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23.嘆きの鳥
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目を覚ますと、柔らかな肉に包まれていた。
とは言え、寝ぼけた頭では理解できないものである。
「ぴっ?」
「あら、起きましたか? お嬢様?」
そう、私を呼ぶのは侍女の1人。
お胸の大きな侍女の1人……。
周囲を見回せば状況を理解したが、理解しきれていない面もある。 なにしろ、大地の民の胸は、やわらかくない!! 胸筋によってできているから。 私は理解がおいつかなかった。
そして、この現実は受け入れがたかった……。
私が、子供と言われる理由はコレか?! ちょっと泣きたくなった……。
「ぴよっ……」
「ふっふふふ、お嬢様、もっふもふしないでください、くすぐったいです」
知るか、私はなんか切ないんだ!! なんて、感情をあらぶらせながらも、こう、ぬくくて柔らかい様子に寝そうになっていた……。
「そういえば、ナルサスは?」
「ナルサス様は、急遽入った知らせで、その……本来の業務に出向いて行きました」
「本来の業務?」
もふもふしながら、外に出ようとすれば、
「お嬢様、つ、爪が」
「ぁ、ごめんなさい」
「いえ、今外にお出ししますから」
そして外に出された私は、侍女の肩の上へと居場所を変えた。
「昨日、皇妃様付き侍女が言っていたように、皇都では最近変死体の数が増えていて、夜間の外出禁止令が出されているのですが、その……化け物が、人を襲っていると言う話がありまして……」
「それは噂話? 嘘? 本当? っぴょ」
ぴよぴよ言うのは、呼吸の隙間に時折漏れる音なので、どうにもできない。
「どうなのでしょうね? ナルサス様から伺って、私達に真実を教えてくださいませ」
なんて言われた。
ぐーーーーぎゅるぎゅるぎゅる。
「……すみません。 私のお腹の音です」
「なかなか豪快な主張ですね。 クッキーなどいかがですか?」
「ご馳走になります」
そして、私は、片足立ちになり片翼ずつをスサーーーと伸ばす。 どうだ、美しいだろう。 なんていうのではなく、準備運動のようなもの。 そして、私はパタパタと羽ばたきテーブルの上へと降り立った。
因みに、私がいる場所は、控室兼家事室で、侍女達が集まって、お茶をしたり談笑したり、ちょっとした家事も行うらしい。 一応もくもくと針仕事に勤しんでいるモイラもいる。
「……これ、クッキー違う!! クッキーかす!! 粉!」
「小さなお口なのでつい、普通のサイズで大丈夫ですか?」
「大丈夫だから!! むしろ、粉でお腹ふくれないし、お腹いっぱいにしたくないよ」
次には、クッキーの入った木箱がテーブルの上に置かれ、私は入れ物の縁に止まりクッキーに嘴をつっこんだ。 ついばむ速度、回数、クッキーの消滅度を考えてはいけない。 小鳥の私はエネルギーそのものなのだから。
侍女達が唖然とし次にクスクスと笑いだすが気にしたら負けだ。 何しろ昨日はエネルギーを散々うばわれたし……。 そういえば……血よりも羽根の方が負担は大きいのね、覚えておこう。 等と冷静になるわけ……ぁっ、
「モイラ!!」
「はい? なんでございましょう。 お嬢様」
「私、毒があるんだけど。 陛下は大丈夫だった?」
「あの方自身が毒のような方ですので、お気になさる必要はありませんよ」
そう言って私に向けられる微笑みは優しいものだが、額の部分をピキッとさせながら語る声は、ちょっと怖かった。
あと、無いと思いますよ。 とかではなく、断言なのもどうなるのだろうか? まぁ、確かに毒ぐらいありそうな体ではあったが。
「カワイイ小鳥ちゃんなんて思っていましたが、お嬢様はエネルギーが欠如されていたのですね」
そう侍女の一人が言えば、次には目の前に大量の食糧が積み上げられた。 クッキー、フルーツ、パン、何故ハム、チーズまであるのかは謎だが、侍女達が隠し食料を提供してくれたのだ。
そして、モイラが黄金色の飴を置くと同時に侍女の1人に命じた。
「食べ物を準備するように料理長に伝えてもらえますか?」
命じられた侍女は真顔でエリスを見た。
「えっと……好き嫌いとか、いえ、何が食べられますか?」
「辛すぎるもの、臭いもの以外は、多分へいき?」
カーテンが閉められていて時間が分からないが、陛下(?)にお会いしたのは夕飯のあと、少したったぐらい。
「どれぐらい時間がたってるのかな?! なんだかすごくお腹ぺこぺこだし、一緒に行くよ」
私は、料理長に食事をお願いに行くと言った侍女の頭の上に移動する。
「日付が変わったばかりです。 あと、一緒にいってもお嬢様にお出し出来るようなものは無いと思いますよ?」
モイラ言う。
「まだ、そんな時間なんだ……。 そうだ、私、自分で作ってもいいよ!!」
「それは、勘弁してください。 料理人達が泣きます」
「なんだか面倒臭いね」
「沢山の人がいるのだから、夕食の残りとか無いの?」
「お嬢様に使用人の残り物を出す訳には参りません」
尊重されるのも良い事ばかりではないらしい。
「この国の民。 陛下のものと言う意味では私も使用人みたいなものでしょう? とにかくお腹がすいているの!!」
「ですが、陛下の恩人を無下に扱うなどできません」
「その陛下のためには必要なの! 言い訳が必要なら、鳥の餌にコダワルな!!」
ふんすっ、と怒り交じりで訴えてみた。 別に空腹で死ぬとか、正気を失うとかそういうことはないけれど、私の方の栄養が不足していては陛下の栄養補充が出来ない。 それは都合の良い言い訳にならないだろうか? 人の姿を取り戻してはいたが、余剰のエネルギーをため込むまでは、いっていないのだから、時間と共に腐敗は始まるはずだ。
それを説明すれば、モイラは溜息をついた。
「では……今日だけは簡易的な食事でご容赦くださいませ」
そうして私は、色々なやり取りの結果として使用人ようの食堂で食事をすることとなった。
とは言え、寝ぼけた頭では理解できないものである。
「ぴっ?」
「あら、起きましたか? お嬢様?」
そう、私を呼ぶのは侍女の1人。
お胸の大きな侍女の1人……。
周囲を見回せば状況を理解したが、理解しきれていない面もある。 なにしろ、大地の民の胸は、やわらかくない!! 胸筋によってできているから。 私は理解がおいつかなかった。
そして、この現実は受け入れがたかった……。
私が、子供と言われる理由はコレか?! ちょっと泣きたくなった……。
「ぴよっ……」
「ふっふふふ、お嬢様、もっふもふしないでください、くすぐったいです」
知るか、私はなんか切ないんだ!! なんて、感情をあらぶらせながらも、こう、ぬくくて柔らかい様子に寝そうになっていた……。
「そういえば、ナルサスは?」
「ナルサス様は、急遽入った知らせで、その……本来の業務に出向いて行きました」
「本来の業務?」
もふもふしながら、外に出ようとすれば、
「お嬢様、つ、爪が」
「ぁ、ごめんなさい」
「いえ、今外にお出ししますから」
そして外に出された私は、侍女の肩の上へと居場所を変えた。
「昨日、皇妃様付き侍女が言っていたように、皇都では最近変死体の数が増えていて、夜間の外出禁止令が出されているのですが、その……化け物が、人を襲っていると言う話がありまして……」
「それは噂話? 嘘? 本当? っぴょ」
ぴよぴよ言うのは、呼吸の隙間に時折漏れる音なので、どうにもできない。
「どうなのでしょうね? ナルサス様から伺って、私達に真実を教えてくださいませ」
なんて言われた。
ぐーーーーぎゅるぎゅるぎゅる。
「……すみません。 私のお腹の音です」
「なかなか豪快な主張ですね。 クッキーなどいかがですか?」
「ご馳走になります」
そして、私は、片足立ちになり片翼ずつをスサーーーと伸ばす。 どうだ、美しいだろう。 なんていうのではなく、準備運動のようなもの。 そして、私はパタパタと羽ばたきテーブルの上へと降り立った。
因みに、私がいる場所は、控室兼家事室で、侍女達が集まって、お茶をしたり談笑したり、ちょっとした家事も行うらしい。 一応もくもくと針仕事に勤しんでいるモイラもいる。
「……これ、クッキー違う!! クッキーかす!! 粉!」
「小さなお口なのでつい、普通のサイズで大丈夫ですか?」
「大丈夫だから!! むしろ、粉でお腹ふくれないし、お腹いっぱいにしたくないよ」
次には、クッキーの入った木箱がテーブルの上に置かれ、私は入れ物の縁に止まりクッキーに嘴をつっこんだ。 ついばむ速度、回数、クッキーの消滅度を考えてはいけない。 小鳥の私はエネルギーそのものなのだから。
侍女達が唖然とし次にクスクスと笑いだすが気にしたら負けだ。 何しろ昨日はエネルギーを散々うばわれたし……。 そういえば……血よりも羽根の方が負担は大きいのね、覚えておこう。 等と冷静になるわけ……ぁっ、
「モイラ!!」
「はい? なんでございましょう。 お嬢様」
「私、毒があるんだけど。 陛下は大丈夫だった?」
「あの方自身が毒のような方ですので、お気になさる必要はありませんよ」
そう言って私に向けられる微笑みは優しいものだが、額の部分をピキッとさせながら語る声は、ちょっと怖かった。
あと、無いと思いますよ。 とかではなく、断言なのもどうなるのだろうか? まぁ、確かに毒ぐらいありそうな体ではあったが。
「カワイイ小鳥ちゃんなんて思っていましたが、お嬢様はエネルギーが欠如されていたのですね」
そう侍女の一人が言えば、次には目の前に大量の食糧が積み上げられた。 クッキー、フルーツ、パン、何故ハム、チーズまであるのかは謎だが、侍女達が隠し食料を提供してくれたのだ。
そして、モイラが黄金色の飴を置くと同時に侍女の1人に命じた。
「食べ物を準備するように料理長に伝えてもらえますか?」
命じられた侍女は真顔でエリスを見た。
「えっと……好き嫌いとか、いえ、何が食べられますか?」
「辛すぎるもの、臭いもの以外は、多分へいき?」
カーテンが閉められていて時間が分からないが、陛下(?)にお会いしたのは夕飯のあと、少したったぐらい。
「どれぐらい時間がたってるのかな?! なんだかすごくお腹ぺこぺこだし、一緒に行くよ」
私は、料理長に食事をお願いに行くと言った侍女の頭の上に移動する。
「日付が変わったばかりです。 あと、一緒にいってもお嬢様にお出し出来るようなものは無いと思いますよ?」
モイラ言う。
「まだ、そんな時間なんだ……。 そうだ、私、自分で作ってもいいよ!!」
「それは、勘弁してください。 料理人達が泣きます」
「なんだか面倒臭いね」
「沢山の人がいるのだから、夕食の残りとか無いの?」
「お嬢様に使用人の残り物を出す訳には参りません」
尊重されるのも良い事ばかりではないらしい。
「この国の民。 陛下のものと言う意味では私も使用人みたいなものでしょう? とにかくお腹がすいているの!!」
「ですが、陛下の恩人を無下に扱うなどできません」
「その陛下のためには必要なの! 言い訳が必要なら、鳥の餌にコダワルな!!」
ふんすっ、と怒り交じりで訴えてみた。 別に空腹で死ぬとか、正気を失うとかそういうことはないけれど、私の方の栄養が不足していては陛下の栄養補充が出来ない。 それは都合の良い言い訳にならないだろうか? 人の姿を取り戻してはいたが、余剰のエネルギーをため込むまでは、いっていないのだから、時間と共に腐敗は始まるはずだ。
それを説明すれば、モイラは溜息をついた。
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