文太と真堂丸

だかずお

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~大帝国の幹部達 ~

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骸がここに来る・・・・

「真堂丸、どうしよう?」

「俺が奴を倒す」

「でも、まだ傷は完全には治って・・・」

「なんとかするしかない」

この町の人間はやっと女狐から解放されたばかりなんだ、皆殺しになどさせてたまるか、そんな思いが真堂丸の中に湧き上がっていた。

「僕も役に立つか分からないけど、全力で力になります」

「ありがとう」
真堂丸は骸との対峙を思い出していた。
この状態で果たして奴に勝てるか?

「文太、皆には黙っていてくれ」

「えっ?でも」

「そのほうがいい」

「分かりました」

あいつは強い

夜が更けた頃、町の人々は眠りにつき、町は静まりかえっていた。
僕は緊張と警戒心が働き、ずっと辺りが気になっている。
そんな時、突然、真堂丸が立ち上がった。

「真堂丸」

「文太ここにいろ」

「でっ、でも」

「ここにいるんだ」

何やらただならぬ様子、真堂丸は町の入り口のほうに向かい歩いて行った。

その時、僕の背後から何者かが肩を叩く
「ひいぃっ」あまりの驚きに声をあげてしまった。

「文太さん」それは、元郎

「真堂丸さんはどこへ?さっきから二人の様子がちょっと変だったので気になっていたんです」

「えっ?そっ、そうですか?」文太は少し慌てて言った。

「話してください」そのもう一つの違う声は一之助だった。

「あっ、一之助さんも起きていたんですか」

「分かりました、話ます」
皆二人の様子の些細な変化も見逃してはいなかった、ちゃんと気がついていたのだ。
横になりながら、大同も何も言わず、目を見開いていた。

星空が地上に光り輝く夜更け。
その頃、真堂丸は町の入り口に着き、感じた気配に意識を向けていた。
なにか、この変で強い気配を感じたんだが、気のせいか?

「真堂丸」
後ろから声がした。

「文太か?」
振り返ると、一之助、大同、元郎、文太の姿が。

突然すぎた
それはとりかえしのつかない出来事だった。
仕方がなかった。
だがそれは悪く言えば 二度と戻らない 完全なる後悔となる
背後から突如感じたそれは、とてつもない斬撃
「しまった」瞬間の出来事、 真堂丸は声をあげる
悔やんでも悔やみきれない一瞬の油断
その斬撃はすべてをとらえていた。
真堂丸はとっさに自身が真っ二つになるのを防いだ。
だが、それが精一杯だった。
もし、全力で身構えていたのなら・・・・
ここに来ていたのは、骸だったのである、もし、ちゃんと警戒していたら。
真堂丸は歯をくいしばり、唇から血が流れていた。
その斬撃は皆を確実に真っ二つに斬ってしまっていたのだった。
真堂丸の額からは汗が垂れ落ちた。
ズババアンッ
斬られた者達は斬られた事すら気づかず死んでいた。

「ああ」

「これじゃあお前の仲間は全滅だったぜ」

「もし、今のが殺気だけの素振りじゃなきゃあな」

「骸」

「久しぶりだな」

文太はたった今自分が骸の殺気で斬られたことすら気づいていなかった。
それはこの三人をもってしても「今我々はもしかしたら?」大同が言った。
「信じたくはないが、まさか斬られていたでごんすか?」
「こいつは、とんでもない化け物だ」震える元郎の手。
なっ、何者なんだこいつは?
信じられん、信じたくない、大同の手は震えていた。
女狐を見た時、本物の怪物だと思った、これ以上居ない最強の怪物だと。
だが、なんということだ、たった今、目の前に立つこいつは更に・・・・
うっ嘘だ、大同の脳は信じられない現実を必死に否定していた。
もし、あれがただの殺気による斬撃の残像でなければ、あっし達は斬られたことすら気づかず、全滅していた。
こいつは、本当にやばい。

先生、せんせいっ あなたはこんなのと戦うんですか・・・
一之助の全身から汗が垂れ流れていた。
しかも、その傷で……

真堂丸が叫ぶ「みんな離れていろ」
真堂丸殿すまん、こいつは我々とは次元が違う。

ここに居ても、なにもできぬ。
いや、居たらかえって我々の命を守りながら闘うことになり、足でまといになってしまうだろう。

「真堂丸」文太は叫ぶ。
三人は残ろうとする文太を連れて逃げた

「すみません、どうかご無事で」
三人は何も出来ない悔しさにつつまれていた。

「そう、睨むなよ」骸は笑う。

「お前達は俺に救われてんだぜ」

「どういうことだ?」

「俺がここに来ることによって他の幹部や追ってが来ないってことだよ」

「で、お前は邪魔されずに今俺と勝負をしようという訳か?」

「くっくっく、くっく笑わせるなよ」

骸の目は真堂丸の身体の傷、さらには骨の小さなひびの箇所まで的確に見抜いていたのだ。
「手負いのお前と闘い、勝ち満足するような俺じゃあねえよ」

「手負いのお前を追っ手に殺されても困るんだよ」

「暫くお前達には追っ手は来ないだろう、俺が嘘をつくからだ、そして傷の癒えた頃、俺は再びお前の前にあらわれる」

「そん時、殺してやるよ」
骸は背を向け歩き出した。

「せいぜい、楽しませてくれよ」

「くっくっくっく」
骸は去って行く

この時、真堂丸は骸の強さをしっかり感じとっていた。
はっきり感じたことそれは、この傷でもし、今勝負をしていたら殺されていたという事だった。
そして、先ほどもし奴が本気で仲間を殺す気だったら、皆殺されていたということだ。
真堂丸は自身に誓った。
この先二度とあんなことは起こさせははしないと。
真堂丸の拳は力強く握りしめられていた。


その頃、強大な力を持つ、白い刃と呼ばれる大帝国の幹部達の反応は様々だった。

とある祠の中
「おおおおおおおおお」

「おおおおおおおおお」

そいつは泣いていた。

「どこの誰だ、許すまい」

「この俺様の愛おしい女狐嬢を殺したのはどこの誰だ」

「女狐嬢は最高に残酷で俺様の大好きな女だった、必ずやった奴はのがさん」

ドゴオオオオオオーン
とてつもない破壊力の拳は、洞窟を跡形もなく崩していく
その部下達はおそれていた
「女狐様の死により、鬼神様が荒れていらっしゃる」

「しかし、今だに信じられん、鬼神様以外に女狐様を倒せる奴がいたことがだ」

「確かにこの世にはとんでもない奴がいるんだ」部下達は震えていた。

そいつは大帝国の幹部の一人、鬼神と呼ばれる鬼の化け物だった。
鬼神は昔、女狐と共に暴れまわりおそれられていた化け物であった。

場面は変わる
「最高、最高 最高の気分、うふふふふ うふふふふ、幸せよ 幸せよ なんとも幸福であろうか」

女は幸福の絶頂を味わっていた。
「あの女狐が死んだなんて、なんて幸福な気分、目の前に首を添えられたなら更に嬉し」

顔は人間の女
だが、姿は異形だった。
身体からはえる八本の手
その女は女郎蜘蛛と呼ばれる、大帝国の幹部の一人だった。
「くそ女をやった、奴に感謝をしよう、そいつの首も横に添え、一緒に食し豪華な食卓を楽しみたい」

「わたくしこそ一番よ」

「おい」

「はっはい、女郎蜘蛛様」

「探せ、国中を探せ、その者と女狐の身体をここに連れて来るのだ」

「分かりました」


とある森の川べり

チュンチュン
黒く綺麗な長い髪の毛を男は洗っていた。

「ここは静かだ」

「なんとも、素晴らしい」

二人の部下が走ってきた

「龍童子様」

一人は即座に斬り殺されていた。
「静寂を壊しおって、私の許可をとれ」

「もっ、申し訳ございませんでした」

「なんぞや?」
部下はあまりの目力の強さに目を合わせることすら出来ない。
下を向きながら
「そっ、それが女狐様が打ち取られたと」

「そいつは、面白い どこの誰だ?」

「それが、今はまだ分からないのです」

部下は斬り殺されていた。
「なるほどなぁ、ひと時代を築いた怪物が死んだか、久しぶりに腕がなる」

そいつは、龍童子と呼ばれる白い刃の一人であった。

大帝国の本部の城、そこに鬼道は居た。

「どうやら、情報は本当だったらしいなソウファよ」

「はい、女狐がやられたもようです、今現地に骸を向かわせております」

鬼道は立ち上がり、声を荒げた
「おい、分かってるのか?ソウファよ、ついこないだ、烏天狗もやられた。二人の幹部がやられたのだぞ、同一人物によるものなら、我々への反逆だろう?」

「そうなりますね」

「そんな人間がいるとしたら」

「間違いなく、大帝国の本拠地にたった一人乗り込み暴れたあの男ですか?」

壁は鬼道の怒りによって叩き斬られた。

「真堂丸」

「気に食わん、まるで一山が生きているようだ」

「すぐに殺しましょう」

「まぁ、落ちつけ、骸が向かったんだ もう助からん」

鬼道の思いとは逆であった。
ソウファは骸という男を知っていた。
奴にとって一番大事なのは、大帝国のことなどではない。
どれほど自分の満足する敵と巡り合うかだけ。
間違いなく、そいつを見つけても万全な状態でなければ逃がすだろう。
ソウファはこの事を鬼道には伝えなかった。
鬼道に余計な心配を今はかけさせまいようにしようと思ったからだ。

今、女狐のもと一番近くにいる幹部、蠅王蛇に連絡をすることにしよう。

その頃、骸は笑いが止まらなかった。

「やっぱり、あいつはたまらねぇなぁ、あの野郎。
今、会話をしただけのようだが確かに俺たちは想像の中戦っていた。あいつは、死んだが。俺は確かにあまく見ていた。まさかこの俺の右腕が斬り落とされるとはなぁ」

「つまらん、追っ手に殺されるんじゃねえぜ、まあそしたら、そいつを俺が斬ればいい」

「まあ、次は想像の中でも、八割の力は出してやるからよぉ」

骸は丘の上から、眼下にひろがる景色を見下ろし言った。

「面白くなってきやがった、ようやく俺の人生の暇つぶしにはなるような相手がでやがったな」

「くっくっく、楽しませてくれよ、兄弟」

「姉さん、ようやく敵を見つけたよ」

大帝国の幹部達は女狐を倒した者に興味を示し、いよいよ本格的に動きだしたのだった。



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