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06.獣達は都会に憧れる
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大地の民の恋愛感は多種多様である。
いや、そもそもすべてにおいて自由なのだから、今更かもしれない。
マルスが十二支族の族長と交渉に挑んだ翌日。
朝早くから、婚約者マルスの妹マイルがやってきた。
顔も洗っていなければ、歯も磨いていないと言うのに、ベッドで丸まって眠る私は抱き起され、椅子に座らされた。
「聞いてくれ、大変な事が起こったんだ!!」
大きな欠伸と共に私は応じる。
まぁ、どうせ起きる時間でしたし?
「身支度整えるから、スープを温めておいて……」
文句の1つもなく静かな様子で彼女は承諾した。
おや?
何時もなら、わっくわくした様子で拒絶し、延々と背後に付きまとい、マルスが酒と女に明け暮れていたと、私の不愉快そうな顔を楽しそうに眺め、事細かくマルスがどんな風に女を抱いたかまで報告してくると言うのに、今日はやけに神妙な顔をしている。
「腹でも壊したの?」
「違う」
ボソボソとしながら、温めた昨日の残り物のスープを皿にすくい私に差し出した。
「なら、何よ」
「兄貴が……4の部族の族長の娘を運命のツガイだと言いやがった……」
「珍しいわね」
「何を呑気に飯なんか食っているんだ!!」
「今更、女性の1人や2人増えたところで、なんとも思いませんよ。 だって、貴方達一夫多妻な種族でしょうが……」
ソレを言い訳にマルスは好き放題してきたのだ。
こんな感じで、
『だから、これは本能だ!! 仕方のない事だ!! 女だって強い男の子が欲しいと思うのは当然の事だろう?! 俺はその気持ちに応えているだけで悪くない!!』
「違う!! 運命のツガイだと言いやがったんだ!!」
「だから、貴方達の因子にはツガイと言う概念はないでしょう??」
「ツガイとの出会いは神に定められた運命なんだと兄貴が言っていた……もう、わけわかんねぇよ」
何時もは私の不愉快そうな顔を楽しそうに見ている癖に、今日のマイルは二日酔いで動く事すら面倒臭い朝のような顔をしていた。
「うん、私も訳わかりませんね」
「聞いてくれ……」
そして前日の事が語られた。
マイルが言うには良い感じで酒が回った頃、涙に濡れた今回の問題の張本人が現れたそうだ。
柔らかなオレンジ色の髪は波のように美しく揺らめき、宝石で作られた小花を髪に散りばめられ、ランプの灯りに輝く小花が、憂いを帯び、悲し気にやつれた表情を美しく飾る。
大きな瞳を際立たせるまつ毛は長く、唇はオレンジ色に濡れ輝き、憂いすら際立たせる色香を漂わせていた。
ドレスは2重によって作られ、美しい身体のラインを際立たせる朱色のドレスには金の装飾刺繍がなされ妖艶さを演出し、愛らしさを醸し出すふわりとした半透明の布地が可憐さを演出していたと言う。
「男ばかりじゃない、誰もが彼女の姿に見惚れたさ」
女神が舞い降りた。
誰もがそう言って、羨望のまなざしを向けたらしい。
何しろ大地の民は、動きやすさ重視の服を着る。 花を売る4の部族の住民ですら、着飾る事に無頓着なのだ。
着飾る奴はブース!!
とか日頃から言っているのだから、そんな華美な姿をした女性など誰もが初めて見ただろう。
「美しさを褒め、皇都での苦労話を泣きながらすれば、少し前まで本人に責任を、部族に責任をと言っていたのに、大地の民の団結をみせねば!! なんて言い出したんだ」
「まぁ、各部族が費用負担を約束してくれるなら、こっちは支払い方法の交渉をするだけですね」
「確かに、そこで話が終わればだ……兄貴が、その女にフラフラと近寄ってこう言ったんだ」
「ずっと胸の内に虚しさを感じていた。 感じ続け、虚無に耐えきれず多くの女性を抱いた。 だが、それで解決できるものではなかった事を知りました。 今、貴方に出会って、その理由がわかったんです。 貴方と言う魂の半身、運命のツガイを失っていた事実に、この魂が嘆き苦しんでいたと!! 貴方の幸福が俺の幸福……。 俺が貴方を守りましょう」
そう言って、双子であるマイルは恐ろしく演技が勝った様子で、私に語って見せたのだ。
「……はぁ? 何それ!! 嘘でしょう!!」
「嘘だったら、朝っぱらから押しかけてくるかよ!!」
いや、結構来ていたけど? と言う言葉は飲み込んだ。 今はそんな事よりもマルスの事だ。
「マジかぁ、全く、何をしてくれやがりますの。 各部族が分担で収まったところを……」
なんとかしてマルスの話をなかたことに出来ないかと、マイル他数名を使い各部族に接触させれば、割とすんなりと部族でその負担を分割しても良いと言う言葉を得られた。
だが、マルスはソレを良しとしなかったのだ。
甲斐性の見せ所。
他の野郎の力を借りては、彼女を俺のモノにできない。
そんな事を言いながら、
そして、遊び相手だった大勢の女達とは関係を清算し、私に押し付けてばかりだった業務に口出しをするようになったのだ。
そして、マルスを目的に顔を出すキャノ。 2人は仲良く、会計に口出しをするだけではなく、十二支族の族長からツガイ様費用等と言う予算を組むよう署名を集めてしまったのだった。
普通なら、こう1人の女性に対する贔屓は、他の女性達によって叩かれるものなのだろうが、誰もが皇都に染まり切ったキャノに憧れを持ち、皇帝の愛妾に立候補する者まで出始めたのだから笑えない……。
愛妾様担当の役人は変わり、新しい担当にマルスは積極的に交渉を持ちかけていた。
「代理の女をくれてやるのだから、慰謝料は無しにしろ……。 むしろ健康な綺麗どころを複数提供するんだ。 新たな支度金を貰いたいくらいだな」
「あぁ、いやだいやだ、狂暴な蛮族の娘を容易に受け入れる訳等ないでしょう!! 皇都の民が震えあがると言うもの。 皇都に相応しい品格と礼儀作法を身に着けなければ、陛下に交渉を持ちかける事を考えてみようかしら? なんて気になるかもしれないけど。 む・り・ね!! 何しろ、コチラは1度裏切られた身ですもの。 あぁ、そうそう……あの女が、皇都で食い荒らした男達の家から、慰謝料の請求が届いているの。 本当獣っていやよねぇ~」
化粧と美しい衣装で身を飾った……背が高く筋肉質な美丈夫の男性が、ハンカチで鼻と口元を隠しながら挑発すれば、マイルは毛を逆立て怒り出す。
「無礼だぞ!!」
いや、そもそもすべてにおいて自由なのだから、今更かもしれない。
マルスが十二支族の族長と交渉に挑んだ翌日。
朝早くから、婚約者マルスの妹マイルがやってきた。
顔も洗っていなければ、歯も磨いていないと言うのに、ベッドで丸まって眠る私は抱き起され、椅子に座らされた。
「聞いてくれ、大変な事が起こったんだ!!」
大きな欠伸と共に私は応じる。
まぁ、どうせ起きる時間でしたし?
「身支度整えるから、スープを温めておいて……」
文句の1つもなく静かな様子で彼女は承諾した。
おや?
何時もなら、わっくわくした様子で拒絶し、延々と背後に付きまとい、マルスが酒と女に明け暮れていたと、私の不愉快そうな顔を楽しそうに眺め、事細かくマルスがどんな風に女を抱いたかまで報告してくると言うのに、今日はやけに神妙な顔をしている。
「腹でも壊したの?」
「違う」
ボソボソとしながら、温めた昨日の残り物のスープを皿にすくい私に差し出した。
「なら、何よ」
「兄貴が……4の部族の族長の娘を運命のツガイだと言いやがった……」
「珍しいわね」
「何を呑気に飯なんか食っているんだ!!」
「今更、女性の1人や2人増えたところで、なんとも思いませんよ。 だって、貴方達一夫多妻な種族でしょうが……」
ソレを言い訳にマルスは好き放題してきたのだ。
こんな感じで、
『だから、これは本能だ!! 仕方のない事だ!! 女だって強い男の子が欲しいと思うのは当然の事だろう?! 俺はその気持ちに応えているだけで悪くない!!』
「違う!! 運命のツガイだと言いやがったんだ!!」
「だから、貴方達の因子にはツガイと言う概念はないでしょう??」
「ツガイとの出会いは神に定められた運命なんだと兄貴が言っていた……もう、わけわかんねぇよ」
何時もは私の不愉快そうな顔を楽しそうに見ている癖に、今日のマイルは二日酔いで動く事すら面倒臭い朝のような顔をしていた。
「うん、私も訳わかりませんね」
「聞いてくれ……」
そして前日の事が語られた。
マイルが言うには良い感じで酒が回った頃、涙に濡れた今回の問題の張本人が現れたそうだ。
柔らかなオレンジ色の髪は波のように美しく揺らめき、宝石で作られた小花を髪に散りばめられ、ランプの灯りに輝く小花が、憂いを帯び、悲し気にやつれた表情を美しく飾る。
大きな瞳を際立たせるまつ毛は長く、唇はオレンジ色に濡れ輝き、憂いすら際立たせる色香を漂わせていた。
ドレスは2重によって作られ、美しい身体のラインを際立たせる朱色のドレスには金の装飾刺繍がなされ妖艶さを演出し、愛らしさを醸し出すふわりとした半透明の布地が可憐さを演出していたと言う。
「男ばかりじゃない、誰もが彼女の姿に見惚れたさ」
女神が舞い降りた。
誰もがそう言って、羨望のまなざしを向けたらしい。
何しろ大地の民は、動きやすさ重視の服を着る。 花を売る4の部族の住民ですら、着飾る事に無頓着なのだ。
着飾る奴はブース!!
とか日頃から言っているのだから、そんな華美な姿をした女性など誰もが初めて見ただろう。
「美しさを褒め、皇都での苦労話を泣きながらすれば、少し前まで本人に責任を、部族に責任をと言っていたのに、大地の民の団結をみせねば!! なんて言い出したんだ」
「まぁ、各部族が費用負担を約束してくれるなら、こっちは支払い方法の交渉をするだけですね」
「確かに、そこで話が終わればだ……兄貴が、その女にフラフラと近寄ってこう言ったんだ」
「ずっと胸の内に虚しさを感じていた。 感じ続け、虚無に耐えきれず多くの女性を抱いた。 だが、それで解決できるものではなかった事を知りました。 今、貴方に出会って、その理由がわかったんです。 貴方と言う魂の半身、運命のツガイを失っていた事実に、この魂が嘆き苦しんでいたと!! 貴方の幸福が俺の幸福……。 俺が貴方を守りましょう」
そう言って、双子であるマイルは恐ろしく演技が勝った様子で、私に語って見せたのだ。
「……はぁ? 何それ!! 嘘でしょう!!」
「嘘だったら、朝っぱらから押しかけてくるかよ!!」
いや、結構来ていたけど? と言う言葉は飲み込んだ。 今はそんな事よりもマルスの事だ。
「マジかぁ、全く、何をしてくれやがりますの。 各部族が分担で収まったところを……」
なんとかしてマルスの話をなかたことに出来ないかと、マイル他数名を使い各部族に接触させれば、割とすんなりと部族でその負担を分割しても良いと言う言葉を得られた。
だが、マルスはソレを良しとしなかったのだ。
甲斐性の見せ所。
他の野郎の力を借りては、彼女を俺のモノにできない。
そんな事を言いながら、
そして、遊び相手だった大勢の女達とは関係を清算し、私に押し付けてばかりだった業務に口出しをするようになったのだ。
そして、マルスを目的に顔を出すキャノ。 2人は仲良く、会計に口出しをするだけではなく、十二支族の族長からツガイ様費用等と言う予算を組むよう署名を集めてしまったのだった。
普通なら、こう1人の女性に対する贔屓は、他の女性達によって叩かれるものなのだろうが、誰もが皇都に染まり切ったキャノに憧れを持ち、皇帝の愛妾に立候補する者まで出始めたのだから笑えない……。
愛妾様担当の役人は変わり、新しい担当にマルスは積極的に交渉を持ちかけていた。
「代理の女をくれてやるのだから、慰謝料は無しにしろ……。 むしろ健康な綺麗どころを複数提供するんだ。 新たな支度金を貰いたいくらいだな」
「あぁ、いやだいやだ、狂暴な蛮族の娘を容易に受け入れる訳等ないでしょう!! 皇都の民が震えあがると言うもの。 皇都に相応しい品格と礼儀作法を身に着けなければ、陛下に交渉を持ちかける事を考えてみようかしら? なんて気になるかもしれないけど。 む・り・ね!! 何しろ、コチラは1度裏切られた身ですもの。 あぁ、そうそう……あの女が、皇都で食い荒らした男達の家から、慰謝料の請求が届いているの。 本当獣っていやよねぇ~」
化粧と美しい衣装で身を飾った……背が高く筋肉質な美丈夫の男性が、ハンカチで鼻と口元を隠しながら挑発すれば、マイルは毛を逆立て怒り出す。
「無礼だぞ!!」
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