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全裸トリップ★五里霧中
6:唸る瑠璃川
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「…………こことは違う世界から来た、ねぇ。ルリカワ、シオンだっけ、名前までほぼそのまんまじゃねーか。ややこしいからてめぇはシオンな。……俄には信じらんねぇが、ルゥリカワみてーな顔してガキ臭いからな、おめぇ。ま、信じてやるよ」
「一々むかつく言い方をするな!」
信じてくれたのはありがたいが、と口の中でもごもご付け加えた瑠璃川は、ナルーミから無造作に与えられた干し肉にかぷりとかぶりついた。固くてなかなか噛み切れないそれを食しながら、空腹を満たす。
一刻も早く、一緒にこの世界に飛ばされたであろう成海を探さねばならないとは思っているものの、問答無用で襲ってくる空腹感には勝てなかった。
はむはむと干し肉をかじる瑠璃川を小動物を見るような目で眺めていたナルーミは、欠伸をしながらおもむろに立ち上がった。
「……ナルーミ?」
「オレはガキの面倒見てやる程暇じゃねぇから。それ食ったらとっとと出てけよ」
「なっ……!」
「襲われてぇなら話は別だけどぉ?」
「そ、れは……断固拒否するが、右も左も分からない場所に放り出されるのは嫌だぞ……」
「……ま、外に出たらおめぇみたいなボンボン面した上等の獲物は、捕まって調教されて性奴隷にされるだろーしな」
「それを分かった上で出ていけと言うのかお前は!? お、鬼! 悪魔!」
「ふはっ、冗談だっつのバーカ。ルゥリカワに似た人間を早々に手放してやるかよ」
純粋な反応を返してくる瑠璃川が面白くてけたけたと笑うナルーミ。タチの悪い冗談を聞かされた瑠璃川は、むうと唸りながら彼を睨みつけた。
昨日の夜、結局自慰をしてしまったことに関しても、朝起きた時に散々からかわれた。こちらの世界のナルーミはすごく意地悪だ。主に性的な方向で。
優しくて自分に甘い成海を恋しく想う。今すぐ彼の胸に飛び込んで、抱きしめられて、頭を撫でられて、たっぷり甘やかされたい。あわよくば、恋人に対するそれのように。
「(…………いや、それは高望みというものだな……。まず成海は僕のことを恋愛対象として見ていないしな)」
はぁ、と小さく溜息を吐いた瑠璃川に、ナルーミは訝しげな視線を向ける。ルゥリカワと違ってころころ表情が変わる瑠璃川だが、どうしてそうなるのかは理解しづらい。さっきまで不機嫌そうに睨んでいたというのに、今は一転してしょんぼり眉根を下げてしまっている。
面倒くせぇ奴、と内心でぼやきながら、俯く瑠璃川の頭を乱暴にわしゃわしゃとかき混ぜた。
「わっ……!? な、何をするんだ!髪型が崩れるではないか!」
「うっせぇ。辛気くせぇ顔してんじゃねーよ」
そのまま身を屈めてくいっと瑠璃川の顔を上向かせると、怒りと戸惑いが混じった瞳がナルーミを見返してきた。至近距離で交差する視線に、瑠璃川の頬がかぁっと赤くなる。その反応と、さっき瑠璃川から聞いた向こうの世界での話を組み合わせれば、答えは簡単に導き出された。
「……おめぇ、『ナルミ』のことが好きなのか?」
「なっ!!? いや、え、ど、どうして……っ!?」
「分かりやすすぎっからぁ。それに昨日てめぇ自身が『僕の好きなナルミじゃない』って言ってただろ」
「あっ…………、そ、れは……」
どうやら無意識に飛び出していた言葉だったらしく、熟れた林檎のようにぼぼっと火照っていく瑠璃川。その姿は完全に恋する乙女そのものである。乙女ではないが。
ルゥリカワもこれくらい分かりやすければ、と思っていたナルーミの鼻孔を、ふと、嫌なニオイが掠めてきた。形を成さない朧気なそれに、ナルーミは眉を顰める。
「チッ……何ヤられてんだあの馬鹿。おい、シオン。オレがいない間、勝手にオレのモンに触れんじゃねェぞ」
「え……? 出かけるのか?」
話題が変わったことにほっとしながらそう問いかけると、ナルーミは不機嫌そうな表情を隠そうともせずに舌打ちをした。
「ちょーっと盗み損ねてるモンを回収してくるわ」
「回収……?」
「留守番ぐらいガキのおめぇでも大人しく出来るよなぁ?」
「ばっ、ばかにするな! それくらい出来る…………が、その、……早く帰ってこいよ……?」
上目遣いでおずおずと言いにくそうに発せられたその言葉に、ナルーミは一瞬目を見開いた。なんというか、あざとい。ルゥリカワもあざとい所があるが、天然ものと養殖ものの違いといったところだろうか。ガキだと言っておきながら、うっかり可愛いなどと思ってしまった。これも全てルゥリカワと似ているのが悪い。
ぐらりと揺らいだ理性を誤魔化すかのように瑠璃川の頭を軽く叩き、ナルーミはずかずかと大股で歩き去っていった。
ぽつんと一人残された瑠璃川は、干し肉をごくりと嚥下した後、ぶかぶかな服に身を埋めるように膝を抱えて座り直す。簡素な布で出来たアラビアンめいた服からは、砂の香りとナルーミの匂いを感じた。少しスパイシーで、けれども嫌ではない香りだ。
いきなり襲われそうになって怖かったのは確かだが、根っこの部分はなんだかんだで優しいナルーミを思い、ふふ、と笑みを零す。
あとは成海を見つけることが出来れば万々歳だ。どうしてこんな異世界めいた所に飛ばされたのか分からないし、この世界がどれくらいの広さかも分からない。ただ、なんとなく予感はあった。
自分がこうして成海のドッペルゲンガーのような彼の元に落ちたのなら、成海も同様に自分と似たこの世界の『瑠璃川』の所に居るのではないか、と。
「(……ガキくさくなくて、色気がすごくて、冷静で理知的…………話だけ聞くと僕と別人じゃないか)」
もし、……もし、有り得ないとは思うが、成海がそんな『瑠璃川』に惚れてしまったらどうしよう。
「ううー……」
一人になった途端に嫌な未来がぽこぽこ湧き出てくる。それらを振り払うように膝に顔を埋めた瑠璃川は、小さく唸った。
出来るだけ早く帰ってこい、ナルーミ。成海を探すのを手伝ってもらわねばならんからな。
言葉にはせずに心中でぶつぶつと呟き、ふと喉の渇きを覚えて傍らにあった水を飲んだ。どこか甘く感じるそれが、緊張と不安でひりつく喉を潤していく。
願わくば、何事もなく再会したい。
……そんな瑠璃川の願いは、半分叶えられ、半分叶わぬこととなる。
「一々むかつく言い方をするな!」
信じてくれたのはありがたいが、と口の中でもごもご付け加えた瑠璃川は、ナルーミから無造作に与えられた干し肉にかぷりとかぶりついた。固くてなかなか噛み切れないそれを食しながら、空腹を満たす。
一刻も早く、一緒にこの世界に飛ばされたであろう成海を探さねばならないとは思っているものの、問答無用で襲ってくる空腹感には勝てなかった。
はむはむと干し肉をかじる瑠璃川を小動物を見るような目で眺めていたナルーミは、欠伸をしながらおもむろに立ち上がった。
「……ナルーミ?」
「オレはガキの面倒見てやる程暇じゃねぇから。それ食ったらとっとと出てけよ」
「なっ……!」
「襲われてぇなら話は別だけどぉ?」
「そ、れは……断固拒否するが、右も左も分からない場所に放り出されるのは嫌だぞ……」
「……ま、外に出たらおめぇみたいなボンボン面した上等の獲物は、捕まって調教されて性奴隷にされるだろーしな」
「それを分かった上で出ていけと言うのかお前は!? お、鬼! 悪魔!」
「ふはっ、冗談だっつのバーカ。ルゥリカワに似た人間を早々に手放してやるかよ」
純粋な反応を返してくる瑠璃川が面白くてけたけたと笑うナルーミ。タチの悪い冗談を聞かされた瑠璃川は、むうと唸りながら彼を睨みつけた。
昨日の夜、結局自慰をしてしまったことに関しても、朝起きた時に散々からかわれた。こちらの世界のナルーミはすごく意地悪だ。主に性的な方向で。
優しくて自分に甘い成海を恋しく想う。今すぐ彼の胸に飛び込んで、抱きしめられて、頭を撫でられて、たっぷり甘やかされたい。あわよくば、恋人に対するそれのように。
「(…………いや、それは高望みというものだな……。まず成海は僕のことを恋愛対象として見ていないしな)」
はぁ、と小さく溜息を吐いた瑠璃川に、ナルーミは訝しげな視線を向ける。ルゥリカワと違ってころころ表情が変わる瑠璃川だが、どうしてそうなるのかは理解しづらい。さっきまで不機嫌そうに睨んでいたというのに、今は一転してしょんぼり眉根を下げてしまっている。
面倒くせぇ奴、と内心でぼやきながら、俯く瑠璃川の頭を乱暴にわしゃわしゃとかき混ぜた。
「わっ……!? な、何をするんだ!髪型が崩れるではないか!」
「うっせぇ。辛気くせぇ顔してんじゃねーよ」
そのまま身を屈めてくいっと瑠璃川の顔を上向かせると、怒りと戸惑いが混じった瞳がナルーミを見返してきた。至近距離で交差する視線に、瑠璃川の頬がかぁっと赤くなる。その反応と、さっき瑠璃川から聞いた向こうの世界での話を組み合わせれば、答えは簡単に導き出された。
「……おめぇ、『ナルミ』のことが好きなのか?」
「なっ!!? いや、え、ど、どうして……っ!?」
「分かりやすすぎっからぁ。それに昨日てめぇ自身が『僕の好きなナルミじゃない』って言ってただろ」
「あっ…………、そ、れは……」
どうやら無意識に飛び出していた言葉だったらしく、熟れた林檎のようにぼぼっと火照っていく瑠璃川。その姿は完全に恋する乙女そのものである。乙女ではないが。
ルゥリカワもこれくらい分かりやすければ、と思っていたナルーミの鼻孔を、ふと、嫌なニオイが掠めてきた。形を成さない朧気なそれに、ナルーミは眉を顰める。
「チッ……何ヤられてんだあの馬鹿。おい、シオン。オレがいない間、勝手にオレのモンに触れんじゃねェぞ」
「え……? 出かけるのか?」
話題が変わったことにほっとしながらそう問いかけると、ナルーミは不機嫌そうな表情を隠そうともせずに舌打ちをした。
「ちょーっと盗み損ねてるモンを回収してくるわ」
「回収……?」
「留守番ぐらいガキのおめぇでも大人しく出来るよなぁ?」
「ばっ、ばかにするな! それくらい出来る…………が、その、……早く帰ってこいよ……?」
上目遣いでおずおずと言いにくそうに発せられたその言葉に、ナルーミは一瞬目を見開いた。なんというか、あざとい。ルゥリカワもあざとい所があるが、天然ものと養殖ものの違いといったところだろうか。ガキだと言っておきながら、うっかり可愛いなどと思ってしまった。これも全てルゥリカワと似ているのが悪い。
ぐらりと揺らいだ理性を誤魔化すかのように瑠璃川の頭を軽く叩き、ナルーミはずかずかと大股で歩き去っていった。
ぽつんと一人残された瑠璃川は、干し肉をごくりと嚥下した後、ぶかぶかな服に身を埋めるように膝を抱えて座り直す。簡素な布で出来たアラビアンめいた服からは、砂の香りとナルーミの匂いを感じた。少しスパイシーで、けれども嫌ではない香りだ。
いきなり襲われそうになって怖かったのは確かだが、根っこの部分はなんだかんだで優しいナルーミを思い、ふふ、と笑みを零す。
あとは成海を見つけることが出来れば万々歳だ。どうしてこんな異世界めいた所に飛ばされたのか分からないし、この世界がどれくらいの広さかも分からない。ただ、なんとなく予感はあった。
自分がこうして成海のドッペルゲンガーのような彼の元に落ちたのなら、成海も同様に自分と似たこの世界の『瑠璃川』の所に居るのではないか、と。
「(……ガキくさくなくて、色気がすごくて、冷静で理知的…………話だけ聞くと僕と別人じゃないか)」
もし、……もし、有り得ないとは思うが、成海がそんな『瑠璃川』に惚れてしまったらどうしよう。
「ううー……」
一人になった途端に嫌な未来がぽこぽこ湧き出てくる。それらを振り払うように膝に顔を埋めた瑠璃川は、小さく唸った。
出来るだけ早く帰ってこい、ナルーミ。成海を探すのを手伝ってもらわねばならんからな。
言葉にはせずに心中でぶつぶつと呟き、ふと喉の渇きを覚えて傍らにあった水を飲んだ。どこか甘く感じるそれが、緊張と不安でひりつく喉を潤していく。
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