【R18】婚約者がとんでもない女を運命のツガイだといいました。 そして私は運命に出会う。【完結】

迷い人

文字の大きさ
6 / 59
01

06.獣達は都会に憧れる

しおりを挟む
 大地の民獣人の恋愛感は多種多様である。
 いや、そもそもすべてにおいて自由なのだから、今更かもしれない。



 マルスが十二支族の族長と交渉に挑んだ翌日。
 朝早くから、婚約者マルスの妹マイルがやってきた。

 顔も洗っていなければ、歯も磨いていないと言うのに、ベッドで丸まって眠る私は抱き起され、椅子に座らされた。

「聞いてくれ、大変な事が起こったんだ!!」

 大きな欠伸と共に私は応じる。
 まぁ、どうせ起きる時間でしたし?

「身支度整えるから、スープを温めておいて……」

 文句の1つもなく静かな様子で彼女は承諾した。

 おや?

 何時もなら、わっくわくした様子で拒絶し、延々と背後に付きまとい、マルスが酒と女に明け暮れていたと、私の不愉快そうな顔を楽しそうに眺め、事細かくマルスがどんな風に女を抱いたかまで報告してくると言うのに、今日はやけに神妙な顔をしている。

「腹でも壊したの?」

「違う」

 ボソボソとしながら、温めた昨日の残り物のスープを皿にすくい私に差し出した。

「なら、何よ」

「兄貴が……4の部族の族長の娘を運命のツガイだと言いやがった……」

「珍しいわね」

「何を呑気に飯なんか食っているんだ!!」

「今更、女性の1人や2人増えたところで、なんとも思いませんよ。 だって、貴方達一夫多妻な種族でしょうが……」

 ソレを言い訳にマルスは好き放題してきたのだ。
 こんな感じで、

『だから、これは本能だ!! 仕方のない事だ!! 女だって強い男の子が欲しいと思うのは当然の事だろう?! 俺はその気持ちに応えているだけで悪くない!!』

「違う!! 運命のツガイだと言いやがったんだ!!」

「だから、貴方達の因子にはツガイと言う概念はないでしょう??」

「ツガイとの出会いは神に定められた運命なんだと兄貴が言っていた……もう、わけわかんねぇよ」

 何時もは私の不愉快そうな顔を楽しそうに見ている癖に、今日のマイルは二日酔いで動く事すら面倒臭い朝のような顔をしていた。

「うん、私も訳わかりませんね」

「聞いてくれ……」



 そして前日の事が語られた。



 マイルが言うには良い感じで酒が回った頃、涙に濡れた今回の問題の張本人が現れたそうだ。

 柔らかなオレンジ色の髪は波のように美しく揺らめき、宝石で作られた小花を髪に散りばめられ、ランプの灯りに輝く小花が、憂いを帯び、悲し気にやつれた表情を美しく飾る。

 大きな瞳を際立たせるまつ毛は長く、唇はオレンジ色に濡れ輝き、憂いすら際立たせる色香を漂わせていた。

 ドレスは2重によって作られ、美しい身体のラインを際立たせる朱色のドレスには金の装飾刺繍がなされ妖艶さを演出し、愛らしさを醸し出すふわりとした半透明の布地が可憐さを演出していたと言う。

「男ばかりじゃない、誰もが彼女の姿に見惚れたさ」

 女神が舞い降りた。

 誰もがそう言って、羨望のまなざしを向けたらしい。

 何しろ大地の民獣人は、動きやすさ重視の服を着る。 花を売る4の部族の住民ですら、着飾る事に無頓着なのだ。

 着飾る奴はブース!!

 とか日頃から言っているのだから、そんな華美な姿をした女性など誰もが初めて見ただろう。

「美しさを褒め、皇都での苦労話を泣きながらすれば、少し前まで本人に責任を、部族に責任をと言っていたのに、大地の民の団結をみせねば!! なんて言い出したんだ」

「まぁ、各部族が費用負担を約束してくれるなら、こっちは支払い方法の交渉をするだけですね」

「確かに、そこで話が終わればだ……兄貴が、その女にフラフラと近寄ってこう言ったんだ」



「ずっと胸の内に虚しさを感じていた。 感じ続け、虚無に耐えきれず多くの女性を抱いた。 だが、それで解決できるものではなかった事を知りました。 今、貴方に出会って、その理由がわかったんです。 貴方と言う魂の半身、運命のツガイを失っていた事実に、この魂が嘆き苦しんでいたと!! 貴方の幸福が俺の幸福……。 俺が貴方を守りましょう」

 そう言って、双子であるマイルは恐ろしく演技が勝った様子で、私に語って見せたのだ。

「……はぁ? 何それ!! 嘘でしょう!!」

「嘘だったら、朝っぱらから押しかけてくるかよ!!」

 いや、結構来ていたけど? と言う言葉は飲み込んだ。 今はそんな事よりもマルスの事だ。

「マジかぁ、全く、何をしてくれやがりますの。 各部族が分担で収まったところを……」


 なんとかしてマルスの話をなかたことに出来ないかと、マイル他数名を使い各部族に接触させれば、割とすんなりと部族でその負担を分割しても良いと言う言葉を得られた。



 だが、マルスはソレを良しとしなかったのだ。

 甲斐性の見せ所。
 他の野郎の力を借りては、彼女を俺のモノにできない。

 そんな事を言いながら、

 そして、遊び相手だった大勢の女達とは関係を清算し、私に押し付けてばかりだった業務に口出しをするようになったのだ。

 そして、マルスを目的に顔を出すキャノ。 2人は仲良く、会計に口出しをするだけではなく、十二支族の族長からツガイ様費用等と言う予算を組むよう署名を集めてしまったのだった。

 普通なら、こう1人の女性に対する贔屓は、他の女性達によって叩かれるものなのだろうが、誰もが皇都に染まり切ったキャノに憧れを持ち、皇帝の愛妾に立候補する者まで出始めたのだから笑えない……。

 愛妾様担当の役人は変わり、新しい担当にマルスは積極的に交渉を持ちかけていた。

「代理の女をくれてやるのだから、慰謝料は無しにしろ……。 むしろ健康な綺麗どころを複数提供するんだ。 新たな支度金を貰いたいくらいだな」

「あぁ、いやだいやだ、狂暴な蛮族の娘を容易に受け入れる訳等ないでしょう!! 皇都の民が震えあがると言うもの。 皇都に相応しい品格と礼儀作法を身に着けなければ、陛下に交渉を持ちかける事を考えてみようかしら? なんて気になるかもしれないけど。 む・り・ね!! 何しろ、コチラは1度裏切られた身ですもの。 あぁ、そうそう……あの女が、皇都で食い荒らした男達の家から、慰謝料の請求が届いているの。 本当獣っていやよねぇ~」

 化粧と美しい衣装で身を飾った……背が高く筋肉質な美丈夫の男性が、ハンカチで鼻と口元を隠しながら挑発すれば、マイルは毛を逆立て怒り出す。

「無礼だぞ!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...