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38.そして辺境伯は死んでしまった
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愛していた。
愛している。
だが、俺には妻も子もいたから、だけど、君を誰にも触れさせたくなかったんだ。 君に誰かを愛して欲しくなかったんだ。 俺のこの愛を受け止めてくれ。
延々と愛の言葉を語っているが。
ギラギラする辺境伯の瞳は、もはや、私を人としては見ていなかった。
「ノエル、いい子だ。 俺を選ぶんだ。 俺を選んでくれたなら、俺はすくわれる。 ノエル、オマエにとって俺は恩人なはずだろう?」
公爵の側に寄り添うように怯える私の腕を、辺境伯は強引に取ろうとすれば、その辺境伯の腕が、切り飛ばされた。 公爵の手には刃の短いナイフがもたれていた。
ぎゃぁあああああああああああ。
腕を失くした辺境伯が叫ぶ。
だが、血は流れてはいない。
それでも、私は意識を失い公爵の腕の中に身を任せることとなった。
「うぅうううわぁあああああ、ノエル、ノエル、ノエル、俺を治すのだ!!」
「ヤレヤレ彼女には、それほどの力はないと言っていたじゃありませんか」
「俺を、俺を助けろ!!」
公爵の言葉を無視して、辺境伯は公爵の腕の中のノエルを奪い取ろうとした。 激情のまま炎で公爵を燃やそうとした。 それは命を守るための決死の炎だったが、あっけなく掻き消える。
「くそっ」
辺境伯は、切り取られたはずの腕とは逆手に剣を持ち、意識のないノエルへと突進する。 血を飲めば、肉を食らえば、全てが治ると戯れに読んだ目の前の男クルトの書物に書かれていた。
公爵はコートの内側にノエルの身体の全てを飲み込ませれば、そこからノエルは消えた。
「ノエルを出せ!! 出すんだ!! それは、俺のものだ、俺が見つけたんだ!!」
興奮に痛みは麻痺していた。 元々、狩りを生業とする一族だ。 痛みの処理は上手い。
「ノエルを返せ!!」
「ファローグ・レイバ辺境伯。 アナタは法を犯した。 聖女の素養があれば申告する必要があった。 コレは、国王陛下に対する謀反の意思を意味する」
「煩い!! 俺は間違っていない。 素養があるからと管理をされ不幸になった、素養者を俺は知っている」
「だから、どうだと言うんですか。 法は法です。 それに、神殿から教育を受け管理される素養者が不幸だと言うなら、ノエルは不幸ではなかったと言うのですか? アレほどアナタを嫌がっていたと言うのに」
ニヤリと嫌味のように口元を歪ませ公爵は笑って見せた。
「オマエが、オマエがノエルを汚したからだ!!」
辺境伯が公爵へと顔を向け叫んだ瞬間、その顔面は掴まれ、グシャリと言う音がし、そして叫び声が轟いた。
ぐはああああああああ!
「さっきも言った通り、聖人、聖女の素質を持つ者は、その能力の開花の有無にかかわらず神殿と王族によって管理がなされるそれは、法によって定められている。 だが、もし、ノエルがアナタの元で幸せだったなら、戻りたいと言ったなら、神殿と王家に代わり彼女を守り慈しんできたと減刑を陛下に進言するつもりだった。 だが……」
目、鼻、耳、口から血を流しながら辺境伯は言う。
「ノエルには人をまともに治療する力もない。 どうせ、捨てられる。 だから、俺が愛する。 俺が救う。 それでいいだろう」
ごぼごぼと不快な音をたてながら、辺境伯は言っていた。
「アナタは、知っていたはずです……。 アナタは、私の母と面識があった、彼女もまた治療能力はなかったが、周囲に大きな影響を与える聖女だった。 平和な間の時代、そんな人こそが重要だと、知らないはずはなかろう」
「聖女であっても恋愛の自由は認められていたはずだ」
「その通りです。 ですが、それは聖女の安全が保障される状況において、初めて彼女の自由は存在するのです」
「俺には、護衛としての力もある」
痛みを切り離したらしい、辺境伯は肩で息をしながらも会話を続けていた。
「そう、かもしれません。 なら、そう報告すれば良かったのです」
床に座りこみ胡坐をかいている辺境伯の膝に向かい、足を下ろした。
べきっという骨の折れる音が響き。
三度辺境伯の悲鳴が轟いた。
「もう、いいですよね? 世の中には、死人に口なしと言う言葉があるといいます。 後はこちらで都合の良い罪をつくりましょう。 平和な世の中に、アナタのような者は必要ありません」
そして辺境伯は殺された。
その事実をノエルに知らされることはない。
愛している。
だが、俺には妻も子もいたから、だけど、君を誰にも触れさせたくなかったんだ。 君に誰かを愛して欲しくなかったんだ。 俺のこの愛を受け止めてくれ。
延々と愛の言葉を語っているが。
ギラギラする辺境伯の瞳は、もはや、私を人としては見ていなかった。
「ノエル、いい子だ。 俺を選ぶんだ。 俺を選んでくれたなら、俺はすくわれる。 ノエル、オマエにとって俺は恩人なはずだろう?」
公爵の側に寄り添うように怯える私の腕を、辺境伯は強引に取ろうとすれば、その辺境伯の腕が、切り飛ばされた。 公爵の手には刃の短いナイフがもたれていた。
ぎゃぁあああああああああああ。
腕を失くした辺境伯が叫ぶ。
だが、血は流れてはいない。
それでも、私は意識を失い公爵の腕の中に身を任せることとなった。
「うぅうううわぁあああああ、ノエル、ノエル、ノエル、俺を治すのだ!!」
「ヤレヤレ彼女には、それほどの力はないと言っていたじゃありませんか」
「俺を、俺を助けろ!!」
公爵の言葉を無視して、辺境伯は公爵の腕の中のノエルを奪い取ろうとした。 激情のまま炎で公爵を燃やそうとした。 それは命を守るための決死の炎だったが、あっけなく掻き消える。
「くそっ」
辺境伯は、切り取られたはずの腕とは逆手に剣を持ち、意識のないノエルへと突進する。 血を飲めば、肉を食らえば、全てが治ると戯れに読んだ目の前の男クルトの書物に書かれていた。
公爵はコートの内側にノエルの身体の全てを飲み込ませれば、そこからノエルは消えた。
「ノエルを出せ!! 出すんだ!! それは、俺のものだ、俺が見つけたんだ!!」
興奮に痛みは麻痺していた。 元々、狩りを生業とする一族だ。 痛みの処理は上手い。
「ノエルを返せ!!」
「ファローグ・レイバ辺境伯。 アナタは法を犯した。 聖女の素養があれば申告する必要があった。 コレは、国王陛下に対する謀反の意思を意味する」
「煩い!! 俺は間違っていない。 素養があるからと管理をされ不幸になった、素養者を俺は知っている」
「だから、どうだと言うんですか。 法は法です。 それに、神殿から教育を受け管理される素養者が不幸だと言うなら、ノエルは不幸ではなかったと言うのですか? アレほどアナタを嫌がっていたと言うのに」
ニヤリと嫌味のように口元を歪ませ公爵は笑って見せた。
「オマエが、オマエがノエルを汚したからだ!!」
辺境伯が公爵へと顔を向け叫んだ瞬間、その顔面は掴まれ、グシャリと言う音がし、そして叫び声が轟いた。
ぐはああああああああ!
「さっきも言った通り、聖人、聖女の素質を持つ者は、その能力の開花の有無にかかわらず神殿と王族によって管理がなされるそれは、法によって定められている。 だが、もし、ノエルがアナタの元で幸せだったなら、戻りたいと言ったなら、神殿と王家に代わり彼女を守り慈しんできたと減刑を陛下に進言するつもりだった。 だが……」
目、鼻、耳、口から血を流しながら辺境伯は言う。
「ノエルには人をまともに治療する力もない。 どうせ、捨てられる。 だから、俺が愛する。 俺が救う。 それでいいだろう」
ごぼごぼと不快な音をたてながら、辺境伯は言っていた。
「アナタは、知っていたはずです……。 アナタは、私の母と面識があった、彼女もまた治療能力はなかったが、周囲に大きな影響を与える聖女だった。 平和な間の時代、そんな人こそが重要だと、知らないはずはなかろう」
「聖女であっても恋愛の自由は認められていたはずだ」
「その通りです。 ですが、それは聖女の安全が保障される状況において、初めて彼女の自由は存在するのです」
「俺には、護衛としての力もある」
痛みを切り離したらしい、辺境伯は肩で息をしながらも会話を続けていた。
「そう、かもしれません。 なら、そう報告すれば良かったのです」
床に座りこみ胡坐をかいている辺境伯の膝に向かい、足を下ろした。
べきっという骨の折れる音が響き。
三度辺境伯の悲鳴が轟いた。
「もう、いいですよね? 世の中には、死人に口なしと言う言葉があるといいます。 後はこちらで都合の良い罪をつくりましょう。 平和な世の中に、アナタのような者は必要ありません」
そして辺境伯は殺された。
その事実をノエルに知らされることはない。
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