10 / 53
005: 出会い《アリス》④
しおりを挟む「はいはい。撫ででほしいのね。ホント、甘えん坊さんだね君は」
そして甘え上手だ。アリスはデレデレと膝の猫を撫でる。綺麗な毛並みは撫でていて手触りがとてもいい。顎の下をくすぐるように掻いてやれば黒猫も気持ちがいいのかうっとりと目を細めている。恍惚とアリスを見上げ鳴き声を上げるようにピンクの口を開けるが鳴き声は聞こえない。
「あ、サイレントニャー?嬉しい!」
これは猫が甘えているサイン。そして信頼の証だ。ただ拾ってお世話しただけなのに出会ったばかりの自分にこんなに懐いてくれた。なんて僥倖!なんて役得!アリスはすっかりめろめろだ。感極まって黒猫をぎゅっと抱きしめる。
「ああもうもうもう!可愛い!カッコいい!可愛い!大好き!君を飼っちゃいたいな!でも本当のご主人がいるよね?きっと心配してるわ。明日は君のご主人を探さないと」
だがそれまではこの子を堪能しよう!
そうしよう!
アリスがぎゅうぎゅうに抱き締めて頬擦りしながらなでなでしていれば猫もゴロゴロと擦り寄ってくる。アリスはますます嬉しくてなでなでぎゅーを繰り返していた。
ケイトがホットミルクを持って部屋にやってきた。めろめろに猫にすりすりする変態アリスに目を細めアリスの足元にミルク皿を置いた。
一見アリスの一方的な愛情表現に見える。このラブアタックに逃げ惑う猫も過去多くいたが、この黒猫はアリスを嫌がっていない。むしろハートマークが見えるほどに懐いている。大変珍しいがこの猫はアリスと相性がいいのかもしれない。
一通りのラブアタックが終わり満足げな黒猫がアリスの膝から降りてミルクをクンクンしている。そしてきちんと座り身を屈め上品に舌を出して飲み出した。その気高い様子にアリスはうっとりだ。頬杖をついてその様子を見ている。すでにドロドロのめろめろアリスにケイトがため息を吐いた。
「飼っちゃダメですよ?」
「わかってるわよ」
珍しく聞き分けのいいアリスにケイトが目を瞠る。いつもならなぜだ!どうしてだ!とここで大暴れである。アリスの目は黒猫に据えたままだ。
「この子きっと飼い猫だもん。迷子になったんだと思うの。明日ご主人を探さなくちゃ。きっと心配してるわ。でもこの子の家が見つかるまでは部屋に置いていいでしょ?」
部屋に置く?長期滞在は飼っているのと同義では?家が見つからなければ永久的に滞在?
「旦那様にバレます」
「バレないわ!この子あんまり鳴かないし黒くて目立たないし賢いし大丈夫!ご主人が見つかるまで保護するの!預かってるだけ!いいでしょ?飼ってない飼ってない。ね?」
「なぉん」
なんとも絶妙なタイミングで猫が鳴いた。ミルクを飲んで満足したのかソファにひらりと飛び乗った。そしてアリスの膝に座り込みしっぽで手をぺんぺんする。
「フフッなでなで好きなのね?可愛いなぁ。いいこいいこ」
「にぁ~~~~~」
ケイトがどこか遠い目でイチャつくアリスと黒猫を見やる。目の前に見えるこの絵にアテレコでセリフをつけるなら「きゃっきゃうふふ」だろうか。そのラブラブぶりに、一人と一匹の周りにお花畑が見えるようだった。
「私は明日から休暇ですがお一人で猫の世話は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ!コック長とは仲良しだしミルクも適温に温められる様になったし猫ごはんもストックがあるし。ケイトは安心して休暇を楽しんできてね。あ、行く前にハンスには根回ししといてね。飼ってるんじゃないの、預かってるって」
「はぁ‥私が安心できる様にどうか大人しくしててください」
アリスは身の回りのことは自分でできるから問題はないだろう。だがアリスの無駄なやる気は時にとんでもない行動力になる。猫絡みは特にすごい。帰ってきたらとんでもないことになっていそうな予感にケイトはぶるりと身震いする。ケイトのこういう予感は得てして的中するのだ。
不在の間どうか何事もありませんように‥‥
ケイトは嘆息と共に心中でカラバ家の無事を祈った。
0
あなたにおすすめの小説
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる