【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)

文字の大きさ
32 / 51

26.ロイド視点

 セシリア思い詰めた表情をしていた。

「母さんも死んで、わたしは価値は無くなりました。これ以上、陛下にご迷惑をかけるわけにはいきません」
「セシリア。なにか思い違いしてない?」
「えっ?」

 彼女の目が丸くなる。

 僕が君を追い出したりするものか。

「確かに僕は身分を隠していた。でもそれは、本当の僕を見て欲しかったからだよ。
 あの日、僕は君に会えた。悲しそうな君に笑ってもらいたかった。僕が皇帝になったのは君のためなんだ。君を解放してあげたくて」

 僕には兄が二人いた。
 父が死に兄たちの後ろ盾に皇妃派と側妃派がそれぞれについた。
 二つの勢力が争いまだ幼い僕を引き入れようとしていた時、叔父上がさらうようにして逃がしてくれた。
 まだ、事の重大性がわからなかったが、大人の顔が醜く見え怖かったのを覚えている。
 小さな僕の前に目と口を半月にして笑っている顔はまるで心のない道化師ピエロのように見えた。
 
 大人は汚い、そう思った。
 信じられるのは叔父上だけ。叔父上だけいればいい。

 そんな時に出会ったのが、セシリアだった。
 彼女もまた、大人の身勝手さに振り回された被害者だった。

 そして彼女は自分が生まれたことを懺悔した。

 どうしてだ。
 なぜ、自分を責めるんだ。

 大人が悪いのにー。
 身勝手に子供僕らをもののように扱っているだけなのにー。

 でも、セシリアの自分を責める言葉を聞いていると一身に母親を愛しているのがわかった。

 愛されたい。愛したい。愛を知りたい。
 
 身体中で叫んでいるようだった。

 それが愛おしく思った。

 自分が受け身であることに罪悪感を感じた。

 慰める言葉がすぐには出てこなかった。

「辛かったね。今まで頑張ったんだね」

 出てきたのはそれだけだった。
 セシリアは顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。
 抱きしめた僕の胸元を濡らした。

 君の笑う顔が見てみたい。
 どうすればいいか・・・。

「君は一人じゃない。だから、一人で全てを抱え込まなくていいよ」

 僕は君のために何ができるのか・・・。
 僕ができることは・・・、一つだけ。
 
 君の自由に生きられる世の中にすればいいのだ。

 幼い僕にはしか思い浮かばなかった。
 
 僕は君にペンダントをあげた。
 母上から頂いた王家の宝物。少しでも力になればいいと思って。

 今になればに見つからなくてよかったとは思うが、あの時はそれが最善だと思った。

 僕はあの後、叔父上の力を借りて兄上たち、いやあの五月蝿い権力に群がる害虫たちを駆除することにした。
 叔父上も思うところがあったからこそ、僕に協力してくれた。

 兄たちを蹴落とした。
 害虫たちを一掃した。

 非道になれる自分を知った。
 でも後悔はない。

 セシリアの為なら僕はどんな人間にでもなれる。

 君を笑顔にする為なら、火の焼かれようが水責めにされようが、かまわない。
 君が笑っていられるならどんな世の中でも作る。
 
 君の笑顔が見たいからー。
 
感想 26

あなたにおすすめの小説

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ

Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます! ステラの恋と成長の物語です。 *女性蔑視の台詞や場面があります。

男爵令嬢の記憶が交差する

まるねこ
恋愛
男爵令嬢であるフランはあるきっかけで前世の記憶を思い出していく。 意味のない夢だと思っていたけれど、それは次第に現実と絡み合い―― Copyright©︎2025-まるねこ

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

【完結】フェリシアの誤算

伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。 正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。