5 / 59
01
05.馬鹿者どもは夢の中
しおりを挟む
「今頃何しにきたのよ。 税の未納も、愛妾契約の反故も私には関係のない事。 そもそも私は大地の民ではないのだから、貴方達が言う仲間への団結と言うものの外側な訳ですよね? あぁ、なるほど保護の対象外だから、どうなってもいい、お前だけが不幸になれと言う奴ですか!!」
イライラとした。
「いい加減にしろ……」
金色の獣の目が睨みつけてくる。
ふんっと鼻をならし私は声を荒げ続けたのだが……。
大人による攻撃に精神がグダグダよ。
だって、私はまだ幼体……子供だもの。
「不愉快なのよ!! なんで、私が見ず知らずの者達のために、アンタたちの意地のために、あんなことを言われなければいけなかったのよ!!」
半泣きになりながら責め続けた。
「なんで、私がアンタたちの意地とか、我儘のせいで不愉快な行為を受けなければ、強要されなければいけないのよ!! そんなの納得する訳ないでしょう!!」
マルスは、はぁ……と溜息をつき、頭をかき、キョロキョロとあたりの気配に気を配り、扉を閉め、カーテンを閉めて、私を壊さないように細心の注意で抱きしめた。
暴力の力で当主となったマルスだが、年が若いせいか各部族の長からは軽く見られ、年の近いものからは憧れを向けられていた。 その結果、大地の民ではない婚約者の私に優しくする事は恰好悪いと思うようになったらしく。
人に隠れてこそこそと私を宥めるのだ。
「悪かったよ。 どうせ、俺が出ても前向きな話にならないと思ってさ……。 でもまぁ、時間稼ぎのために少しぐらい、サービスしてやってもいいんじゃないのか?」
ヘラリと最後には、無意識で無神経な発言を炸裂させる。
「何よ!! その言い方。 自分達だって、嫌な相手にアプローチされたら威嚇し牙をむく癖に、よく言うわよ!! まだ、盛っていると不快になられる方がマシだよ!!」
そう言って頬を殴れば、大人しくマルスはビンタを受け入れる。
「手、痛くなるから止めた方がいいぞ?」
「なら、怒らせないでよ!!」
「あ~、だから、悪かったって言ってる……。 だが、今は税金の問題は関係ないだろう? 愛妾契約に関わる金を払えと言っているだけで」
「やっぱり、馬鹿ね……知ってたけど」
ぐしゅぐしゅと涙を拭い鼻をすすれば、ハンカチで顔が乱暴に拭かれる。
例え救いようのない馬鹿であっても、物心ついた頃から一緒にいる幼馴染だ。 お互いに情がない訳ではない。
「愛妾契約の方は、価格交渉の余地がある。 だけど、税金の方は愛妾契約を放棄してきた以上、一切の妥協は無く攻めてくる。 なら、税金を払って心象を良くしたうえで、愛妾契約の請求に値引きをかけるべきなのよ」
「あ~~、悪い。 難しい話はわからん」
ここで説得と言うか、理解するまで話すのは努力の無駄だと今までの経験が訴えている。
「まぁ、いいわ。 とりあえず、愛妾契約を破棄された事で、税金の取り立てが酷くなるだろうから。 そうなる前に、支払いを行い、愛妾契約に使われた費用の返還金や慰謝料の交渉を行わなければいけないと言う事を、十二支族会で話し合って下さい。 大地の民同士の話し合い、交渉は私の役目ではありませんから、きっちりとお願いします!!」
「……で、何を話し合わなければいけないんだ?」
なんて聞かれれば、頭に血がカーっと上る訳だが……。 口の中に蜂蜜飴が放り込まれて黙り込んだ。 強制的に会話を中断された私は、現状伝えるべきこと、十二支族で決定が必要な事を箇条書きに書き出し、税金の支払い申請書を作り上げた。
そして小さくなった飴を飲み込み。
「はいっ!!」
書類の束を突き付ける。
「それだけ宜しく!!」
「はいよ。 とりあえず、まぁ……そう怒るな。 皺が増えるぞ?」
余計な事を言いながら出ていこうとするマルスに、私は分厚く頑丈な歴史書を投げつけた。
この時はまだ、私は婚約者であるマルスを信用していた。
十二支族の長が納得いかないとしても、最終的には腕力で従わせて来るだろうと。 大した問題としていなかった。
だが、問題はそこではなかった。
人々は口々に訴えたそうだ。
「なぜ、我らが皇帝の愛人となろうとした女のために、苦労を背負わなければならんのだ?」
「そうだそうだ」
「その責任は4の部族が背負うべきだろう」
「どうお考えだ、4の長よ」
「我が娘が、愛妾となると宣言したことで受けた利益は全部族。 なら、その慰謝料と言うものは部族全体で負うべきだろう。 ここで我々の結束を緩めては、皇帝につけいられるばかりぞ。 今後の話し合いは、我らが町で行おうぞ」
4の部族は男女共に美人が集う花街。
「それは良い考えだ」
そうして鼻の下長く乗り出した各部族の長達は、見事懐柔されてしまったのだ。
イライラとした。
「いい加減にしろ……」
金色の獣の目が睨みつけてくる。
ふんっと鼻をならし私は声を荒げ続けたのだが……。
大人による攻撃に精神がグダグダよ。
だって、私はまだ幼体……子供だもの。
「不愉快なのよ!! なんで、私が見ず知らずの者達のために、アンタたちの意地のために、あんなことを言われなければいけなかったのよ!!」
半泣きになりながら責め続けた。
「なんで、私がアンタたちの意地とか、我儘のせいで不愉快な行為を受けなければ、強要されなければいけないのよ!! そんなの納得する訳ないでしょう!!」
マルスは、はぁ……と溜息をつき、頭をかき、キョロキョロとあたりの気配に気を配り、扉を閉め、カーテンを閉めて、私を壊さないように細心の注意で抱きしめた。
暴力の力で当主となったマルスだが、年が若いせいか各部族の長からは軽く見られ、年の近いものからは憧れを向けられていた。 その結果、大地の民ではない婚約者の私に優しくする事は恰好悪いと思うようになったらしく。
人に隠れてこそこそと私を宥めるのだ。
「悪かったよ。 どうせ、俺が出ても前向きな話にならないと思ってさ……。 でもまぁ、時間稼ぎのために少しぐらい、サービスしてやってもいいんじゃないのか?」
ヘラリと最後には、無意識で無神経な発言を炸裂させる。
「何よ!! その言い方。 自分達だって、嫌な相手にアプローチされたら威嚇し牙をむく癖に、よく言うわよ!! まだ、盛っていると不快になられる方がマシだよ!!」
そう言って頬を殴れば、大人しくマルスはビンタを受け入れる。
「手、痛くなるから止めた方がいいぞ?」
「なら、怒らせないでよ!!」
「あ~、だから、悪かったって言ってる……。 だが、今は税金の問題は関係ないだろう? 愛妾契約に関わる金を払えと言っているだけで」
「やっぱり、馬鹿ね……知ってたけど」
ぐしゅぐしゅと涙を拭い鼻をすすれば、ハンカチで顔が乱暴に拭かれる。
例え救いようのない馬鹿であっても、物心ついた頃から一緒にいる幼馴染だ。 お互いに情がない訳ではない。
「愛妾契約の方は、価格交渉の余地がある。 だけど、税金の方は愛妾契約を放棄してきた以上、一切の妥協は無く攻めてくる。 なら、税金を払って心象を良くしたうえで、愛妾契約の請求に値引きをかけるべきなのよ」
「あ~~、悪い。 難しい話はわからん」
ここで説得と言うか、理解するまで話すのは努力の無駄だと今までの経験が訴えている。
「まぁ、いいわ。 とりあえず、愛妾契約を破棄された事で、税金の取り立てが酷くなるだろうから。 そうなる前に、支払いを行い、愛妾契約に使われた費用の返還金や慰謝料の交渉を行わなければいけないと言う事を、十二支族会で話し合って下さい。 大地の民同士の話し合い、交渉は私の役目ではありませんから、きっちりとお願いします!!」
「……で、何を話し合わなければいけないんだ?」
なんて聞かれれば、頭に血がカーっと上る訳だが……。 口の中に蜂蜜飴が放り込まれて黙り込んだ。 強制的に会話を中断された私は、現状伝えるべきこと、十二支族で決定が必要な事を箇条書きに書き出し、税金の支払い申請書を作り上げた。
そして小さくなった飴を飲み込み。
「はいっ!!」
書類の束を突き付ける。
「それだけ宜しく!!」
「はいよ。 とりあえず、まぁ……そう怒るな。 皺が増えるぞ?」
余計な事を言いながら出ていこうとするマルスに、私は分厚く頑丈な歴史書を投げつけた。
この時はまだ、私は婚約者であるマルスを信用していた。
十二支族の長が納得いかないとしても、最終的には腕力で従わせて来るだろうと。 大した問題としていなかった。
だが、問題はそこではなかった。
人々は口々に訴えたそうだ。
「なぜ、我らが皇帝の愛人となろうとした女のために、苦労を背負わなければならんのだ?」
「そうだそうだ」
「その責任は4の部族が背負うべきだろう」
「どうお考えだ、4の長よ」
「我が娘が、愛妾となると宣言したことで受けた利益は全部族。 なら、その慰謝料と言うものは部族全体で負うべきだろう。 ここで我々の結束を緩めては、皇帝につけいられるばかりぞ。 今後の話し合いは、我らが町で行おうぞ」
4の部族は男女共に美人が集う花街。
「それは良い考えだ」
そうして鼻の下長く乗り出した各部族の長達は、見事懐柔されてしまったのだ。
1
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる