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ラリエットの決意
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「頬を触ったり、肩を自分に寄せるって何ごとよ。私とアルフレッド様は仲が悪かったのよね?可笑しいわ。」
「はい、アデイル様がお生まれになってもお会いする事はありませんでした。さすがに毒で生死を彷徨われておいででしたので、心配では無いでしょうか?その上、記憶も無くしておいでですし。」
「アルフレッド様がユリアさんに毒を盛られて死にかけた妻を心配?ユリアさんと言う愛する人が居て本当は私が死んだ方が二人には好都合でしょうにーーーー。」
「ユリア様の事ですが、アルフレッド王太子殿下はアデイル様がお生まれになった頃からユリア様のお部屋にお渡りが無かったようです。」
「それは本当のお話しですか?」
「はい、ユリア様付き侍女からの情報です。」
「どうしてかしら、学生時代からの恋人だって言っていらしたのに------。」
侍女は頷き話しを続けた。
「ユリア様は、アデイル様がお生まれになって幸せそうなラリエット王太子妃殿下を恨まれておいでだそうです。」
「そうよね、恋仲の二人に赤ちゃんが出来ないのは辛いわよね。私の方が先に身ごもったのがいけなかったのかしら。」
「そんなことはありません。赤子は神様からの贈り物です。ラリエット王太子妃殿下の幸せのために送られたのでしょうね。」
「そうだと嬉しいのだけど------。」
「でも、アルフレッド様がユリアさんの部屋に行かなくなった事なんてこちらは知らないわ。殿下がこっちに来てた訳じゃないんでしょ?
そんな事で殺されかけるなんて、私の方が可哀そうじゃないかしら。不敬だけど全てアルフレッド様のせいじゃないかしら。」
「ラリエット王太子妃殿下、落ち着いてください。誰かの耳に入ったら大変です。お疲れのようですから少しお休みになってください。
今は体を治すことだけに専念致しましょう。」
そう言って侍女は部屋を後にした。
ラリエットは隣のゆりかごで眠る我が子の寝顔を見ながら眠りについた。
アルフレッド執務室
「やっと戻られましたか。アルフレッド様まさかラリエット様授乳姿を見てきたのですか?」
執務室に戻ったアルフレッドにデイリーはそう言った。
あの傲慢な女があそこまで変わるとは。あのラリエットがまるでか弱い乙女のようで、私でも彼女を守りたいと思ってしまった。
潤んだ瞳に頼りな下げな姿に豊満な胸---純粋な眼差しに潤んだ瞳、今の彼女は男達の理想そのものだった。
「それにしても、記憶を無くしたラリエット様は別人のようでした。厚化粧を落としシンプルな洋装に大人しくしていればあんなに美しかったとは知りませんでした。」
「不敬だぞデイリー、ラリエットは俺の妻だぞ?」
「アルフレッド様、どうしたのです。貴方がそんな風に怒るなんて、ラリエット様に惚れたのですか?アルがラリエット様を庇うなんて---、あんなに嫌っていたのに------。」
「------。」
「どうして黙っているのです。 相手はラリエット様です。今はたしかに大人しいが、記憶が戻れば元の王太子妃に戻るんだぞ、戻れば前と同じ可愛げもクソも無い高慢な女になるんだぞ?」
「---それは---そうかもしれないが----。」
私は、今のラリエットを手放したくないと思ってしまっている。
優しく、それでいて妖艶で美しいラリエット。ベッドで横たわるラリエットの姿ーーーー厚い化粧品と髪を下ろしシンプルな装いなだけであんなにも官能的になるだろうか?
「アルはラリエットに愛情が湧くのかーーー。夫婦としてやっていくつもりなんだな。」デイリーはユリアを切り捨ててラリエットを愛せるのかと言っているのだ。
「------それは、そうするつもりだ。」
デイリーは今の言葉では納得していないようだった。
「元老院達はアデイル王子だけじゃ納得しないぞ、------それとも又妾を見つけるのか?その時はユリアみたいな庇護欲の強い可愛い下級貴族では無く少しぐらい気位が高くても高貴な血筋のご令嬢を妾にすることだな。」
「馬鹿か、妻が大変な時に妾など探すわけ無いだろう。子供は----欲しいな。ラリエットとの子がいいーーーラリエットに産んでもらいたいと思っている。今は記憶を無くして不安なラリエットに寄り添いたいし優しくしたいと思っているのだ。」
その時背筋がゾゾッっとした。ラリエットは寒気がして目が覚めた。アデイルは相変わらず可愛らしい寝息を立てている。
私の子供---二度とこの手に抱く事が無いと思っていた。
どうしてそう思ったのかしら------。
その時酷い目眩に襲われ脳裏に走馬灯のように今とは違う自分が流れてきた。
脳裏に浮かぶ、私は病室で泣いているーーーー前世の自分の姿が---。白い部屋、白いベッド------横たわる私。
私----流産をして二度と子供が産めない身体になり、夫から離縁されたのだった。
夫は世間体が大事で、出世には、家と妻----子供が必要だった。子供が産めない私は不要だった。
流産した私は退潮が思わしくなく心労と食欲が落ち日に日に弱り果て命を落とした。
今度こそ『幸せな人生を生きたい!優しい旦那様に可愛い子供ーーー幸せな家庭。』今度こそ私に幸せをーーーー。
でも今世も同じだ、旦那様に愛されず妾に毒を盛られ死にそうになっているのに夫は見舞いも来ない。------私に似たラリエットの魂が、私の心に共鳴したのかしら。
そして私はラリエットととして生きているのかもしれない。
私はラリエットであってラリエットじゃない。
身体を起こし、アデイルの頬を撫でながら思わず涙がこぼれてしまった。
自分の子と言われてもピンと来なかったが、抱き上げ乳を上げたこの温もりが------愛しいと、アデイルの存在が私の母性が愛おしいと言っていた。
この可愛らしい存在アデイルを守れる母でありたいと---私はこのままではいけない。強く、早く元気になってこの子をずっと慈しもうと誓った。
「はい、アデイル様がお生まれになってもお会いする事はありませんでした。さすがに毒で生死を彷徨われておいででしたので、心配では無いでしょうか?その上、記憶も無くしておいでですし。」
「アルフレッド様がユリアさんに毒を盛られて死にかけた妻を心配?ユリアさんと言う愛する人が居て本当は私が死んだ方が二人には好都合でしょうにーーーー。」
「ユリア様の事ですが、アルフレッド王太子殿下はアデイル様がお生まれになった頃からユリア様のお部屋にお渡りが無かったようです。」
「それは本当のお話しですか?」
「はい、ユリア様付き侍女からの情報です。」
「どうしてかしら、学生時代からの恋人だって言っていらしたのに------。」
侍女は頷き話しを続けた。
「ユリア様は、アデイル様がお生まれになって幸せそうなラリエット王太子妃殿下を恨まれておいでだそうです。」
「そうよね、恋仲の二人に赤ちゃんが出来ないのは辛いわよね。私の方が先に身ごもったのがいけなかったのかしら。」
「そんなことはありません。赤子は神様からの贈り物です。ラリエット王太子妃殿下の幸せのために送られたのでしょうね。」
「そうだと嬉しいのだけど------。」
「でも、アルフレッド様がユリアさんの部屋に行かなくなった事なんてこちらは知らないわ。殿下がこっちに来てた訳じゃないんでしょ?
そんな事で殺されかけるなんて、私の方が可哀そうじゃないかしら。不敬だけど全てアルフレッド様のせいじゃないかしら。」
「ラリエット王太子妃殿下、落ち着いてください。誰かの耳に入ったら大変です。お疲れのようですから少しお休みになってください。
今は体を治すことだけに専念致しましょう。」
そう言って侍女は部屋を後にした。
ラリエットは隣のゆりかごで眠る我が子の寝顔を見ながら眠りについた。
アルフレッド執務室
「やっと戻られましたか。アルフレッド様まさかラリエット様授乳姿を見てきたのですか?」
執務室に戻ったアルフレッドにデイリーはそう言った。
あの傲慢な女があそこまで変わるとは。あのラリエットがまるでか弱い乙女のようで、私でも彼女を守りたいと思ってしまった。
潤んだ瞳に頼りな下げな姿に豊満な胸---純粋な眼差しに潤んだ瞳、今の彼女は男達の理想そのものだった。
「それにしても、記憶を無くしたラリエット様は別人のようでした。厚化粧を落としシンプルな洋装に大人しくしていればあんなに美しかったとは知りませんでした。」
「不敬だぞデイリー、ラリエットは俺の妻だぞ?」
「アルフレッド様、どうしたのです。貴方がそんな風に怒るなんて、ラリエット様に惚れたのですか?アルがラリエット様を庇うなんて---、あんなに嫌っていたのに------。」
「------。」
「どうして黙っているのです。 相手はラリエット様です。今はたしかに大人しいが、記憶が戻れば元の王太子妃に戻るんだぞ、戻れば前と同じ可愛げもクソも無い高慢な女になるんだぞ?」
「---それは---そうかもしれないが----。」
私は、今のラリエットを手放したくないと思ってしまっている。
優しく、それでいて妖艶で美しいラリエット。ベッドで横たわるラリエットの姿ーーーー厚い化粧品と髪を下ろしシンプルな装いなだけであんなにも官能的になるだろうか?
「アルはラリエットに愛情が湧くのかーーー。夫婦としてやっていくつもりなんだな。」デイリーはユリアを切り捨ててラリエットを愛せるのかと言っているのだ。
「------それは、そうするつもりだ。」
デイリーは今の言葉では納得していないようだった。
「元老院達はアデイル王子だけじゃ納得しないぞ、------それとも又妾を見つけるのか?その時はユリアみたいな庇護欲の強い可愛い下級貴族では無く少しぐらい気位が高くても高貴な血筋のご令嬢を妾にすることだな。」
「馬鹿か、妻が大変な時に妾など探すわけ無いだろう。子供は----欲しいな。ラリエットとの子がいいーーーラリエットに産んでもらいたいと思っている。今は記憶を無くして不安なラリエットに寄り添いたいし優しくしたいと思っているのだ。」
その時背筋がゾゾッっとした。ラリエットは寒気がして目が覚めた。アデイルは相変わらず可愛らしい寝息を立てている。
私の子供---二度とこの手に抱く事が無いと思っていた。
どうしてそう思ったのかしら------。
その時酷い目眩に襲われ脳裏に走馬灯のように今とは違う自分が流れてきた。
脳裏に浮かぶ、私は病室で泣いているーーーー前世の自分の姿が---。白い部屋、白いベッド------横たわる私。
私----流産をして二度と子供が産めない身体になり、夫から離縁されたのだった。
夫は世間体が大事で、出世には、家と妻----子供が必要だった。子供が産めない私は不要だった。
流産した私は退潮が思わしくなく心労と食欲が落ち日に日に弱り果て命を落とした。
今度こそ『幸せな人生を生きたい!優しい旦那様に可愛い子供ーーー幸せな家庭。』今度こそ私に幸せをーーーー。
でも今世も同じだ、旦那様に愛されず妾に毒を盛られ死にそうになっているのに夫は見舞いも来ない。------私に似たラリエットの魂が、私の心に共鳴したのかしら。
そして私はラリエットととして生きているのかもしれない。
私はラリエットであってラリエットじゃない。
身体を起こし、アデイルの頬を撫でながら思わず涙がこぼれてしまった。
自分の子と言われてもピンと来なかったが、抱き上げ乳を上げたこの温もりが------愛しいと、アデイルの存在が私の母性が愛おしいと言っていた。
この可愛らしい存在アデイルを守れる母でありたいと---私はこのままではいけない。強く、早く元気になってこの子をずっと慈しもうと誓った。
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