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26.侍女達の仕事 02
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「どうされたのですかお嬢様? 先ほどからぴよぴよなっておりますよ」
「気のせいっぴよ」
私はわざとらしくぴよと語尾に付けて喋った。 そんな合間にも嫌味合戦は続いている。
嫌味たらしく皇妃様の侍女は声を荒げていた。
「幼い娘がこんなところで終わりを迎えるなんて、可哀そうだとは思いませんの?!」
「それは……」
「あの子だって、皇妃様の元で礼儀作法を学び、一流のレディに育て上げられた方が幸福ですわ」
「陛下は、他者を犠牲にするような事をしませんわ!!」
「本当ですの?」
「本当ですわ……」
5年前を最後に新しい使用人を迎え入れる事ができていない。 ソレはどんなに真面目に働く使用人であっても、陛下の姿を見て精神を乱し、逃げ出し、森で獣に襲われ死を迎えるからだと後で聞かされた。 そんな事実があるからこそ、陛下の使用人達の勢いは、やや控えめになったのだという。
「あんなに小さな子が、陛下の犠牲になるなんて可哀そうではございません? あぁ、我が主は美しいばかりでなく、なんとお優しいのでしょう。 アナタ方のように、他者を犠牲にしながら生きている者にとっては、私共の崇高な気持ちは理解できないでしょうけどね」
陶酔する姿って、なんか気持ち悪いよね。
「そうまでして、お嬢様に関わろうとする理由は何?」
「あら、皇妃様は子供にも優しく、孤児を迎え入れ、教育を施しておりますのよ。 ご存じありませんでした? だからこそ、子供の未来を案じられておりますの」
優しい優しいと言う割に、極端に見目の良い侍女や騎士を揃えている事を見れば、仕事よりも外見重視って言う感じが良く思えない。
「その子供も、ろくに育て切れてないと聞きますが?」
「仕方ありませんわ。 病を持ち手遅れの者も少なくはありませんもの。 使用人として雇った者が死亡届けだけ家族に送られると言うより、マトモな話だと思いません?」
どうやら私は考え事をすると、ぴよぴよ鳴っているらしく、それが若い侍女のツボにはまって、クスクスと笑いだしていた。
「なによ!! 真剣な話をしているのよ!!」
形相を変え怒鳴ったのは皇妃付きの侍女だった。 それが、余りにも切羽詰まった様子に見えた。
「もしかすると、余裕が無いの?」
私が聞けば、
「気づきました? アレは皇妃様の処分対象とされた者達と言う事ですわね。 今までもありましたから……」
側にいる他の侍女が順に語りだす。
「定期的に行われる行事といいますか……」
「いらなくなった使用人に何か事情をつけ、コチラにお使いに寄越す」
「それで、陛下のご飯?」
「戦時以外は、死刑の決まった罪人しか食されておりません」
それは人として立ち止まるための一線だろうけど、人に執着するために人の姿を無くしたと言うのは、皮肉ではないなぁ……と思ってしまう。
「それは、なんて崇高な方ぴよ」
小声で皮肉を言えば、小鳥姿が相まって皮肉とはうけとめられなかった。 そして説明は続く。
「お使いとしてきた者は、ケガレを受けたからと理由をつけられ、皇妃様の側付きを外されるんです」
「ケガレ?」
「陛下の影響ですね……3年ほど前からはご本人の姿が変貌されただけでなく、周囲にも影響を与えられるようになりましたから」
とはいえ、無意味に被害者を出している訳ではないそうだ。
超弱い=森の入り口で絶命。
一般人=近寄らない。
強い人=生命エネルギーが奪われ疲れてくる。
超強い=気にならない。
これに加えて感覚が鋭敏か鈍いかでも変わると言う。
「皇妃様は何をしたいの?」
皇妃付きの侍女達が錯乱するにともない、私は軽くパニックを起こしてしまう。 種族的に受け継ぐのはあくまで知識で、経験ではないのだから仕方がない。
こんな説明の間も、皇帝派、皇妃派は、言い合いを続けていた。
「気のせいっぴよ」
私はわざとらしくぴよと語尾に付けて喋った。 そんな合間にも嫌味合戦は続いている。
嫌味たらしく皇妃様の侍女は声を荒げていた。
「幼い娘がこんなところで終わりを迎えるなんて、可哀そうだとは思いませんの?!」
「それは……」
「あの子だって、皇妃様の元で礼儀作法を学び、一流のレディに育て上げられた方が幸福ですわ」
「陛下は、他者を犠牲にするような事をしませんわ!!」
「本当ですの?」
「本当ですわ……」
5年前を最後に新しい使用人を迎え入れる事ができていない。 ソレはどんなに真面目に働く使用人であっても、陛下の姿を見て精神を乱し、逃げ出し、森で獣に襲われ死を迎えるからだと後で聞かされた。 そんな事実があるからこそ、陛下の使用人達の勢いは、やや控えめになったのだという。
「あんなに小さな子が、陛下の犠牲になるなんて可哀そうではございません? あぁ、我が主は美しいばかりでなく、なんとお優しいのでしょう。 アナタ方のように、他者を犠牲にしながら生きている者にとっては、私共の崇高な気持ちは理解できないでしょうけどね」
陶酔する姿って、なんか気持ち悪いよね。
「そうまでして、お嬢様に関わろうとする理由は何?」
「あら、皇妃様は子供にも優しく、孤児を迎え入れ、教育を施しておりますのよ。 ご存じありませんでした? だからこそ、子供の未来を案じられておりますの」
優しい優しいと言う割に、極端に見目の良い侍女や騎士を揃えている事を見れば、仕事よりも外見重視って言う感じが良く思えない。
「その子供も、ろくに育て切れてないと聞きますが?」
「仕方ありませんわ。 病を持ち手遅れの者も少なくはありませんもの。 使用人として雇った者が死亡届けだけ家族に送られると言うより、マトモな話だと思いません?」
どうやら私は考え事をすると、ぴよぴよ鳴っているらしく、それが若い侍女のツボにはまって、クスクスと笑いだしていた。
「なによ!! 真剣な話をしているのよ!!」
形相を変え怒鳴ったのは皇妃付きの侍女だった。 それが、余りにも切羽詰まった様子に見えた。
「もしかすると、余裕が無いの?」
私が聞けば、
「気づきました? アレは皇妃様の処分対象とされた者達と言う事ですわね。 今までもありましたから……」
側にいる他の侍女が順に語りだす。
「定期的に行われる行事といいますか……」
「いらなくなった使用人に何か事情をつけ、コチラにお使いに寄越す」
「それで、陛下のご飯?」
「戦時以外は、死刑の決まった罪人しか食されておりません」
それは人として立ち止まるための一線だろうけど、人に執着するために人の姿を無くしたと言うのは、皮肉ではないなぁ……と思ってしまう。
「それは、なんて崇高な方ぴよ」
小声で皮肉を言えば、小鳥姿が相まって皮肉とはうけとめられなかった。 そして説明は続く。
「お使いとしてきた者は、ケガレを受けたからと理由をつけられ、皇妃様の側付きを外されるんです」
「ケガレ?」
「陛下の影響ですね……3年ほど前からはご本人の姿が変貌されただけでなく、周囲にも影響を与えられるようになりましたから」
とはいえ、無意味に被害者を出している訳ではないそうだ。
超弱い=森の入り口で絶命。
一般人=近寄らない。
強い人=生命エネルギーが奪われ疲れてくる。
超強い=気にならない。
これに加えて感覚が鋭敏か鈍いかでも変わると言う。
「皇妃様は何をしたいの?」
皇妃付きの侍女達が錯乱するにともない、私は軽くパニックを起こしてしまう。 種族的に受け継ぐのはあくまで知識で、経験ではないのだから仕方がない。
こんな説明の間も、皇帝派、皇妃派は、言い合いを続けていた。
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