかんだでそのまま寝てしまったから、仕切り直しとしてご飯を共にしながら情報を交換していたのだ。
「そうだね。さっき会った郷秋先輩……ゴーシュさんと似た人も俺んとこにいるけど、あんな筋肉隆々じゃないしね。こっちの郷秋先輩は格闘王か何か目指してんの?」
「はは、おかしなことを言うな。ゴーシュはこの宿の主だぞ。戦うところなど一度も見たことがない」
「……ま、戦う前に相手が気力なくしちゃうからだろーけど」
それより、と成海は固い口調で本題を切り出した。
「俺がルゥリカワの所に来てるってことは、瑠璃川ちゃん……紫苑ちゃんはこっちの世界の俺の所に行ってる可能性が高いってことだよね」
「ああ、そうだな。……だが、リクと同じように全裸で落ちてしまったのなら……シオンが危ないかもしれないな」
「……危ないって?」
「ナルーミは巷では狂犬と呼ばれる程気性が荒くて、獲物と決めたモノはどんな手を使ってでも盗む盗賊なんだ。まあ、義賊とも呼ばれてはいるが……、行為自体は犯罪そのものだ。私も天女の羽衣を狙われて不定期に襲われている。だからナルーミが紫苑を僕だと勘違いして襲う可能性も高いんだよ」
今は踊り子の衣装ではなくラフな格好をしているが、天女の羽衣と称される青色の薄いショールは、腰に巻いてしっかりと身につけているようだ。
だが、それよりも聞き捨てならないことがあり、成海はフォークを持つ手をピタリと止めて前に座るルゥリカワを見やった。
「だいぶさらっと言ったけど、襲われるってまさか……」
「無論、性的にだ。最初はそれこそ強姦紛いだったがな。……何度も逢瀬を重ねる内にあいつのことを知っていって、気がついた時には沼に嵌っていた。あいつは私のことを体のいい性欲処理としか思っていないだろうがな。…………だから、」
すうっと真剣な色を瞳に宿してかたりと立ち上がったルゥリカワは、強い口調で言い放つ。
「一刻も早くシオンを保護するぞ、リク」
「……言われなくても、そのつもりだし。つーか、こっちの俺がいる場所って分かるの?」
「いや、分からんな」
「早速計画が破綻してるじゃん……」
「話は最後まで聞け。分からないが、おびき出すことは可能だ。あいつの嗅覚は獣並だからな。町の中ではあまり効果がないが、砂漠に出向けば効果は抜群だろう。お前にも少し手伝ってもらうぞ」
「紫苑ちゃんを見つけるためなら何だってしてやるし」
「そうか。それは心強いな。……さて、そうと決まれば着替えなくては」
「……? そのカッコのままじゃ駄目なの?」
「なに、私は踊り子の衣装を身につけている時が一番美しいからな」
「それって『ナルーミ』の前では美しいカッコでいたいってこと?」
間違ってはない、と小さく微笑んだルゥリカワは、非常時なのにすまないなと詫びながら朝食を食べ終えた空のトレーを成海の物に重ね始める。
「これを下の階の厨房まで持って行ってくれ。お前が戻ってくるまでには着替えておこう」
「……分かった」
大人びたルゥリカワが子供のように微笑んだ時に感じたのは、ふわりとした恋の匂い。
強姦するような酷い奴をよく好きになったもんだな、と驚きと感嘆が混じった息を吐いた成海は、軽くなったトレーをかちゃかちゃと鳴らしながら部屋を後にした。
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