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17.侍女達は主を自慢したい
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「まっ、待ってください!!」
意を決したように、屋敷付きの侍女が叫んだ。
「陛下は、陛下はお優しい方です!! 良く考えて下さい、お嬢様!! 戦争で戦っている相手は敵です。 中途半端に遺恨が残れば新たな敵、それも、今まで以上の敵を作り出す事になるんですよ。 敵国に対する冷酷は、自国に対する、後の世に対する大きな贈り物となると考えられませんか? 近隣の村の件にしても、その村の人間が兵士と入れ替わっていたなら? 戦場に赴かない者達が、面白おかしく噂を流していると考えられないでしょうか?」
「なるほど~。 確かに、敵国側から見れば、無慈悲な化け物的な感じかもしれませんが、自国側から見れば相応の理由があると言う事になるのですね」
と、なれば敵国側の視点で語る皇妃様付き侍女は何者か? となってくる。
キッと皇妃様付きの侍女は睨みながら一息つけば、他の侍女が軽く挙手してみせる。
「はいは~い。 次は、私に話しをさせてください」
「ぁ、どうぞ……」
なんか、頭が混乱してきているが、ダメだとか、もう終わりだとかそういうのは言うに言えない感じになってきていた。
「陛下は、戦争による利益によって、税を引き下げ、貿易を優位に働かせ、インフラを進め、下々が利益を得る政策を打ち立て、生活水準の向上を行ってきました。 これによって、貴族達との争いが激化。 病により表に出られない、だからこそチャンスと陛下にとって不利な噂を流すものも多いと私は考えています」
私は笑って流した。 だって、出兵の際に褒賞は出ていたけど、今彼女が言った利益と言う奴にエイマーズ領は関係なく……関係ないからこそ、私なんて皇国を認識するのは書面のやり取りの中ぐらいでしたからねぇ……。
「では、実際に誘拐、死体遺棄があるのは何故ですか?」
「怪しまれる人間が、わざわざ死体を遺棄しますか。 陛下のせいにできるから、そのように杜撰な事をするのではありませんか?」
反論に対して、皇妃様付き侍女は唇を噛んでいた。
そして、大きく息を飲み、歪んだ口元で語りだす。
「陛下自体が、偽物と言う噂もあるんですよ」
そう語る侍女の表情が恐怖に彩られていたからこそ、私はその発言に興味を持ってしまった。
「影武者的な人がいるって、さっき言っていた人ですか?」
「いいえ……、これは、私の母の兄の従姉弟の隣家の使用人から聞いた話なのですが」
「……うん……」
この時点で聞く気が失われたのは言うまでもない。
「皇族の血を引く者が40年前から30年前まで……およそ10年の間に全員が奇病を患い、身体が枯れ腐ると言う病にかかり死滅してしまったと」
「そんなえっと貴方の叔父の従姉弟の……ようするに赤の他人の使用人が、なぜ知っていたのよ!!」
激しく突っ込む屋敷付き侍女。
「その方の妻が、とても薄いものだけど皇家の血を引いていたからよ!! ちょ、私だってねぇ、余りに余りの噂だけど、実際、その方の母や兄弟、祖父、従兄弟に至るまで、奇病で亡くなったんだから!!」
「ちなみに、他の、一般人はどうだったのよ?」
屋敷付き侍女の声が少しだけ神妙なものになっていた。
「奇病は伝染しなかったわ。 だから、ソレは皇家に流れる竜の血が影響しているのでは? と、語っていたわ」
「竜?」
その場にいた侍女達は、眉間を寄せた。
何しろ翼持つ者は、栄養価が高い……。 いえ、自分で言うのも嫌なんですけどね……色々と食べると効果があるらしい。 私のように鳥由来であれば、うっかり食べられちゃうってこともあったと思う。
不老長寿をもたらし、膨大な魔力を与える。 なんて言われていて、まぁ……数が多かった時代には狩ろうとしていた者も多いらしい。 挙句、自由気ままに流浪し、興味を持つものがあればトコトンまで突き詰め周りが見えなくなる。 なにより長寿なだけに生殖行動は後回し~とかって簡単にしちゃうわけで、ツイツイ滅びに瀕している状態。 今では、存在しないと認識されている。
なので、皆こう思っているだろうなぁ~って感じ。
うわぁ~、物語と現実をごっちゃにしてるよ。 って。
鳥は、変身してしまえば、うっかり狩られる事もあるけど、普通の鳥に紛れる事ができるが、竜は大きいし、角、爪、牙、皮、全てが超素材なため、必死に狩ろうとするから、万が一を考えて翼持つ者は群れをつくらず、別の種族のふりをしているのだと母様が言っていた。
だから、皇帝の血統に竜の血が流れていると言われても不思議はない。
と、思う。
「そうやって皇族が滅びた時、唯一生き残った遠縁の子、現皇帝を探し出し連れて来たのが、我らが皇妃様の、父上なのですよ!! 皇妃様の家系がどれほど国に貢献していたか、そりゃぁもうはかり知れません。 私はそんな皇妃様にお使え出来る事が喜びなのです。 だから、皇妃様を信じるのが正しいですわよ!! えっと?」
いつの間にか陛下の血統が怪しいから、皇妃様自慢になっていて、私達は一斉に首を傾げる事になるのだ。
「ぁ、エリスです」
「エリスさん!!」
意を決したように、屋敷付きの侍女が叫んだ。
「陛下は、陛下はお優しい方です!! 良く考えて下さい、お嬢様!! 戦争で戦っている相手は敵です。 中途半端に遺恨が残れば新たな敵、それも、今まで以上の敵を作り出す事になるんですよ。 敵国に対する冷酷は、自国に対する、後の世に対する大きな贈り物となると考えられませんか? 近隣の村の件にしても、その村の人間が兵士と入れ替わっていたなら? 戦場に赴かない者達が、面白おかしく噂を流していると考えられないでしょうか?」
「なるほど~。 確かに、敵国側から見れば、無慈悲な化け物的な感じかもしれませんが、自国側から見れば相応の理由があると言う事になるのですね」
と、なれば敵国側の視点で語る皇妃様付き侍女は何者か? となってくる。
キッと皇妃様付きの侍女は睨みながら一息つけば、他の侍女が軽く挙手してみせる。
「はいは~い。 次は、私に話しをさせてください」
「ぁ、どうぞ……」
なんか、頭が混乱してきているが、ダメだとか、もう終わりだとかそういうのは言うに言えない感じになってきていた。
「陛下は、戦争による利益によって、税を引き下げ、貿易を優位に働かせ、インフラを進め、下々が利益を得る政策を打ち立て、生活水準の向上を行ってきました。 これによって、貴族達との争いが激化。 病により表に出られない、だからこそチャンスと陛下にとって不利な噂を流すものも多いと私は考えています」
私は笑って流した。 だって、出兵の際に褒賞は出ていたけど、今彼女が言った利益と言う奴にエイマーズ領は関係なく……関係ないからこそ、私なんて皇国を認識するのは書面のやり取りの中ぐらいでしたからねぇ……。
「では、実際に誘拐、死体遺棄があるのは何故ですか?」
「怪しまれる人間が、わざわざ死体を遺棄しますか。 陛下のせいにできるから、そのように杜撰な事をするのではありませんか?」
反論に対して、皇妃様付き侍女は唇を噛んでいた。
そして、大きく息を飲み、歪んだ口元で語りだす。
「陛下自体が、偽物と言う噂もあるんですよ」
そう語る侍女の表情が恐怖に彩られていたからこそ、私はその発言に興味を持ってしまった。
「影武者的な人がいるって、さっき言っていた人ですか?」
「いいえ……、これは、私の母の兄の従姉弟の隣家の使用人から聞いた話なのですが」
「……うん……」
この時点で聞く気が失われたのは言うまでもない。
「皇族の血を引く者が40年前から30年前まで……およそ10年の間に全員が奇病を患い、身体が枯れ腐ると言う病にかかり死滅してしまったと」
「そんなえっと貴方の叔父の従姉弟の……ようするに赤の他人の使用人が、なぜ知っていたのよ!!」
激しく突っ込む屋敷付き侍女。
「その方の妻が、とても薄いものだけど皇家の血を引いていたからよ!! ちょ、私だってねぇ、余りに余りの噂だけど、実際、その方の母や兄弟、祖父、従兄弟に至るまで、奇病で亡くなったんだから!!」
「ちなみに、他の、一般人はどうだったのよ?」
屋敷付き侍女の声が少しだけ神妙なものになっていた。
「奇病は伝染しなかったわ。 だから、ソレは皇家に流れる竜の血が影響しているのでは? と、語っていたわ」
「竜?」
その場にいた侍女達は、眉間を寄せた。
何しろ翼持つ者は、栄養価が高い……。 いえ、自分で言うのも嫌なんですけどね……色々と食べると効果があるらしい。 私のように鳥由来であれば、うっかり食べられちゃうってこともあったと思う。
不老長寿をもたらし、膨大な魔力を与える。 なんて言われていて、まぁ……数が多かった時代には狩ろうとしていた者も多いらしい。 挙句、自由気ままに流浪し、興味を持つものがあればトコトンまで突き詰め周りが見えなくなる。 なにより長寿なだけに生殖行動は後回し~とかって簡単にしちゃうわけで、ツイツイ滅びに瀕している状態。 今では、存在しないと認識されている。
なので、皆こう思っているだろうなぁ~って感じ。
うわぁ~、物語と現実をごっちゃにしてるよ。 って。
鳥は、変身してしまえば、うっかり狩られる事もあるけど、普通の鳥に紛れる事ができるが、竜は大きいし、角、爪、牙、皮、全てが超素材なため、必死に狩ろうとするから、万が一を考えて翼持つ者は群れをつくらず、別の種族のふりをしているのだと母様が言っていた。
だから、皇帝の血統に竜の血が流れていると言われても不思議はない。
と、思う。
「そうやって皇族が滅びた時、唯一生き残った遠縁の子、現皇帝を探し出し連れて来たのが、我らが皇妃様の、父上なのですよ!! 皇妃様の家系がどれほど国に貢献していたか、そりゃぁもうはかり知れません。 私はそんな皇妃様にお使え出来る事が喜びなのです。 だから、皇妃様を信じるのが正しいですわよ!! えっと?」
いつの間にか陛下の血統が怪しいから、皇妃様自慢になっていて、私達は一斉に首を傾げる事になるのだ。
「ぁ、エリスです」
「エリスさん!!」
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