【R18】婚約者がとんでもない女を運命のツガイだといいました。 そして私は運命に出会う。【完結】

迷い人

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35.新米化け物の取り扱いとは? 01

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「な、にを、してんのかしら?」

 しばらくの硬直後、ナルサスはヒューゴに向けて問いかけた。 今まで見たことのない陛下の喜びに満ちた……いや恍惚とした顔、そして虚無の目で胸元に鎮座する鳥。

「へ、陛下は……私ごときの常識では測れない方ですので……」

 視線を背けながらヒューゴが言う。

 彼等の反応を見ている限り、陛下の女装(?)姿は、彼等に認知されていなかった事なのだろう。

 思考が追い付かない。
 ここ1日の情報量が半端ない。

 私は何をするべきなのだろう? そんな事以前に、考えがついていかないのだ。 ただ……捕食されないだけ良いとしよう……。 そんな消極的な考えで私は思考を止めた。

 あぁ、夕暮れ時が綺麗だ……(余り変化はない)。

「それで、彼等はどうしました?」

 口調自体は余り変わっていないが、女性となった陛下の声には、奇妙な甘ったるさがある。 苛立ちを隠せないナルサスと、全てを飲み込み割り切っている……いえ、割り切ろうとしているモイラ。

 ぁ、飲み込んだらしい。 表情が、死んだ。
 流石、モイラ人生経験が豊富らしい。

「陛下……、どうしてそのようになっているのか、ご説明頂けるかしら? ちょっと、その技、ずるいんじゃないの!! そんな面白い事、面白味の無い陛下が出来てどんなメリットがあるって言うのよぉおおお!! 私に教えなさいよ!!」

 そこかい!!

「いいですよ。 それほど難しい魔法ではありませんから」

「あら、そう、そんなに言うな……(ら)」

 流石のモイラも許容の範囲を超えたらしい。 ズンと首だけでナルサスを振り向き、無言で怒りを露わにすれば引いた。 ナルサスは引いた。

 私も、それが賢明だと思う!!

 屋敷中、性別不審者がフラフラするのは精神衛生上良くないと思います! ってか、ナルサス、性的にはノーマルだって言ってたよね?

「皇妃様の侍女、騎士達の件ですが!! よろしいですか!!」

 軍隊のような規律正しさをもって言ったのはモイラだった。

「伺おう。 それで彼等は生食鬼だったのですか?」

 既に、陛下たちは『生食鬼』と言う存在を危惧していたらしい。

 ※生食鬼の解説はNo19です。 吸血鬼、グール、狼男、そういうものを全部混ぜたようなものとお考え下さい。

 ただし、生食鬼の材料(?)となるだろう『翼ある者』や『大地の者』の始祖にあたる、或いは力と知識を受け継いだ者が、どれほど残っているだろうか? 現存する上位種を捕獲したとは考えにくく、だからと言って次代に受け継がれる事もなく、自然に還る事もなく、肉を維持したまま保存されていると言うのが考えられなかったため、生食鬼を犯人とするのは保留されていたそうだ。

「残念ながら……。 身体に痕跡がありました」

 なりたての生食鬼は、身体コントロール等出来ないため、例えるなら竜種を食べれば、皮膚が高質化し、鱗のような模様が生える、角が生える、羽根が生える、等の身体的特徴が露わになると言う。

 因みに、母の知識と力を受け継いだ私も、上位種(幼体)となるため、私の意志を無視して私を殺し食べた場合、恨みの念により、その人は羽毛が生える。

 私由来の化け物は、強くなりそうにないと思うかもしれないけど、生食鬼は人外への進化と考えられ、私とは全く別物。 強い生命エネルギーを栄養とする、キョウジンな生き物として生まれ変わるわけ。

「これで、皇都で起きた騒動、過去に王家に発生した奇病に皇妃のご実家である、メイザース公爵家が関わっていると分かった訳でしょう? 一気に解決できるんじゃないの?」

 自らの団員を怪事件に投入しているナルサスは、安堵した様子で言っていた。 やっぱり化け物と戦うよりも、元を叩きたいものだろう。

「甘いですよ。 どれだけの者が、飢えた生食鬼を相手にできると思っているのですか……。 処分の方法は、飢えさせて殺す。 上位種の肉が根を張った核の部分を破壊する。 縛って天日で干すぐらいですよ。 若く未熟な者を討伐に駆りだせば餌とされるだけです。 もっと確実な方法を探さなければ、管理されている生食鬼を野放しにするだけでしょう」

「そう言われても、ねぇ……。 目を閉ざし幸福な夢に生きて来た彼等から得られる情報なんてたかがしれているわ。 諜報を行うにも、皇妃の住まう楽園の特殊性を考えれば、潜入調査なんてのはねぇ、ぜっ~たい無理よ」

「しばらくは、皇都の警護、それと、皇妃の住まいと、メイザース公爵家に隠し通路……いえ、生食鬼が使うと考えるなら、最初から人が通れるような水路を中心に調査をした方が良いかもしれません。 食事を行わなければ、皮膚が乾いてボロボロになり、肉までもがこそげ落ちる。 乾きと日の光を避け、人を殺すのを避けたいと考えるなら用水路でしょう。 今の段階では過去の文献を調べるだけで……無暗に人死にを出したく等ありません」

 陛下が一気に喋った。

「今日、皇妃から預かり受けた(?)者達はどのように処理されますか?」

 モイラが静かに聞いた。
 彼等の対処も侍女達の仕事なのだろうか?

「人として扱って差し上げて下さい」

 それは慈悲? そう思った私は甘かった。

「しっかりと管理した場所に置き、ナルサスの部下達が生食鬼と戦うための訓練に使わせていただきましょう」

 そう陛下はニッコリと微笑んだ。

 化け物となった者は、元には戻れない……いや、元が呪いなのだから、呪いの元を断てば戻れるかもしれないけれど、誰も皇妃に仕えた者のためにリスクを犯し、助けてやろう等とは思わないのだろう。



 私は世の無常と言う奴を感じるのだった。
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