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11.王都は楽しさ4 怖さ3 不思議3 そんな感じ
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「ナルサス……」
「どうしたの? 小鳥ちゃん」
向こうの方、なんか変な感じがする。 そう言いたかった。 でも、変な感じ? 変な気配がするのは皇都へと続く道の先で、聞くに聞けない……。
「緊張してきちゃったかなぁ? 皇都には、美味しい物、綺麗な物、可愛い物が沢山あるから、陛下のいる離宮に向かう前に、寄り道しましょうね」
うん、と頷いて見せるが……。
私の感じる違和感に、ナルサスが何も気づかないとは思えない。
「ナルサス様。 エリス様は、その……皇都の異常を感じ取られて不安に思われているのではないでしょうか?」
ナルサスの副官であるヒューゴが聞けば、ナルサスは大きな憂いを含んだ溜息を吐いた。 そして少しだけ考え込み、苦笑交じりに告げる。
「今、私の判断で語って良いか分からないから、詳しく語れない事を許してね小鳥ちゃん。 皇都はね。 呪われているの。 死と生の呪いとでもいうのかしら? 中庸の者はとても欲深く恐ろしいものよ。 可愛い大切な小鳥ちゃん。 だから中庸の者には気を付けてね」
「ナルサスにも気をつける?」
「あら、私は平気よ。 中庸の者を超越しているんだから」
そう言って笑って見せた。
結局は、有耶無耶のまま……私は不吉の象徴のように見える皇都へと向かうと言うか、勝手に連れていかれていくのだった。
不安、不安、不安……語彙が消えるほどの不安。
だけど、中に入ってしまえば、不思議だ。
割と平気な訳で、私はうわぁあああうわぁああああって、落ち着きのない小さな子のように周囲を見回した。
「ねぇ、ナルサス。 凄いわ!! 橋も道も家もみんな石でできている。 どうなっているの?!」
「石ではなく土を焼いて固めたものですよ」
返事をしてくれたのはヒューゴの方だった。 ナルサスと言えば、今から寄りたいお店リストを部下に渡して来訪するのに問題ない環境を作る様にと指示していた。
「土を焼くと固くなるの? ぁ、御茶碗?」
「そう、ですね。 もっと丈夫ですけど」
「へぇ……。 でも、なんかかっこいいね」
「あら、なぁに? 私の噂?」
「違います」
「違うわ」
「……時々、嫌味なくらいに仲良しを発揮するわね」
しかめっ面で言った後に、ナルサスは必ず笑うから、私も一緒に笑うのだ。
その日、私は、皇都の町を堪能した。
まずは着替えの服を幾つかかった。
「ぱ、パンツの履き心地が違う!! あと、布地が少なくて不安!!」
「女の子が、そんな事を大声で言わない!!」
「リボン、あのお花のリボンが欲しい」
「ちょっと、まずは洋服でしょう!!」
あわただしく服を何着か選び、靴を選び、アクセサリーを選ぶ。
「ナルサス!!」
「なぁに、小鳥ちゃん」
「私、お姫様になったみたい」
「そうね。 私の小鳥のお姫様。 美味しいオヤツを食べに行きましょう!!」
とにかく、楽しくて楽しくて、楽しんで……。
だけど、そんな時間はすぐに終わった。
夕刻前、まだ日も高い時間。
ナルサスは神妙な顔でこういった。
「そろそろ、陛下のいらっしゃる離宮へと向かいましょう」
馬車に乗るよう、手が差し出された。
離宮? 何故、皇帝陛下なのに離宮なの? そんな疑問はなんとなく質問しそこねた。 だって、もっと沢山遊んでいたかったんだもん。 名残惜しく振り返れば、ナルサスは何時もの様子で優しい笑みでこういうのだ。
「また、遊びにきましょうね」
「はい!!」
なんて……全てを良い話で終わると思っていた頃がありました。 いえ、少し前まで思っていました? いえいえ……どこかに予感はありましたとも……。
「この深い森を抜けた先が、陛下のお住まいされている離宮です」
「ぇ?」
聞き返しても返される言葉は変わらなかった。
皇都内に森があると言う事実に驚いた訳じゃない。 いえ……都の中に森がある事に少しは驚きましたけど、それだけじゃなくて……。
森の木々は異常なほどに背が高かった。
枝が奇妙な形で伸び、葉が重なりあって闇を作っている。
全く手入れがされていない森。 違いますね……あえて言葉にするなら、全てを隠すために手を入れたかのような森だった。
「皇帝陛下のお住まいとしては、これはどうなのでしょう?」
「お病気だから。 仕方がないのよねぇ~」
ナルサスの声は、いつものように飄々としてはいるけれど、凄く緊張しているのが分かった。
「人を招くのにも、どうかなぁ??って思うよ」
「私にとっては、陛下が第一ですもの」
「……それもそうですよね……」
少しの沈黙、そして私は他愛ない疑問を口にする。
「キャノは、その、ここに来たことは?」
「ないわよぉ~。 あの子にうかつな物を見せられる訳ないじゃない」
言われれば、それもそうだと納得してしまう。
鬱蒼とした森の中から視線を感じた。 ただ見ているだけの目には、警戒とか恐怖とかそういうのはないから、動物ではないのだろうと思う。
「ゴースト?」
言えば、ナルサスには聞こえないふりをされた。
「……」
聞こえているよね? と、視線を向けていれば、溜息交じりにヒューゴが言う。
「この森の番人のようなものです。 気になさらないで下さい。 ただ、勝手に入ってくることも許しませんが、逃げる事も許さないので、悪戯心を発揮なさいませんように」
そう、お茶目に笑い誤魔化された。
そして……森の奥に見える広いお屋敷もまた……夕暮れ時の美しい空の色を跳ね返すような夜の色をしたお屋敷で、今更引き返すなんて出来ないと宣言されている私は、ゴクリと唾を飲み込み、近づいて行く屋敷を見上げた。
「どうしたの? 小鳥ちゃん」
向こうの方、なんか変な感じがする。 そう言いたかった。 でも、変な感じ? 変な気配がするのは皇都へと続く道の先で、聞くに聞けない……。
「緊張してきちゃったかなぁ? 皇都には、美味しい物、綺麗な物、可愛い物が沢山あるから、陛下のいる離宮に向かう前に、寄り道しましょうね」
うん、と頷いて見せるが……。
私の感じる違和感に、ナルサスが何も気づかないとは思えない。
「ナルサス様。 エリス様は、その……皇都の異常を感じ取られて不安に思われているのではないでしょうか?」
ナルサスの副官であるヒューゴが聞けば、ナルサスは大きな憂いを含んだ溜息を吐いた。 そして少しだけ考え込み、苦笑交じりに告げる。
「今、私の判断で語って良いか分からないから、詳しく語れない事を許してね小鳥ちゃん。 皇都はね。 呪われているの。 死と生の呪いとでもいうのかしら? 中庸の者はとても欲深く恐ろしいものよ。 可愛い大切な小鳥ちゃん。 だから中庸の者には気を付けてね」
「ナルサスにも気をつける?」
「あら、私は平気よ。 中庸の者を超越しているんだから」
そう言って笑って見せた。
結局は、有耶無耶のまま……私は不吉の象徴のように見える皇都へと向かうと言うか、勝手に連れていかれていくのだった。
不安、不安、不安……語彙が消えるほどの不安。
だけど、中に入ってしまえば、不思議だ。
割と平気な訳で、私はうわぁあああうわぁああああって、落ち着きのない小さな子のように周囲を見回した。
「ねぇ、ナルサス。 凄いわ!! 橋も道も家もみんな石でできている。 どうなっているの?!」
「石ではなく土を焼いて固めたものですよ」
返事をしてくれたのはヒューゴの方だった。 ナルサスと言えば、今から寄りたいお店リストを部下に渡して来訪するのに問題ない環境を作る様にと指示していた。
「土を焼くと固くなるの? ぁ、御茶碗?」
「そう、ですね。 もっと丈夫ですけど」
「へぇ……。 でも、なんかかっこいいね」
「あら、なぁに? 私の噂?」
「違います」
「違うわ」
「……時々、嫌味なくらいに仲良しを発揮するわね」
しかめっ面で言った後に、ナルサスは必ず笑うから、私も一緒に笑うのだ。
その日、私は、皇都の町を堪能した。
まずは着替えの服を幾つかかった。
「ぱ、パンツの履き心地が違う!! あと、布地が少なくて不安!!」
「女の子が、そんな事を大声で言わない!!」
「リボン、あのお花のリボンが欲しい」
「ちょっと、まずは洋服でしょう!!」
あわただしく服を何着か選び、靴を選び、アクセサリーを選ぶ。
「ナルサス!!」
「なぁに、小鳥ちゃん」
「私、お姫様になったみたい」
「そうね。 私の小鳥のお姫様。 美味しいオヤツを食べに行きましょう!!」
とにかく、楽しくて楽しくて、楽しんで……。
だけど、そんな時間はすぐに終わった。
夕刻前、まだ日も高い時間。
ナルサスは神妙な顔でこういった。
「そろそろ、陛下のいらっしゃる離宮へと向かいましょう」
馬車に乗るよう、手が差し出された。
離宮? 何故、皇帝陛下なのに離宮なの? そんな疑問はなんとなく質問しそこねた。 だって、もっと沢山遊んでいたかったんだもん。 名残惜しく振り返れば、ナルサスは何時もの様子で優しい笑みでこういうのだ。
「また、遊びにきましょうね」
「はい!!」
なんて……全てを良い話で終わると思っていた頃がありました。 いえ、少し前まで思っていました? いえいえ……どこかに予感はありましたとも……。
「この深い森を抜けた先が、陛下のお住まいされている離宮です」
「ぇ?」
聞き返しても返される言葉は変わらなかった。
皇都内に森があると言う事実に驚いた訳じゃない。 いえ……都の中に森がある事に少しは驚きましたけど、それだけじゃなくて……。
森の木々は異常なほどに背が高かった。
枝が奇妙な形で伸び、葉が重なりあって闇を作っている。
全く手入れがされていない森。 違いますね……あえて言葉にするなら、全てを隠すために手を入れたかのような森だった。
「皇帝陛下のお住まいとしては、これはどうなのでしょう?」
「お病気だから。 仕方がないのよねぇ~」
ナルサスの声は、いつものように飄々としてはいるけれど、凄く緊張しているのが分かった。
「人を招くのにも、どうかなぁ??って思うよ」
「私にとっては、陛下が第一ですもの」
「……それもそうですよね……」
少しの沈黙、そして私は他愛ない疑問を口にする。
「キャノは、その、ここに来たことは?」
「ないわよぉ~。 あの子にうかつな物を見せられる訳ないじゃない」
言われれば、それもそうだと納得してしまう。
鬱蒼とした森の中から視線を感じた。 ただ見ているだけの目には、警戒とか恐怖とかそういうのはないから、動物ではないのだろうと思う。
「ゴースト?」
言えば、ナルサスには聞こえないふりをされた。
「……」
聞こえているよね? と、視線を向けていれば、溜息交じりにヒューゴが言う。
「この森の番人のようなものです。 気になさらないで下さい。 ただ、勝手に入ってくることも許しませんが、逃げる事も許さないので、悪戯心を発揮なさいませんように」
そう、お茶目に笑い誤魔化された。
そして……森の奥に見える広いお屋敷もまた……夕暮れ時の美しい空の色を跳ね返すような夜の色をしたお屋敷で、今更引き返すなんて出来ないと宣言されている私は、ゴクリと唾を飲み込み、近づいて行く屋敷を見上げた。
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