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エピローグ
閑話 親
しおりを挟むあの子が国王に連れられて王宮へ行ってから8年程が経った。
1年とちょっと前に国を出たと聞いた時は、経緯が一切わからず混乱するだけだったのだけれど、国王から説明を受けておおよその背景は理解できた。たぶんあの子なりのもしもの時の備えが上手く機能したということだろう。
私たちの元に居た時から、その辺りのリスク管理はものすごく上手い子だった。いくつかの結果を予測して、それに合わせて備えをする。あの子が森で魔法の練習をしている時も、何かあった時のために色々と考えていたみたいだから、それに似たような物だと思う。
あの子が10歳になるまでしっかりと親として愛情を注いだつもりではある。ただ、王子と婚約する形で私たちの元からいなくなった経緯を知ると誰でも、子を国に売ったようにしか見えないはず。それは私たちも理解している。それに、話し合いをしてあの子の扱いについての譲歩は得たけど、金銭は一切貰っていない。
ただ、このまま年々どころか日々増加し続けるあの子の魔力量的に、魔法を指導する人が私だけというのは良くないと常々考えていた。
それに、私の魔力量と比べられない程にあの子は魔力を保有しているけど、基本的に親の魔力量は子に遺伝する。それを目当てに質の悪い貴族に迫られた場合、今は平民として生活している私たちでは太刀打ちできない。
故郷に戻ればある程度は対処できるかもしれないけれど、おそらく戻った方が状況は悪化するはず。あそこは真面な思考をしている者が少ないから当然だけど。
王子との婚約を破棄してからすぐにこっちに戻っては来ないで国を出たのは、しっかりと理由を伝えていたけれど、半ば自分を売った私たちに恨みを持っていたのか、それとも単に気まずかっただけかはわからない。ただ、自由になったのにこちらに顔を見せなかったというのは少々どころか、かなり堪えた。
最近になって国に戻って来た時も顔を見せに来なかったので、たぶんここに戻って来るつもりはないのだと思う。まあ、この時の理由は国王の連絡で聞いたからそれほど堪えることは無かったけど。
そして、その急いでいた原因であるスタンピードの件も片付いて、その褒賞で爵位を貰ったらしいあの子から傭兵ギルド経由で手紙が届いている。
中を見るのが怖いけれど、さすがに見ないままにもできない。内容はおそらく爵位を貰ったとか、その辺りのことになるのでしょうけれど。
怖がっても仕方がないわね。内容を見ましょう。内容は……やっぱり爵位についてね。それと、区切りがついたから近々…帰る?
え? 戻って来るの? …本当に? あ、来る予定の日付が書いてあるわね。って今日じゃないの!
あの子は昔から変なところで抜けているわね。これも、私たちの所に届くまでの日数を計算に入れていないのではないかしら? 今日私がギルドに行かなかったら行き違いとかが起きていたかもしれないのに。
そうして私はすぐに立ち上がり、あの人の居る所へ急いだ。
「あなた!」
「え? 何だいきなり」
「あの子が戻って来るって」
「え? それは本当か!?」
「こ…、ギルドで受け取ったあの子からの手紙に書いてあったの」
この手紙に書いてあったと咄嗟に見せようとしたけれど、あの一文のことを思い出して手紙を見せずに済ませた。
「何時だ?」
「今日よ」
「何だと!? なら急いで用意しないとな!」
「ええ!」
そうして慌ただしくあの子を迎える準備を進めて行く。家は何時も綺麗にしているけれど、一時的とはいえあの子が帰ってくるのなら色々と準備は必要よね。
……婚約者を連れて来るって書いてあったけど、あの人はどんな反応をするかしらね? 王子との婚約も最後まで嫌だ、駄目だって粘っていたし、何かしらの反応はあると思うのだけど。
準備も半ばまで進んだところで家のドアのノッカーが鳴らされた。
「もう来たのか!?」
「まだ半分くらいしか終わっていないのに」
仕方ないわね。到着してしまったのはどうすることも出来ないわ。
「とりあえず出迎えましょう」
「そうだな」
そう言葉を交わして玄関に向かう。そしてドアの向こうから2人の話し声が聞こえる。そして、ドアの向こうに感じる魔力は覚えのあるもの。あの子の魔力だ。
ドアの向こうに居るのがあの子だと確認して、ドアを開ける。
「おかえりなさい。レイア」
「ただいま。お母さん、お父さん」
ーーーーー
これにてこの作品は完結となります
ここまで読んでくださった読者の皆様には感謝を
ありがとうございました
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