【完結】にゃん!てステキなおんがえし!

ユリーカ

文字の大きさ
30 / 53

025: ツガイ確定?!①

しおりを挟む



 お嬢の言っていることがわかればいいな

 ただそう思っただけ。それだけで人形ヒトガタの魔法が発動した。この魔法は重い。ちょっとそう思っただけでは普通発動しない。さらに先程まで枯渇していたはずの魔力が満ち溢れていた。
 予想外の展開にベッドの上で人の姿のリオンがざぁっと青ざめる。

 なんで?なんでこの魔法が?!
 目の前で猫がいきなり人になったら引くって!

「あ‥あのこれは」
「りおん君!」
「お‥お嬢?」

 泣きながら抱きついてきたアリスを抱き止めた。

 もう会いたくないと、嫌いと言われた。もういいと。だが今そのアリスがこの腕の中にいて泣いている。

「ごめんね、ボクのせいだね‥」
「違うの!私のせい!ごめんなさい!ひどいこと言ってごめんなさい!りおん君、悪くないのに‥‥」
「でもボクはお嬢に嘘をついたんだ。ひどいことした」
「違う‥ひどくない。私の方がひどいよ。私も嘘をついたの。嫌いって、ごめんなさい」

 嘘?どれが嘘?

「え?ボクのこと、嫌いじゃないの?」
「嫌いじゃないよ、りおん君大好き!戻ってきてくれてありがとう!」

 人形の姿で初めてアリスに抱きしめられた。自分より華奢で小柄なアリス。猫の姿では散々抱き上げられていたのに人の姿だと急に恥ずかしく思えてリオンの心拍が急激に上がる。さらにアリスの告白が遅れて脳に意味を届けてきた。

 え?今大好きって言った?猫の方?人の方?
 
 リオンの心を読んだようにアリスが見上げてきた。

「えっと、黒猫リオンも人の姿のりおん君も大好きだからね?」
「え‥気持ち悪くない?」
「そんなことないよ?どっちもりおん君でしょ?猫の姿も人の姿も大好きってことだよ」

 アリスの告白にリオンはぎゅっとアリスを抱きしめ返す。大好きだと言われ胸がグッと熱くなる。想いが通じ合った。拒絶された時のあの恐怖が嘘の様に消えていた。

 え?これは夢?ホントに?信じられない。

 同時にリオンは目を閉じた。

 アリスはリオンの正体を知っていた。秘密はバレてしまった。
 猫族の国を出る時に父王になんと言われたか。

 人族の国に行ったら猫の妖精だと正体を知られちゃいけないよ。もし知られたら———

「国外追放」
「え?」

 国外追放。国に帰らなくていい。むしろアリスと一緒にいられる。

 リオンははたと気がついた。思わず握り拳でガッツポーズを決める。王族として追放は不名誉な展開ではあるが、アリスの側にいられるならバレてもよかった?そもそも恩返しの魔法でアリスから離れられないのだから。

「追放?りおん君?」
「えっとね、しばらくこっちにいられそうって話」
「え?ホント?帰らなくていいの?一緒にいられるの?」
「うん、お嬢のそばにいるよ」
「嬉しい‥嬉しいよ‥りおん君大好き‥」

 甘やかな声でリオンの胸に鼻を擦り付けてくる。その愛情表現にリオンの息が荒くなった。こんなこと、他のメス猫にもされたことはない。さらに心臓はばくばくだ。

「えと‥確認だけど?ボク猫だけどホントにいいの?正確にはただの猫じゃないんだけど」

 正確には猫族の妖精ケット・シー
 さてこれをどうやって説明しようか?

 リオンの問いかけに答えるアリスは鼻息が荒い。

「こんなにカッコよくて可愛いと思ったのはりおん君だけだよ?黒猫の姿もカッコよくて大好き!どっちの姿も初めて見た時すごくハンサムだと思ったんだよ。りおん君は?私のこと、好き?」
「好き。大好き。」

 リオンの素直な答えにアリスが涙目で頬を染めふにゃととろけるような笑顔になる。その笑顔にリオンの視線が釘付けになる。

「よかったぁ!嬉しい‥私もだよ」

 笑顔でぎゅっと抱きついてくるアリスが愛らしくてそっと腕の中に閉じ込める。

 あの夜、もうダメだと思った自分を見つけ出して助けてくれた。その後も猫の姿でも人の姿でも同じ笑顔を向けてくれる。そして正体がバレた今でも自分を気味悪がることもなくアリスは変わらない。

 嫌いと言われて胸が潰れそうな程に悲しかった。好きと言われて天にも昇りそうな程に嬉しかった。今もこうして抱きついて撫でてくれる。この手がとんでもなく愛おしく気持ちいい。

「りおん君好き好き~」
「~~~~~~ッ」

 ぐはっ さすが"神の手"!気持ち良すぎる!たまらん!!死ぬ!ヨすぎて死ぬ~!!

 いつの間にかアリスにベッドに押し倒されのしかかられ、頭を撫でられリオンは悶えつつもグルグルと喉を鳴らし恍惚の表情を浮かべる。猫耳としっぽが出ていたがリオンはそれさえも気がつかない。それをアリスは気にした様子もない。

「あ、りおん君、しっぽ出てるよ?細くて長くてかぎしっぽで可愛い!ここもなでなでしていい?りおん君のここ、ずっと撫でてみたかったの」

 しっぽは敏感なところだ。アリスの手じゃなくても触られたらぞくぞくして身悶えてしまう。それでもアリスの手を制しないのはやっぱりなでなでされたいと思う下心のせいだろうか。

 あの手で触られたら———

 黒く長いしっぽにするりとアリスの手が這わされる。さして力もかけず撫でるだけ、その愛撫で毛がぞわぞわと逆立つ。リオンの体がびくびくと跳ねた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...