公爵様が信じるのは奴隷だけ

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「ご主人様?」

イザベルが考え込んでいたため、ワインの用意をしてルディが再び食堂に戻ってきたことに、声をかけられるまで気づかなかった。

声をかけられ驚きに目を瞬かせるイザベルにルディはもう一度問い掛けた。

「ご主人様、大丈夫でございますか?」

「あ、ああ。問題ない」

そう答えたイザベルに、ルディはそつなくグラスと、軽いおつまみをテーブルに用意する。
そして、最後にイザベルのグラスに白ワインを注いだ。


イザベルはワインの注がれたグラスに口をつける。
勢いよく飲み込んだアルコールが喉の奥を熱くした。

そしてイザベルはルディに今日の食事に対しての感想を告げる。

あの料理に対してだけだ。ユーリが唯一負の感情以外を示したのは。


「ルディ、今日の食事は見事だったな」


「いえ、とんでもございません」



「…ユーリのために用意してくれたのだろう。お前は…本当にすごいな」

独り言のように口から出たその言葉に、ルディは言葉を返した。


「私だけではありません。リアムの提案です。リアムがユーリ様と。…そしてご主人様のために何かできないかと」

イザベルはその言葉に驚いた。


ユーリのために、そしてまさか、私のために何かしようとしてくれた

その気持ちがイザベルは嬉しかった。


「…そうか」

イザベルは少しだけ表情が緩む。

そのたった少しの表情の変化だが、ルディは共に過ごすにつれその表情の変化を感じ取れるようになっていた。


「…ルディは…ユーリをどう思う?…なぜ私にあんなにも怯えているのだろう」

もうどうにもならないといったような表情でイザベルはルディに問いかけた。


「…ご主人様。決してご主人様だけではありません。…ユーリ様はどうにも我々にも怯えられているかのように思えます」

「…そうか」

ルディの言葉を聞き、イザベルはそれ以上の言葉が続かなかった。


「ご主人様、どうかそう気を落とさないでください。ご主人様の想いはいずれ必ずユーリ様へと伝わります」

ルディは目の前で沈んだ表情を見せる主人に何としても力になりたい、何としても励ましたかった。


「ご主人様とユーリ様はここからが始まり、他の誰かと比較等せず、お二人なりのペースがきっとあるはずです」


ただひたすらにイザベルを励まし、希望を持たせてくれるような言葉。


綺麗事だと、甘い期待だと言われるだろう




それでもイザベルはその言葉に心が励まされた。


自身を決して裏切ることのできないちっぽけな奴隷のその言葉こそ、イザベルの選択が正しいと思える唯一の拠り所だった。




























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