34 / 42
34.辺境伯来襲 その2
しおりを挟む
辺境伯の到着を聞き、迎えが来たと嬉々として立ち上がれば、お姉さん侍女は少し悲し気に笑っていた。 でも、私はソレを気付かない振りをする。
ここには私の物等なにもないのだから、と……私は、そのまま辺境伯が待つ応接室へと向かおうとした。 案内をしたのは護衛侍女。
「ノエル様、旦那様からの命令です。 お呼びになるまで、コチラで控えてください」
そう言って、応接室の横にある小部屋。 普段は掃除用具が入れられている狭い部屋へと入れられた。 いえ、決して掃除用具と一緒にではありませんよ? この日を想定してたのでしょう小部屋は掃除され、ソファにクッション、小さなテーブルの上には、お茶と菓子、果物、等が置かれていました。
そして護衛侍女が同席する。
彼女は、突然にとんでもないことを言いだすが、基本的には静かなので嫌いではないのですよね。 ちなみに、どんな気持ちで他の侍女達の話を聞いているのか? と、たずねた事もある。
『パンは干しブドウが入ったものが美味しい。 特に、王都の銀の麦庭のは最高でな。 後はクルミパンもなかなか美味くて。 特に焼き立てのものにバターを垂らすともう~。 今度お土産を買ってきますね』
と言うように、やり過ごしているとのことでした。
小部屋では、応接室で語るクルト公爵とレイバ辺境伯2人の声が息遣いまでハッキリと聞こえる。
「うちの子を、ノエルを返してもらおうか? あの子がいるべき場所は、辺境だ。 辺境にはあの子を待つ者達が大勢いる。 返してくれ!!」
穏やかな口調で、笑顔で話をする辺境伯の印象しか私にはない。 だけど、私が今聞いている声は、威圧的で、偉そうで、傲慢にすら感じ、恐ろしかった。
「その割に、あの子は人に馴染むのが下手なようだが?」
「それは、ただココの人間に馴染めないためだろう!! きっとあの子は心細いと、帰りたがっているに違いない、本人を呼んで確かめてくれればいい。 あの子に向けられた領民の笑顔、感謝の心、ソレを眺めるのがあの子は好きだった」
間違ってない。
けど……。
私はここで多くの人に会い、色々と考えさせられた。 同時に、私は善人だと思っていた辺境の人々を考えた。
『人には良い面も、悪い面もあるのですよ』
お姉さん侍女の言葉で、そうではない辺境の人達はみんな笑顔だった……。 だが、その笑顔の中に私はいなかった。 私に笑顔を向けていない時の彼等の姿は……よく思い出せない。
『我慢する必要などないのですよ。 アナタは主側の人間なのですから。 アナタがあの子達の使用人になる必要等ないのですから』
人に慣れない私を、若い侍女達から助け出しお姉さん侍女はそういって慰めてくれた。 ……そして、次にはまた谷に突き落とすかのように、年若い侍女の中に放り込む……。
ふっふふふふ。
「あの子の特性を考えれば、そりゃぁ感謝もするでしょう。 アナタに付き従い辺境の領地についていった者達は、元は魔物狩りを専門とする傭兵。 敏感に彼女の力を察知するでしょうねぇ」
クルト公爵の声は何処か嫌味っぽい。
「正当な感謝に対して、何をぐちぐちと、この引きこもりが!!」
「あの子は、微笑みには裏があることを知りましたよ」
「余計なことを!! なぜ、オマエは俺の宝を汚す!!」
隣室で起きた熱気が伝わってきた。 ここまで届く熱気であればその傍にいる公爵はどれほどの高温に包まれているか?
「人には、永遠の孤独は辛かろう。 いないよりはマシだと手に負えぬ娘を押し付けようとしたくせに、自分は無垢な宝を手中に収めているとは、本当に息子の妻にするつもりはあるのですか?」
「双子は、生まれなかった者、存在しなかった者として除名した。 あんな双子を産んだメリッサとも別れる。 そして、あの子を俺の妻として迎える」
辺境伯の言葉に、激しい嫌悪感を覚えたのは言うまでもない。
ここには私の物等なにもないのだから、と……私は、そのまま辺境伯が待つ応接室へと向かおうとした。 案内をしたのは護衛侍女。
「ノエル様、旦那様からの命令です。 お呼びになるまで、コチラで控えてください」
そう言って、応接室の横にある小部屋。 普段は掃除用具が入れられている狭い部屋へと入れられた。 いえ、決して掃除用具と一緒にではありませんよ? この日を想定してたのでしょう小部屋は掃除され、ソファにクッション、小さなテーブルの上には、お茶と菓子、果物、等が置かれていました。
そして護衛侍女が同席する。
彼女は、突然にとんでもないことを言いだすが、基本的には静かなので嫌いではないのですよね。 ちなみに、どんな気持ちで他の侍女達の話を聞いているのか? と、たずねた事もある。
『パンは干しブドウが入ったものが美味しい。 特に、王都の銀の麦庭のは最高でな。 後はクルミパンもなかなか美味くて。 特に焼き立てのものにバターを垂らすともう~。 今度お土産を買ってきますね』
と言うように、やり過ごしているとのことでした。
小部屋では、応接室で語るクルト公爵とレイバ辺境伯2人の声が息遣いまでハッキリと聞こえる。
「うちの子を、ノエルを返してもらおうか? あの子がいるべき場所は、辺境だ。 辺境にはあの子を待つ者達が大勢いる。 返してくれ!!」
穏やかな口調で、笑顔で話をする辺境伯の印象しか私にはない。 だけど、私が今聞いている声は、威圧的で、偉そうで、傲慢にすら感じ、恐ろしかった。
「その割に、あの子は人に馴染むのが下手なようだが?」
「それは、ただココの人間に馴染めないためだろう!! きっとあの子は心細いと、帰りたがっているに違いない、本人を呼んで確かめてくれればいい。 あの子に向けられた領民の笑顔、感謝の心、ソレを眺めるのがあの子は好きだった」
間違ってない。
けど……。
私はここで多くの人に会い、色々と考えさせられた。 同時に、私は善人だと思っていた辺境の人々を考えた。
『人には良い面も、悪い面もあるのですよ』
お姉さん侍女の言葉で、そうではない辺境の人達はみんな笑顔だった……。 だが、その笑顔の中に私はいなかった。 私に笑顔を向けていない時の彼等の姿は……よく思い出せない。
『我慢する必要などないのですよ。 アナタは主側の人間なのですから。 アナタがあの子達の使用人になる必要等ないのですから』
人に慣れない私を、若い侍女達から助け出しお姉さん侍女はそういって慰めてくれた。 ……そして、次にはまた谷に突き落とすかのように、年若い侍女の中に放り込む……。
ふっふふふふ。
「あの子の特性を考えれば、そりゃぁ感謝もするでしょう。 アナタに付き従い辺境の領地についていった者達は、元は魔物狩りを専門とする傭兵。 敏感に彼女の力を察知するでしょうねぇ」
クルト公爵の声は何処か嫌味っぽい。
「正当な感謝に対して、何をぐちぐちと、この引きこもりが!!」
「あの子は、微笑みには裏があることを知りましたよ」
「余計なことを!! なぜ、オマエは俺の宝を汚す!!」
隣室で起きた熱気が伝わってきた。 ここまで届く熱気であればその傍にいる公爵はどれほどの高温に包まれているか?
「人には、永遠の孤独は辛かろう。 いないよりはマシだと手に負えぬ娘を押し付けようとしたくせに、自分は無垢な宝を手中に収めているとは、本当に息子の妻にするつもりはあるのですか?」
「双子は、生まれなかった者、存在しなかった者として除名した。 あんな双子を産んだメリッサとも別れる。 そして、あの子を俺の妻として迎える」
辺境伯の言葉に、激しい嫌悪感を覚えたのは言うまでもない。
14
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。
As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。
愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
番外編追記しました。
スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします!
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。
*元作品は都合により削除致しました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる