主人公終了お知らせ。

アジサイ。

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古賀サクヤ終了のお知らせ

とりあえず最後まで聞いて欲しい。

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こういう奴よく居るよね。はいはい、あるある。
「なんだぁ~?正義の味方気取りか?良い身分だな小僧!!」
「てめぇみたいな汚ねぇ奴には用はねぇよ!失せな!」
突然割って入った私に大分機嫌を悪くしたらしい身なりの悪い男達は何かと突っかかって来る。白銀に輝く美しい髪を持つ身なりのいい子供は私の後ろにすっぽり隠れた。どこぞの貴族は知らんがきちんとお礼を貰ってやるからな。
「聞いてんのかぁ?!クソガキ!邪魔だって言ってんだよ!」
突然胸ぐらを掴まれて流石の私も驚くがこいつら怒鳴ることしか出来ないのかとイライラする。
「ギャーギャーうるせぇな。犬か家畜かてめぇら。」
私の胸ぐらを掴んでいる汚い手を握りしめる。
「おい、後悔するなよ?」
「い、いてぇ!うっ、お、おい!やめろ!う、わうあああ!!」
絡んできた男達をねじ伏せ周りで傍観を決め込んでいた奴らは巻き込まれまいとそそさくと居なくなった。私は一息ついて後ろを振り向き少年を見る。
「大丈夫か?」
「た、助かった。礼を言う。」
少年は驚いたように私を見上げていい落ち着かせるように胸に手を当てている。
話し方といい身なりといいかなり上の身分の子供らしい。
「家はどこだ、送ってやろう」
そう言う私から少年は目をそらして気まづそうにする。
ただの迷子かと思っていたがそうでは無いらしい。
「・・・帰りたく無いのか。」
少年はおずおずと私を見て、恐る恐ると言ったように口を開く。
「助けてくれて本当に感謝している。すまない。今は口でしか礼ができないのだ。」
そう言って私の前から去ろうとする少年の腕を掴む。
「まて、少年みたいな警戒心のカケラもない奴1人に出来ない。今度こそ身ぐるみ剥ぎ取られておしまいだ。」
私の言葉に少年の足も固まる。返す言葉もないようでシュンとしている。

なんだか随分と聞き分けがいいじゃないか。子供なんだからもっと反抗したって良いだろうに。

こんな裏通りに1人。大方家出でもしてきたのだろう。その辺は勇敢だと言える。少年のあまりの落ち込みように折れたのは私だった。
「実は私は旅人でな、少し前にここについたばかりなんだ。」
少年は不審そうに私を見る。 
「これから食事でもしようと思っていたが、1人では寂しいものだ。どうだ?一緒に食べないか?少年?」
私の言葉に少年の顔はパァと明るくなる。元が良いのでなんとも輝かしい。 
「あぁ!かまわないぞ!」
意気揚々と彼は答えた。



私は出店で軽食を買い、少年に渡す。少年は随分と目をキラキラとさせそれを受け取った。まぁ、珍しいか、貴族の子供が食べたりするもんじゃないし。
「食べろよ。」
「す、すまない。代金が。」
「良いって、食えよ。」
どうせお前を送り届けた時に貰うからさ。と思いながら小さな小綺麗な公園の小さな噴水の縁に腰掛けて、それを頬張る。すると少年も私の隣に腰かけてそれを口に含んだ。
夢中でそれを食べる少年に私は話しかける。
「そういや少年名前は?」
「る、ルアーだ。」

今にして思えば何故この時、名前を聞いて気が付かなかったのか己を呪いたい程だ。

「そうか、じゃぁルーだな。」 
「ルー?!」
ルアーと名乗った少年は心底驚いたように呼び方を復唱した。
「あぁ、いやか?」
貴族の子供が1人でいるのだ。誰が聞いているのか分からない、ここ王都で名前を呼び、見かけない旅人が貴方の子供連れ回してますよ。なんて変な告げ口されても困る。可能性としては低いが無いとは言い切れない。
予想以上に驚かれ私は付け足すように言葉を続けた。
「まぁ、嫌なら普通に呼ぶけど?」
「いや!それがいい!」
噛みつくように呼んで欲しいとルーは言ってきた。
やたらと嬉しくそうな少年、ルーを見て私は勝手に解釈した。
愛称をつけてくれるような人もいなかったのだ。つまり、ただ照れいるだけだ。貴族ってのは窮屈な生活してんだな。
その子供を見て私は改めてそう思った。

ルーと2人王都の街を歩いているだけで特に何かをしているわけではなかったが他愛も無い話をしている中でルーの瞳はいつまでもキラキラとしている。
そして突然ルーは口を開く、
「お主は女ではないのか。」
不意打ちの発言に私は驚いた。
「わかるのか。」
「何故、男の格好をするのだ?」
これが初めてというわけではなかった。今までも何人かに女ではないかと疑われたりバレたりしてきていたが、まさかこんな子供にあっさり見破られるとは思ってもいなかった。
いや、子供だからこそわかったのかもしれない。
「女の一人旅は何かと不自由でな格好だけでも男でいるのさ。」
「それは、バレないのか?」
「見るものが見れば分かる。ルーのようにな。」
私は目の前の行き止まりをなんとなく右に曲がった。
「意外とバレないぞ?今時旅人なんていっぱいいるからなぁ」
大通りに出て、ふと誰かの視線を感じた。思わず顔を向ければそこにいたのは都の衛兵であった。 
「見つけたぞ!!こっちだ!」
こちらを指差し何やら叫んでいる。不審に思う前に私はルーに手を引っ張られ走っていた。 
「ん?!おい、ルー?」
「回り込め!そっちに行ったぞ!子供の足だ、追いつける!」
まるで衛兵から逃げているようだ。何故逃げる?わざわざ迎えにしてくれたのだ。
「ルー!何故逃げる?」
「まだ!まだ帰りたくない!」
ずっぱりと言い切るルーに思わずいや、帰れよと言おうとして口を開いたが
「お主とまだ話がしたい!」
その強い声に私はまた驚いた。
たかが旅人1人と話がしたいなどなんと風変わりな貴族もいたものだ。私は開いた口を微笑みへと変える。

彼は知りたがっているのだこの国のこと他の国のことだから私と話がしたいのだろう。

知識欲の強い人間は嫌いじゃない、子供なら尚更だ。
私はルーの手を強く握り返す。そしてルーの前に出て私がルーを引っ張って走る形になった。 
「面白い!」
突然走りが変わった私たちに衛兵たちは少なからず驚く。
「逃げるならもっと速く走れ!」
ルーがうなづいたのを確認してさらにスピードを上げる。私たちは人混みのすごい大通りを駆け抜けた。


「ルー、お前、体力なさすぎ。」
なんとか衛兵を振り切り足を止めて見ればルーが膝をついて苦しそうに息をしている。
さすが箱入り息子。
「大丈夫か?」 
ここまで体力が無いとなるとすぐに捕まるぞ。
「だい、だいじょ、ぶだ!」
・・・・・不安しかないけど言い切るだけの根性はあるようだ。私はルーに手を差し伸べる。
「なら、行こうか。」

ルー、お前の逃亡劇に手を貸してやる。

さぁ、この手をつかめよ。

それからも私とルーは衛兵から逃げ続けた。時に息を潜めてやり過ごし捕まりそうになりながらもなんとか逃げ出したり走っている時のルーはとても苦しそうなのにその瞳はキラキラと光を失うことはなかった。最終的に私達が逃げてきたのは王都エタナートの城壁の上だった。
「すごい、美しい。」
よく覚えている。とても夕日が綺麗なだった。ルーが足を止めたことによって私の足も止まり2人で夕日を眺めた。
さて、そろそろ引き際だ。
あんまり逃げ回ってもこの子が貴族である事は変わりないし、家には帰らなくてはならないのだ。
「ルー、オニゴッコはおしまいだ。」
ルーは弾かれるように私を見て目をそらした。銀髪の美しい髪が夕日の橙色に染まっている。こうして見るとまるで女のような綺麗な顔立ちをしている。
「今日は十分逃げた。人は逃げた分だけ立ち向かわなくてはならない。分かるな?」
私はフードをとってまっすぐにルーを見る。ルーは私から目をそらしていたが、おずおずと私のことを見上げた。
「あぁ、分かる。」 

夜空を思わせるその瞳が真っ直ぐに私を見ていた。

自分の立場も今日の行いも全て理解している頷きだった。
呆れるほどいい子だ。 
私は微笑む。
「もし何かを困ったりまた逃げ出したくなったりしたら、私を頼れ、この国にいる間はルーを助けてやれる。」
私はルーに向かって手を差し出す。今度は握手の意味を込めて、きっと二度と会うことの叶わないこの貴族の子供を私は存外気に入っているようだ。
「私がまた手を引いて走ってやるさ。」
ルーが瞳に涙をたっぷり溜めている。
おいおい、泣くことじゃないだろうに。小さなルーの手が私の手を強く掴んだ。
その瞬間男の怒号が城壁の上で響き渡った。
「きっ、貴様ああああ!!」
びっくりしすぎてルーと握手をしたまま声の方を向くとそこにいたのは若い騎士だった。随分とご立腹だ。身なりからしてその辺にいた衛兵とは訳が違うのだろう。その騎士なんと剣を抜いてすでにこちらにすごい勢いで走ってくる。
「ジル!!」
「リクラクイン様に続け!!」
ルーの声とその辺にいた衛兵の声が被ったが私は聞き逃さなかった。瞬時に昼前に果物屋とした会話を思い出しルーを見てまた迫ってくる騎士を見る。
ま、まさかと思うが

「じ、ジル・リクラクイン?!」

大陸にその名を轟かす最良の騎士に私は命を狙われている。
おっと、なんてこった。
ちょっと待ってくれないか。
繰り返し何度も言うが、私は今朝この王都エタナートに着いたばかりだ。何も悪いことはしていない。むしろ追い剥ぎに合いそうな子供を助けたんだ、感謝して欲しいくらいだ。本当に。

だが現状はどうだ。

大陸で「最良の騎士」と名高い ジル・リクラクインに有り得ない殺意を向けられている。こんな経験生きてる間に出来ること無いだろう。
うわー、貴重な体験だなぁ。
あまりの殺意の高さに私の頭はショート寸前だった。それでもなけなしの頭を動かして考えた。

待て、私が何したって言うんだ。

え、待て待て
私、ただの旅人よ?
今朝、この王都についた流れ者ですよ?私が何したって言うんですか?!
ルーはそんなに身分が上なのか?ジル・リクラクインが動くほどの人物なのか?

そして話は一番最初のセリフに戻るのである。

「貴様ぁあぁ!!王子を離せ!!罪は重いぞ!!」
私は剣を片手に凄い勢いでこちらに向かってくる騎士様の発言にぽかんと口を開いた。どうやら私が助けた子供、貴族だと思っていたがそうではないらしい。
「お、・・・王子ぃ?!」
苦笑いを浮かべたルアーを見ながら古賀サクヤ終了のお知らせが今私の中で流れた。
「まじかよ。」
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