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025: ツガイ確定?!①
しおりを挟むお嬢の言っていることがわかればいいな
ただそう思っただけ。それだけで人形の魔法が発動した。この魔法は重い。ちょっとそう思っただけでは普通発動しない。さらに先程まで枯渇していたはずの魔力が満ち溢れていた。
予想外の展開にベッドの上で人の姿のリオンがざぁっと青ざめる。
なんで?なんでこの魔法が?!
目の前で猫がいきなり人になったら引くって!
「あ‥あのこれは」
「りおん君!」
「お‥お嬢?」
泣きながら抱きついてきたアリスを抱き止めた。
もう会いたくないと、嫌いと言われた。もういいと。だが今そのアリスがこの腕の中にいて泣いている。
「ごめんね、ボクのせいだね‥」
「違うの!私のせい!ごめんなさい!ひどいこと言ってごめんなさい!りおん君、悪くないのに‥‥」
「でもボクはお嬢に嘘をついたんだ。ひどいことした」
「違う‥ひどくない。私の方がひどいよ。私も嘘をついたの。嫌いって、ごめんなさい」
嘘?どれが嘘?
「え?ボクのこと、嫌いじゃないの?」
「嫌いじゃないよ、りおん君大好き!戻ってきてくれてありがとう!」
人形の姿で初めてアリスに抱きしめられた。自分より華奢で小柄なアリス。猫の姿では散々抱き上げられていたのに人の姿だと急に恥ずかしく思えてリオンの心拍が急激に上がる。さらにアリスの告白が遅れて脳に意味を届けてきた。
え?今大好きって言った?猫の方?人の方?
リオンの心を読んだようにアリスが見上げてきた。
「えっと、黒猫リオンも人の姿のりおん君も大好きだからね?」
「え‥気持ち悪くない?」
「そんなことないよ?どっちもりおん君でしょ?猫の姿も人の姿も大好きってことだよ」
アリスの告白にリオンはぎゅっとアリスを抱きしめ返す。大好きだと言われ胸がグッと熱くなる。想いが通じ合った。拒絶された時のあの恐怖が嘘の様に消えていた。
え?これは夢?ホントに?信じられない。
同時にリオンは目を閉じた。
アリスはリオンの正体を知っていた。秘密はバレてしまった。
猫族の国を出る時に父王になんと言われたか。
人族の国に行ったら猫の妖精だと正体を知られちゃいけないよ。もし知られたら———
「国外追放」
「え?」
国外追放。国に帰らなくていい。むしろアリスと一緒にいられる。
リオンははたと気がついた。思わず握り拳でガッツポーズを決める。王族として追放は不名誉な展開ではあるが、アリスの側にいられるならバレてもよかった?そもそも恩返しの魔法でアリスから離れられないのだから。
「追放?りおん君?」
「えっとね、しばらくこっちにいられそうって話」
「え?ホント?帰らなくていいの?一緒にいられるの?」
「うん、お嬢のそばにいるよ」
「嬉しい‥嬉しいよ‥りおん君大好き‥」
甘やかな声でリオンの胸に鼻を擦り付けてくる。その愛情表現にリオンの息が荒くなった。こんなこと、他のメス猫にもされたことはない。さらに心臓はばくばくだ。
「えと‥確認だけど?ボク猫だけどホントにいいの?正確にはただの猫じゃないんだけど」
正確には猫族の妖精。
さてこれをどうやって説明しようか?
リオンの問いかけに答えるアリスは鼻息が荒い。
「こんなにカッコよくて可愛いと思ったのはりおん君だけだよ?黒猫の姿もカッコよくて大好き!どっちの姿も初めて見た時すごくハンサムだと思ったんだよ。りおん君は?私のこと、好き?」
「好き。大好き。」
リオンの素直な答えにアリスが涙目で頬を染めふにゃととろけるような笑顔になる。その笑顔にリオンの視線が釘付けになる。
「よかったぁ!嬉しい‥私もだよ」
笑顔でぎゅっと抱きついてくるアリスが愛らしくてそっと腕の中に閉じ込める。
あの夜、もうダメだと思った自分を見つけ出して助けてくれた。その後も猫の姿でも人の姿でも同じ笑顔を向けてくれる。そして正体がバレた今でも自分を気味悪がることもなくアリスは変わらない。
嫌いと言われて胸が潰れそうな程に悲しかった。好きと言われて天にも昇りそうな程に嬉しかった。今もこうして抱きついて撫でてくれる。この手がとんでもなく愛おしく気持ちいい。
「りおん君好き好き~」
「~~~~~~ッ」
ぐはっ さすが"神の手"!気持ち良すぎる!たまらん!!死ぬ!ヨすぎて死ぬ~!!
いつの間にかアリスにベッドに押し倒されのしかかられ、頭を撫でられリオンは悶えつつもグルグルと喉を鳴らし恍惚の表情を浮かべる。猫耳としっぽが出ていたがリオンはそれさえも気がつかない。それをアリスは気にした様子もない。
「あ、りおん君、しっぽ出てるよ?細くて長くてかぎしっぽで可愛い!ここもなでなでしていい?りおん君のここ、ずっと撫でてみたかったの」
しっぽは敏感なところだ。アリスの手じゃなくても触られたらぞくぞくして身悶えてしまう。それでもアリスの手を制しないのはやっぱりなでなでされたいと思う下心のせいだろうか。
あの手で触られたら———
黒く長いしっぽにするりとアリスの手が這わされる。さして力もかけず撫でるだけ、その愛撫で毛がぞわぞわと逆立つ。リオンの体がびくびくと跳ねた。
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