【R18】婚約者がとんでもない女を運命のツガイだといいました。 そして私は運命に出会う。【完結】

迷い人

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34.ご都合主義を極める彼の独占欲

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 陛下の部屋に戻ったヒューゴは、開口一番シマッタと小声で呟いた。

 陛下が、菓子をデスクの上、それも抱え込むように置き、両手を組んだ上に顎を乗せながら、ニッコリと穏やかな微笑みを浮かべ待っていた。

「おいで、おチビちゃん」

 それが、何故か不思議なほどに懐かしく感じて、帽子の中からフラリ飛んで出た。 陛下の手の平に乗せられたビスケットが一枚。 ストンっと降りて、食べて良い? と、私は顔を見る。

「おたべ」

「陛下は食べないの?」

「食べる事も出来ますが、栄養への還元率が低いので、私が食べるよりもおチビちゃんが食べて、私に与えてくれた方が助かりますね」

 頭が指先で撫でられ、反射的に首がいいと横を向けば、クスッと笑い首元が撫でられる。

「ふぅん……悪くないわね。 背中なら、匂いを嗅ぐ許可を出してあげてもいいわよ」

 冗談半分、もう半分は……なんだろう? 言ったら皇国の主は小鳥の背に鼻をつけ匂いを嗅ぐのかな?と言う好奇心。 ただソレだけだったのだけれど……。

 にっこり笑って告げられるお礼。

「ありがとうございます」

 そういって、背中が吸われた……。
 全身に走る鳥肌に、私は叫ぶ。

「ぴよっ!! ドレイン禁止!!」

「していませんよ。 随分とコントロールが効くようになりましたからね。 あぁ、良い匂いです。 まるで、生き返るようです……」

 うっとりとした様子で言われ、手のひらに包み込まれ、ビスケットを貰い、匂いを嗅がれる。 自分で言った事と、途中から諦め、無心にビスケットを私は食べる。

「匂いを嗅いで、生き生きとしていく様子を見ると、あぁ、陛下ってお変態だなぁ……って、思ってしまう」

「失礼な子ですねぇ。 ですが、変態のそしりもあえて受けましょう」

 ひっくり返され、お腹が吸われた……。

「ぴっ、ぴっ? ぴよっ……」

 もとに戻されガックリした私は、陛下を睨んだ。

「……何か、大切なものを失ったような気がする……」

「よしよし、何も失っていませんから、安心してください」

「私、もうお姉さんのお胸に帰る……」

「そうですか、仕方がありません」

 仕方がないと言う言葉に、私はホッとするが、現実と言えば陛下は未だ私を解放してくれそうになくて、なにより神妙な声で陛下は言うのだ。

「……わかりました」

 静かな声で、柔らかく握られていた手が緩められ飛び立とうとすれば、ざわりと闇が揺らめいた。 香るのは夜と甘い死の匂い。 そして……陛下がセクシーなお姉さんになっていた。

「さぁ、いらっしゃい」

 なぜか、露出度の高い黒いドレスを着ている女性。 匂いだけは陛下のものと変わらない。

「なっ、なぜ、そうなった??」

「おかしなことを言いますね。 質量無視したおチビちゃん。 皇帝陛下等やっていると、変身の1つや2つできなければ、買い物も行けませんからね」

 そう言って、妙に色っぽい溜息をついた。

「さぁ、どうぞ」

 胸の谷間に入れと、前が広げられる。 これが人生の大きな選択となるとは!! 等と言う事にならない事を祈る。 なぜなら、ヒューゴが涙を流しながら、もう知らねとかってなっているから。

「そんなに、ナルサスの胸板がいいのですか?」

 悲嘆に暮れる声で言われても、なんか心が動かない……。

「ない、それは、ない。 それだけはありえない……。 本当に陛下なんですよね?」

「まぁ、男の姿の胸元が良いと言うなら戻りますよ。 ただ、私はナルサスほど筋肉はありませんからねぇ。 こう抱っこ紐でもない事には」

「私の扱い、どうなのよ……一応、成人女性ですよ?」

「成人女性は、おもらししたと大泣きしませんよ」

「わ、私は、まだ幼体だから!!」

「さぁ、おいで……おチビちゃん」

「ぇええええええ」

 と、言いながら、改めて顔を見た私は首を傾げた。 陛下の女装(?)姿が、母をもっとこう色っぽくして、胸を大きくしたような感じだったから。

「母様に似ているような?」

「彼女は、良い教師でした。 幼く、エネルギーを補充できず、捨て置かれ、朽ち果てるのを待つばかりの私を彼女は救ってくれたのです。 覚えていませんか? 貴方の卵時代に温めていた事もあるのですよ」

「流石に卵時代の記憶は……」

 まぁ、手を変え品を変え、口車に乗せられ結局私は、げんなりとした気分で陛下(女)の胸元に収まるのだった……。

「今日は、寝物語に母君のお話をしてあげようと思うのですが、どうでしょうか?」

「ぇ?」

「流石に、チビ鳥相手に何もしませんから、安心してください」

「でも……」

「貴方が、ココに来て1日。 侍女と私と、どれだけ親密度の差があると? いえ……、貴方の母君の弟子であり、貴方が幼い頃、卵を温め、散歩に連れていった私の方が、余程、親密な関係なはずではありませんか?」

 そう、矢継ぎ早に言われているところにやってきたナルサスとモイラは、言葉をなくし石像のように固まるのだった。

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