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02.大地の民は、寛大だ(自分に)
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「あっははっはは、まぁ、無理だとは思ってたんだよな」
馬鹿にしたような男の声が、領地管理局に響く。
エイマーズ領の当主は住民投票で決められるため爵位はない。 その代わり、大地の民の性質ごとに12の種族に分けた族長が存在している。
「どう、責任を取るつもりですか?」
神妙に問いかける小柄な中庸の民の男の声は、現当主であるネコ科の大型肉食獣の因子を持つ黄金の髪をした筋肉質の男。 役人は、そんな現当主マルスを前に怯えながらも問いかけていた。
このマルスと言う男が、私エリスの婚約者だ。
管理局の資料室で私はマルスと役人の声に耳を傾ける。 本音を言えば耳を塞ぎたいのだが……マルスは当たり前のようにこう言うのだ。
「俺を愛しているなら、俺が望む結果をもたらすべきだろう? 何のために貧相で何の魅力のないお前を婚約者に据えていると思っているんだ。 お前が俺の役に立つからだろう? 俺のお願いを聞けないってなら婚約破棄だ。 婚約が破棄されれば、エイマーズ領でお前が生きていく術がない事は分かっているよな?」
そう言いながら、彼は私を見下してくるのだ。
まぁ、単純な身長差で、脅すような言葉も決して悪気があっての事ではない……はずだ。 と、私は思っている。
正直、放り出してくれた方が嬉しいのだが……、私は、翼持つ者と呼ばれる種であり、成体となれば捕食者に魔力や生命力を与えるだけでなく、非常に美味だと言われている。 両親もなく、多種族の中で生き残っている理由と言えば婚約者の愛……ではなく、幼体は身体に毒を持っていて美味しくなさそうだかららしい。
そして、私は未だ幼体であり、未だ女として見られたことは無い……。
私は、彼等の声に再び耳を傾けた。
「はぁ? 責任、なんで俺が? 関係ねぇだろう。 幾ら当主と言ってもさぁ~、何処の誰か分からない奴の責任までとってられるかっての。 煮るなり焼くなり、本人を好きにすりゃぁいいだろう」
「十二支族の1つ、族長の娘。 何処の誰かわからないで、通るわけございません。 コチラは、その家柄も含めて陛下の愛妾としてお迎えする準備を行い、支度金をお渡ししているのですぞ!!」
「はぁ……くそめんどうくせぇ。 で、何? 俺にどうしろっての? 綺麗どころを何人か見繕って皇帝に進呈すればいい訳? そこんとこはっきりしてくれよ」
「見目が良ければ良いと言うものではございません。 大地の民と、中庸の民は、その性質、文化が違うため、準備期間として教育を施し、ドレスを始めとする様々なものを取り揃え、支度金をお渡ししております。 新たな愛妾は必要ございません。 大地の民に、中庸の民の文化を押し付ける事がいかに難しいかがわかりました。 ですが、支度金の返還、ドレス等の費用の返還、教育のために必要とされた人件費、加えて慰謝料の請求がこちらになります」
紙の束は、細い糸で綴られ表紙に分かりやすく金額が書かれていた。
黄金色の男は顔を顰め、奪い取った紙の束を破り捨てた。
「はん、それこそ本人に弁済させろよ」
「貴方方、大地の民は、世界的にも最下級である労働者階級でありながら、広大な土地と、領主としての地位を与えた陛下に対して、恥をかかせたのですぞ!!」
「はっん、そりゃぁ皇帝陛下がその程度の男だったと言うだけの事だろう? 俺ら大地の民は、強い相手には従う。 それは習性的なものだ」
「数年に渡り、まともに税金も納める事無く、領地を不法占拠している状態である事を理解しておいでか?」
「皇帝陛下が俺達の活躍の場を準備しないからだろうが!! 俺達は戦ってこそだ!! 最近は、ヘタレたのか戦争の1つも起こさない。 それは俺達のせいじゃねぇ。 あぁ、それとも……アドラム皇国の旗を掲げ、隣国で略奪行為をして来いと言っているのか? ひゃっははははっははは」
話し相手にとって不快な高笑いが続いた。
「俺達に何かを望むなら、皇帝本人にこさせろよ。 アンタみたいな下っ端じゃ意味がねぇ」
「他国であれば、最下層の階級として、奴隷として、使われる身でありながら度重なる陛下への侮辱、許されませんぞ!!」
「だから、お前に許されないからってどうってことないって言うの」
そんな会話が自然豊かな広大な領地を与えられたエイマーズ辺境領主屋敷に響き渡っていた。
皇国からの使者に対するありえない態度に、各部族から提出された杜撰で適当過ぎる経理資料をまとめながら私は溜息をつく。
別に税が払えないと言う訳ではない。
戦争がない事への嫌がらせに払っていないのだ。
いや、むしろ、偉そうに言っているが、皇国の支援なく隣国に突撃すれば魔力耐性の無い大地の民達は、半日程度で制圧されてしまうだろう。
私は前向きに、各部族の収支をまとめた書面を眺めていた。
1の部族は工芸細工が得意だし、2の部族は発酵品等の製造、3の部族は狩猟、4の部族は美形が多く性技に長けている。
まぁ、そんな感じでエイマーズ領に出入りする酔狂な中庸の民相手に適度に設けているのだが、彼等に経理と言う概念はない……。
あるだけ金を使い切る前に、強者を集めて作った第5の部族を使い金を取りたて、なんとか領地を運営しているのだ。
「中庸の民等、ちょっと撫でてやれば泣いて逃げ帰るのに、当主殿はお優しい」
「我々に逆らったらどんな目に合うか、教えてやればよいものを」
そう言いながら下種な笑い声をあげていた。
当主と役人に近寄る者はないが、距離を置いて眺める視線は、獲物を見る獣のようで……大地の民ではない私は、役人に同情しつつ、引きどころを理解してくれない当主相手に、今日も胃薬が欠かせない……。
馬鹿にしたような男の声が、領地管理局に響く。
エイマーズ領の当主は住民投票で決められるため爵位はない。 その代わり、大地の民の性質ごとに12の種族に分けた族長が存在している。
「どう、責任を取るつもりですか?」
神妙に問いかける小柄な中庸の民の男の声は、現当主であるネコ科の大型肉食獣の因子を持つ黄金の髪をした筋肉質の男。 役人は、そんな現当主マルスを前に怯えながらも問いかけていた。
このマルスと言う男が、私エリスの婚約者だ。
管理局の資料室で私はマルスと役人の声に耳を傾ける。 本音を言えば耳を塞ぎたいのだが……マルスは当たり前のようにこう言うのだ。
「俺を愛しているなら、俺が望む結果をもたらすべきだろう? 何のために貧相で何の魅力のないお前を婚約者に据えていると思っているんだ。 お前が俺の役に立つからだろう? 俺のお願いを聞けないってなら婚約破棄だ。 婚約が破棄されれば、エイマーズ領でお前が生きていく術がない事は分かっているよな?」
そう言いながら、彼は私を見下してくるのだ。
まぁ、単純な身長差で、脅すような言葉も決して悪気があっての事ではない……はずだ。 と、私は思っている。
正直、放り出してくれた方が嬉しいのだが……、私は、翼持つ者と呼ばれる種であり、成体となれば捕食者に魔力や生命力を与えるだけでなく、非常に美味だと言われている。 両親もなく、多種族の中で生き残っている理由と言えば婚約者の愛……ではなく、幼体は身体に毒を持っていて美味しくなさそうだかららしい。
そして、私は未だ幼体であり、未だ女として見られたことは無い……。
私は、彼等の声に再び耳を傾けた。
「はぁ? 責任、なんで俺が? 関係ねぇだろう。 幾ら当主と言ってもさぁ~、何処の誰か分からない奴の責任までとってられるかっての。 煮るなり焼くなり、本人を好きにすりゃぁいいだろう」
「十二支族の1つ、族長の娘。 何処の誰かわからないで、通るわけございません。 コチラは、その家柄も含めて陛下の愛妾としてお迎えする準備を行い、支度金をお渡ししているのですぞ!!」
「はぁ……くそめんどうくせぇ。 で、何? 俺にどうしろっての? 綺麗どころを何人か見繕って皇帝に進呈すればいい訳? そこんとこはっきりしてくれよ」
「見目が良ければ良いと言うものではございません。 大地の民と、中庸の民は、その性質、文化が違うため、準備期間として教育を施し、ドレスを始めとする様々なものを取り揃え、支度金をお渡ししております。 新たな愛妾は必要ございません。 大地の民に、中庸の民の文化を押し付ける事がいかに難しいかがわかりました。 ですが、支度金の返還、ドレス等の費用の返還、教育のために必要とされた人件費、加えて慰謝料の請求がこちらになります」
紙の束は、細い糸で綴られ表紙に分かりやすく金額が書かれていた。
黄金色の男は顔を顰め、奪い取った紙の束を破り捨てた。
「はん、それこそ本人に弁済させろよ」
「貴方方、大地の民は、世界的にも最下級である労働者階級でありながら、広大な土地と、領主としての地位を与えた陛下に対して、恥をかかせたのですぞ!!」
「はっん、そりゃぁ皇帝陛下がその程度の男だったと言うだけの事だろう? 俺ら大地の民は、強い相手には従う。 それは習性的なものだ」
「数年に渡り、まともに税金も納める事無く、領地を不法占拠している状態である事を理解しておいでか?」
「皇帝陛下が俺達の活躍の場を準備しないからだろうが!! 俺達は戦ってこそだ!! 最近は、ヘタレたのか戦争の1つも起こさない。 それは俺達のせいじゃねぇ。 あぁ、それとも……アドラム皇国の旗を掲げ、隣国で略奪行為をして来いと言っているのか? ひゃっははははっははは」
話し相手にとって不快な高笑いが続いた。
「俺達に何かを望むなら、皇帝本人にこさせろよ。 アンタみたいな下っ端じゃ意味がねぇ」
「他国であれば、最下層の階級として、奴隷として、使われる身でありながら度重なる陛下への侮辱、許されませんぞ!!」
「だから、お前に許されないからってどうってことないって言うの」
そんな会話が自然豊かな広大な領地を与えられたエイマーズ辺境領主屋敷に響き渡っていた。
皇国からの使者に対するありえない態度に、各部族から提出された杜撰で適当過ぎる経理資料をまとめながら私は溜息をつく。
別に税が払えないと言う訳ではない。
戦争がない事への嫌がらせに払っていないのだ。
いや、むしろ、偉そうに言っているが、皇国の支援なく隣国に突撃すれば魔力耐性の無い大地の民達は、半日程度で制圧されてしまうだろう。
私は前向きに、各部族の収支をまとめた書面を眺めていた。
1の部族は工芸細工が得意だし、2の部族は発酵品等の製造、3の部族は狩猟、4の部族は美形が多く性技に長けている。
まぁ、そんな感じでエイマーズ領に出入りする酔狂な中庸の民相手に適度に設けているのだが、彼等に経理と言う概念はない……。
あるだけ金を使い切る前に、強者を集めて作った第5の部族を使い金を取りたて、なんとか領地を運営しているのだ。
「中庸の民等、ちょっと撫でてやれば泣いて逃げ帰るのに、当主殿はお優しい」
「我々に逆らったらどんな目に合うか、教えてやればよいものを」
そう言いながら下種な笑い声をあげていた。
当主と役人に近寄る者はないが、距離を置いて眺める視線は、獲物を見る獣のようで……大地の民ではない私は、役人に同情しつつ、引きどころを理解してくれない当主相手に、今日も胃薬が欠かせない……。
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