(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
58 / 66
エピローグ

閑話 親

しおりを挟む
 
 あの子が国王に連れられて王宮へ行ってから8年程が経った。

 1年とちょっと前に国を出たと聞いた時は、経緯が一切わからず混乱するだけだったのだけれど、国王から説明を受けておおよその背景は理解できた。たぶんあの子なりのもしもの時の備えが上手く機能したということだろう。

 私たちの元に居た時から、その辺りのリスク管理はものすごく上手い子だった。いくつかの結果を予測して、それに合わせて備えをする。あの子が森で魔法の練習をしている時も、何かあった時のために色々と考えていたみたいだから、それに似たような物だと思う。

 あの子が10歳になるまでしっかりと親として愛情を注いだつもりではある。ただ、王子と婚約する形で私たちの元からいなくなった経緯を知ると誰でも、子を国に売ったようにしか見えないはず。それは私たちも理解している。それに、話し合いをしてあの子の扱いについての譲歩は得たけど、金銭は一切貰っていない。

 ただ、このまま年々どころか日々増加し続けるあの子の魔力量的に、魔法を指導する人が私だけというのは良くないと常々考えていた。
 それに、私の魔力量と比べられない程にあの子は魔力を保有しているけど、基本的に親の魔力量は子に遺伝する。それを目当てに質の悪い貴族に迫られた場合、今は平民として生活している私たちでは太刀打ちできない。
 故郷に戻ればある程度は対処できるかもしれないけれど、おそらく戻った方が状況は悪化するはず。あそこは真面な思考をしている者が少ないから当然だけど。

 王子との婚約を破棄してからすぐにこっちに戻っては来ないで国を出たのは、しっかりと理由を伝えていたけれど、半ば自分を売った私たちに恨みを持っていたのか、それとも単に気まずかっただけかはわからない。ただ、自由になったのにこちらに顔を見せなかったというのは少々どころか、かなり堪えた。

 最近になって国に戻って来た時も顔を見せに来なかったので、たぶんここに戻って来るつもりはないのだと思う。まあ、この時の理由は国王の連絡で聞いたからそれほど堪えることは無かったけど。

 そして、その急いでいた原因であるスタンピードの件も片付いて、その褒賞で爵位を貰ったらしいあの子から傭兵ギルド経由で手紙が届いている。
 中を見るのが怖いけれど、さすがに見ないままにもできない。内容はおそらく爵位を貰ったとか、その辺りのことになるのでしょうけれど。

 怖がっても仕方がないわね。内容を見ましょう。内容は……やっぱり爵位についてね。それと、区切りがついたから近々…帰る?
 え? 戻って来るの? …本当に? あ、来る予定の日付が書いてあるわね。って今日じゃないの!

 あの子は昔から変なところで抜けているわね。これも、私たちの所に届くまでの日数を計算に入れていないのではないかしら? 今日私がギルドに行かなかったら行き違いとかが起きていたかもしれないのに。
 そうして私はすぐに立ち上がり、あの人の居る所へ急いだ。


「あなた!」
「え? 何だいきなり」
「あの子が戻って来るって」
「え? それは本当か!?」
「こ…、ギルドで受け取ったあの子からの手紙に書いてあったの」

 この手紙に書いてあったと咄嗟に見せようとしたけれど、あの一文のことを思い出して手紙を見せずに済ませた。

「何時だ?」
「今日よ」
「何だと!? なら急いで用意しないとな!」
「ええ!」

 そうして慌ただしくあの子を迎える準備を進めて行く。家は何時も綺麗にしているけれど、一時的とはいえあの子が帰ってくるのなら色々と準備は必要よね。

 ……婚約者を連れて来るって書いてあったけど、あの人はどんな反応をするかしらね? 王子との婚約も最後まで嫌だ、駄目だって粘っていたし、何かしらの反応はあると思うのだけど。

 準備も半ばまで進んだところで家のドアのノッカーが鳴らされた。

「もう来たのか!?」
「まだ半分くらいしか終わっていないのに」

 仕方ないわね。到着してしまったのはどうすることも出来ないわ。

「とりあえず出迎えましょう」
「そうだな」

 そう言葉を交わして玄関に向かう。そしてドアの向こうから2人の話し声が聞こえる。そして、ドアの向こうに感じる魔力は覚えのあるもの。あの子の魔力だ。
 ドアの向こうに居るのがあの子だと確認して、ドアを開ける。

「おかえりなさい。レイア」
「ただいま。お母さん、お父さん」




ーーーーー

これにてこの作品は完結となります
ここまで読んでくださった読者の皆様には感謝を
ありがとうございました


※この話と同時に、キャラクタ―設定のページを公開しています
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします

鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。 だが彼女は泣かなかった。 なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。 教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。 それは逃避ではない。 男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。 やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。 王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。 一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。 これは、愛を巡る物語ではない。 「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。 白は弱さではない。 白は、均衡を保つ力。 白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

婚約破棄は了承済みですので、慰謝料だけ置いていってください

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢アナスタシア・オルステッドは、第三王子アレンの婚約者だった。 しかし、アレンは没落貴族の令嬢カリーナと密かに関係を持っていたことが発覚し、彼女を愛していると宣言。アナスタシアとの婚約破棄を告げるが── 「わかりました。でも、それには及びません。すでに婚約は破棄されております」 なんとアナスタシアは、事前に国王へ婚約破棄を申し出ており、すでに了承されていたのだ。 さらに、慰謝料もしっかりと請求済み。 「どうぞご自由に、カリーナ様とご婚約なさってください。でも、慰謝料のお支払いはお忘れなく」 驚愕するアレンを後にし、悠々と去るアナスタシア。 ところが数カ月後、生活に困窮したアレンが、再び彼女のもとへ婚約のやり直しを申し出る。 「呆れたお方ですね。そんな都合のいい話、お受けするわけがないでしょう?」 かつての婚約者の末路に興味もなく、アナスタシアは公爵家の跡取りとして堂々と日々を過ごす。 しかし、王国には彼女を取り巻く新たな陰謀の影が忍び寄っていた。 暗躍する謎の勢力、消える手紙、そして不審な襲撃──。 そんな中、王国軍の若きエリート将校ガブリエルと出会い、アナスタシアは自らの運命に立ち向かう決意を固める。 「私はもう、誰かに振り回されるつもりはありません。この王国の未来も、私自身の未来も、私の手で切り拓きます」 婚約破棄を経て、さらに強く、賢くなった公爵令嬢の痛快ざまぁストーリー! 自らの誇りを貫き、王国を揺るがす陰謀を暴く彼女の華麗なる活躍をお楽しみください。

『婚約破棄?結構ですわ。白い結婚で優雅に返り咲きます』

鍛高譚
恋愛
伯爵令嬢アリエルは、幼い頃から決まっていた婚約者――王都屈指の名門・レオポルド侯爵家の嫡男マックスに、ある宴で突然“つまらない女”と蔑まれ、婚約を破棄されてしまう。 だが、それで終わる彼女ではない。むしろ“白い結婚”という形式だけの夫婦関係を逆手に取り、自由な生き方を選ぼうと決意するアリエル。ところが、元婚約者のマックスが闇商人との取引に手を染めているらしい噂が浮上し、いつしか王都全体を揺るがす陰謀が渦巻き始める。 さらに、近衛騎士団長補佐を務める冷徹な青年伯爵リヒトとの出会いが、アリエルの運命を大きく動かして――。 「貴族社会の窮屈さなんて、もうたくさん!」 破談から始まるざまぁ展開×白い結婚の爽快ファンタジー・ロマンス、開幕です。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした

まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】 その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

処理中です...