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028: ツガイ確定?!④
しおりを挟む「おめでとう二人とも、僕とアリスは従兄弟同士で婚約のフリをしていただけだから。僕に気にせずアリスと婚約してくれて構わないよ」
「ありがとうジョアン、パパがわがまま言って今までごめんね」
「いや、叔父さんの心配もわかったしね。僕にも将来を約束した人がいるんだよ。今度二人にも紹介したいな」
「いいわね!折角だから一緒にお茶しましょうよ!」
「にゃにゃにゃ?!」
婚約のフリ?じゃあお嬢はそもそも婚約していなかった?このオスに別のツガイがいるというのは問題なかった?
やっべ。別れさせようと襲撃しないでよかった。
男爵も感極まったのかハンカチを取り出し目元を拭いている。男泣きだ。
「今日はなんて素晴らしい日だ。アリスの趣味に合わせてこんな猫耳までつけてくれるとは‥なかなかできることじゃないぞ‥アリスのどストライクじゃないか!しかも猫耳がよく似合ってるとか!にゃーにゃー訛りもちょうどいいな。家はどこの出身だ?こんな逸材もう見つからんぞ?アリスも絶っ対逃すなよ!しっかり手綱を握っておくように」
「もちろんよ!」
あれれ?なんで猫ってバレない?
なんでこうなった?
じっとリオンを見ていた男爵がふいにリオンの頭に手を置いた。アリスほどではないがなかなかにいい手だ。リオンが目を細め恍惚の表情をする。
なでなでなで
「にゃ~~」
「なんだろうな、この頭は無性に撫でたくなる」
「あ!パパダメ!りおん君は私のよ!」
「なんだヤキモチか?だがなんとも手が離れないのぉ」
おおぅ!さすがパパさん!"神の手"ほどではないがなかなかの手をお持ちだ。犬族の妖精の王弟殿下が落ちたのはこの手か。この父娘を我が宮殿に招いて毎日なでなでしてもらえんだろうか。きっと伝説の傾国の父娘となるだろうな。
二人になでなでされてうっとりのリオンはその後の二人の会話を聞き流している。
「パパ!りおん君の家は遠いの。社会見学で街に来たんですって」
「む?社会見学とは実は名家のご令息でしたか。これは失礼した。そうするとアリスは嫁に行くのか?それは困るが‥」
「りおん君は次男なんですって」
「なら我が家に婿に入っていただくことは問題ないな?やんごとない血筋の婿殿か、ますますいいぞ!」
なんともいい具合に誤解が進み話はとんとん拍子だ。窓の外ではギードが生ぬるーく様子を窺っている。
「でもね、泊まるところがないんですって。だから家に泊めてあげても構わないかしら?」
「なに?それはいかんな。大事な婿殿だ。逃さんようにがっっちり囲い込んで‥ゲフンゲフン、丁重にもてなさなくては。すぐに隣に部屋を準備させよう」
「いえボクはお嬢の部屋で十分」
「むむ、お熱いのはいいことだが一応婚前だからな。外聞もあるから部屋は分けておくぞ。まああとは若いもの同士好きにしなさい。今晩私は早く寝るとしよう」
「ありがとう!パパ大好き!」
え?好きにしろ?早く寝る?
なにそれ?パパさんお疲れなのか?
父娘二人が逃さへんで!と目をギラギラさせてリオンを見ており、リオンの背筋に寒気が走る。実はもう取り返しがつかないところまで流されているという事実に気がついていないのはリオンだけ。窓の外のギードさえそれがわかっている。
「あー、オッホン、でだな婿殿」
「にゃ?なんですか?」
「婚約者同士なのにアリスをお嬢呼びはどうかと思うぞ。我が家では婚約者同士は名前で呼び合う風習があってだな。晴れて婚約者なら名前で呼んでみてはどうかな?」
パパさんぐいぐいくるなぁ
いやいや、婚約者は場の流れだし。
婿殿ってボクがこっちの家に入る前提?つい返事しちゃったけど。
猫の王族で異性を呼び捨てにできるのはツガイのみ。名を呼び捨てにすればツガイ確定である。よって名を呼ぶのは障りが‥‥‥
「嬉しい!りおん君に名前を呼んでもらえるの?本当の婚約者になったみたい!」
輝かんばかりの笑顔をリオンに向けるアリス。その愛らしい笑顔に抗えない。混乱の中でリオンはうっと言葉に詰まる。
なんだこの圧は?!
いやいやいや、だけどボクはこれでも!腐っても第二王子、そう簡単にツガイを選べない。流されちゃダメだ!流されちゃ!あれ?ダメ‥だよな?
「あの‥‥いや‥その‥」
「さあ呼んでみなさい」
「アリスって呼んで!りおん君お願い!」
「えっとです‥にゃ‥」
ぐいぐい二人に詰め寄られベッドの上で後退るリオン。なぜか二人の圧に逆らえない。
「「さあさあさあ!!」」
「‥‥‥う‥あ‥‥あ」
「「あ?」」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ありす」
「キャーッりおん君ありがとう!」
歓喜の声をあげてアリスはリオンに抱きついてきた。男爵も満足げだ。もう何もかも全部知っていて嵌められているとしか思えない。リオンは完全に追い込まれていた。
にゃぁぁ!あっさり呼んじゃった!お嬢がボクのツガイ確定?!あれ?でもこれでいいのか?
窓の外のギードはそれさえ予想したように木の上でうたた寝をしていた。
オイ!ギード!お前もうちょっと仕事しろよ!
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