16 / 59
02
16.皇帝陛下の噂
しおりを挟む
「何処から話せばよいのでしょう……」
そう皇妃様付き侍女の1人が言えば、もう1人の侍女がボソボソと耳打ちする。
「そう、そうね。 最近の割と知っている人は知っていると言う無難な噂からが良いかしら?」
「皇帝の一族には、代々黒い噂が絶えた事がないのだけど、現皇帝カイル・ガリウス・アドラム様の御代になって、ソレはいっそう増え……いえ、問題なのは噂の多くが事実だと言う事です」
「例えば、誘拐、殺し、そして……人食い。 特に大地の民に人権を与えたエイマーズ領、あそこは、大地の民の生命力を奪うための牧場だと聞いております」
「ぇ?」
お病気で生命力が無くて可哀そうな方だ。 それがナルサスの話だった。
「牧場って……、大地の民が誘拐されたなんて話は聞きませんよ? 一応、住民名簿は作っていますし……。 外に出れば迫害を受けますから、領地の外に出る事はありませんし」
「でも、戦場ではどうかしら?」
「それは、戦争だもの。 人は死ぬものなのではありませんか? 嫌なら、戦争をしない事だと思います」
「そう、ソレなの。 アドラム皇国は、資源に困っている訳でも、食料に困っている訳でも、人材に困っている訳でも、文化的に劣っている訳でもありません。 なのに、なぜ、周辺国に戦を仕掛けなければいかないのか!」
「えっと……。 他国がアドラム皇国を狙うから?」
「負けなしの国を狙うかしら? 商取引を持ちかけたり、属国を願う方がマシではないかしら? 何しろ陛下は、敵殲滅は当たり前の方、従軍する兵士以外の方も殺しつくし、近隣の村や町も廃墟としていたと言う話ですわ」
「戦争は、良く分からないけど。 確かに平和的解決の方が私は好きです」
そう言えば、皇妃様付き侍女はニコニコとし続きを語る。
「周辺国も、そう考えたの。 だから、私達は戦争をしかけません。 貴方方に服従しますと言う意志表明をしてきたのが4、5年前だったかしら?」
「5年前ですね」
大地の民が戦争に招集されなくなったのが、それぐらいだ。
「その頃から、陛下の病は悪化……戦場で先陣を駆け、誰よりも敵を蹴散らしていた方が、人前に顔を出す事すらできなくなりましたの。 そんな陛下がいたこその強国……、皇妃様は他国に陛下の不調を知らせまいと、陛下の偽物と共に歩くようになりましたのよ」
うん、まぁ、特に変な話でもないかな? とか思ったりする。
「そして、同時期から始まった、定期的な誘拐事件、そして誘拐された者の多くは変死体として発見されるようになりましたの。 それも、若く健康な子ばかりが」
恐怖を煽るような語り口調に私は唾を飲めば、コラッと年配の皇妃様付き侍女が怒った。
「はいはい、定期的に起こる誘拐、殺人、何時までたっても犯人を捕らえる事ができない衛兵達。 民は、捕らえられない理由を考えるようになったのよ」
「えっと……権力を持つ方だから?って奴ですか」
「そう。 エイマーズ領に陛下の愛妾を求める告知が出たの3.4年前でしょう」
「えっと、まぁ、そんな感じ?」
大抵の者が興味なく、ただキャノだけが食いついた告知文。 余りにも興味がなさ過ぎて、記憶に残っていないのですよね。
「この意味、わかるでしょう?」
状況を考えるに、余計な事は言わない方がよさそうかな?
結局、病気で生命力が必要で、発作が起きている時はイライラして怖い……の内容が……アレなら、ナルサスは決して嘘をついている訳ではないのだし。
まぁ、真実を語っている訳ではないのだけど。
「皇妃様は、生贄となる子を哀れみ、逃げるようにと促しておいででしたの」
「もし、ソレが本当なら。 逃げたら、代わりに誰かが犠牲になるんですよね? 私が、キャノの代わりにここに連れてこられたように。 もし、それすら拒んだら……」
拒みようはない。
ナルサスは、大地の民を容易に制圧して見せたのだから。 そして大地の民の立場なら、定期的に生贄を捧げたとしても、安住の地を確保したいと望むだろう。
う~ん、違うなぁ……マルスなら、きっと……他所から大地の民を集め、そっちを生贄として与えるはず。
……思い出せば気分が落ちた。
もし、命が危険な生贄でも、マルスは私に行けと言ったのだろうか?
どこまでも落ち込む私に、勘違いをした皇妃様付き侍女は励ましてくる。
「貴方が望むなら、いつだって皇妃様が力を貸してくださるわ」
そう皇妃様付き侍女の1人が言えば、もう1人の侍女がボソボソと耳打ちする。
「そう、そうね。 最近の割と知っている人は知っていると言う無難な噂からが良いかしら?」
「皇帝の一族には、代々黒い噂が絶えた事がないのだけど、現皇帝カイル・ガリウス・アドラム様の御代になって、ソレはいっそう増え……いえ、問題なのは噂の多くが事実だと言う事です」
「例えば、誘拐、殺し、そして……人食い。 特に大地の民に人権を与えたエイマーズ領、あそこは、大地の民の生命力を奪うための牧場だと聞いております」
「ぇ?」
お病気で生命力が無くて可哀そうな方だ。 それがナルサスの話だった。
「牧場って……、大地の民が誘拐されたなんて話は聞きませんよ? 一応、住民名簿は作っていますし……。 外に出れば迫害を受けますから、領地の外に出る事はありませんし」
「でも、戦場ではどうかしら?」
「それは、戦争だもの。 人は死ぬものなのではありませんか? 嫌なら、戦争をしない事だと思います」
「そう、ソレなの。 アドラム皇国は、資源に困っている訳でも、食料に困っている訳でも、人材に困っている訳でも、文化的に劣っている訳でもありません。 なのに、なぜ、周辺国に戦を仕掛けなければいかないのか!」
「えっと……。 他国がアドラム皇国を狙うから?」
「負けなしの国を狙うかしら? 商取引を持ちかけたり、属国を願う方がマシではないかしら? 何しろ陛下は、敵殲滅は当たり前の方、従軍する兵士以外の方も殺しつくし、近隣の村や町も廃墟としていたと言う話ですわ」
「戦争は、良く分からないけど。 確かに平和的解決の方が私は好きです」
そう言えば、皇妃様付き侍女はニコニコとし続きを語る。
「周辺国も、そう考えたの。 だから、私達は戦争をしかけません。 貴方方に服従しますと言う意志表明をしてきたのが4、5年前だったかしら?」
「5年前ですね」
大地の民が戦争に招集されなくなったのが、それぐらいだ。
「その頃から、陛下の病は悪化……戦場で先陣を駆け、誰よりも敵を蹴散らしていた方が、人前に顔を出す事すらできなくなりましたの。 そんな陛下がいたこその強国……、皇妃様は他国に陛下の不調を知らせまいと、陛下の偽物と共に歩くようになりましたのよ」
うん、まぁ、特に変な話でもないかな? とか思ったりする。
「そして、同時期から始まった、定期的な誘拐事件、そして誘拐された者の多くは変死体として発見されるようになりましたの。 それも、若く健康な子ばかりが」
恐怖を煽るような語り口調に私は唾を飲めば、コラッと年配の皇妃様付き侍女が怒った。
「はいはい、定期的に起こる誘拐、殺人、何時までたっても犯人を捕らえる事ができない衛兵達。 民は、捕らえられない理由を考えるようになったのよ」
「えっと……権力を持つ方だから?って奴ですか」
「そう。 エイマーズ領に陛下の愛妾を求める告知が出たの3.4年前でしょう」
「えっと、まぁ、そんな感じ?」
大抵の者が興味なく、ただキャノだけが食いついた告知文。 余りにも興味がなさ過ぎて、記憶に残っていないのですよね。
「この意味、わかるでしょう?」
状況を考えるに、余計な事は言わない方がよさそうかな?
結局、病気で生命力が必要で、発作が起きている時はイライラして怖い……の内容が……アレなら、ナルサスは決して嘘をついている訳ではないのだし。
まぁ、真実を語っている訳ではないのだけど。
「皇妃様は、生贄となる子を哀れみ、逃げるようにと促しておいででしたの」
「もし、ソレが本当なら。 逃げたら、代わりに誰かが犠牲になるんですよね? 私が、キャノの代わりにここに連れてこられたように。 もし、それすら拒んだら……」
拒みようはない。
ナルサスは、大地の民を容易に制圧して見せたのだから。 そして大地の民の立場なら、定期的に生贄を捧げたとしても、安住の地を確保したいと望むだろう。
う~ん、違うなぁ……マルスなら、きっと……他所から大地の民を集め、そっちを生贄として与えるはず。
……思い出せば気分が落ちた。
もし、命が危険な生贄でも、マルスは私に行けと言ったのだろうか?
どこまでも落ち込む私に、勘違いをした皇妃様付き侍女は励ましてくる。
「貴方が望むなら、いつだって皇妃様が力を貸してくださるわ」
1
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
いなくなった伯爵令嬢の代わりとして育てられました。本物が見つかって今度は彼女の婚約者だった辺境伯様に嫁ぎます。
りつ
恋愛
~身代わり令嬢は強面辺境伯に溺愛される~
行方不明になった伯爵家の娘によく似ていると孤児院から引き取られたマリア。孤独を抱えながら必死に伯爵夫妻の望む子どもを演じる。数年後、ようやく伯爵家での暮らしにも慣れてきた矢先、夫妻の本当の娘であるヒルデが見つかる。自分とは違う天真爛漫な性格をしたヒルデはあっという間に伯爵家に馴染み、マリアの婚約者もヒルデに惹かれてしまう……。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる