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全裸トリップ★五里霧中
7:おびき出し作戦
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露出度が高い踊り子の衣装の上に丈の長い羽織のような服を纏い、天女の羽衣を幾重にも腰に巻いたルゥリカワ。擦れ違った人が皆、感嘆の息を吐くような美しさだ。
成海は、そんな姿の彼と一緒に熱気漂う砂漠へと足を踏み入れていた。じゃり、と砂を鳴らしながらルゥリカワの後ろをひたすら着いていく。だが、上と下から襲ってくる茹だるような暑さに、成海の足はのろくなる一方だ。
おびき出すとは言っていたが、それは町から離れた所でやらなければいけないようなことなのだろうか。そんな疑問を抱きつつも、じわじわと浮き出る汗を拭いながら、これも瑠璃川ちゃんと会うためだと自身を鼓舞していった。
──ルゥリカワがようやく足を止めたのは、大きなサボテンが密集し、小さな湖に影を作っているオアシスだった。
ぽつんと存在するそのオアシスの端、日陰になっている所で立ち止まったルゥリカワは、羽織をはらりと落としつつくるりと振り返った。
ただそれだけの行為なのに、ぶわ、と暑さとは違う艶めいた熱気が湧き出てくる。息を飲む成海を見据え、ルゥリカワは乾燥を知らないふっくらとした唇を開いた。
「こんな所まで連れてきてすまない。……このオアシスは奴のテリトリーでもあるから、お前に手伝ってもらえればすぐにやってくるだろう」
「テリトリー……って、ほんと獣みたいだね。……それで、手伝ってほしいことって何なの?」
結局、ここに辿り着くまで詳しい内容は教えてもらえなかった。酷い内容ではないとは思うが、成海の心中には不安が巣くっていた。広大な砂漠の、小さなオアシスで二人きり。こんな状況で、一体何を始めようというのだろうか。
そんな成海の疑念は、ルゥリカワの次の一言によって払拭された。
「何、簡単な話だ。私に襲われてくれればそれでいい」
「…………は?」
……払拭はされたが更なる困惑が生まれた成海についと微笑みかけ、ルゥリカワは枝垂れかかるように身を寄せてきた。首に手を回し、身体を密着させて成海の耳朶を甘く食む。
「うわ……っ!?」
「宝石姫に擦り寄られたというのに、そんな引くような声を出すとはな」
「いや、引くというか驚いてるというか……? 昨日は勢いで触っちゃったけど、俺の一番は紫苑ちゃんだし」
「これも作戦の内だ。性的なことになると放出されるらしい私のフェロモンとやらが、あいつの鼻を嫌に刺激するらしくてな。町の中で知らない輩に襲われかけた時にも現れたのだが、奴のテリトリー内でなら更に確実だろう?」
「……確実って、もっと普通におびき出せないわけ……?」
「これが私の『普通』さ。……お前は目を瞑って大好きなシオンのことでも考えていろ」
安心しろ、最後まではせんよ。と、そう囁いたルゥリカワの唇が首筋を伝っていく。
こんな方法はよくないとは分かっていても、拒むことが出来ない。瑠璃川を保護するための手っ取り早い方法なのだと、言われた通りに目を瞑った。ただ、やられてばかりなのは性にあわない。
するり、と晒された背を手で撫でると、ルゥリカワはくすぐったそうに鈴が鳴るような笑みを零した。
そこまで身長差がないため、密着していると下肢の中心が触れ合ってしまう。お互いに軽く擦り合わせているだけで、そこは仄かに熱を持っていった。
「っあ……、ん」
肩口にちゅうっと吸いつきながら甘い吐息を零すルゥリカワからは、彼が言うフェロモンとやらが漂っているのだろうか。成海はそれを嗅ぎ分けることが出来ないが、きっと花の蜜のようにとろりと甘美な芳香なのだろう。そんなことを考えながら、戯れのような触れ合いを深めていく。
いやらしいことをしているはずなのに、ルゥリカワを纏う空気は凛としていて、揺らめく腰すらも流麗に映る。
どこまで手を出すべきかと思考しつつ、滑らかな肌を堪能していた成海だったが、唐突に感じた鋭い殺気のせいでその動きはすぐに止まることとなった。
「……随分と早い到着のようだ」
肌を刺す氷のような殺気に物怖じすることなく、ルゥリカワはそっと成海から身を離した。若干名残惜しく感じつつ、成海も背に回していた手を解く。
ざり、と砂を踏みしめる音が嫌に大きく響き、二人は揃って音の発生源へと視線を向けた。
「……楽しそうなことしてんなぁ、ルゥリカワ?」
地を這うような、低い声。ギラついた眼光を向けられるだけで萎縮してしまいそうだ。
獣のような獰猛なオーラを身に纏った乱入者……ナルーミは、噎せかえるような甘いフェロモンを撒き散らすルゥリカワを見据え、その隣にいる成海をついでにとばかりに見やって片眉を器用に顰めた。
「へぇ……。オレに憧れて顔を変えた……ってわけでもなさそうだな」
「……ナルーミ。単刀直入に聞くが、お前の所に『私』が居るのではないか?」
「成程、それが聞きたいからわざわざこんな方法で誘い出したってワケ」
「話が早くて助かる。それで、答えはどうなんだ」
「教えてやってもいーけど、それなりの対価は支払ってもらわねぇとな」
「…………元からそのつもりだ」
「ちょっと待って、ルゥリカワが何かする必要は……!」
ナルーミとルゥリカワの淡々とした会話に口を挟むことも出来ず、そっと成り行きを見守っていた成海は、あまりよろしくない展開に思わず待ったをかけた。
瑠璃川を探すのは自分の目的なのだから、ルゥリカワが対価とやらを支払う義務はないはずなのだ。
「リク、庇いたてする必要はないぞ」
「や、庇いたても何も元々俺のせいだし……」
「おびき出そうと言い出したのは私だ。お前は愛しのシオンのことだけ考えておけ」
そう言って有無を言わせない微笑みを向けてくるルゥリカワに、成海はぐっと押し黙ることしか出来なかった。めげずに何か反論しても、言いくるめられてしまうだろうということが容易に想像出来たからだ。
静かになった成海と、静かに佇むルゥリカワを交互に見やり、ナルーミは腰のベルトにぶら下げていた小瓶を手に取った。
きゅぽん、とコルク製の蓋を抜き取ると、口の端をにやりとつり上げる。
「おめぇの言うとおり、ルリカワシオンはオレん所にいるぜ。案内はしてやっけど、アジトの場所を特定されちゃたまんねぇから……暫く夢見心地になってもらおうか」
数種類の薬草や毒草を調合して作った、夢遊香の芳香が鼻孔を刺激する。その名の通り、夢遊病にかかったかのように、思考が定まらないまま身体だけが動く効果があるのだが、成海がそのことを知るはずもない。
ただただ、抗うことが出来ない眠りに誘われ、意識がゆっくりと閉ざされていった。
成海は、そんな姿の彼と一緒に熱気漂う砂漠へと足を踏み入れていた。じゃり、と砂を鳴らしながらルゥリカワの後ろをひたすら着いていく。だが、上と下から襲ってくる茹だるような暑さに、成海の足はのろくなる一方だ。
おびき出すとは言っていたが、それは町から離れた所でやらなければいけないようなことなのだろうか。そんな疑問を抱きつつも、じわじわと浮き出る汗を拭いながら、これも瑠璃川ちゃんと会うためだと自身を鼓舞していった。
──ルゥリカワがようやく足を止めたのは、大きなサボテンが密集し、小さな湖に影を作っているオアシスだった。
ぽつんと存在するそのオアシスの端、日陰になっている所で立ち止まったルゥリカワは、羽織をはらりと落としつつくるりと振り返った。
ただそれだけの行為なのに、ぶわ、と暑さとは違う艶めいた熱気が湧き出てくる。息を飲む成海を見据え、ルゥリカワは乾燥を知らないふっくらとした唇を開いた。
「こんな所まで連れてきてすまない。……このオアシスは奴のテリトリーでもあるから、お前に手伝ってもらえればすぐにやってくるだろう」
「テリトリー……って、ほんと獣みたいだね。……それで、手伝ってほしいことって何なの?」
結局、ここに辿り着くまで詳しい内容は教えてもらえなかった。酷い内容ではないとは思うが、成海の心中には不安が巣くっていた。広大な砂漠の、小さなオアシスで二人きり。こんな状況で、一体何を始めようというのだろうか。
そんな成海の疑念は、ルゥリカワの次の一言によって払拭された。
「何、簡単な話だ。私に襲われてくれればそれでいい」
「…………は?」
……払拭はされたが更なる困惑が生まれた成海についと微笑みかけ、ルゥリカワは枝垂れかかるように身を寄せてきた。首に手を回し、身体を密着させて成海の耳朶を甘く食む。
「うわ……っ!?」
「宝石姫に擦り寄られたというのに、そんな引くような声を出すとはな」
「いや、引くというか驚いてるというか……? 昨日は勢いで触っちゃったけど、俺の一番は紫苑ちゃんだし」
「これも作戦の内だ。性的なことになると放出されるらしい私のフェロモンとやらが、あいつの鼻を嫌に刺激するらしくてな。町の中で知らない輩に襲われかけた時にも現れたのだが、奴のテリトリー内でなら更に確実だろう?」
「……確実って、もっと普通におびき出せないわけ……?」
「これが私の『普通』さ。……お前は目を瞑って大好きなシオンのことでも考えていろ」
安心しろ、最後まではせんよ。と、そう囁いたルゥリカワの唇が首筋を伝っていく。
こんな方法はよくないとは分かっていても、拒むことが出来ない。瑠璃川を保護するための手っ取り早い方法なのだと、言われた通りに目を瞑った。ただ、やられてばかりなのは性にあわない。
するり、と晒された背を手で撫でると、ルゥリカワはくすぐったそうに鈴が鳴るような笑みを零した。
そこまで身長差がないため、密着していると下肢の中心が触れ合ってしまう。お互いに軽く擦り合わせているだけで、そこは仄かに熱を持っていった。
「っあ……、ん」
肩口にちゅうっと吸いつきながら甘い吐息を零すルゥリカワからは、彼が言うフェロモンとやらが漂っているのだろうか。成海はそれを嗅ぎ分けることが出来ないが、きっと花の蜜のようにとろりと甘美な芳香なのだろう。そんなことを考えながら、戯れのような触れ合いを深めていく。
いやらしいことをしているはずなのに、ルゥリカワを纏う空気は凛としていて、揺らめく腰すらも流麗に映る。
どこまで手を出すべきかと思考しつつ、滑らかな肌を堪能していた成海だったが、唐突に感じた鋭い殺気のせいでその動きはすぐに止まることとなった。
「……随分と早い到着のようだ」
肌を刺す氷のような殺気に物怖じすることなく、ルゥリカワはそっと成海から身を離した。若干名残惜しく感じつつ、成海も背に回していた手を解く。
ざり、と砂を踏みしめる音が嫌に大きく響き、二人は揃って音の発生源へと視線を向けた。
「……楽しそうなことしてんなぁ、ルゥリカワ?」
地を這うような、低い声。ギラついた眼光を向けられるだけで萎縮してしまいそうだ。
獣のような獰猛なオーラを身に纏った乱入者……ナルーミは、噎せかえるような甘いフェロモンを撒き散らすルゥリカワを見据え、その隣にいる成海をついでにとばかりに見やって片眉を器用に顰めた。
「へぇ……。オレに憧れて顔を変えた……ってわけでもなさそうだな」
「……ナルーミ。単刀直入に聞くが、お前の所に『私』が居るのではないか?」
「成程、それが聞きたいからわざわざこんな方法で誘い出したってワケ」
「話が早くて助かる。それで、答えはどうなんだ」
「教えてやってもいーけど、それなりの対価は支払ってもらわねぇとな」
「…………元からそのつもりだ」
「ちょっと待って、ルゥリカワが何かする必要は……!」
ナルーミとルゥリカワの淡々とした会話に口を挟むことも出来ず、そっと成り行きを見守っていた成海は、あまりよろしくない展開に思わず待ったをかけた。
瑠璃川を探すのは自分の目的なのだから、ルゥリカワが対価とやらを支払う義務はないはずなのだ。
「リク、庇いたてする必要はないぞ」
「や、庇いたても何も元々俺のせいだし……」
「おびき出そうと言い出したのは私だ。お前は愛しのシオンのことだけ考えておけ」
そう言って有無を言わせない微笑みを向けてくるルゥリカワに、成海はぐっと押し黙ることしか出来なかった。めげずに何か反論しても、言いくるめられてしまうだろうということが容易に想像出来たからだ。
静かになった成海と、静かに佇むルゥリカワを交互に見やり、ナルーミは腰のベルトにぶら下げていた小瓶を手に取った。
きゅぽん、とコルク製の蓋を抜き取ると、口の端をにやりとつり上げる。
「おめぇの言うとおり、ルリカワシオンはオレん所にいるぜ。案内はしてやっけど、アジトの場所を特定されちゃたまんねぇから……暫く夢見心地になってもらおうか」
数種類の薬草や毒草を調合して作った、夢遊香の芳香が鼻孔を刺激する。その名の通り、夢遊病にかかったかのように、思考が定まらないまま身体だけが動く効果があるのだが、成海がそのことを知るはずもない。
ただただ、抗うことが出来ない眠りに誘われ、意識がゆっくりと閉ざされていった。
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